セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

ほかほかふわふわウィッグ

2012年10月19日 22時47分54秒 | クエスト184以降
今週は珍しくちゃんと更新できたけど、普段は遅れるのがバレてるからこの頃金曜日のアクセスが格段に少ないです(笑)の捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。バカップル、今回は別行動ですが結局・・・。文中のゴートドンの特性はモンスター図鑑69より、ただしれんごくまちょうの羽毛の特性については捏造です。ゴートドンのふかふかの毛の中で睡眠、確かにふかふかぬくぬく気持ち良さそうです。

 ベレンの滝のカラコタ地方側、身を切るように冷たい滝壺の中で、せっせとルビーの原石を拾い集めている者が居た。それは、依頼を受けて素材集めをしているミミだった。
 今年のセントシュタインのハロウィンの仮装は、黒い衣装に赤い石のアクセサリーを合わせるのが若い女の子の間でちょっとした流行で、その材料になるルビーの原石は引っ張りだこという訳だった。
「四つもあった!よかった、頼まれた分どうにかなりそう♪」
 ミミは嬉しそうに瞳を輝かせ、水の冷たさでルビーに劣らず赤くなった指先で、原石のかけらをつまみ上げた。細く白い指と赤く染まった指先の色彩のコントラストは美しかったが、イザヤールが見たら痛々しいと眉をひそめ、己の温かい手で包んでくれたことだろう。その彼は、用事があるとかで今日は一緒に来ていなかった。
「ミミー、それ依頼人の分デショ?アンタの分は?ミミだって今年は、ハロウィンの衣装に赤い石使いたかったんデショ?」
 羽をぱたぱたさせながら、サンディが尋ねた。ミミの今年の衣装の一部は、黒いミニハットのカチューシャにセティアコサージュを留めた物を使う予定なのだが、それには赤い石で留めるとたいそう引き立つのだ。
「うん、でもハロウィンまでまだ日数あるし、私は箱舟でいつでも来られるから、今日はいいの。コスチュームジュエリーでも構わないし。でもこの依頼をしてきた人は、どうしてもルビーがいいってこだわりがあるんだって」
 そう答えてミミはにっこり笑った。
「それこそその依頼人だってイミテーションの石でいーじゃん!そんな気まぐれの為に秋の滝に浸かってんだから、アンタもホントお人好しよね~」
 サンディは呆れて肩をすくめ、それでもミミの足を拭くタオルを差し出してくれたのだった。

 滝から出て、それでは帰ろうかとミミがルーラを唱えようとすると、何やら得体の知れないものが突進してきた!ミミは素早く身をかわした!それは木に激突しそうになって、急ブレーキをかけてギリギリで止まった。止まったところをよくよく見ると、それはどうやら、異様に毛の量が少ないゴートドンだった。
「待ってくれ。戦う気はないんだ」そのおかしなゴートドンは言った。「ただ、あんたが『やわらかウール』を持っているかどうか、聞きたいんだ」
「やわらかウール?」ミミはさっそく道具袋を見たが、あいにく切らしていた。「ごめんなさい、ちょうど切らしていたみたい。そういえば、そろそろカルバドに買いに行かなきゃ、って思っていたのに」
「そうかあ・・・」
 ゴートドンは、がっかりして首を垂れた。
「やわらかウールが必要なの?訳を話してくれたら、手に入れてきてもいいけれど」
 ミミが申し出ると、ゴートドンは嬉しそうにガバッと頭を上げた。
「ホントか!?助かるぜっ!・・・そろそろ夜は冷える季節だろ?実はオレ、キメラやガチャコッコの夜の巣代わりにされてんだ」
 ミミは笑いを堪えて頷いた。その情報、モンスター図鑑のゴートドンの項の二ページ目に、ばっちり載っている。
「まあそれもこのイカした青いふかふか毛を持つナイスモンスターの宿命だから、いいんだけどさ。それが、昨日、遊びに来た『かまっち』のヤツにばっさりやられちゃって。伸びすぎた毛先をほんのちょっと切ってくれって頼んだのに、アイツに丸刈りにされちまった。しかもその毛は、うっかり川に落として、流れていっちまった。
このままじゃ、オレで安眠しているキメラたちが凍えちまうから、やわらかウールで毛のウィッグ作ろうと思って、通りかかるやつらに片っ端から声かけてるんだ」
「仲間のゴートドンからはやわらかウール分けてもらえないの?」
 ミミが尋ねると、ゴートドンは口ごもった。
「それが・・・」
 オレだけじゃないんだ、かまっちに丸刈りにされたのは。その言葉と同時に、情けない表情をした毛の少ないゴートドンたちが、ずらりと現れた!
「これ、ものすごくたくさんやわらかウール要りそうなの・・・」
 ミミが困惑顔で呟くと、ゴートドンは答えた。
「あんた、『れんごくまちょう』って知ってるか?ヤツの羽毛を一本混ぜれば、少ない毛でもほかほからしいんだ。それぞれの分の個数のやわらかウールと、それぞれの分の羽毛一本ずつ用意してくれれば、恩にきるよ!頼むよ、キメラやガチャコッコの為にも!」
 れんごくまちょうは強敵だ。だが、これから徐々に冬になるのに寒いのも可哀想と、ミミはクエスト「ほかほかふわふわウィッグ」を引き受けた!

