セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

わすれそうパニック!

2015年09月18日 23時30分36秒 | クエスト184以降
今週はなんとか金曜更新できましたの追加クエストもどき。タイトル的に昨日までの連作忘れ草シリーズと少し関係あると見せかけて全く無関係です(笑)一転してドタバタトリオ漫才的な内容だったので、書いててたいへん楽しゅうございました。文中の「わすれそう」「おもいだしそう」は捏造ですが、如何にもありそう?

 平和な朝のひととき・・・の筈だった。けたたましい声と共に、寝室の扉がガンガンとノックされるまでは。
「ミミ!イザヤールさん!起きて、起きてよ!たいへん、たいへんなのよー!」
 リッカの宿屋に、緊急事態と言えどこんなけたたましい声とノックで起こす者は居ない。となれば、声の主は、ほぼサンディに決まっている。熟練冒険者として不意討ちにはすぐに反応できるミミとイザヤールだったので、とりあえずシャツとズボンを手早く身に着けたイザヤールが寝室の扉を開けた。
「どうした?」まあ何かあるから来たのだろうとはわかっていたので、イザヤールはとりあえず尋ねてみた。「こんな早朝から何の騒ぎだ?」
「いいじゃん、アタシの声はアンタたちしか聞こえないんだし」
「ノックの音は誰でも聞こえるぞ」
「だって、いきなり入ってイチャイチャしてるトコに出くわしたらイヤだしー」
「・・・」
 反論できないとイザヤールが絶句していると、彼の後ろからミミがひょいと顔を覗かせて言った。
「それでサンディ、どうしたの?」
「あ、そうそう!たいへん、たいへんなんだってば!」
「だから何がたいへんなの?」
「あのね、実は・・・」
 サンディの話によると、昨日珍しく箱舟の自室の大掃除をしたのだが、そのときにうっかり、「ちょっとアレな」草の粉末を虫干ししていて撒き散らしてしまったのだという。
「管理がなっていないな」
 イザヤールが眉間を寄せて口を挟んだ。
「しょーがないデショ!蜂がいきなり入ってきてヤバっ!って思って慌てて窓を大きく開けたとたんに粉が飛んでっちゃったんだから!」
「それで、どんな草が飛ばされたの?」
 ミミはおそるおそる尋ねた。サンディの「ちょっとアレ」は「かなり危険」とイコールだと、経験上知っていたからである。
「『わすれそう』が飛ばされちゃってさ~。地上にばらまかれちゃった」
「わすれ・・・そう?『忘れ草(ぐさ)』じゃなくて?」
「わすれそう!匂いをかぐと、大事なことをなんとなく忘れそうになっちゃって、とっても不安になるっつー草なのヨ」
「そんな草が、何の役に立つんだ?」イザヤールが呆れて尋ねた。
「忘れっぽくても平気な図々しいヤツに、反省を促すのと大切なコトを忘れさせないよーにする為に使うの!忘れそうになっちゃう気がするだけで、絶対に忘れないから、実用的な効果もあるワケ」
「じゃあ何か困るの?忘れそうな気がするだけで、実際は絶対に忘れないのなら、問題ないんじゃないの?」
 ミミが首を傾げると、サンディが苛立たし気に首を振った。
「大した実害はないけどとにかくウザいの!ほら、窓の外見てみ」
 言われた通り二人が窓の外を見てみると、バルコニーの手すりに止まっていた小鳥が、不安そうにうろうろしながら呟いていた。
「あー!カワイイ雛たちに餌取ってくんの忘れたらどーしよー!」
 近くの屋根からその小鳥を狙っていたらしい猫も、頭を抱えながら言っていた。
「にゃあー!小鳥がおいしいってこと忘れちゃったら、どーしたらいーにゃあ!」
「・・・。えっと・・・確かにみんなこうなっちゃったら、たいへんだね・・・」
 困惑しミミは呟いた。
「デショ、でしょー?」
「で、我々に何ができる?」とイザヤール。
「効果を相殺する草、『おもいだしそう』を取ってきてほしいのヨ。それを粉にして箱舟からばらまけば、わすれそうの効き目は無くなるから」
「うん・・・わかった、じゃあ、おもいだしそうの場所を教えてね」
 ミミはクエスト「わすれそうパニック!」を引き受けた!

