爺やの前立腺がん体験記

~前立腺がんの検診から告知・全摘手術まで~

このブログの最終更新日 平成28年3月9日

高齢男性を中心に年々、前立腺がんにかかる人が増えています。ほかのがんと異なり、診断後すぐ命にかかわるケースは少ないようですが、発見が遅れるとリンパ節や骨などに転移してしまっていることがあります。50歳を過ぎたら年に一度はPSA検査(血液検査)を受けられるようお勧めします。(好々爺)

前立腺がんの検診から告知・全摘手術までの記録

2010年08月29日 | 日記

日本人の前立腺がんは急速に増えており、2020年には肺がんに次いで罹患数第2位になると予想されています。このブログは、まもなく70歳を迎えようとする筆者が、予期せぬことから前立腺がん検査を受診し、がんの告知から前立腺全摘治療に至るまでを記したドキュメントです。何かの参考になれば幸いです。(2010年/夏 好々爺)

<主な経緯>
                                    
 2010.7.6       前立腺がんの検診(PSA診断)
 2010.7.20~22  確定診断(経直腸的前立腺針生検)
 2010.8.3       前立腺がんの告知
 2010.8.25     病期診断(MRI 検査)
 2010.8.26     治療法の確定(インフォームドコンセント)
 2010.9        術前検査と準備
 2010.9.24     前立腺がんの治療(恥骨後式根治的前立腺全摘除術)
      ~10.16  
  2010.10.17~     その後の経過  (更新中)

  * 前立腺がん治療前の2010年9月中旬、新たに早期胃がんが確認されたため、前立腺全摘手術後に再入院し、10月下旬、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の治療を受ける。



前立腺がんの検診

2010年08月29日 | 日記
2010年7月、かかりつけ医のI 内科で特定検診を受診した。3年前から始まったメタボリックシンドロームに着眼した検診である。その際、名古屋市では今年からそれぞれワンコイン(500円)で6種類のがん検診が受けられることを知り、早速、前立腺がんと胃がん検診を申し込んだ。肺がん検診については、春先に胸のレントゲン検査を受けていたことから、今回は見送ることとした。ちなみに、日本男性の各がんの毎年の発症率は、肺がん、胃がんに次いで前立腺がんが第3位となっている。

前立腺がんは、血液中の前立腺特異抗原(PSA)が高くなるにつれてがんの確率も高くなることから、血液検査による早期発見が可能で、50歳以上の男性や、血縁者に前立腺がんのいる人は定期的に検診を受けることが大切、と言われている。

前立腺がんの血液検査は前述の特定検診と並行して行われた。検査の翌日、I 内科の医師から電話がありPSA数値が11であることを知らされた。この数字は基準値から外れていることから精密検査を受けるように勧められ、翌日、紹介状を持って近くの医療機関B病院を訪れた。7月初めのことである。紹介された泌尿器科で外来受診し、がんであるかどうかを確認するため、2週間後に経直腸的前立腺針生検を行うことになった。

I 内科の医師から連絡を受けた日の夜、インターネットで前立腺がんについて調べた結果、
① 日本でも前立腺がんは増加傾向にあり、その理由として、日本人の高齢化、食生活の欧米化、PSA検査の普及などが考えられている。

② 早期の前立腺がんには、がん特有の症状はなく、がんが進行すると、尿が出にくい、排尿時に痛みが伴う、尿や精液に血が混じるなどの症状がある。

③ 早期に発見すればさまざまな治療法があり完治も可能である。

④ PSA値が4(ナノグラム/ミリリットル)以下なら正常で、4~10がグレーゾーン、10以上になるとがんの疑いがかなり強まり、生検を行うと陽性率は50%以上になっている。また、PSA値は年齢によって基準値が多少変わってくる。等々の知識を得た。

(所 感)
69歳半ばで、偶然にも前立腺がん検査を受ける機会を与えられたことに感謝しています。今回、がん検査を受診していなければ、がんの進行がさらに進んでいたであろうと思うと恐ろしい気がします。

