ミミは椅子の上に体を丸めて座っていた。そして、武器の手入れをしているイザヤールをうっとりとした目で眺めていた。
彼は、細心の注意を払って武器のメンテナンスをする。つまりその間は、無遠慮に眺めていても気付かれないですむというわけだった。
(イザヤール様の手、綺麗・・・)
もちろん長年の戦闘経験で鍛えられ酷使され、大きくてごつごつと逞しくはあるけれど。でも、長い指はすらりとしていて、どこか繊細な感じも垣間見せていた。
その指先は、器用でもあって、昔から思いがけなく細工物をしてはミミを驚かせたものだった。
(一番驚いたのは、女神の果実のニセモノだったけど・・・)
あれはどう見ても本物そっくりだった。未だに、どうやって作ったのかわからない。・・・まだあのときのことを、胸の痛みなしに話すことができないから・・・。
剣を手の甲にのせて、刃の具合を確かめる鋭い眼差しにもまた、みとれた。剣を支える手首から拳までの骨の線が、のみで彫り上げられたように見事な線を描いている。
「・・・ミミ、どうした?」
熱心に見つめすぎてさすがに気付かれたのか、イザヤールが不思議そうに声をかけてきた。
実際、不思議だった。彼女の瞳が、綺麗な物に夢中になる時の、あの色をしていたから。
「あ、その・・・イザヤール様の手、綺麗だと思って」
ミミは動揺して、少し顔を赤くして答えた。
「何?」
どこがだ、と彼は自分の手に不思議そうな視線を移した。
「とても綺麗な形してます。・・・ご存知ですか、背が高くて手の形も整ってる男性は、生物的にも優秀だそうです」
「そ、そうか・・・」
なんだかよくわからないが、褒めてくれているらしい。ありがとう、と言うべきだろうかとイザヤールは少々悩み、ミミはミミで、何言ってるの私、と顔をますます赤くした。
イザヤールは武器の手入れを止めて立ち上がり、ミミの側に立った。
「・・・とにかく、おまえが気に入ってくれているなら嬉しい。ありがとう」
そう言うと彼は、その手を伸ばして、指先をミミの髪に滑らせた。優しい動きと心地よく温かい感触に、彼女は思わず目を細める。
イザヤール様の手、大好き。見るのも好きだけど、こうしてなでてくれている、私から見えない時の手が、一番好き。〈了〉
彼は、細心の注意を払って武器のメンテナンスをする。つまりその間は、無遠慮に眺めていても気付かれないですむというわけだった。
(イザヤール様の手、綺麗・・・)
もちろん長年の戦闘経験で鍛えられ酷使され、大きくてごつごつと逞しくはあるけれど。でも、長い指はすらりとしていて、どこか繊細な感じも垣間見せていた。
その指先は、器用でもあって、昔から思いがけなく細工物をしてはミミを驚かせたものだった。
(一番驚いたのは、女神の果実のニセモノだったけど・・・)
あれはどう見ても本物そっくりだった。未だに、どうやって作ったのかわからない。・・・まだあのときのことを、胸の痛みなしに話すことができないから・・・。
剣を手の甲にのせて、刃の具合を確かめる鋭い眼差しにもまた、みとれた。剣を支える手首から拳までの骨の線が、のみで彫り上げられたように見事な線を描いている。
「・・・ミミ、どうした?」
熱心に見つめすぎてさすがに気付かれたのか、イザヤールが不思議そうに声をかけてきた。
実際、不思議だった。彼女の瞳が、綺麗な物に夢中になる時の、あの色をしていたから。
「あ、その・・・イザヤール様の手、綺麗だと思って」
ミミは動揺して、少し顔を赤くして答えた。
「何?」
どこがだ、と彼は自分の手に不思議そうな視線を移した。
「とても綺麗な形してます。・・・ご存知ですか、背が高くて手の形も整ってる男性は、生物的にも優秀だそうです」
「そ、そうか・・・」
なんだかよくわからないが、褒めてくれているらしい。ありがとう、と言うべきだろうかとイザヤールは少々悩み、ミミはミミで、何言ってるの私、と顔をますます赤くした。
イザヤールは武器の手入れを止めて立ち上がり、ミミの側に立った。
「・・・とにかく、おまえが気に入ってくれているなら嬉しい。ありがとう」
そう言うと彼は、その手を伸ばして、指先をミミの髪に滑らせた。優しい動きと心地よく温かい感触に、彼女は思わず目を細める。
イザヤール様の手、大好き。見るのも好きだけど、こうしてなでてくれている、私から見えない時の手が、一番好き。〈了〉
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