セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

憧れの長靴釣り

2016年10月01日 17時30分03秒 | クエスト184以降
またたいそう遅くなりましたすみませんぐふっ!の追加クエストもどき。ビルダーズ風?な釣りネタでございます。

 アユルダーマ島とベレンの岸辺の間の海は、世界有数の漁場らしい。少なくとも、その辺りでよく漁をしているツォの浜の漁師たちはそう言っているので、ミミはそれを素直に信じていた。
 今日ミミは、また頼まれてツォの浜の村長にウォルロの水を届けに来たのだが、用事自体は水を届けるだけなのですぐに終わった。オリガ元気か様子をそっと見て、あっさり帰ろうとしたミミだったが、浜辺付近で、見馴れない人が釣糸を垂れているのを見かけて、立ち止まった。村人らしからぬ人物が釣りをしているというだけなら特に気にも留めなかっただろうが、その釣りの仕方がやや奇妙だったのだ。見事な魚がかかっても釣り針から外してすぐに放してしまうが、草の塊とかぼろぼろになった布切れなど、一見ゴミにしか見えない物を大切に籠に収めていたのである。
 不思議に思ったミミは、近付いて近くで様子を見てみた。釣り人は若い女性で、如何にもアウトドアが好きそうな感じだった。だが近くで眺めてみても、彼女は相変わらず魚は釣れても放していた。
 あまりに気になったので、ミミはとうとうその女性に尋ねた。
「あの・・・何を釣っているんですか?」
 すると女性は、目を丸くしてミミを見つめてから、満面の笑みを浮かべて逆に尋ねてきた。
「あなた、あたしの釣りに興味あるの?何釣ってるか知りたい?」
「ええ、まあ・・・」
 あまりにぐいぐい嬉しそうに迫ってくるので、ミミは少々戸惑いながら答えると、女性は胸を張って答えた。
「あたしはね、釣竿にかかった魚以外の物をコレクションしているの!いわゆる漂着物釣りってやつね!釣りをしているとね、魚以外にもけっこうとんでもない物が連れるのよ!見て、これ!」
 女性が籠を開けて見せてくれると、中には「ゆめみの花」や「よごれたほうたい」、「ちょうのはね」に、なんと「ばくだんいし」まで入っていた。
「ええ?どれも陸の物ばかりじゃないですか?本当にこれが釣れたんですか?」
 さすがにミミも疑問な顔をすると、女性は怒るどころか楽しそうに笑った。
「あははは、みんなそう言うけど、海って案外いろんな物が流れんのよ」
「でも・・・さすがにばくだんいしは、無理があるんじゃ・・・。沈んでるんだし」
 すると女性は、大真面目な顔になって言った。
「あー、これを釣った時は、本当に命懸けだったねー。実はね、最初は海に落っこちていたばくだんいわの口に、釣り針がひっかかったのよ。あたしは溺れてるばくだんいわを助けてあげるつもりだったのに、ヤツときたら、条件反射なのかメガンテを唱えてきてね〜。釣竿はあたしに取って戦士の剣のようなもんだから、絶対に放さなかったんだけど、慌てて思いきり引き上げたら空中で大爆発して。糸が長くてホント助かったわよ。で、ひしゃげた釣り針にひっかかってたのがこのばくだんいし、つまりばくだんいわのカケラってわけ」
「まあ、そんなことが・・・。無事でよかったですね」
 荒唐無稽すぎるだけにかえって真実味を感じたミミが素直に信じると、女性は感激の表情になって叫んだ。
「わかってくれるのね!やっぱりあなた、この釣り道の素質があるわよ!ねえ、あなたもちょっとやってみない?ハマるわよ、面白いわよ、奥が深いわよ〜」
「え・・・そ、そうですか?」
 魚以外のものをわざわざ狙うというのもどうかな、と思ったミミだったが、錬金の材料が手に入るのもいいかも、と思い直した。
「そうと決まったら釣竿作りよ!さあ、まずは良さげな棒切れと紐を探して!」
「え、まずはそこから?!」
 しかも糸とかじゃないんだ・・・と戸惑ったミミだったが、浜辺に打ち寄せられていた、いい感じの棒切れを見つけ、それから紐の方は少し悩んでから、浜辺でつるを伸ばしていた謎の植物の繊維を手早く編んで紐にした。
「なかなかやるわね!やっぱりあたしが見込んだ釣りガールだけのことはあるわ!」
 勝手に釣りガールにされてしまってミミはまたちょっと戸惑ったが、相手は構わず張り切って言った。
「あとはエサよ!この釣竿は、サボテンフルーツかキノコをエサに使うのが伝統なの!」
 サボテンフルーツはさすがに持っていなかったが、ミミは「げんこつダケ」はたまたま持っていた。ピンを曲げて釣り針にし、こうして無事に釣竿は完成して、ミミはさっそく仕掛けをぽちゃんと海に放り込んだ。
 しばらくして手応えがあったので、引き上げてみると、見事な鯛がかかっていた!ハーブと塩で焼いてイザヤール様との晩ごはんにしようかなとミミが考えていると、なんと女性はさっさと鯛を仕掛けから外して海に放してしまった!