TOPへ


前立腺がんの確定診断と告知

2010年08月29日 | 日記
経直腸的前立腺針生検は、直腸に超音波探子を挿入し、前立腺の画像を映しながらがんの場所やがんの好発部位などをねらって、自動生検装置(バイオプティガン)で針を挿入し、一定本数以上の組織を採取して行われる。針生検は、出血や発熱、排尿困難などの合併症が起きる可能性があるため、B病院では2泊3日の入院で行われている。なお、小生の場合、検査に備えて、常用している血栓予防薬バファリン配合錠の服用を生検の10日前から中止するよう指示があった。

入院2日目、グリセリン浣腸の後、検査は手術室で行われた。左側臥位になり仙骨から麻酔注射を行った後、前述の生検が手際よく進められた。仙骨からの麻酔注射に少し時間を要したようで、刺すような強い痛みが瞬間走ったのを覚えている。何気なく体に添えられた看護師の手の温もりが検査時の不安を和らげてくれる。組織を採取する際に発射されるガンの操作音は結構大きく、事前に説明がないと驚くほどである。対象部位が予測よりやや小さかったため、針を2本減らし8本採取された。検査は数10分で終わり、検査後2時間は自室ベッドで安静にする。心配した痛みや、血尿・血便、発熱等の合併症もなく、予定どおり入院3日目の朝、無事退院することができた。

針生検から1週間後、外来でB病院を訪れた。H准教授はモニターに眼をやりながら静かに話し始める。確定診断の結果は陽性、前立腺がんの告知である。前立腺の両葉にがん細胞があり、悪性度を判断するグリソン分類(グリソン・スコア)は、左葉が3+3=6、右葉が3+4=7で9段階中、5~6段階に位置する。がん細胞は前立腺に限局しており、病期Ⅱ期(ステージB)の早期がんと推定される、という。

今後の治療方法の一つである前立腺全摘除術について若干説明があったが、ネットで事前に得ていた知識などから、手術と比較して治療後のQOL(Quality of Life=生活の質)がより高い密封小線源療法に強い関心があることを伝えた。いずれにしても、今後、治療方法を検討するに当たっては、がんの進行度(広がり)を確認する必要があるため、3週間後にMRI 検査を行い、前立腺周囲のリンパ節や臓器への転移の有無を調べることになった。なお、骨への転移の有無を調べるためには骨シンチグラフィーを行うが、PSAの値から見てその確率は低いとし、検査を見送ることとした。

(所 感)
1 経直腸的前立腺針生検について
これまで大病を患ったこともなく、初めて入る手術室を前に少なからず緊張(入室直前の血圧は、170を超えていた)がありましたが、心配していた検査時の痛みや、検査後の血尿、血便などの合併症もなく順調に推移したことに安堵しています。

2 前立腺がんの告知について
ネット上で闘病記や治療記を読む中で、多くの方が告知の際にかなりの打撃を受けたと述べられています。小生の場合は、適切な治療により完治すると信じていたためか、がん告知の際、動揺することなく冷静に受け止めることができました。しかし、日を追うごとにがん告知の重みを実感するようになってきています。

3 密封小線源療法(ブラキセラピー)の適応について
小線源療法は、前立腺全摘除術と同程度の治療効果があり、かつ、入院期間が短い、浸襲性が低い、尿失禁や男性機能障害(ED)等の副作用や合併症が少ないなど、いくつかの優位性があることから、当初、療法を選択する際の第1候補と考えていました。
告知後、ネットで情報収集を進める中で、病理結果が中リスク群に該当する患者には、ホルモン療法、あるいは放射線外照射を併用するよう適応基準を定めている病院が複数あることを知りました。
中リスク群とは、PSA10~20、またはグリソンスコア7、またはT2b~T2c(ステージBに相当、がんは前立腺片葉の1/2を越えるか、両葉に進展する)と定義されています。小生の病理結果はすべてのこの条件に合致していることから、小線源療法を単独で適用することは難しいことが分かり、正直なところ落胆を隠せません。