 とりあえずミミはセントシュタインに戻り、ルビーの原石を依頼人に渡してから、リッカの宿屋の自室に戻って火山系ダンジョン仕様の仕度を始めた。イザヤールはまだ帰っていないようだ。混乱呪文を使ってくるれんごくまちょう相手に一人で行くのは危険なので、宿屋メンバーに訳を話して一緒に来てもらうことにした。
「れんごくまちょうの羽毛に発熱効果がありましたなんて!勉強になりますわ☆」
 さっそく新商品の数々を思い浮かべているのだろう、ロクサーヌがキラキラと瞳を輝かせる。
「あれ?ガチャコッコってマシン系じゃなかったっけ?機械でも寒いのかな?」
 首を傾げるリッカにミミは答えた。
「それがね、冷えすぎるとオイルの循環が悪くなるんだって」
「へえ~、そうなんだ」
「れんごくまちょうの羽毛を散らすなら、ブーメラン辺りで攻撃すると良さそうね☆」
 最近、ブーメランのスキルアップに燃えているルイーダが、笑みを浮かべて愛用のコメットエッジを装備した。

 まずはカルバドで必要分やわらかウールを買い込んだ。
「ミミ、こんなにたくさんのやわらかウールを、何に使うのだ?」
 不思議そうに首を傾げるナムジンに、今度ゆっくり話すねと慌ただしく別れを告げ、すぐにれんごくまちょうの居る宝の地図の洞窟に向かった。
 れんごくまちょうが強敵なら、それらが居るダンジョンの他の魔物も強敵だ。他の魔物はなるべくやり過ごし、れんごくまちょうに狙いを絞って戦いを挑む。ロクサーヌとリッカには回復を中心に任せ、ミミとルイーダはひたすらブーメランで攻撃を続けた。もちろん、一ターン目は、全員ミラーシールドを張ることを怠らない。
 こまめな回復で状態は良好で戦闘を続けたが、さすがに長時間居る場所ではない。疲労を感じる前に切り上げないと危険だ。あともう少しで、れんごくまちょうの羽毛の数も集まりそうなところまでこぎつけた。そして、また新たなれんごくまちょうたちに遭遇した。
 れんごくまちょうAはメダパニーマを唱えてきた!しかしミラーシールドを張っていたミミは呪文を跳ね返した!れんごくまちょうAはこんらんした!
 混乱したれんごくまちょうは仲間のれんごくまちょうをひっかき、おまえしっかりしろ、と、その仲間のれんごくまちょうにどつき返され我に返り、そんなに強く殴らなくても、とケンカになり、取っ組み合いとなった。
 あらら、と呆れて見守るミミたちの目前で、れんごくまちょうの羽毛がひらひらと舞い落ちてくる。それを拾い集め、帰ろうか、とミミは言い、パーティ一同も頷き、ケンカを続けるれんごくまちょうを残して、ダンジョンから出たのであった。