「え・・・ええええー!」
 さすがにミミが驚くと、女性は厳しい顔で首をぶんぶんと振って言った。
「ダメよ!魚を釣るのは、この釣りでは外道なの!」
 ややこしいなあと思いながらも、ミミは素直にまた釣糸を垂れた。するとしばらくして、また手応えがあったので、急いで引き上げてみた。すると、何故か古ぼけた本がひっかかっていた!すぐに開くと駄目になりそうなので内容ははっきり確認できないが、どうやら古い祈祷書らしい。
「素晴らしいわ!やっぱりあなたには才能がありまくりよ!」
「そ、そうなんですか・・・?」
 よくわからないが確かに楽しいかもとミミも思い始め、しばらく釣りを続けたが、やはり魚ばかりがかかってリリースされる、ということが続いた。女性の方もそうだったので、彼女は溜息をついて言った。
「あ〜あ、やっぱり魚が多いところじゃダメね〜。・・・実はねあたし、長靴を一度は釣ってみたいという野望があるの!」
「な・・・なんで長靴なんですか?」
「引き上げたら釣糸の先に古ぼけた長靴がぶら下がっているっていうのは釣り人の醍醐味でしょ!ロマンでしょ!」
「いえ、普通はがっかりしちゃうと思うんですけれど・・・」
 ミミの控えめなツッコミに耳も貸さず、女性は釣竿をぶんぶん振り回しながら言った。
「あ〜ん、長靴釣ってみたい、釣ってみたいわー!」
「それなら・・・」ミミはふと思いついて言った。「カラコタ橋の下流の川で、釣りをしてみたらどうでしょう?きっといろいろな物が流れてくると思います」いろいろにも限度があるくらいとんでもない物が流れてきそうだが、その方がたぶんこの人は喜ぶだろうとミミは考えた。
「ホント?!お願い、ぜひ案内して!」
「は、はい・・・」
 またもやぐいぐいと来られて戸惑いながらも、ミミは女性をカラコタ橋の下流に案内することにした。ミミはクエスト「憧れの長靴釣り」を引き受けた!

 ツォの浜の漁師に船に乗せてもらい、ミミと依頼人は程なくベレンの岸辺の船着き場に到着し、そこから川沿いにカラコタ橋へ向かった。途中現れる魔物は、ミミが難なく蹴散らした。実はミミは、夕方キャプテン・メダルのテントでイザヤールと待ち合わせをしていたので、いろいろな物が流れてきそうという点でも、待ち合わせという点でも非常に都合が良かった。
 二人並んで釣糸を垂れていると、間もなくミミの方に手応えがあった。引き上げてみると、酒瓶がぶら下がっていた。おそらくカラコタ橋の酒場でぐでんぐでんになった酔っぱらいが、放り込んだか落としたものだろう。
「いいじゃない!ガラス瓶もロマンよ〜、ロマンだわ〜!」
「そうかなあ・・・」
 瓶の出どころの見当がついているミミにはいまいちロマンとは思えなかったが、その後も穴の空いたフライパンやロープの束、ぼったくり価格の「やくそう」がふやけたものなど、ミミにはビミョーだが女性は喜びそうな物が続いた。そんなミミの気持ちを察したのか、女性は笑って言った。
「そんな顔してるけどね、これでも、役にも立つのよ。このフライパン、錬金に使えばちゃんと金属代わりにもなるしね。でもね、そんな実用的なことよりやっぱり、使っていた人々の息吹や思いが伝わることが、ロマンなの!」
 なるほど、とミミは感心して、ちょっと見直す気になった。確かに、釣り上げたものにどんな物語があったのかを推測するのは、楽しい。そのとき、女性の釣竿にまた何かかかって、引き上げると、ステテコパンツが釣り針の先にぶら下がっていた・・・。おそらくロープに干しっぱなしになっていたものだろう。
「・・・これも、ロマンですか?」
「うーん、これはちょっと・・・違うわね・・・っていうか、ロマンと思うのがイヤ」