4 男性機能障害(ED)について
前立腺がん患者の性については、AMANO'S HOMEPAGE“ 前立腺がん治療記”の中に詳しく記述されています。同じ境遇に立たされた全国の前立腺がん患者の生々しいレポートに眼を通しながら、自らに置き換えていろいろ思いを巡らしています。

5 前立腺がんに関するネット上の情報で、今回、参考にしたHPを以下紹介させていただきます。
(1)がんサポート情報センター
(2)前立腺がん克服のための基礎知識
(3)国立がん研究センター”がん情報サービス”
(4)What's前立腺がん
(5)九州大学・前立腺癌に対する小線源治療
(6)ヨウ素125を用いた前立腺癌永久挿入密封小線源療法
(7)56歳からの前立腺がん闘病記
(8)AMANO'S HOMEPAGE前立腺がん治療記
(9)前立腺がん治療「小線源療法(ブラキセラピー)体験記」


TOPへ


インフォームドコンセント

2010年08月29日 | 日記
病期診断(MRI 検査)は、前立腺がんの告知から3週間後に実施し、検査は30分程で終わった。その翌日、外来でH助教授と面談し、病期やその治療法等について議論を交わした。面談には妻も同席し、実質的なインフォームドコンセントとなった。
MRI 検査の結果、膀胱、精嚢への転移はなく、がんは前立腺内にとどまっている段階で、病期はステージBの限局性がんであると特定された。

  ~検査結果の確認~
    ・PSA値:11
    ・グリソンスコア:(左葉)3+3=6 (右葉)3+4=7
    ・病期:[ABC分類] ステージB  [TNM分類] Ⅱ期・T2c(両葉に進展)

治療は、PSA値、グリソンスコア、病期などを総合的に判断した結果、開腹手術が最適な療法であることを確認し、「恥骨後式根治的前立腺全摘除術」によることとした。なお、当初、関心があった小線源療法は、中リスク群に分類される現在の病期から見て、単独での適用は難しいと判断した。また、手術の合併症として、出血、感染、尿失禁、直腸損傷、血栓、勃起不全、尿道狭窄、吻合部からの尿洩れ等の可能性について説明を受けた。

手術は、1カ月後の9月28日とし、休日の関係もあり入院はその4日前とした。その間、循環器科と麻酔科の受診、および自己血採血(2回)のため、都合3回外来通院しなければならない。手術が順調に推移すれば、術後約2週間で退院することができる。

(所 感)
1 事前にネットから得た情報等で頭の整理がついていたため、担当医師との意思疎通はスムーズに進み、EDや尿失禁を始めとした合併症を理解し、療法の特定、手術の日程等について迷うことなく決めることができました。

2 しかし、手術が決まった日の夜は、EDの問題、手術に対する不安、術後しばらく続くであろう激痛などいろいろな思いが脳裏をかすめ、熟睡することなく悶々とした一夜を過ごしてしまいました。

3 手術の日程が決まったことによって、予定していた”秋の東北地方一周車中泊の旅”は取りやめ、健康を回復させてから、再チャレンジしようと思っています。


TOPへ


術前検査と準備

2010年08月28日 | 日記
<術前検査>

2010年9月初旬、前立腺全摘手術を3週間後に控え、術前検査を受診した。担当のN教授から、既往症や家族歴ついての問診、血圧測定の後、頸動脈部や胸部の聴診・触診を受け、明らかな心雑音があると指摘を受ける。その後、心エコー検査と胸部X線検査を受診。なお、血液検査、肺機能検査および心電図検査は先日検査済みである。

心エコー検査の結果、予期せぬ心臓弁膜症(大動脈弁および僧帽弁閉鎖不全症)の診断を受ける。大動脈弁および僧帽弁から血液の逆流がある連合弁膜症である。弁膜症が確認されたことにより、翌日、トレッドミル運動負荷試験(TMT)を受けることになった。この負荷試験は、虚血性心臓病の診断に重要な役割を果たす検査法で、狭心症などの診断時に用いられる。

