石川与太読書紀行

ドロップアウト、オーガニック・ブンガク

「ホームレス」襲撃事件

2008-11-29 19:56:44 | ルポ本(国内)
「大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件―“弱者いじめ”の連鎖を断つ」北村年子・著  1997年


若者によるホームレス殺人事件の闇に踏み込んだルポ本。

事件の背景として犯人の<持病>や<いじめ>の苦悩だけでなく、西成で生活する労働者の現状を告発して、被害者側の苦悩まで浮き彫りにしているのが、優れている点。西成の現実にコミットしている著者だからこそ書ける説得力。

前半はグイグイと読ませるのに、犯人と交流始める後半からは変調きたしてしまう。ただのナイーブな交流談になってる気が・・・。それはルポ本の範囲を越えてしまってる。
著者の意気込みは伝わるけど、文通した手紙の採録は余計だったと思う。

<自白強要>や<代用監獄>の恐ろしさは描かれるのに、<免罪>で逮捕された共犯者Tの存在が無視されているのは致命的な欠陥では?

★★★

中継されなかったバグダッド

2008-11-27 18:15:18 | ルポ本(国内)
中継されなかったバグダッド-唯一の日本人女性記者現地ルポ-イラク戦争の真実」山本美香・著  2003年


アメリカのイラク侵攻を告発する。副題にはルポとあるけど、リポートが正解ではないか、と。読みやすい文書だか一気に読めます。

ホテルを爆撃したアメリカ軍の横暴を告発した章はリアルに悲惨が伝われ。メディアのためだけの銅像解体の裏側も暴いている。
でもマスコミを統制するイラク軍の姿勢も理由だけど、生活してる市民の息遣い、生活臭が全くしない・・・結局は「ホテル滞在記」に終始っている。

★★★

悪の錬金術

2008-11-27 09:25:01 | エッセイ
「実録 悪の錬金術―世の中金や金や!」杉山治夫・著 1984年
「ドキュメント新 悪の錬金術―世の中・金や金や!」杉山治夫・著 1992年


闇金融のフィクサーが語る悪の理論。ここにも「血と骨」が一人。一代で財成した人間のギトギトした体臭が匂って来る。

前者は貧しい生い立ちから語る自叙伝。その生い立ちは同情できるのに、サラ金始めてからの非情さはブラック・ジョークみたい。
自殺、一家心中させた借人の回想はブラック・ユーモアに満ちている。サドの小説の主人公みたい。リアル「悪徳の栄え」って感じ。カモ見つけて金毟り取る手口も非情過ぎて笑ってしまう。
たぶん聞き書きだと思うけど、文書は簡潔、明快で一気に読めました。★★★

しかし後者、これまでの著作を再録した上げ底本!否、ベスト盤?これぞ山師としての本領発揮?
愛人、ヤクザとのツーショット写真がエグイこと。★★