 サンディによると、「おもいだしそう」は、さとりそうの生息地にごくたまに生えているという。
「さとりそうにちょっと似ているけど、色は黄色っぽいから、すぐわかる筈よ、頼むね~。あ、それから・・・」
「それから?」
「わすれそうの粉は、開いてる窓や扉からすーぐ入ってきちゃうから、たぶん今頃セントシュタインの城下町みんな、たいへんなコトになっちゃってると思う・・・。アンタたちも、たぶん一階に降りたとたんに効いちゃうと思うケド、うっとうしいだけで実害は無いから、頑張ってねー」
「ええっ、そんな・・・」
「質の悪い感染症のようだな。・・・それはそうとサンディ、もちろん君も来い」
「えーなんでアタシまで?!」
「元はと言えば君が起こした騒ぎだからに決まっている」
「そんなー!イヤよアタシあんなふうになるの!」
 そう言ってサンディは、ピンクの光に身を変えてミミの懐に潜ってしまった。
 仕方ないのでとにかく準備をして、おそるおそるミミとイザヤールがロビーに降りてみると、案の定たいへんなことになっていた。宿屋メンバーは皆、客に聞こえないように小声で呟いていたが、わすれそうの粉を吸い込んでしまったのは明らかだった。
「あっ、ミミ、おはよう・・・。ねえねえ、前にいらしてくださったことがあるお客様を忘れていたらどうしよう!」とリッカ。
「まずいわ・・・。この私としたことが、冒険者たちの能力を忘れていたら・・・」とルイーダ。
「今週の目玉商品、ちゃんと発注していましたかしら・・・。忘れていたら一生の不覚ですわ!」とロクサーヌ。
「預かり記入、忘れてたりしてないかしら!まったくもう、気になるわ!」と、何度も出納帳を確認するレナ。
「星からの伝言、何か言い忘れてなかっただろうか・・・。朝では確認できないな・・・」とラヴィエル。
「なんということでしょう!錬金の基本の基本、上やくそうのレシピを忘れてしまったら、このカマエル、お嬢さまに会わせる顔がございませんー!」とカマエル。
 他にも、ドラゴン斬りを忘れそうで不安な戦士や、ホイミを忘れそうで怯える僧侶、オヤジギャグを忘れそうだと騒いでそれは忘れていい!とツッコミを入れられている旅芸人などが、ロビーで騒いでいた。
 ミミとイザヤールはこの有り様を呆然と見つめていたが、間もなくスパイスのような香りがして鼻がちょっとムズっとしたと思ったら、自分たちの意思に関係なく、急に物忘れが心配になり始めた。
「さとりそうの生えてる場所忘れてしまったら、おもいだしそうも見つからないの・・・。どうしよう・・・」
「ううむ、ギガスラッシュの発動の仕方を忘れてしまいそうだ・・・。不安だ・・・」
「ミミ!イザヤールさん!しっかりしてよー!だいじょーぶ、どーにかなるってばー!」
 サンディが必死に声をかけたが、二人はますます不安そうな声でお互い囁き合った。
「あ、あの、イザヤール様、私・・・昨夜その・・・ちゃんとおやすみなさいのアレ・・・しましたっけ?」
「ああ、大丈夫だ。それより私こそ、昨夜着けてはいけないところに着けてしまったアレに、ちゃんとホイミしたか?忘れてないか?」
「・・・///。それは忘れてます、イザヤール様。でも、今日の装備なら見えないから、このままにしてても・・・いい?」
「あ、ああ、すまん」
「ちょっとー二人ともー!アレとアレって!絶対内容言わなくていーからー!朝っぱらから何言ってんのまったくー!」