運動負荷試験の翌日、改めてB教授と面談し、試験結果についての説明を受け、一部不整脈など軽微な所見はあるものの、前立腺全摘手術は予定通り可能であることを確認した。

(所 感)
1 術前検査の過程で、予期せぬ心臓弁膜症の診断を受け、正直ショックを受けたものの、早期に発見できたことを喜んでいます。現状では、内科的治療(服薬)を含め治療の必要性がなく、年に一回程度、心エコー検査を受診し経過を見ることになります。

2 ここ十数年、狭心症の疑いから日常生活で多少不安がありましたが、今回、トレッドミル運動負荷試験の結果、陰性の診断が出てホッとしています。これから入院までの2週間、体調をくずさないように、規則正しい生活に心がけたいと思います。


<手術前の準備>

手術の2週間前、手術時の麻酔管理を行う麻酔科医師から、麻酔の詳細とそれに伴う合併症について、妻も同席のうえ30分ほど説明を受ける。今回の手術は、全身麻酔で、手術中~手術後数日の痛みを軽減させる目的で、硬膜外麻酔を併用して行う。
また、手術の際、自己血輸血を実施するため、手術の1~2週間前2回に分けて、400ccずつ計800ccを採血し、貯血を行った。

これで、入院前の検査および準備はすべて整ったことになる。なお、入院は9月24日、手術は9月28日で、順調に推移すれば術後2週間程度で退院となる。
 
(所 感)
1 自己血採血前日の9月13日、前立腺がんと一緒に行った胃がん検診の結果が出ました。結果は“陽性”、不安が的中してしまいました。7月初旬に実施した胃レントゲン検査の結果、「さらに詳しい検査を受ける必要があります」との通知書が交付され、8月下旬、同じ医療機関B病院で内視鏡検査(胃カメラ)を受診し、生検を経て下された判定です。(細胞診:クラスⅣ)

2 幸い、病期は早期胃がんで、現時点では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による治療が可能と診断されていますが、さらに、超音波内視鏡検査および腹部CTによってがんの深さや周囲リンパ節の診断を行い、がんの広がりを確認したうえ、最適な治療法が決定されます。(胃がんのステージ:ⅠA)

3 不運にもがんの告知が重なり、一時、前立腺全摘手術の時期について再検討されましたが、予定どおり9月28日に手術することが確認されました。なお、早期胃がんの治療は、前立腺全摘手術を終えた後、10月27日に再入院し、翌28日に手術することになりました。

4 今夏、告知された前立腺がんおよび胃がんは、いずれも比較的早期に発見されたものの、ここ数年、人間ドックを受診していなかったことが悔やまれます。この間、市の委託成人基本健康診査、および特定健康診査を受診していましたが、以前のように毎年人間ドックを受診していれば、もっと早く発見されていたかもしれません・・・。


TOPへ


前立腺がんの治療

2010年08月28日 | 日記
~以下,入院中の病室から発信~

<入院~手術前日>

手術を4日後に控えた9月24日,愛用のモバイルパソコンを携行し,入院。「入院診療計画書」を受領する。担当看護師に常用中の薬を提出し,チェックを受ける。また,手術後の合併症を防ぎ,順調な回復を目指すため,深呼吸(腹式呼吸)の仕方,咳の仕方(痰を出す方法),起き上がり,うがい,離床等について説明を受け,術前に練習しておくよう指導を受ける。(周手術期の呼吸ケア)

9月25日 入院後初めて,体温・血圧測定を受ける。(入院中,毎日測定) 風邪の前兆なのか,時々のどに痰がからむ。夕食後,体温36.9度に上昇する。手術に支障をきたさないよう,十分睡眠をとり,回復に努める。

