セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

届けたいラブレター

2012年01月20日 23時52分11秒 | クエスト184以降
今週もギリギリ更新捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回はクエストそのものはとっても簡単で、クエストよりそれに伴うことに重点が置かれた内容となりました。意外とちょいちょいあるラブレターネタ。手紙で想いを伝えるって、もはやクラシカルな領域みたいですが、今のお若い方々にとってはアリなのでしょうかナシなのでしょうか。ところで、本文に出てくる地図情報は、宝の地図のひとつを参考にしましたが、セリフだけではどこだかわからないですね(苦笑)

 今日は霙が降る寒い日だったが、ミミは身心共に寒さを感じないで歩いていた。むしろ暖かくて幸せすぎるほどだった。イザヤールが、自分の着ている長く暖かなマントを広げ、それが彼女を覆っていたからだ。
 マントでミミを包むため、もちろん彼の片腕は、彼女の肩に回されて、優しくしっかりと抱き寄せている。一緒に走りやすいように、ミミの方はイザヤールの腰に腕を回してぴったりと寄り添っていた。
 彼の均整の取れた筋肉質の体は、嫌味のない程度に見事な逆三角形で、ミミの華奢な腕がちょうどよく腰周りに収まる。
 濡れないうちに急いで帰ろう、そう言って走っているものの、互いにその時間を名残惜しんでもいる。そんな気持ちを態度で示すかのように、イザヤールはかぶっていたフードを更に目深に引き下ろし、霙を避けた。
 だが、そのとき二人は、冒険者特有の勘で、何者かが後をつけてくる気配に気が付いた。互いに目を見交わして頷き、足を速めた。すると、明らかに追跡者の歩調も速くなった。
 ミミとイザヤールは更に走るスピードを上げ、急に路地に入り、曲がるとすぐ壁に貼りついて追跡者を待ち構えた。気配がわかるということは、おそらく素人の尾行だ。こうして待っていれば、逆に捕まえることができる。

 それから間もなく。案の定、一人の若者が息を切らしながら走ってきて、ミミたちがすぐ側に居るとも知らず、路地奥に走る姿がないことに驚いて、きょろきょろした。
「何か我々に用か」
 イザヤールに思わぬ近さで声をかけられ、若者は文字通り飛び上がった。
「わわ!すっすみません!」
 彼は後退りして危うくしりもちをつきそうになったが、路地が狭かったのでそれは免れた。
「どうして私たちの後をつけたんですか?」
 ミミが静かに尋ねると、彼は少し落ち着いて、しょんぼりして訳を話し始めた。
「実は・・・あなた方にお願いがあったんですが、お二人ですごく仲良く幸せそうに歩いていたんで、すぐに声をかけづらくて」
 それを聞いてミミは赤くなり、イザヤールは少し気まずそうな顔になった。
「・・・で、声をかけるタイミングをはかってこっそり後ろを歩いているうちに、お二人が急に走り出したもんだから、慌てて後を追ったんです」
 説明を聞いてミミはますます赤くなってうつむき、イザヤールは更に気まずそうな顔になって、若者に頭を下げた。
「それはたいへん失礼した。申し訳ない」
「ほんとに、ごめんなさい」
 ミミも、ぺこりと頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ、こっそりつけてすみません」
 若者もおじぎをして、頭を掻いた。
「それで、私たちに用ってなんですか?」
 ミミが首を傾げると、若者はもじもじしながら何かを取り出した。どうやら手紙のようだ。封の部分に、ハートマークが貼ってある。一見古典的なラブレターに見える。
「これを、ある女性に届けてほしいんです」
「可愛い。ラブレターみたいですね」
 ミミが微笑んで言うと、若者はますますもじもじして答えた。
「実は・・・そうなんです」
「わかりました。どこへお届けすればいいんですか?」
 ミミが聞くと、若者のもじもじは一気にしょんぼりとなった。
「それが・・・よくわからないんです。実は・・・」
 彼は理由を説明した。一月ほど前、ここセントシュタインで、一人の女性と知り合った。世界一の宿屋に泊まりたくて、訪れた旅行者だと彼女は言った。何度も会って話をしたり、一緒に観光したりしているうちに、だんだんと彼女に心惹かれていった。彼女がいよいよ帰る頃になって、思いきってどこに住んでいるのか尋ねると、彼女は一枚の地図を渡した。
「この地図の丸印が書いてあるところに住んでいるから、わかったらお手紙ちょうだいって言って、彼女は行ってしまいました。で、僕は地図とにらめっこしたんですが、どうしてもわからなかったんです」
 そう言って彼は今度は地図を取り出し、続けた。
「それで、数々の宝の地図の洞窟を発見した冒険者の方なら、この地図の場所もわかるかと思いまして、お願いしようと思ったんです。引き受けて頂けますか?」
「わかりました。地図はお借りできますか?」
「はい、もちろん!どうぞ!」
 こうしてミミはクエスト「届けたいラブレター」を引き受けた!
「ところで」ここで、イザヤールが若者に尋ねた。「我々はまだ大丈夫だが、君はさっきから霙に打たれて、大丈夫か?」
「あ、平気で・・・へっくしゅん!!」

