セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

暗黒の試練〈前編〉

2015年12月05日 06時56分10秒 | クエスト184以降
一回分に無理やり話を詰めるか迷って結局書き直して続き物になりそのうえ更新丑三つ時どころか朝になっちゃいましたそしてよがあけちゃったごめんなさい~!の追加クエストもどき(長いよ)。大魔王シリーズ、今回はラプソーンです。思いっきりDQ8の暗黒魔城都市ネタです。前編なので、お約束通りピンチがやってきます(笑)う~ん前編後編で終わるのかな・・・(汗)頑張って今日中にこの話完結させたいので、たとえなま温かでも温かく見守って頂けると幸いでございます。

 それは、いつもの宝の地図の大魔王戦の筈だった。ラプソーンに勝利したミミたちは、いつもの宝箱以外に、常と異なる物を見つけた。
「え?ラプソーンの宝箱に地図はなかった筈じゃ・・・?」
 そして、その地図には、「ラプソーンの地図レベル??」と記されていた。通常大魔王戦で手に入れる大魔王の宝の地図はレベル1と決まっている。今までに無いパターンに、ミミは戸惑った。地図自体は、見覚えのある地形の図にバツ印が書かれたお馴染みの表記だ。
「地図自体は通常の宝の地図と同じだな」
 イザヤールも呟いたとき、ふいに聞き覚えのある声が聞こえた。たった今勝利し、悲しそうに去って行った筈の、ラプソーンの声だった。
『光から生まれし天使どもよ・・・。暗黒の試練を受けるが良い・・・』
「ラプソーン?!」
 ミミとイザヤール、そしてサンディが同時に叫ぶと、一緒に居たリッカとロクサーヌは、きょとんとした顔をした。
「え?ミミ、イザヤールさん、どうしたの?そうだよね、ラプソーンの地図だよね」とリッカ。
「これまでに無い地図だと、これまでに無いレアなアイテムが手に入りそうですわね♪」とロクサーヌ。
 どうやらリッカとロクサーヌには聞こえていなかったらしい。
「ん~、アタシと元天使のアンタたちにしか聞こえてないっぽいよ?」とサンディ。
 ミミとイザヤールはこっそり顔を見合わせ、二人でもう一度地図に視線を落とした。後で調べてみよう、共に決意して、二人は小さく頷いた。ミミはクエスト「暗黒の試練」を引き受けた!