9月26日 昨夜から今朝にかけて体温は平熱に戻る。食事は朝食から全粥となる。

9月27日 手術前日。朝食前に採血と検尿。食事は全粥から重湯に変わる。午後,手足の爪切りを行い,手術部位周囲の除毛とへそ処置を受ける。(へそ処置:臍部の細菌数減少を目的に,臍部にオリーブオイルを浸し,綿棒で臍垢をとる。) 処置後入浴。20時以降絶食,24時以降絶飲食となる。術前下剤を服用後,NHKの“鶴瓶の家族に乾杯(番外編)”を見ながら床に就く。明日,手術室への入室は10時30分の予定である。


<手術当日>

9月28日 手術当日 起床6時。昨夜は,熟睡できず悶々とした一夜を過ごす。髭剃り,浣腸を実施し,手術室の担当看護師から入室後の流れについて説明を受ける。入室時間直前に手術着に着替え,血栓形成防止用の弾性ストッキングを着用する。看護師長から名前,生年月日,手術部位のチェックを受けた後,予定通り,10時30分,妻と娘に見守られながら手術室へ入室。入室後も,同様なチェックを数回受ける。

手術室に入ると,帽子とマスクをしたスタッフに迎えられ,手術台まで移動する。はじめに,麻酔科医師が硬膜外麻酔の準備に取り掛かる。背中から細いカテーテルを入れ,そこから麻酔薬を入れる。この麻酔は,手術後数日間連続注入される。平行して看護師により心電図,血圧計,血中酸素濃度測定器などの器具が身体に取り付けられる。硬膜外麻酔の準備が終わると,口にあてがわれたマスクからの酸素を吸いながら静脈麻酔薬を注射,数秒後には完全に意識を失う・・・。

16時頃,医師の問いかけに目覚め,手術が無事終了したことを知らされる。入室後すでに5時間30分経過しているにもかかわらず,つい先ほど入室し,手術台に上がってから未だ何分も経っていないような錯覚を覚える。その後,移動台に移り,手術室に隣接する回復室(リカバリー室)へ移動する。看護師からリカバリーに必要な点滴等の処置をしていただく。

しばらくして,妻と娘がベッドサイドに近づき,先生から聞いた手術の概要や摘出した前立腺と精嚢の大きさなどについて話をしてくれる。実手術時間は3時間30分という。意識はしっかりしているが心身ともに無の状態である。手術直後とあって妻たちは,早々に退室する。明日からは痛みとの葛藤が始まるかもしれないという不安を抱きながら,今夜も長い一夜がやって来る・・・。


<術後1日目~7日目>

9月29日(術後1日目) 午前中,ベッド上で手術部位と胸部のレントゲン撮影を行う。鼻から挿入されていた酸素チュウブを外し,歩いて病室へ移動。尿道深く差し込まれた尿道カテーテル(排尿管),手術部位からの体液を排出するドレン管,何本もの点滴用チュウブ,どれも普段目にしない異様な光景で,人目に晒したくない心境である。のどに絡まった痰を出すときに走る傷口の痛みが一番つらい。傷口の痛みを少なくするために,腹部に枕をあてがい強く抑えながら咳をする。早期回復を目指して,ときどきベッドから起き上がり室内を歩き回る。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

9月30日(術後2日目) 今日は,3日ぶりの食事,重湯食である。離床に心がけ,室内を歩き回る。やはり,痰を出すときが一番つらい。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

10月1日(術後3日目) 今日は,3分粥食である。夜,硬膜外麻酔用のカテーテルを外す。また,手術後の点滴がすべて終了し,身体に纏わりついている異物は,残すところ排尿管とドレン管の2本のみである。術後3日が経過し,ひとまず一山越えたとの思いである。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

10月2日(術後4日目) 今日は,5分粥食である。前日に麻酔用のカテーテルと点滴用チュウブが外れ,身体が動きやすくなったことから,術後初めて病室から出て,体を動かす。椅子に座ると会陰部に痛みを覚える。会陰部は手術部位に最も近い。長い時間椅子に座るのを避けながら,携行したパソコンを操作する。夜,眠剤を服用し,就寝。

