セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

暗黒の試練〈後編〉

2015年12月05日 23時59分41秒 | クエスト184以降
お~ギリギリ今日中に書けました、追加クエストもどき後編です。前回のあらすじ、宝の地図の洞窟の大魔王の一人、ラプソーンから怪しい地図を手に入れたミミ。イザヤールと共に調査に向かうが、謎の無人の町の無限回廊から出られなくなってしまう。しかも自分たちにそっくりな石像が襲いかかってきて・・・。今回の話は、実はラプソーン一回目が「案外弱っ!」と思ってしまったことからできた話。イザ女主と石像たちのバトルやタイムパラドックスがややこしくて申し訳ないですが、なるべく破綻無いよう頑張ったのでお許しを~!

 締め付けてくる石像の腕や体はとても冷たくて、体温までが奪われてくるような錯覚を与えてきた。凍死の前の甘美な眠りにも似た一種の陶酔に、流されそうになる。
『ミミ、愛している・・・』
 そう囁いてくる声も表情も、愛しい人と全く同じで、ミミの顔を覗き込んでくる石造りの瞳も、真摯そのものだった。
 でも、違う、全然違う、ミミは懸命にもがいた。もがいて、武器の柄や硬い装備品を使って、石像を叩き続けた。違う、私のイザヤール様は。私のイザヤール様は・・・!ぬくもりを分け合い、共に生きることを選んでくれる人。こうして命を奪ってこようとはしない・・・。せめて意識だけでも奮い起たせようと、ミミは「ひかりのはどう」を放った!ミミの全身から放たれる聖なる光が、辺りを覆う!
 ミミの体を締め付けていたイザヤールの石像の腕が、光に動揺して一瞬だけ緩んだ。だがほんの一瞬だけで、彼女はすぐに再び石の腕に捕らえられ、抱きしめられた。
『逃げるな、ミミ・・・』
 甘くさえ聞こえる囁きで、イザヤールの石像はミミの体を更に強く締め付けてきた。見た目より強靭だが華奢な骨格は、遂にミシミシと言い始めた。
 だが、ふいにミミは石像ごと吹っ飛ばされて、その弾みで自由になった。イザヤールの石像は壁に激しく叩きつけられ、衝撃で崩れた壁石の下に埋まった。
「ミミから離れろと言っただろう」
 イザヤールが、自分を締め付けていたミミの石像の腕がひかりのはどうで一瞬緩んだその隙に体の向きを変え、石像を引きずったままイザヤールの石像に体当たりしたのだ。
 ミミの石像は未だにイザヤールの胴体にしがみついていたが、バトルマスターの力は賢者の比ではない。一度動いてしまえば、後はずるずるとイザヤールに引きずられたままとなった。ミミにそっくりすぎて少し心は痛むが仕方ないと、イザヤールが剣を振り上げて自分を捕らえている細い石の腕を切り落とそうとすると、ミミの石像は目に涙をいっぱいに溜めて、弱々しく呟いた。
『私と一緒に、行きましょう、イザヤール様・・・』
 その直後に石像が唱えた呪文に、ミミは頭が真っ白になった。ミミの石像は、自分の命と引き替えに大爆発を起こして、敵全体を砕け散らせるか瀕死に追いやる呪文、「メガンテ」を唱えたのだ!自分はともかく、抱きつかれているイザヤールは、背中にくくりつけられた爆弾が爆発したのも同じことだった。何も考えずイザヤールのところに駆けつけようとしたが、間に合う筈もない・・・。大爆発の爆風でミミは再び吹き飛ばされた。
 だが、イザヤールは砕け散らず、代わりに彼が身に付けていた、特別な「命の石」で作ったアクセサリーが砕け散った。即死呪文の身代わりになってくれる石で、以前にミミが贈った物だ。ミミの石像は力尽きて、崩れて小石の山になって息絶えた。
 イザヤールはすぐにミミのところに駆け寄ると、抱き起こしてくれて微笑み言った。
「おまえの贈り物のおかげで、命拾いした。おまえは大丈夫か?」
 ミミは返事の代わりにイザヤールに、本物の、あたたかな体に抱きついて、静かに涙を流した。よかったと言いたいが声にならず、ただひたすら抱きしめ、濡れた頬を彼のそれにすり寄せる。
 イザヤールは腕の中の、石の感触と全く違う、やわらかでしなやかな体を、石像に負けないくらい強く抱きしめ、彼女の濡れた頬を優しく唇で拭った。
 だがもちろんもう一体の石像の存在を忘れたわけではなく、互いの無事を確認した後は、二人はすぐに武器を構え、もう一体の石像、イザヤールの石像が崩れた壁の下から出てくるのに備えた。
 瓦礫と言っていい石片の山に埋まっていたイザヤールの石像は、山を崩して這い出してきて、ほぼ無傷で飛び出し、石の翼で空を切って飛んで、空中からギガブレイクを放ってきた!かなりのダメージを受けたミミにイザヤールがHPを分け与えようとするのを押し留め、彼女は囁いた。
「イザヤール様、石像のさっき私が叩き続けた所が、かすかにひび割れているの。あのひび割れを狙って攻撃をお願い。私も、あの箇所を狙って呪文を放って、一気に決着を着けるから」
 イザヤールは頷き、壁を蹴って高く飛び上がって、自分の石像のひび割れを狙って一気に刃を突き立てた。もちろんそれで石像が倒れることはなかったが、ひび割れはまた大きくなった。そこへミミが単発では最強の威力を誇る呪文ドルマドンを放ったので、ひび割れは全身に広がっていき、遂にイザヤールの石像もバラバラになり、ただの小石の山となった。奇しくも、ミミの石像の残骸と混ざり合って。
 二人は、ようやく終わった戦いに安堵の息をつき、回復魔法で傷を癒すと、先を急いだ。