 ミミたちは一度リッカの宿屋に戻り、濡れた装備を着替えたり、預かった地図をじっくり見たりする時間を取ることにした。
 装備を取り替え、改めて二人でじっくり地図を見ていると、ただいま箱舟から帰ったよ~のサンディが口を挟んだ。
「そんなめんどくさいコトしなくてもさ~、その客、一ヶ月前くらいにココに泊まったんデショ?リッカに聞けば一発じゃん!」
「それはダメ」ミミはきっぱり言って首を振った。「リッカは、本当に宿屋のお客を大切にしているもの。お客の住所だって、宿屋の大切な秘密情報よ。そんなことを聞いて、困らせちゃいけないわ」
「んも~マジメなんだから~」
 サンディは頬をふくらませたが、イザヤールは微笑んでミミの頭をなでた。
「ミミ、偉いぞ。ヒントの地図はあるし、三人で一緒に探せばすぐ見つかるさ」
「三人?・・・アタシも探すんかーい!」
 こうして二人は熱心に、一人は渋々、地図を見つめた。
「宝の地図の洞窟を探すのと同じ要領でいけそうですね」
「そうだな。地形の消去法でいけそうだ」
「この図、浅瀬みたいですね」
「ということは、比較的楽に見つかりそうだな」
「あっ、この入り江と山の位置関係、すごく見覚えあります」
「木も多いな。そして、この位置に住処の印があるということは、ここが町ということになるな」
「浅瀬があって、枯れ木も坂もなくて・・・」
「この四角い特徴的な入り江と山と森があるのは・・・」
 ミミとイザヤールは、声を合わせて言った。
「ナザム村!」
 その声で、居眠りしていたサンディは、びっくりして飛び起きたのだった。

 ミミたちはさっそく、依頼人の若者のところへ、地図の場所の報告に行った。
「・・・という訳で、もし人里離れた場所なら、私たちが手紙を届けに行こうと思っていたけれど、ちゃんとした村だし、最近は旅人にも優しくなった村だから、あなたが直接行っても大丈夫だと思います」
 ミミの言葉に、若者は喜んだ。
「そうですか!ナザム村・・・そうか、今まであまり聞いたことのない村だから、気が付きませんでした!ありがとうございます!」
 しかし彼は、そこでまたもじもじを始めた。
「でも・・・自分でラブレター渡しに行くって、なんか照れくさいなあ・・・」
「もしいきなりラブレターは恥ずかしかったら、まずは普通のお手紙にするか、遊びに行ってみたら如何ですか?」
「そうですね!とにかく、前進してみます!」
 若者は喜んで、お礼にと「いやしのうでわ」をくれた!
「恋愛運のお守り代わりに持っていましたけど、無しでがんばります!」
 そう言って彼は、顔を輝かせて走って行った。先ほどの霙のためか、くしゃみはしていたが。
 その後ろ姿を眺め、ミミは内心呟いた。
(ラブレター、かあ・・・)

