爺やの前立腺がん体験記

~前立腺がんの検診から告知・全摘手術まで~

前立腺がんの治療

2010年08月28日 | 日記
~以下,入院中の病室から発信~

<入院~手術前日>

手術を4日後に控えた9月24日,愛用のモバイルパソコンを携行し,入院。「入院診療計画書」を受領する。担当看護師に常用中の薬を提出し,チェックを受ける。また,手術後の合併症を防ぎ,順調な回復を目指すため,深呼吸(腹式呼吸)の仕方,咳の仕方(痰を出す方法),起き上がり,うがい,離床等について説明を受け,術前に練習しておくよう指導を受ける。(周手術期の呼吸ケア)

9月25日 入院後初めて,体温・血圧測定を受ける。(入院中,毎日測定) 風邪の前兆なのか,時々のどに痰がからむ。夕食後,体温36.9度に上昇する。手術に支障をきたさないよう,十分睡眠をとり,回復に努める。

9月26日 昨夜から今朝にかけて体温は平熱に戻る。食事は朝食から全粥となる。

9月27日 手術前日。朝食前に採血と検尿。食事は全粥から重湯に変わる。午後,手足の爪切りを行い,手術部位周囲の除毛とへそ処置を受ける。(へそ処置:臍部の細菌数減少を目的に,臍部にオリーブオイルを浸し,綿棒で臍垢をとる。) 処置後入浴。20時以降絶食,24時以降絶飲食となる。術前下剤を服用後,NHKの“鶴瓶の家族に乾杯(番外編)”を見ながら床に就く。明日,手術室への入室は10時30分の予定である。


<手術当日>

9月28日 手術当日 起床6時。昨夜は,熟睡できず悶々とした一夜を過ごす。髭剃り,浣腸を実施し,手術室の担当看護師から入室後の流れについて説明を受ける。入室時間直前に手術着に着替え,血栓形成防止用の弾性ストッキングを着用する。看護師長から名前,生年月日,手術部位のチェックを受けた後,予定通り,10時30分,妻と娘に見守られながら手術室へ入室。入室後も,同様なチェックを数回受ける。

手術室に入ると,帽子とマスクをしたスタッフに迎えられ,手術台まで移動する。はじめに,麻酔科医師が硬膜外麻酔の準備に取り掛かる。背中から細いカテーテルを入れ,そこから麻酔薬を入れる。この麻酔は,手術後数日間連続注入される。平行して看護師により心電図,血圧計,血中酸素濃度測定器などの器具が身体に取り付けられる。硬膜外麻酔の準備が終わると,口にあてがわれたマスクからの酸素を吸いながら静脈麻酔薬を注射,数秒後には完全に意識を失う・・・。

16時頃,医師の問いかけに目覚め,手術が無事終了したことを知らされる。入室後すでに5時間30分経過しているにもかかわらず,つい先ほど入室し,手術台に上がってから未だ何分も経っていないような錯覚を覚える。その後,移動台に移り,手術室に隣接する回復室(リカバリー室)へ移動する。看護師からリカバリーに必要な点滴等の処置をしていただく。

しばらくして,妻と娘がベッドサイドに近づき,先生から聞いた手術の概要や摘出した前立腺と精嚢の大きさなどについて話をしてくれる。実手術時間は3時間30分という。意識はしっかりしているが心身ともに無の状態である。手術直後とあって妻たちは,早々に退室する。明日からは痛みとの葛藤が始まるかもしれないという不安を抱きながら,今夜も長い一夜がやって来る・・・。


<術後1日目~7日目>

9月29日(術後1日目) 午前中,ベッド上で手術部位と胸部のレントゲン撮影を行う。鼻から挿入されていた酸素チュウブを外し,歩いて病室へ移動。尿道深く差し込まれた尿道カテーテル(排尿管),手術部位からの体液を排出するドレン管,何本もの点滴用チュウブ,どれも普段目にしない異様な光景で,人目に晒したくない心境である。のどに絡まった痰を出すときに走る傷口の痛みが一番つらい。傷口の痛みを少なくするために,腹部に枕をあてがい強く抑えながら咳をする。早期回復を目指して,ときどきベッドから起き上がり室内を歩き回る。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