 なかなか個人的な基準であるが気持ちはわかるので、二人はステテコパンツは棒切れの先にひっかけて岩場に放置して、釣りを続けた。しばらくすると、今度はぷかぷかと人が仰向けに流れてきた!これもロマンですかと言っている場合ではない。
「たいへん!助けなきゃ!」
 ミミは叫んで川に飛び込み、浮いている人をつかんで岸まで引きずり上げ、呼吸の確認をした。呼吸は有り、どうやら川に仰向けに落下して気絶しているだけらしい。よく見ると、知り合いの盗賊デュリオの手下の一人だった。しっかりしてくださいと揺り起こすと、彼は目を開けてきょろきょろしてからミミに焦点を合わせて呟いた。
「ああ、ミミじゃねえか!どうしてここに・・・って、オレはどこに居るんだ?ここはどこなんだ?」
 カラコタ橋の下流だとミミが説明してやると、彼は慌てて跳ね起きた。
「そっか!オレは魔物に川に落とされて、気絶していたんだ!」
「魔物?!」
「そうなんだ、橋の上にいきなりばかでかいキングスライムが現れて・・・!」
 それは更にたいへんな事態だとミミが慌ててカラコタ橋の方へ駆け出そうとすると、その矢先に上流から何かが流れてきた。見るとそれは、流れているというより、泳いで必死に逃亡している様相のキングスライムだった!その後を、誰かが猛スピードで泳いで追って来ている。その人物を見て、ミミは驚きと、しかしどこか予感していたやっぱりという思いで、叫んだ。
「イザヤール様?!」
「ミミか?!何故こんなところに?・・・まあ説明は後だ、とにかくそのキングスライムから冠を取ってくれ!」
 ミミはそれを聞くやいなや釣竿を振り、キングスライムの冠にひっかけて、冠をキングスライムから取った!そのとたんにキングスライムはばらばらのスライムに戻って、川岸に打ち上げられた。そしてスライムに戻った彼らは慌てて逃げていった。
 それから間もなくイザヤールは全身から水を滴らせて川岸に上がってきて、ミミは彼に手を伸ばして、手をしっかり握り乾いた土の上に引っ張り上げ、タオル代わりにとりあえずハンカチと巻いてる布を差し出した。彼は微笑んで礼を述べ、説明した。
「ありがとう、助かった。待ち合わせより早くカラコタ橋に着いた矢先に、橋の上でキングスライムが暴れているのに出くわしてな。石つぶてで注意を引いたところまではよかったんだが、石つぶてが思いがけず高ダメージだったらしく、キングスライムは橋から飛び降りて逃げてしまったんだ。そのままではまたキングスライムのまま戻ってきてまた暴れるおそれがあるから、冠を取ってスライムに戻してしまおうと後を追って来たのだが・・・。そこにおまえが居たという訳だ」
 依頼人は一連の出来事をあっけにとられた顔つきで見守っていたが、イザヤールを見て拍手のように手を叩いて言った。
「やだこの人、あなたのお知り合い?今日一番の釣果じゃなーい、水も滴るイイ男を釣り上げるなんてー!」
 どうやらイザヤール、依頼人の好みにどストライクらしい。
「釣果?何のことだ?」
 きょとんとしているイザヤールの腕にミミは笑って自分の腕を濡れるのも構わず絡めた。
 そのどさくさに、依頼人の釣竿に何かがかかった。引き上げると、なんと古ぼけた長靴がかかっていた!
「やったわー!ついにゲットしたわ!釣竿で長靴!ありがとう〜、お礼に今日釣ったもの、全部あなたにあげる!」
「何故長靴でそんなに喜ぶんだ?」
 依頼人のテンションに、イザヤールはますますきょとんとしている。イザヤール様は別、って言われなくてよかったとミミは安堵して、彼の腕に頭をもたせかけた。〈了〉
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