 さとりそうがある場所はミミたちの知る限り計三ヶ所である。天の箱舟を使うと早いので、ミミはアギロホイッスルを吹いた。
「ホイッスルの吹き方忘れちゃったらどうしよう・・・」
「いーかげんにしろっつーの!」
 なんとか箱舟に乗り込んでから、ミミはふとサンディに尋ねた。
「そういえばサンディはわすれそうの匂いかがなかったの?それにアギロさんは?」
「アタシは風上に居たし、大掃除だからマスクしてたし、それにダッシュで逃げたし~」
「逃げたのか・・・。事件が解決したらサンディに説教したいが、忘れてしまいそうで不安だ・・・」
「あーイザヤールさん、それは忘れていーから!」
「で、アギロさんは?」
「あーテンチョーね。テンチョーってば、『箱舟の運転を忘れていたらまずいな・・・』とか言って、とりあえず寝ちゃったー」
「ああっ、そういえば!私も運転の仕方忘れちゃってたらどうしよう・・・」
「やっぱウザいー!アタシが居るから平気っしょー!」
 と、騒いでいるうちに、セントシュタインのから一番近いさとりそうの生息地、大魔法使いの井戸に到着した。さっそく着陸したが、ミミがまた不安そうに呟いた。
「さとりそうがどんな形か忘れてたら・・・」
 呟いたとたんにサンディに頭をぐりぐり「うめぼし」され、ちょっぴり涙をじわっと浮かべたミミだったが(しかしサンディはイザヤールに視線だけで破壊力抜群の睨みを受けたのですぐやめた)、さとりそうはちゃんと見分けられ、「おもいだしそう」を探した。だが、残念ながらさとりそうより黄色っぽいというその草は見つからなかった。
「残念ー!次いってみよー!」
「サンディの言い方って、あんまり残念そうに聞こえないよね・・・」
 次はその近くのドミールの温泉に向かった。湯の中に浮いているのか生えているのか、実は未だにミミたちもよくわからない。生えているのだとしたら、アイスバリーに生えているのと同様、ものすごくど根性な草ではある。
「さー探そー!」
「サンディ、なんでお風呂セット持っているの・・・?」
 とにかく、おもいだしそうを探そうと温泉に入るため、軽装になってから、ミミとイザヤールは温かい湯の中で懸命に探した。だが、見つかったのは残念ながらさとりそうだけだった。
「あ~あ残念なの、後はアイスバリー海岸だけなのね・・・」
 ミミはしょんぼりしてうなだれた。
「そこにもなかったらどうしたものか・・・って、おや?気のせいか?湯に入ってから、忘れそうなことが気にならなくなったぞ?」
 イザヤールに言われて、ミミも症状が治ったことに気付いた。
「あれ?どういうこと?ということは、やっぱりこの温泉の中に、おもいだしそうが?」
 慌ててもう一度湯の中の捜索を始めた二人に、サンディが言った。
「ん~たぶん違うと思うケド?わすれそう粉末になってたから、たぶんお湯で落ちたんじゃないかなー。吸い込んだのはそろそろ効き目が切れる頃なんだろーし」
「え・・・。と、いうことは、お風呂に入ればみんな治ったってこと・・・?」
「放っておいてもやがて治ったってことか・・・?」
 愕然とするミミとイザヤール。
「テヘっ☆ゴメン、慌てててソレすっかり忘れてたー☆」
 テヘペロをするサンディに、二人は怒る気力も無くして、脱力して湯の中に沈んだが、それでももしおもいだしそうを見つければみんなが入浴するより早く治るだろうと気を取り直して、アイスバリー海岸に向かった。

 温泉から一転、極寒の地アイスバリー海岸に行ったので、二人は湯冷めに気を付けてしっかり着込んでいった。波打ち際のさとりそうの生えている場所を見ると、黄色っぽい草を見つけた!
「あれがおもいだしそうかな?やったあ☆」
 だが、その草をなんとふゆしょうぐんの馬がもぐもぐ食べようとしていた!
「ああっ、それ食べちゃダメ!」
「氷の馬が草を食うのか?」
「そんなコト気にしてる場合かー!」
 サンディに怒鳴られつつも、イザヤールは「しっぷう突き」ですかさずふゆしょうぐんを阻止したので、草は食べられるのを免れた。ミミたちは「おもいだしそう」を手に入れた!
 さっそく箱舟の中で粉末に加工し、セントシュタインの上空からばらまいて、事件は無事?解決した。
「ねえ・・・。怒ってないワケ・・・?」
 叱りもしないミミとイザヤールに、サンディはおそるおそる尋ねた。
「わざとじゃないし。それに、私は、イザヤール様が大好きってことを忘れなかったから、いいもの・・・」
「私も、ミミを愛していることを忘れなかったから別にもういい」
 しれっと答える二人に、サンディは絶叫した。
「ノロケ攻撃かーい!叱られた方がマシなんですケドー!」〈了〉
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