石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

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殺戮工廠・731部隊

2010-10-25 14:39:33 | ルポ本(国内)
「殺戮工廠・731部隊―発見された細菌部隊兵士の告白調書」滝谷二郎・著 1989年


<石井部隊>関係のルポ本はつい手取ってしまう。明かされてない秘密、事実、真相が残っているような気がして。

本書は<告白調書>中心構成なってる。完全に全文掲載する。2/3ページそれに占められてる。それは確かに貴重な記録。だと思うけど、余りに短所で読み通すの苦痛な修行。流し読みし終え「ただの手抜きじゃん」とポロリ。
著者が要点をマトメるべきだった。読み手にメッセージ伝わらないのは欠陥。

肝心の著者による研究所跡の来訪とルポの部分も手抜き。たった一日ぐらいの取材しかしてない。取材部分の底浅さが輪を掛けて鼻白む。著者はジャーナリストを名乗る資格無いと思う。
石井部隊関係のルポ本では一、二争う愚本。

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北回帰線からの手紙

2010-10-24 14:59:36 | 書誌関係
「北回帰線からの手紙」ヘンリー・ミラー著 ガンサー・スタールマン編 1965年


ヘンリー・ミラーとアナイス・ニンとの交流は、アナイスの著書「ヘンリー&ジューン」でも描かれてる。二人の1931~1945年間の書簡を、文芸評論家と思しき氏が編著。

書簡の中身はチャップリン賛歌、ブニュエルとの交友、ロレンスへの敬愛、ニーチェへの心酔等が掛かれ興味深い。出世作「北回帰線」完成までの過程も覗き見ることもできる。
けど手紙そのままの再録は編集者不在のドキュメンタリー見せられてるような退屈さ!
つまりこの企画、アイディア倒れってこと。失礼ながら、読破するのが苦痛。半分も読めなかった。

編者は書簡ダシに、作家論を書くべきだったと思う。あくまでも研究家向けの一冊。

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底抜け合衆国

2010-10-03 19:42:53 | エッセイ
「底抜け合衆国 アメリカが最もバカだった4年間」町山智浩・著 2004年


表紙にマイケル・ムーアとブッシュ。そしてコノ副題。大統領選の茶番劇、そして911テロ・・・2000年から2004年間の保守化して行くアメリカのメディアを斬るエッセイ。

例によって知られざる向こうの有名人、テレビ番組、ドキュメンタリー作品がユニーク。ドキュメンタリーは観たいっ。
表現自由の国だから、真実暴くドキュメンタリーが作られるの当然。なのに、それが選挙/国政に全く反映されないなんて。著者のイラ立ちが行間から滲み出す。でも、怒り強調はしない、笑いでオトすのが本著の面白さ。

そして最後は思い全てをムーア「華氏911」公開日記に込める。

★★★
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カルト資本主義

2010-09-23 14:55:41 | ルポ本(国内)
「カルト資本主義 オカルトが支配する日本の企業社会」斎藤貴男・著 1997年


この時期ぐらいから書店では<自己啓発本>が目立つようになった。それ読む人のこと謎だったけど、本書が解き明かしてくれるルポ本。

ソニーと超能力研究、政府による気功の研究・・・オカルティズムへの信仰。永久機関開発・・・トンデモ科学への信仰。稲盛和夫と船井幸雄、彼氏を崇める関係者達との関係・・・自己啓発=宗教。数々の例上げて解き明かす。
すでに分かってたことだけど、形変えた<宗教ビジネス>だと分かる。著者は宗教とは言わず<カルト>って言葉に置き換えてるけど。でも結局は一緒。