 きちんと数えていたので、この奇妙な町をぐるぐる回って五周目に入ったとわかったとき、二人は壁の一つに、これまで見かけなかった下り階段を見つけた。これはもう進むしかない。長い長い階段を降りていくと、やがて祭壇のような物が見えてきて、奇妙な、だがどこか気配に覚えがある魔物が、ふわふわと浮いていた。頭部は寸足らずの小悪魔のようで、顔から下半分は底が尖った瓶のように半透明で放電しランプ状に光っている。
 その魔物は、ミミとイザヤールがやってくるのを見ると、小憎らしくどちらかと言えばコミカルに見えなくもない顔を歪めた。
「まさか、二人揃ってやってくるとはな・・・。石像のところで、どちらか一人になると、思っていたものを・・・」
 声も聞き覚えの無いものだったが、ミミはその魔物を見つめて、はっとして叫んだ。
「あなたは・・・もしかして、暗黒神ラプソーン?!」
 ミミの言葉に、イザヤールもはっと目を見開き、気配に神経を集中させて、彼もまた、それが姿は違うが暗黒神ラプソーンのものであることを覚った。
「だが、その姿はいったい・・・」
 イザヤールが呟くと、その魔物は嫌な高笑いをし、言った。
「賢者どもに肉体と魂を分断されて封印され、ようやく元の体に戻ったが・・・。もっと強力な依り代を手に入れれば、忌々しきレティスを、今度こそ葬りさり、光の世界も闇に染めることができる・・・。だからこそ時空を越えて、やって来たのだ。天使の魂とチカラを持った、特別な人間の体を手に入れる為に!」
 では、自分たちは、暗黒神の依り代にされるべくここへ誘き寄せられたのか、と、ミミとイザヤールは愕然とした。時空を超越し「此処」のラプソーンは、宝の地図に封印された大魔王ラプソーンに、この場所へとミミたちを導く為に偽の地図を送った・・・。今目の前に居るラプソーンは強いて言うならば、「過去」のラプソーンなのだろう。
 ここで自分たちが負けて暗黒神に体を乗っ取られてしまい、ミミたちの力を糧に暗黒神の力が増強してしまえば、ラプソーンが竜の血を引く勇者に倒されたという異世界の歴史も変わってしまうかもしれない。それどころか、ミミたちの世界、女神セレシアが治める世界も危うくなる可能性もある。堕天使エルギオスは、神の力を持ってしても抑えることはできなかった。そのエルギオスを倒したミミ、そのミミと互角の力を身に付けたイザヤール。どちらの体が乗っ取られても、深刻な事態になることは充分予測された。
 ・・・絶対に、乗っ取られるわけにはいかない。目の前の暗黒神に勝つ以外、道は無い。ミミの濃い紫の瞳が、強い決意を浮かべてよりいっそう陰影と煌めきを増した。もちろん、大切な人だって、守ってみせる・・・。そう誓った彼女がイザヤールの横顔をちらりと眺めると、彼の横顔も同じ強い決意と、大きな戦いを前にした高揚感で、いきいきとしてさえ見えた。彼もまたミミをちらりと見つめ、静かに頷く。おまえのことも、世界も、必ず守るから。
 そんな二人を見て、ラプソーンは再び嫌な笑い声を立てた。
「その様子では、自分の命だけでも助かりたいなら殺し合えという提案も、ムダなようだな・・・。まあよい、我と戦い先に死なずに済んだ方が、我が依り代となる栄誉を得るのだからな。虫けらには過ぎた果報と思え!」
 ラプソーンが襲いかかってきた!