 翌日、どんな洞窟なのかだけ下調べすることにして、ミミとイザヤールとサンディは地図に記された場所に行ってみることにした。どんな洞窟なのかを見て、いつものように奥に大魔王が待っているだけだったら、改めて四人パーティを組んで挑戦するつもりだった。
 地図に記された場所に行くと、いつものような宝の地図の洞窟があってひっそりと入り口が開いていて、外から見た感じでは何も変わらなかった。
「ラプソーンのワナかなってドキドキするけれど・・・いつもの洞窟だったらがっかりしちゃうかも・・・。私、不謹慎かも」
 ミミが呟くと、イザヤールは笑った。
「では私も同罪だな。大魔王の悪巧みを止めねばとは思うが、未知の状況かもしれないことにわくわくしている」そう言ってから表情を引き締めて、続けた。「だが、奴が我々のことを天使扱いしていることが気になる。もう人間である我々に、何故あんなことを・・・」
「何かヤな予感するんですケド~。でもアンタたちのことだから、ヤバそげでも行っちゃうんデショ?」
 そう言ってサンディは肩をすくめる。
 洞窟の入り口から地下へと続いている階段を降りて、二人は思いがけない光景に出くわし思わずはっとして立ち止まった。ダンジョンでも大魔王が待つ洞窟でもなく、そこは城塞都市の建物内に作られたような町だったからだ。
 左右に別れカーブしている道の両脇には、ずらりと小綺麗なあらゆる種類の店が並んでいる。ただし、カウンターの中に人が居る気配は全く無い。高い天井に灯りの装置は一切無いのに、昼間のように明るかった。道は石畳で、並ぶ店はやはり石造りの建物で、店と店の間に隙間は無く、石の壁とカウンターが交互に延々と並んで見える。
 ミミは、道に降りて手近な店に声をかけてみた。看板から察するに道具屋のようだ。
「あの・・・どなたかいらっしゃいますか?」
 きちんと片付いた店の奥に向かってかけた声に、やはり返事は無かった。
「ちょっと失礼」
 イザヤールは律義に居ない店の主にともつかぬ声をかけて、ひょいと片手をカウンターにかけて軽々と飛び越し、店の中に入りこんでその奥へと続く扉を開けようとしてみた。が、扉は固く閉ざされて開かなかった。ミミも彼に続いてカウンターをひょいと飛び越えて、さいごのかぎを扉に使ってみたが、そもそも見せかけの扉なのか鍵穴が無く開かなかった。
「ダミーのお店ってことかな?」
 買い物ができなさそうなので、ミミはちょっと残念そうに言った。
「そのようだな。少なくとも、生活の気配は全く無い。・・・もっとも、全部の店を調べるには時間がかかりそうだがな。ミミ、どうする?もう少し調べるか、それとも改めて準備をしてまた来るか?」
 イザヤールの言葉に、ミミは少し考えてから、きっぱりと言った。
「四人パーティにして、準備をちゃんとしてまた来ようと思います。ね、サンディ。・・・サンディ?」
 ここでミミは、一緒の筈のサンディが居ないことに気が付いた。
「サンディ?!どこ?」
 ミミとイザヤールは慌ててカウンターを飛び越えて店を出、道を左右に見渡した。だが、サンディの姿は無かった。
「洞窟の外に置いてきてしまったのでは?ちょっと見てみよう」
「は、はいっ」
 二人は階段を上って外に出ようとしたが、階段の先は、確かに入ってきた場所の筈なのにただの石壁になっていた。イザヤールが眼光を鋭くして壁に向かって「ばくれつけん」を放ち砕いたが、壁に大穴が空いただけで外の光の一筋も入ってこなかった。
「しまった・・・。閉じ込められてしまったようだな」
「先に進むしかないのね・・・。サンディは、外に居るのかな?それともこの町のどこかに・・・?」
「外に居ることを祈ろう」
 とにかくもはや進んでみるしかない。二人は、左右どちらから進むか少し考えて、とりあえず左側に向かって歩いてみることにした。