10月3日(術後5日目) 今日は,7分粥食である。術後,手術部位からのドレンの減り方が遅くやや気がかりである。尿道からのリークが疑われる。午後,娘夫婦と孫たちが見舞いに訪れる。夜,下剤,痛み止めの薬を服用し,就寝。

10月4日(術後6日目) 今日は,全粥食である。術後初めて便通があり,目の前が明るくなったような思いで廊下での運動量が増す。夕方近く,TVで “民主党の小沢一郎元幹事長強制起訴へ”のニュースが流れる。夜,眠剤を服用し,就寝。

10月5日(術後7日目) 今日から常食である。 手術部位の造影検査の結果,膀胱と尿道の吻合部からごく少量の尿漏れが確認されたため,排尿管およびドレン管の取り外しは,漏れの経過を見て行うこととになった。再手術の必要はない。吻合部に若干テンションをかけるよう処置を施したことによりやや痛みが増し,痛み止めの注射を打つ。夜,二度目の痛み止め注射と眠剤を服用し,就寝。


<術後8日~退院まで>

10月6日(術後8日目) 膀胱と尿道の吻合部の回復は日にち薬という。 PC同好会メンバーがお見舞いに訪れる。夕方,“ノーベル化学賞に根岸,鈴木両氏”のニュースが伝わる。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月7日(術後9日目) 今朝までのドレン排出量は45cc/日。手術を担当した看護師から手術後のケアを受ける。相変わらず会陰部に痛みを覚える。孫が見舞いに来る。夕方,開腹部の抜糸を実施。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月8日(術後10日目) ドレン排出量92cc/日と思わしくない。摘出した前立腺の病理検査の結果,左右の神経血管束(前立腺の表面に接するように張り付いている勃起に関係する神経)にがん細胞が浸潤していることが判明,今回,密封小線源療法によらず全摘術を適用したことは正解であったと説明を受ける。また,リンパ節への転移は認められない。相変わらず会陰部の痛みが気になる。これは,会陰部近くに排尿管を通しているためで,この管が外れれば痛みはなくなるという。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月9日(術後11日目) ドレン排出量53cc/日。入院後,早や半月が経過,廊下での運動量は,一日2500~3000歩となり,ようやく身体に生気がよみがえってきたような感覚である。洗髪。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月10日(術後12日目) ドレン排出量40cc/日。娘が見舞いに訪れる。休日にもかかわらず,夜,T助教が回診。通常,50cc以下をひとつの目安としているが,今回は,造影検査により吻合部のリークが確認されており,加えて,連休が重なったこともあって慎重を期している。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月11日(術後13日目) ドレン排出量は20cc/日と確実に減少している。水分の摂取量が少ないためか,尿の色が著しく濃い。休日にもかかわらず,今夜もT助教が回診。尿の色については,膀胱が萎んでいる状態であるため,運動などにより膀胱下部まで挿入されているカテーテルの先が内粘膜を傷つけ,まれに出血することがあるという。我が家から程近い名古屋国際会議場で,今日から,COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開幕。今夜から,眠剤を服用せず。

 

10月12日(術後14日目) 連休明け。ドレン排出量18cc/日。昨日の午後以降,尿の色はほぼ正常に復している。当初予定よりほぼ1週間遅れで排尿管を取り外す。下腹部に尿とりパッドを装着。ここ数日心配していた右下腹部の痛みは,排尿管(チューブ)を止めていたテープによる皮膚の炎症と判明。PC同好会メンバーがお見舞に訪れる。

 

10月13日(術後15日目) 手術部位からの体液を排出するドレン管を取り外す。これで身体にまつわり付いていた異物はすべて取り除かれた。排尿は80~150cc/回程度で,順調に推移している。夕食後,体温が37.6度に上昇,氷枕を使用して就寝。