 姿は違えど、宝の地図の洞窟の大魔王ラプソーンとはしばしば戦っていて、攻撃パターンは熟知している。二人パーティなのは非常に厳しいが、いつものラプソーン戦と同じような対策で戦っていこうと二人は決めた。
 ミミはやまびこのさとりを使って呪文を二回唱えられるようにし、スクルトで守備力を上げ、やや低いHPを盾の秘伝書でラプソーンの痛恨の一撃を防ぐことでカバーして、後は回復とイザヤールのフォローに専念し、余裕があるときだけ呪文攻撃をした。
 イザヤールは、テンションバーンを使ってテンションを上げてはひたすらはやぶさ斬りでダメージを与え続けた。
 予測通り、このラプソーンもやはりだいたい知っているラプソーンと同じ攻撃パターンで、一ターンで二回攻撃するところも同じだった。痛恨の一撃の他に、こごえるふぶきやメラゾーマ、イオナズンでダメージを与え、まばゆい光や怪しい瞳を使ってきたが、ミミは小まめに回復に専念し、幻惑効果のまばゆい光はスーパーリングで防ぎ、怪しい瞳でどちらかが眠らされたら互いに「ツッコミ」で起こし、いてつく波動を使われたら辛抱強く呪文をかけ直して態勢を立て直した。
 だが、長期戦を覚悟していたのに、イザヤールのテンション50のはやぶさ斬りが決まって、ラプソーンは意外にあっさりと倒せてしまった!サンディが居たら「案外弱っ!」と叫んでいたところだろう。
 轟音のような叫び声を上げ、ラプソーンは消えた。それと同時に辺りの空間が揺らぎ、ミミとイザヤールは、いつの間にか洞窟の入り口だった場所に立っていた。だが、洞窟そのものが消えていた。爽やかな青空の下、馴染みの世界の光景が広がっている。
「あら・・・厳しいは厳しいけれど、意外にあっさり勝っちゃいましたね、イザヤール様・・・」
「まあよくよく考えたら、いわゆるパワーアップ前の状態と戦ったようなものだからな・・・」
 とにかく、ラプソーンの野望?は潰せたらしい。安堵して二人が顔を見合わせていると、そこへサンディが猛スピードで飛んできて、ミミに抱きついた。
「あーっ、よーやく帰ってきたー!二人は洞窟にどんどん入って行っちゃったのに、なんでかアタシはどーしても入れなくて弾き出されちゃって、外で超心配してるしかなかったんだからね!ワケわかんないんですケド!・・・でもとにかく、無事でよかった~!」
「サンディ、心配かけてごめんね・・・って、サンディ、なんだかゴツゴツ痛いよ?」
「あ~、そうそう、何か洞窟の前で拾っちゃったのよ、パープルオーブ。アタシには必要ないからハイ、あげる~」
 あのラプソーンの落とし物だろうか。大変は大変だったが結局いつものラプソーン戦みたいになったと、ミミとイザヤールは苦笑し、それから弾けるように笑いだした。〈了〉
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2 コメント

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暗黒魔城都市の… (神々麗夜)
2015-12-06 20:01:04
誰かいる!?っていう気配が怖いですよね。つい最近まで人が住んでいた?みたいな雰囲気も怖い。
本人のマイナス面をコピーした石像…特にミミちゃんの石像が怖いと思ってしまいました。ミミちゃん本人のイザヤール様と共に生きていこうという決意を暗黒の力が『死ぬ時は道連れ』という歪んだ形でコピーした結果なのかな?
もしもうちの9メンバーが暗黒魔城都市に入ってもククールさんいるから安心かと思いきやレレンが回廊であっちにうろうろ、こっちにうろうろ…
ククール「お兄さん、『うろうろするな?』って言ったよな?」
レレン「えー、でもあっちのお店なら入れるかもしれないよ」
ククール「入れません!全部張りぼてです!」
レレン「よーし!今度は逆周りしようっと…やーん!ククールさん放してよーおねーちゃん助けて」
ククール「まったく…このお子ちゃまは…リリン何とかしてくれ」
リリン「しょうがないわね。鞭で縛っておくわ」
シェルル「い…犬の散歩みたいだなぁ」

ちなみにうちのメンバーの邪悪な気配に対する感受性の強さは
リリン=ククール≫≫≫シェルル>>>>>(超えられない壁)≫≫≫≫レレンとなっています。シェルル君は人並み程度。元天使のリリンと互角のセンサー?を持つククールさんがすご過ぎるだけです。レレンは頭に花が咲いて世の中はみんなきれーなものばっかりな子です。極端だなぁ…うちの姉妹。
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あの独特な雰囲気が (津久井大海)
2015-12-07 00:32:33
神々麗夜様

いらっしゃいませこんばんは~☆
暗黒魔城都市、最初からおどろおどろしいよりもずっと怖いですよね、あの雰囲気。静かな滅亡というか。DQ4の誰も居なくなったサントハイム城もちょっと思い出しちゃいました。

ミミ石像の方を怖いと思ってくださって、ありがとうございます☆(←どんな日本語)静かな狂気のタイプに書きたかったので嬉しいです!

そちらの9パーティの妹さん、なんて自由で天真爛漫な(笑)暗黒魔城都市にてほのぼのお散歩光景・・・って、そんなわけないですよねえ。ツッコミ役やお守り役の方はたいへん?ですよね、お疲れさまです。

姉妹で対照的ってかえっていいコンビになれそう☆世の中全て綺麗なもので溢れている感覚も、ある意味すごく天使の中の天使な感覚ですね、ピュアですね~☆
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