 看板や店の特徴を見て頭の中に叩き込みながら歩いていくと、やがて壁の中の窪みに二体の石像があるのを見つけた。その石像をよくよく眺めて、彼らははっと息を飲んだ。背の高い方の石像は、紛れもなくイザヤール、小さい方はミミにそっくりだったのだ。ただし石像の方は、天使服姿で剣を構え、今の彼らにはある筈もない翼があった。
「これは、守護天使像か?・・・まさかな」
 二人は用心深く石像を調べたが、像はまるで自分たちが石化したかのように気味が悪いほどそっくりだったものの、何の反応も無くただそこに立っていた。冷たい灰色の石で刻まれているにもかかわらずミミの石像の唇や女らしい体はとても柔らかそうに見え、イザヤールの石像の逞しい筋肉の見事な陰影は、目の前に立つ本人と全く変わらなかった。
「なんで、私たちの石像が、こんなところに?」
「あまりいい予感はしないが、とりあえず先に進もう」
 それから二人はまた歩き続けたが、道は相変わらず一本道で、延々続く店にはカウンター越しに覗いてみても全く気配も無い。ツボやタルの中にちいさなメダルを数枚とよるのとばりをみつけたが、店の並びなのに商品らしき物も一切無い。やがてある看板を見つけて、イザヤールはギクリと立ち止まった。見覚えのある、道具屋の看板だったからだ。ミミも、階段の上の石壁を見て、思わずイザヤールの腕をぎゅっとつかんで指差した。そこには、イザヤールのばくれつけんで砕いた跡が、しっかりと残っていた。
「一周してきちゃったってこと・・・?」
「円状に作られた町、ということか」
 だが、先ほどと少し異なる部分もあった。先刻入り込んでみた道具屋のカウンターに、赤い文字で進行方向への矢印と共に、こう記されていたからだ。
『暗黒の試練を望む者は進み続けよ、望まぬ者は引き返しこの回廊を永久にさ迷うがよい』
「これじゃ進むしかないよね」ミミが溜息混じりに呟いた。
「このダンジョンの地図の名前から察するに、ラプソーンの与える試練ということになるのだろうか。奴を見つけて倒すしか、ここから脱け出す手段は無さそうだな」イザヤールも肩をすくめた。
「でも、私、イザヤール様が居てくれれば大丈夫な気がする」
 ミミは濃い紫の瞳を愛しげに煌めかせ、頬をほんのり染めて、つかんでいたイザヤールの腕にきゅうと抱きついた。
「私もおまえが居てくれるから、とても心強いぞ。大丈夫、きっと出られるさ」
 イザヤールも力強く答えて愛しそうにミミを見つめ、人目が無いのをいいことに、彼女の唇に優しくキスを落とした。
 それから二人は、とりあえず矢印の方向通りに進み続けてみた。先ほど記憶したのと同じ順番で店は並び、どの店のカウンター内にも相変わらず隠し扉や仕掛けらしきものは無い。そして、天使だった頃の自分たちにそっくりな石像のところまでやってきた。
 壁の窪みの中の二体の石像に目を向けて、二人は思わず身構えた。石像の構えている剣の位置が、変わっていた。身構えるのとほぼ同時に、石像たちが襲いかかってきた!
 石とは思えない素早さで、イザヤールの石像はイザヤールに、ミミの石像はミミに向かって飛び込んできた。今回回復と呪文攻撃のバランスがいい賢者職に就いていたミミは、力と守備力にやや劣る為、自分の石像の体当たりをまともにくらって、壁に叩きつけられてしまった。すぐに体勢を立て直し、まずは守備力を上げる呪文スクルトを唱えたが、容赦なく繰り出されるミミの石像の剣の猛攻を、盾で防ぐのに精一杯だった。
 一方バトルマスターのイザヤールは、やたらに素早い自分の石像と鍔迫り合いになっていた。石像は天使の時の姿だが、力は現在のイザヤールとほぼ互角らしい。だが石像の方は石のくせに翼を使って飛べる分、イザヤール本人の方が不利だった。自分たちのコピーと戦う羽目になる機会がしばしばある二人だが、今回は殊に苦戦を強いられそうだ。
 イザヤールと石像は互いの刃を払って間合いを取った。イザヤールと石像の間に距離ができたのを見て取ったミミは、敵全体に効く呪文イオグランデを唱えた!石像二体は激しい爆発を受けて吹き飛び、立ち位置が変わった。
 と、吹き飛んで位置が変わった為に思っていたよりも速く、イザヤールの石像がミミの間近に迫っていた。本物のイザヤールは間に割って入ろうとしたが距離がありすぎ、ミミは大ダメージを覚悟した。
 だが、イザヤールの石像は、剣を降り下ろすのではなく、文字通り石の冷たい腕でミミを捕らえ、抱きしめるように、だが確実に締め上げてきた。振りほどこうともがくミミに、イザヤールの石像は、本物が彼女を抱擁するときと全く同じ愛しげな表情さえ浮かべて、囁いた。
『ミミ、私のミミ・・・。このまま、本当に私と闇のものになれ・・・。有限のヒトのカラダと違って、私は・・・。永久におまえと共に、居られるのだぞ』
 その表情があまりに本物とそっくりで、それがかえって本能的な恐怖を増して、ミミは必死にもがきながら思わずぞくりと身を震わせた。
「ミミから離れろ!」
 イザヤールは叫んで自分の石像に斬りつけようとしたが、その刃は、間に飛び込んできたミミの石像がまともに受けた。石像とはいえミミとそっくりなものに斬りつけた動揺でほんの一瞬固まったイザヤールの腕の中に、ミミの石像はくたりと崩れ折れ、倒れるようにのしかかった。
 押し倒されそうなのを何とか踏み留まって振り払おうとした彼に、ミミの石像は、本物そっくりの哀願するような表情で見上げ、囁いた。
『イザヤール様・・・。翼のある私は、嫌い・・・?私は、愛して、るのに・・・。斬られたところ、痛い、痛いの・・・』
 ほろほろとミミの石像の瞳から涙がこぼれていく。その表情はイザヤールの心を抉り、体に回された固く冷たい腕は、ぎりぎりと彼の胴を締め上げていく。
 石像たちは、あたたかな体を腕の中で締め上げながら、恍惚とした表情で、囁いた。
『このまま、私と・・・堕ちてくれ・・・愛しい、愛しい私のミミ・・・』
『このまま、私と・・・堕ちましょう・・・愛しているの、イザヤール様・・・』〈続く〉
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