 地上に出ると、ミミはルーラでパーティメンバーをセントシュタインに送ってから、天の箱舟で、ゴートドンの待つカラコタ地方の先ほどの場所に戻った。もう夕暮れが近いからか、ゴートドンたちはそわそわ待っていて、一匹など派手なくしゃみをしていた。
「よかった、夜に間に合って!はい、やわらかウールとれんごくまちょうの羽毛」
 ミミが頼まれた物を渡すと、ゴートドンたちは大喜びした。
「助かったぜ!これでキメラやガチャコッコたちの寝床は、マッドオックスやビッグホーンなんかじゃなく、引き続きオレたちで決まりさ☆」
 張り合ってたんだ・・・と内心呟きミミが笑いを堪えていると、ゴートドンは、大量の「よるのとばり」をくれた!
「オレたちを丸刈りにしたかまっちが、お詫びにって置いてったやつさ。よかったら使ってくれよ」
 よるのとばりは錬金の貴重な材料だし、ハロウィンの為のゴシックな衣装を作ることもできる。ミミはゴートドンたちにお礼を言って、足取り軽く帰った。

 セントシュタインのリッカの宿屋の自室にミミが戻ってくると、今度はイザヤールも帰っていた。
「おかえり、ミミ。リッカたちから聞いたぞ、急遽たいへんなクエストを引き受けたそうだな。留守にしていてすまなかった」
 ミミは微笑んで首をふるふると振り、イザヤールに歩み寄って彼の顔を見上げた。その瞳が、彼への愛しさで陰影を描いている。
「いいえ。こうして『おかえり』って言ってもらえるのも、とっても嬉しいの・・・」
 そう呟くとほんのり頬を染めて、思いきって彼にそっと抱きついた。だがもちろん、抱きつく前に既に彼の腕はやわらかな体に回され、しっかり抱き寄せられていた。
「おかえり」もう一度、イザヤールは囁いた。「無事でよかった」
「ただいま、イザヤール様」
 愛しい人のあたたかく逞しい体にぴったりくっついていると、それだけで今日の疲れがゆるゆると消え去る気がする。幸せそうに吐息して、瞳の陰影と輝きを増して再び彼を見上げると、熱を湛えた瞳が細められ、優しいキスが落とされた。
 ようやく並んで椅子に腰かけてから、イザヤールはふと思い出したように呟いた。
「そうだ。これを渡しておかねばな。ミミ、手を出しなさい」
 彼女が言われた通り手を彼に差し出すと、その手のひらに、一際美しい、まさに鳩の血の色とでも言いたいような石が載せられた。ルビーの原石だった。
「オンゴリの崖で見つけてきた。おまえの衣装に、使えそうか?」
 イザヤール様の用事って、これを探しに行ってくれてたことだったんだ・・・。彼女は瞳を潤ませた。おそらく彼は、ミミが自分で見つけた石は依頼人優先で手放してしまうであろうことを見越していたのだろう。それで彼女の為に、こんなに美しい石を探してきてくれたのだ。
「使えそうどころか!ありがとう、イザヤール様!」
 思わずまた、今度は感謝を込めて抱きついた。そしてもちろん、感謝と愛情が目一杯込められた唇も与えた。

 さて一方、やわらかウールとれんごくまちょうの羽毛でほかほかふわふわウィッグを作ったゴートドンたちは、今夜も無事キメラやガチャコッコたちの宿となることができたが、羽毛発熱効果がありすぎたのか、「暑い」「ビミョーに汗くさい」と、評価はいまいちだったという。
「もしかして、やわらかウールだけで充分だったってヤツかっ?!」
 だが幸い、冬になる前に毛は元の長さまで伸びたので、何ら問題はなかったそうだ。〈了〉

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