 その夜。イザヤールが入浴している間、ミミは書き物机で物思いにふけっていた。
 昔。イザヤールにラブレターを書こうか、迷ったことがあった。遥か遠い昔にも、つい最近のようにも思える、天使だった頃の思い出のひとつ。結局天使界に居る間、渡すことはなかった。
 そして、人間になってからも。愛する人は、最初はこの世で一番遠くの存在となってしまっていて、手紙を渡すことなど、叶う筈もなく。そして、彼も人間となり、物理的にも一番近い存在となってからは、その距離の近さ故に、手紙の必要がなかった。
 でも、手紙で想いを伝えるのも、いいよね。一度、やってみたかったな。・・・だから。
 ミミはペンをインクに浸し、さらさらと紙の上を滑らせ始めた。
 イザヤールが寝室に来ると、珍しいことに、ミミはもう自分のベッドに入っていた。
 ミミ、と呼ぼうとして、彼は止めた。眠っているのかもしれない。・・・起こしては可哀想だ。
 せめて寝顔におやすみを言おうとして、彼は自分のベッドの枕の上に、何やら封筒のようなものがあるのを見つけた。
 開いてみると、中に手紙が入っていた。
 ミミは文言に散々迷って、結局短い文しか書けなかった。だが、イザヤールは、その短い手紙を読んで、この上ない優しい微笑を浮かべた。
(・・・ミミ、こちらこそ、いつもありがとう。私も、とても幸せだ。おそらく、おまえが思っている以上に。・・・おまえが私の幸せを守ってくれるなら、私はおまえの幸せを守ってみせる、必ず)
 そして彼は、おそらく寝たふりをしているであろう為にほんのり赤い彼女の寝顔に、そっと唇で触れてから、書き物机に向かった。短いが想いを込めた返事を書くために。〈了〉

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4 コメント

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ラブレターかぁ… (オディール)
2012-01-21 10:01:48

ラブレターか(*^^*)青春のシンボルのような物ですよねぇ(#^.^#)
私もリッカに聞いてたと思います…サンディと同じように(T_T)
ミミちゃんは優しいなぁ…

…でサンディ結局居眠りしちゃったんですね(^_^;)


ラブレター…
うちの女主は、天使界の裏側に小さな湖がある設定で(勝手に湖つくっちゃったよ…)ほぼ毎晩そこで女主とイザヤール様は会ってて(しかも皆がいないとき)まー、10のうち7は特訓になるのですがそのうちの3は、一日の出来事を湖岸に座って喋る。という… ですのでラブレターというより言葉で伝えようか迷ったうちの女主です(;^_^A
返信する
ミミさんがどんな文を書いたのか凄く気になります!! (ちいはゲーマー)
2012-01-21 20:53:01
でもイザヤール師匠の反応を見るかぎり、その短い手紙にはミミさんからイザヤール師匠への愛や想いが溢れているんでしょうね
( ´∀`) ウラヤマシー


ちなみにうちのイザヤール師匠、特に女主は口では言えないことには花を使って伝えることがよくありますね
実際に天使の時にイザヤール師匠は自分だけが本当の意味を知っていればいいと『特別な存在』という花言葉がついているオドントグロッサムが入ったペンダントを女主に贈り、女主は誰にも悟られず自分にだけしか意味を知らないようにと『あなたを愛します』という花言葉がついているエキザカムの花を挟んだ栞を贈りましたし

・・・まぁその事に関してはお互い全く気づいていないし、博識でお互いに想っていることを知っているラフェットさんには花に込められた想いも意味も即刻バレましたが(笑)
返信する
青春アイテム~♪ (津久井大海)
2012-01-21 21:24:49
オディール様

こんばんは☆ラブレターは代表的青春アイテムの一つですよね~☆今の若者のラブレターはやはりメールですかのう・・・。

おお~、湖の傍で語り合うとはなんともロマンチックですね♪十分の七は特訓になるにしてもw
では、ひょっとして地上に来てからはシュタイン湖がお気に入りでいらしたりとか?

そちらの女主さんは言葉で伝えようか悩まれたのですね~。何気ない話をしている間、密かにドキドキという状況もステキです☆
返信する
ご想像にお任せ☆ (津久井大海)
2012-01-21 21:49:41
ちいはゲーマー様

こんばんは☆女主の手紙はですね、読んだ後のイザヤール様の独白内容ほぼそのままだと思って頂ければw敢えて手紙そのものを書かないでみました。

花言葉に密かに想いを託す、そして互いにその込められた想いを知らず・・・こちらもロマンチックでステキですね~♪
でもラフェット様はちゃ~んと知っていて、あたたかく?見守っている、という訳ですねw

ちい様は花言葉にとても詳しくていらして、すごいです!どんな花にもあるのかしら、花言葉。
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