バブル崩壊後の価値観変化、そしてオウム事件後の宗教感変化が浮かび上がる。・・・と言うより、実は中身は変わらず、外観変えただけなんだと思う。

出色は<ヤマギシ会>の章。完全自給自足生活するその活動、コミューンじゃなく<ビジネス>で、搾取であること看破する。自由と思わせ、実はその逆であることが関係者の証言から浮かぶ。
なるほどオウムが同じコミューン活動アピールして信者集めてた理由が判然となって、唖然とした。しかも大企業はこの<ビジネス>に注目し、研修参加していることも明かされる。この章だけでも読む価値有り。

★★★★
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電通の正体

2010-09-17 10:59:09 | ルポ本(国内)
「増補版 電通の正体」週間金曜日取材班・著 2006年


2004年出たのを増補した再発版。雑誌「週間金曜日」発表記事の単行本化。

興味惹かれる素材。帯文の<マスコミ最大のタブー>はインパクト大。
しかし中身は、かなり上げ底。ページ数も薄く、ページ埋めに対談を付け足す。<タブー>に迫ってくれてない。歯痒い仕上がり。<謀略>なんかも匂わせるだけだし。

ブラック会社・武富士との関係、子会社のテレビ製作会社使ったテレビ局との関係、万博やオリンピックだけじゃなく政治までビジネスにする企業体質等を暴く。
けど、それをスキャンダラスに思えないのは、ボクがメディア麻痺してるから?

★★
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伝説のジェイン・ボウルズ

2010-09-16 12:29:21 | ルポ本(海外)
「伝説のジェイン・ボウルズ」ミリセント・ディロン著


作家ポール・ボウルズの妻の評伝本。彼女もまた作家活動している。邦訳発売は1996年。

彼女の生い立ち、レズビアン、夫との奇妙な夫婦関係etc。驚くほどミクロな視点で人生を浮き彫りにしようとするルポ本。

手紙、未発表原稿等が紹介される。風変わりな語り口の手紙、最初は面白いけど、何通も紹介される度、語り口のワンパターンさに気付いてしまう。途中から退屈で饒舌になってしまう。

最後には「彼女は、こんな評伝書かれるだけの価値ある作家なのだろうか?」と根本的な疑問が湧いて来ること必定。著者は素材に惚れ込み過ぎ。退屈な手紙、原稿の度重なる挿入は、客観的な視点が欠けてることの証明。

結局は夫の成功あってこその彼女の存在。彼女だけでは評伝なんて出る価値も無いと思う。ただのエキセントリックな破綻者止まり、が正解だと思う。

労作だろうけど、その意欲を「ポール・ボウルズ評伝」へと昇華するべきだったのでは?

★★
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「薔薇族」編集長

2010-09-15 09:06:49 | エッセイ
「「薔薇族」編集長」伊藤文学・著 2001年


単行本「編集長「秘話」」を文庫化で改題。
ゲイ雑誌「薔薇族」発行人/編集長による回想記。

創刊された1971年は世界的にセックス解禁の機運高まってた時期。そんな機運とカウンターカルチャーが結び付いて「話の特集」売れて、「えろちか」「愛苑」なんかもこの時期に創刊されてた筈。渋澤編集の「血と薔薇」もこの辺りだっけ?
そんな流れの中でも、やっぱ「薔薇族」は出色。そもそも立ち位置が違うのかも。

生い立ちから始まり創刊、月刊化、発禁、休刊から復刊・・・とてもドラマチックだけど、どのエピソードも急ぎ足なのが残念。じっくり語り尽くしてほしかったけど、そうなると読み手の間口狭めてしまうのかも。
そんな中、当時のエイズ・パニックにページ数割いてるのが印象的。エイズ=同性愛セックス、の偏見に対する返答。

当時の記事再録が興味深い。読者投稿に悲哀感じさせる。ノンケのボクにもマイノリティの孤独感は説得力持って迫って来る。恋愛、セックス、結婚の悩み・・・男女に置き換えても、説得力あると思う。

★★★
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わたしを離さないで

2010-09-14 09:20:06 | 海外小説
「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著 2005年