10月14日(術後16日目) 昨夜の高熱に関連し,早朝,採血・採尿を実施,5日分の抗生剤を処方していただく。採血・採尿結果,軽い膀胱炎と推定。その後,熱はほぼ平常に落ち着く。手術後はじめてシャワーを浴びる。尿失禁対策として,骨盤低筋体操の有効性について説明を受ける。

 

10月15日(術後17日目) 「退院療養計画書」を受領する。退院後の治療として,外来での経過観測を行う。(PSA採血を行い,再発の有無をチェックしていく。)

 

10月16日(術後18日目) 午前中,退院。


~以上,入院中の病室から発信~


(所 感)

1 当初予定より若干遅くなったものの,無事退院することができホッとしています。心配した手術もまったく苦痛を覚えることなく,また,術後の痛みも幾つかの体験記や闘病記などで紹介されている内容に比べれば,軽かったように思います。術後3日目まで適用した硬膜外麻酔の併用や,就寝前に打った痛み止め注射が効いていたのかも知れません。この痛み止め注射は,催眠効果もあり有効でした。

 

2 一方,尿道から膀胱まで深く挿入されていた尿道カテーテルによる陰茎部の痛みと違和感,会陰部の痛みは結構苦痛でした。

 

3 術後の病理検査の結果,勃起に関する神経血管束の一部に浸潤があったものの,リンパ節などへの転移が認められなかったことは幸いでした。今回の前立腺全摘除術は,最善の選択であったと思います。

 

4 病室における医師や看護師への質問により,多くの不安や疑問が早期に解消されたことは,心身の安定に大きく寄与しました。

 

5 入院中の病院食は,食材やメニューが良く吟味されており,幸い,小生の嗜好にも合っていました。バス・トイレ・キッチン付の個室も,不自由な病院生活を感じさせない快適な空間でした。また,携行したモバイルパソコンは,退屈な入院生活をしっかりフォローしてくれました。

 

6 退院後,次の外来時に術後初めてのPSA検査を行う予定です。その後は,3ヶ月に1回程度,PSA検査を行い,推移を確認していくことになります。ちなみに,国立がんセンターのデータによれば,がんが前立腺内に限局している場合で手術療法を施行した場合,その10年生存率は90%以上と紹介されています。

 

7 これからしばらくは,尿とりパッドを早期に取り外すべく,骨盤低筋体操に励みたいと思います。なお、男性用尿とりパッドを使用する際、シームレスボクサーブリーフとの組み合わせが身体にフィットとし、機能的であることが分かりました。術後のみなさんにお勧めです。

 

8 参考に,入院中の診療費を紹介しますと,診療点数は約116,000点となっており,この中には,食事一部負担金,病衣代,室料差額等の実費負担分は除かれています。ちなみに,診療点数1点あたり10円で換算されます。

 

9 最後に,今回の入院・手術に際して,大変お世話になったH准教授,T助教の両先生をはじめ,看護師,関係職員の皆さんに心中より感謝いたします。ありがとうございました。



TOPへ


その後の経過

2010年08月26日 | 日記

<2010年10月17日~11月6日> 

 

1 <胃がん治療> 退院して4日目、今度は、胃がん治療のため、超音波内視鏡検査および腹部CT検査を受診。その3日後の10月23日、妻も同席しインフォームドコンセントを受ける。がんは、肝臓やリンパ節への転移はなく、胃粘膜に限局している。胃がんの病期(ステージ)は、1Aの早期胃がんと診断。この結果を踏まえ、胃がんの治療法は、当初計画どおり内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を適用することとした。10月27日入院、翌28日手術の予定で、10日程度で退院することができる。


2 10月26日、前立腺全摘除術後28日目に外来受診し、採血、検尿、問診、触診を受ける。その結果、PSA値は、手術前11であったものが,0.04に低下していることを確認。(PSA値には半減期があり、次回受診時には、さらに低下しているという。) なお、次回は、11月30日(術後63日目)に受診予定。