9月30日(術後2日目) 今日は,3日ぶりの食事,重湯食である。離床に心がけ,室内を歩き回る。やはり,痰を出すときが一番つらい。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

10月1日(術後3日目) 今日は,3分粥食である。夜,硬膜外麻酔用のカテーテルを外す。また,手術後の点滴がすべて終了し,身体に纏わりついている異物は,残すところ排尿管とドレン管の2本のみである。術後3日が経過し,ひとまず一山越えたとの思いである。夜,痛み止め注射を打ち,就寝。

10月2日(術後4日目) 今日は,5分粥食である。前日に麻酔用のカテーテルと点滴用チュウブが外れ,身体が動きやすくなったことから,術後初めて病室から出て,体を動かす。椅子に座ると会陰部に痛みを覚える。会陰部は手術部位に最も近い。長い時間椅子に座るのを避けながら,携行したパソコンを操作する。夜,眠剤を服用し,就寝。

10月3日(術後5日目) 今日は,7分粥食である。術後,手術部位からのドレンの減り方が遅くやや気がかりである。尿道からのリークが疑われる。午後,娘夫婦と孫たちが見舞いに訪れる。夜,下剤,痛み止めの薬を服用し,就寝。

10月4日(術後6日目) 今日は,全粥食である。術後初めて便通があり,目の前が明るくなったような思いで廊下での運動量が増す。夕方近く,TVで “民主党の小沢一郎元幹事長強制起訴へ”のニュースが流れる。夜,眠剤を服用し,就寝。

10月5日(術後7日目) 今日から常食である。 手術部位の造影検査の結果,膀胱と尿道の吻合部からごく少量の尿漏れが確認されたため,排尿管およびドレン管の取り外しは,漏れの経過を見て行うこととになった。再手術の必要はない。吻合部に若干テンションをかけるよう処置を施したことによりやや痛みが増し,痛み止めの注射を打つ。夜,二度目の痛み止め注射と眠剤を服用し,就寝。


<術後8日~退院まで>

10月6日(術後8日目) 膀胱と尿道の吻合部の回復は日にち薬という。 PC同好会メンバーがお見舞いに訪れる。夕方,“ノーベル化学賞に根岸,鈴木両氏”のニュースが伝わる。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月7日(術後9日目) 今朝までのドレン排出量は45cc/日。手術を担当した看護師から手術後のケアを受ける。相変わらず会陰部に痛みを覚える。孫が見舞いに来る。夕方,開腹部の抜糸を実施。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月8日(術後10日目) ドレン排出量92cc/日と思わしくない。摘出した前立腺の病理検査の結果,左右の神経血管束(前立腺の表面に接するように張り付いている勃起に関係する神経)にがん細胞が浸潤していることが判明,今回,密封小線源療法によらず全摘術を適用したことは正解であったと説明を受ける。また,リンパ節への転移は認められない。相変わらず会陰部の痛みが気になる。これは,会陰部近くに排尿管を通しているためで,この管が外れれば痛みはなくなるという。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月9日(術後11日目) ドレン排出量53cc/日。入院後,早や半月が経過,廊下での運動量は,一日2500~3000歩となり,ようやく身体に生気がよみがえってきたような感覚である。洗髪。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月10日(術後12日目) ドレン排出量40cc/日。娘が見舞いに訪れる。休日にもかかわらず,夜,T助教が回診。通常,50cc以下をひとつの目安としているが,今回は,造影検査により吻合部のリークが確認されており,加えて,連休が重なったこともあって慎重を期している。夜,眠剤を服用し,就寝。

 