柴田元幸の推薦帯文に惹かれ、手に取った次第。村上春樹も「50年に一冊の傑作」絶賛したらしい。だからなのか、ボクが持ってるの発売一年ぐらいで6刷。海外小説としてはかなりのベストセラーだと思う。
・・・で、賛辞の理由「知り合いの太鼓持ち」だと思う。「50年に一冊」なんて大層な代物じゃない。

舞台は山奥にある寄宿舎。先生の奇妙な行動/発言。生徒はいかなる理由で此処にいるのだろうか?ミステリアスなお膳立てはバッチリ整ってる。
勝手に脳内リンクしたのローベルト・ヴァルザー「ヤーコブ・フォン・グンテン」。あのぐらいシュールな語り口を期待したけど・・・。

まず淡い回想にミステリー潜ませる前半の語り口はイイ感じ。同級生との感情襞を丹念に描写する筆力はなかなか。

問題は中盤以降。<クローン人間>の謎が明かされる。社会に出てからのヒロインの無知さに絶句!破綻してると思う。卒業生はただの一人も、新聞もテレビも雑誌もルポ本も調べないのだろうか?繊細だったそれまでの語り口も大味になる。
前半の貯金、中盤で使い果たす。

マダムに会うクライマックスの安直展開にも白けた。ありえない。安っぽいサスペンス映画みたい。前半の繊細さ、何処に消えたの?別人書いたみたいな転調ぶり。と言うより、コレが著者の本来の力量。

実はアイディア倒れしてる。

★★★
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だから山谷はやめられねえ

2010-09-13 10:27:48 | ルポ本(国内)
「だから山谷はやめられねえ 「僕」が日雇い労働者だった180日」塚田努・著 2005年


<幻冬舎アウトロー大賞受賞>したルポ本。東京・山谷への体験ルポ。タイトルに惹かれたけど、果たして出来はどうか?

<山谷>舞台にしたルポ/エッセイはたまに出る。賞受賞したり、話題になり売れたりもしてる。コレはコレで一ジャンルとして確立してる?
で、若き著者は天然/無知のフリして、その前例知った上で、本書を執筆。作家して世に出るためにネタとして利用してるのが見え見え。だから、著者は本気で<山谷>にコミットしようとはしない。体験もたった半年。それで何を描き出せるんだろ?

キーワードは、大学生の著者の<自分探し>。文章もナイーブ剥き出し。そこは好き嫌いだけど、まるで伊丹十三映画のようなマニュアル調のクドクドした説明は白けた。土方作業の工程より、日雇い労働者の体臭こそ文章に香らせてほしかった。著者にそれだけの筆力は無いけど。

唯一、土方に無理矢理連れられ右往左往する行状記のみ面白かった。180日じゃなくって、1800日ぐらいコミットしてほしかった。

★★
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南極1号伝説

2010-09-12 11:19:59 | ルポ本(国内)
「南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史」高月靖・著 2008年


タイトルに惹かれ一読。

副題にある<戦後史>は期待外れ。他著から書き写してるだけ。その前半、悪い予感。「全編が書き写し、既出済みネタなのでは?」と。
タイトルの<南極1号>についてなんて、数ページのフォローだけで終わる。拍子抜けした。

その悪予感裏切るのは中盤の中心となる、ラブドール製作者へのインタビュー。現代の<エロ事師たち>の生声は説得力持って迫って来る。素材の拘りが熱く語られる。製作苦労、インターネット販売、客のロリータ志向等も語る。
メーカーによっても「あくまでも実践品だから手頃な価格で販売する」から「それ以上の愛玩価値を求める」と高級志向まで狙いがバラバラなのも興味深い。

そして愛玩志向のマニア、<ドーラー>への取材へと続く流れはグッド。その潔癖なまでの収集癖にビックリ。しかし「あくまでも<実用品>」と語るのが面白い。

前半の<戦後史>なんてオミットして、<現在>中心の構成にしてほしかった。

★★★
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