3 <胃がん治療> 10月27日,胃がん治療のため入院。翌28日,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を受ける。手術時間は,予定していた時間よりも早く,50分ほどで無事完了。手術翌日,胃カメラで手術跡を確認,出血もない。手術後は,腹痛,吐気,嘔吐,下血もなく順調に推移している。


4 <胃がん治療> 11月4日,主治医から,切除した病変部分の病理検査(顕微鏡検査)結果の説明があり,①がんは粘膜内にとどまっており(粘膜下層に及んでいない),②切口にがんがなく完全に切除されている,③がんがリンパ管や静脈に及んでいないことが確認され,今回の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による治療は,無事成功したことを告げられる。

11月6日退院後は,内服薬の服用,刺激物や激しい運動を控える等の在宅療養に努め,経過観察として,12月初旬に外来受診,年末~年始に胃カメラによる確認検査を行う。

 

<所 感>

1 この1ヶ月間に,前立腺がんと胃がんの二つのがん治療を受けたことになります。まったく晴天の霹靂(へきれき)でした。幸い発見が早く,いずれも病変部分を取り除くことに成功し,改めて新しい命を授かった想いです。

 

2 国立がんセンターのデータによれば,今回と同じ病期,療法のケースでは,前者の10年生存率は90%以上,後者の5年生存率は98.7%と紹介されています。病変部分を切除したとは言え,今後,転移や再発の可能性が全くなくなったわけではなく,経過観察が必須となります。定期的に通院し,再発等の早期発見に努めていきたいと思います。

 

3 今回,2回に亘る延べ34日間の入院・治療で,体重が約5kg減量してしまいました。バランスの取れた食事,適度な運動に心がけ,早く以前のような健康体に戻したいと思います。

 

4 11月6日現在,前立腺全摘手術の合併症のひとつである尿失禁についてはほとんど解消し,頻尿についても徐々に快方に向かっており,安堵しています。

 

5 参考に,今回の胃がん治療で要した入院中の診療費を紹介しますと,診療点数は約46,000点となっています。なお、この中には,食事一部負担金,病衣代,室料差額等の実費負担分は除かれています。

 

 

<2010年11月7日~ >

 

                       術後のPSA値経時変化

 


           年月日              PSA値               備   考


         2010/07/06            11             前立腺がん検診結果


         2010/09/28                          前立腺全摘手術


         2010/10/26            0.04            術後 約1ケ月経過


         2010/11/30            0.01            術後 約2ケ月経過


         2011/01/18            0.01            術後 約4ケ月経過


         2011/03/22            0.01            術後 約6ケ月経過


          2011/06/09            0.01            術後 約9ケ月後


         2011/09/06             0.01            術後 約1年経過


         2011/12/13             0.02             術後 約1年3ケ月経過


          2012/03/06              0.03            術後 約1年6ケ月経過


          2012/06/05              0.02            術後 約1年9ケ月経過                        


          2012/08/21             0.02            術後 約1年11ケ月経過


                   2012/11/07                            0.04             術後 約2年1ケ月経過


                   2013/02/04                            0.02             術後 約2年4ケ月経過


                   2013/05/08                            0.02             術後 約2年7ケ月経過


         2013/08/07                            0.03             術後 約2年10ケ月経過


         2013/11/13                            0.02             術後 約3年1ケ月経過


         2014/02/22                            0.02             術後 約3年4ケ月経過 


            2014/05/07                            0.02             術後 約3年7ケ月経過 


         2014/08/20                            0.02             術後 約3年11ケ月経過


         2014/12/03                           0.02             術後 約4年2ケ月経過


          2015/04/15                           0.03             術後 約4年6ケ月経過


                  2015/07/29                             0.02                        術後 約4年9ケ月経過


           2015/11/04                            0.02            術後 約5年経過


 

        2015/04/15                            0.01             術後 約5年3ケ月経過
TOPへ