10月11日(術後13日目) ドレン排出量は20cc/日と確実に減少している。水分の摂取量が少ないためか,尿の色が著しく濃い。休日にもかかわらず,今夜もT助教が回診。尿の色については,膀胱が萎んでいる状態であるため,運動などにより膀胱下部まで挿入されているカテーテルの先が内粘膜を傷つけ,まれに出血することがあるという。我が家から程近い名古屋国際会議場で,今日から,COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開幕。今夜から,眠剤を服用せず。

 

10月12日(術後14日目) 連休明け。ドレン排出量18cc/日。昨日の午後以降,尿の色はほぼ正常に復している。当初予定よりほぼ1週間遅れで排尿管を取り外す。下腹部に尿とりパッドを装着。ここ数日心配していた右下腹部の痛みは,排尿管(チューブ)を止めていたテープによる皮膚の炎症と判明。PC同好会メンバーがお見舞に訪れる。

 

10月13日(術後15日目) 手術部位からの体液を排出するドレン管を取り外す。これで身体にまつわり付いていた異物はすべて取り除かれた。排尿は80~150cc/回程度で,順調に推移している。夕食後,体温が37.6度に上昇,氷枕を使用して就寝。

10月14日(術後16日目) 昨夜の高熱に関連し,早朝,採血・採尿を実施,5日分の抗生剤を処方していただく。採血・採尿結果,軽い膀胱炎と推定。その後,熱はほぼ平常に落ち着く。手術後はじめてシャワーを浴びる。尿失禁対策として,骨盤低筋体操の有効性について説明を受ける。

 

10月15日(術後17日目) 「退院療養計画書」を受領する。退院後の治療として,外来での経過観測を行う。(PSA採血を行い,再発の有無をチェックしていく。)

 

10月16日(術後18日目) 午前中,退院。


~以上,入院中の病室から発信~


(所 感)

1 当初予定より若干遅くなったものの,無事退院することができホッとしています。心配した手術もまったく苦痛を覚えることなく,また,術後の痛みも幾つかの体験記や闘病記などで紹介されている内容に比べれば,軽かったように思います。術後3日目まで適用した硬膜外麻酔の併用や,就寝前に打った痛み止め注射が効いていたのかも知れません。この痛み止め注射は,催眠効果もあり有効でした。

 

2 一方,尿道から膀胱まで深く挿入されていた尿道カテーテルによる陰茎部の痛みと違和感,会陰部の痛みは結構苦痛でした。

 

3 術後の病理検査の結果,勃起に関する神経血管束の一部に浸潤があったものの,リンパ節などへの転移が認められなかったことは幸いでした。今回の前立腺全摘除術は,最善の選択であったと思います。

 

4 病室における医師や看護師への質問により,多くの不安や疑問が早期に解消されたことは,心身の安定に大きく寄与しました。

 

5 入院中の病院食は,食材やメニューが良く吟味されており,幸い,小生の嗜好にも合っていました。バス・トイレ・キッチン付の個室も,不自由な病院生活を感じさせない快適な空間でした。また,携行したモバイルパソコンは,退屈な入院生活をしっかりフォローしてくれました。

 

6 退院後,次の外来時に術後初めてのPSA検査を行う予定です。その後は,3ヶ月に1回程度,PSA検査を行い,推移を確認していくことになります。ちなみに,国立がんセンターのデータによれば,がんが前立腺内に限局している場合で手術療法を施行した場合,その10年生存率は90%以上と紹介されています。

 

7 これからしばらくは,尿とりパッドを早期に取り外すべく,骨盤低筋体操に励みたいと思います。なお、男性用尿とりパッドを使用する際、シームレスボクサーブリーフとの組み合わせが身体にフィットとし、機能的であることが分かりました。術後のみなさんにお勧めです。

 

8 参考に,入院中の診療費を紹介しますと,診療点数は約116,000点となっており,この中には,食事一部負担金,病衣代,室料差額等の実費負担分は除かれています。ちなみに,診療点数1点あたり10円で換算されます。

 

9 最後に,今回の入院・手術に際して,大変お世話になったH准教授,T助教の両先生をはじめ,看護師,関係職員の皆さんに心中より感謝いたします。ありがとうございました。



TOPへ


コメントを投稿