石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

黒部の太陽 ミフネと裕次郎

2007-06-24 10:53:35 | 映画関連
「黒部の太陽 ミフネと裕次郎」熊井啓・著 2005年


今では幻の作品「黒部の太陽」の製作秘話を監督自身が語る。

三船敏郎と石原裕次郎が独立プロとして製作しようとした野心作だったことを知った。そこに立ちはだかる<五社協定>の壁・・・監督は何と日活を解雇されてしまう!今じゃ信じられない。

日活との製作、配給の駆け引きはスリリング。製作資金の捻出の裏側がリアルで面白い。
そのスリリングな序盤に比べれば、撮影に入った中盤からは、ありきたりなメイキング物に終始している気が。日記形式なのもドキュメンタリー効果を狙ったんだろうけど、単調になってしまった。

未ソフト化の裏側に踏み込んでほしかった!

★★

夜光虫

2007-06-23 09:00:46 | 国内小説
「夜光虫」馳星周・著 1998年


長編三作目。

舞台は歌舞伎町から台湾へ。八百長に染まった日本人選手が地獄巡りすめ羽目に。ボタンを掛け違えたばかりに、苦境に立たされて、マフィアの世界に引きずり込まれる・・・前半はブラック・コメディみたいな面白さ。

後半になると一転する。家族の因果関係がクローズアップされる。人間関係を詰め込み過ぎて、堂々巡りしてしまった気がした。文体はパワフルだから退屈させずに読ませてはくれるけど。
終盤いきなりエルロイ「ホワイト・ジャズ」して苦笑。

★★★

殿山泰司のミステリ&ジャズ日記

2007-06-23 08:34:39 | エッセイ(芸能人)
「殿山泰司のミステリ&ジャズ日記」殿山泰司・著 1981年

これは面白い。「話の特集」誌連載のエッセイの単行本。文書そのものが芸になっているのがイイ。軽妙な語り口で日常/仕事を愚痴ったりする。その辺の落語家も逃げ出すくらい。映画関係の裏話は笑える。
読み所は顔に似合わぬ(失礼!)ミステリー・フリークぶり。かなりの一家言ある方です。当時の日本のジャズ・シーンについての記述も興味深い。無知なボクはチェックしたくなった。

ハルビン・カフェ

2007-06-11 19:49:35 | 国内小説
「ハルビン・カフェ」打海文三・著 2002年


大藪春彦賞受賞作。
福井県架空都市を舞台にして、アジア系マフィア、警察、そしてテロ組織<P>の暗躍が多彩な人物で描かれる力作。力強いタッチで一気に読まされる。「トラフィック」とか「シリアナ」みたいな感じ。
警察と公安の確執がドラマの薬味になっている。

章ごとに人物視点を変えるアイディアは文章がつねに第三者的なので、思うほどの効果は得られていないけど、複雑に絡まりそうな糸をうまく操ってはいると思った。
出色は<P>リーダーを慕って探すヒロインの存在。これがエピローグを盛り上げている。

★★★

交情記

2007-06-11 19:24:26 | エッセイ(芸能人)
「交情記」殿山泰司・著 1976年

九人の女優との対談集。たぶん雑誌連載なんだろうけど、記載されていない。嬉々として下ネタの質問する殿山の中学生みたいな悪乗りが最高です。セクハラの欠片も無い。
その陽性なムードに心開いたのか、かなりキワドイ質問にも答えている。「初体験は中学?」と聞からて、平然と対応する太地喜和子に拍手!緑魔子に時代を感じた。かなりレア本らしいけど、勿体無いなー。

CIAスパイ研修

2007-06-01 09:21:21 | エッセイ
「CIAスパイ研修―ある公安調査官の体験記」野田敬生・著 2000年


タイトルに光れて読んでみたけど、結果は期待外れ。これを赤裸々な告白と受け取るか否か?少なくともスキャンダラスな暴露にはなっていない。・・・と言うか「暴露するほどの秘密は無い」と著者は言いたいのだろうけど。
でも、それなら本にする意味は無いのでは?と両刃の剣と感じた。

ただ発見は<公安庁>と<公安警察>とは別なのだ、と言う点。これって武闘派ヤクザと経済ヤクザの違いみたいな気が。前半の思わせぶりなCIA研修報告の意図は?実は関係者にしかわからない秘密がある?