セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

長持ちの秘訣

2013年04月21日 23時14分20秒 | クエスト163以降
予めお断りしておきます、バカップル話ですすみません。セントシュタイン城下町にタウン誌っぽいのがあったら面白いなと思ってできた話の筈が何故。「カップルの共通の趣味」がテーマの一つの話なんですが、何となく三つのばらばらな話で構成されている感もあります。1・リッカの宿屋日常、2・インタビュー、3・イチャイチャみたいな。当サイトイザヤール様、楽器の基本演奏はできるらしい設定。さすが如何にも楽器似合いそうなエルギオス様の弟子だけあります。

 最近、セントシュタイン城下町で、壁新聞とでも呼びたいものが作られるようになった。城や城下町のニュースや情報をまとめたもので、城下町の中心の立て札に定期的に掲示されたり、スポンサーになった町の各店舗に貼られていたりして、なかなか好評だ。
 城下町の店は、低額の広告料を払うことでスポンサーになることができ、紙上で店の宣伝ができるし、インタビューに答えて旬のお勧めをアピールすることも可能なので、この企画はセントシュタインの商店主たちにも評判がよかった。
 リッカの宿屋ももちろんさっそくスポンサーになって、宣伝効果はもちろん、そしてスタッフ一同、商売には直接関係ないユニークな記事も楽しんでいた。今日も新たな号が配布され、ロビーに客用の一枚をリッカがウキウキと貼り、スタッフ用のもう一枚は、奪い合いになりかねないくらいの勢いでカウンターの内側を往復している。
「新連載の、『呪われたおしゃれ花』が少々気になりますわ」ロクサーヌが読みながらにっこり笑って言った。「予告によると、美しきスライムのヒロインが手に入れた『紅いスライムおしゃれ花』を巡って、様々な事件が起こるらしいですのよ」
「ロクサーヌさんもこういう娯楽小説に興味あるんだ?何かちょっと意外かも・・・」
 リッカがそう言って目を丸くすると、ロクサーヌは天使の微笑みにも例えたいほどの極上スマイルで答えた。
「この連載のおかげで、スライム関連アイテムが売れそうですわ☆スライムトレイやスライムピアス、さっそく入荷致しましたのよ♪」
「・・・。さ、さすがロクサーヌさん・・・。ただハマるだけじゃないんだ・・・」
 ミミはそんなやり取りを楽しそうに見守りながら、カマエルを磨いていた。
「『カワイイ錬金釜ランキング』とかいう記事があったら、きっとカマエルは上位入賞ね」
「ありがとうございますお嬢様!お嬢様も、『ミス錬金』というコンテストがあったら優勝間違いなしでございますよ!」
「あ・・・ありがと・・・(どんなコンテストなのかな・・・)」
 今回はどんな記事が載っているかな、みんなが読んだら読ませてもらおうっと。そう楽しみにしていたミミだったが、まさか自分たちが次回の記事に関係することになるとはそのときは夢にも思わなかったのだった。

 数日後、ミミとイザヤールがルイーダの酒場のカウンター席のいつもの場所で寛いでいると、銀縁眼鏡をかけた若い女性に声をかけられた。聞けば壁新聞の記者だと言う。
「次回の記事の一つを、カップル冒険者の共通の趣味というテーマで書こうと思っていまして」彼女は言った。「そこで、セントシュタインの名物冒険者カップルのお二人にぜひインタビューさせて頂きたいんです。ラブラブでいられる秘訣に関係している感じがしますしね☆長持ちの秘訣、っていうか」
「そ・・・そうなんですか・・・」
 ミミとイザヤールはやや困惑して顔を見合わせた。
「ダンジョン探索とか日々の鍛錬では趣味とは言えないか・・・」イザヤールが呟く。
「最近二人でハマってるのは、大魔王を最速ターンで倒すことですけれど、これも趣味っていうより仕事の一環っていうか・・・」とミミ。
「う~ん、もう少しメジャーなのも何かお伺いできません?」記者は苦笑した。
 しばらく考え込んで、ミミはぱっと顔を輝かせた。
「そうだ!一緒にお料理よくします!」
「あ、それいいですね♪どんなお料理されるんですか?」メモ帳片手に記者は身を乗り出した。
「実はたまに、『本当に三分で作れる料理』のレシピ開発をしてみることがあるんです♪先日も、圧力釜と超高速はやぶさ斬りとメラガイアーとマヒャデドスを駆使して、イザヤール様はとってもおいしい料理を本当に三分で・・・」
 瞳を輝かせてミミが言うと、記者は遠慮がちに口を挟んだ。
「えっと・・・それもできる方は限られると思うんで、もう少し普通のメニューを伺ってもいいですかあ?」
「あ、ごめんなさい」
「普通の、なあ。この前ダンジョン内で一緒に作ったのは、魚の切り身にハーブ代わりにいやしそうやきつけそうをまぶして焼いたものだったな」
 イザヤールが言って、記者は、ダンジョンで魚料理、なかなかいいですねとわくわくして聞き入った。
「イザヤール様が新技の『火炎斬り』で切ってくれて、私がメラゾーマで仕上げに焼いて、いやしそうとかをまぶしてから、仕上げにメラで炙ったんですよね♪」
「あれはいい焼き加減だったな。・・・ところで、もしかしたら『だいおうクジラ』は、厳密に言えば魚ではないのか?」
「魚料理って、だいおうクジラだったんですかー!?」
 記者の女性、思わずまるでサンディがするようなツッコミをしてしまった。だが、よく見れば、ミミとイザヤールは大真面目な顔をしながらも、目はかすかに笑っていることに気付いただろう。
「ごめんなさい、冗談です。今一緒に職業旅芸人なものでつい。ほんとは、昨日も一緒にビーフシチュー作りました♪」
 ミミの言葉に記者は安堵し、ずり落ちた眼鏡を直して、メモをした。
「さすが息ぴったりと評判のカップルでいらっしゃいますね、打ち合わせ無しに即席でボケられるなんて凄いスキルです~。他には何かございませんか?」
「後は・・・共通の趣味なあ・・・。強いて言えば、『錬金』か?」
「一緒に素材集めも、楽しいですしね♪」
「ついでにサバイバル訓練もできたりするから、一石二鳥だしな」
 楽しそうに話しているミミとイザヤールに、記者は大きく頷いて言った。
「なるほど、生活の一部になっている冒険全般を共通の趣味にすることで、常にほどよいスリルでフレッシュ気分が保てるのと、助け合いができるのが、ラブラブの秘訣なんですね~。いい記事になりそうです、ありがとうございます!」
 こうして記者は帰っていって、こんな回答で果たしてどんな記事になるのやらと、ミミとイザヤールは多少心配しながら見送ったのだった。

 その夜、人気のないキサゴナの丘で、ミミとイザヤールは、代わるがわる竪琴を奏でていた。星も雲に隠れていて、今夜は見えない。
「共通の趣味で、これのことを言うの、忘れてたの・・・。他にもたくさんあったよね、一緒にお散歩とか、市場見たりとか、古文書読んだりとか数えきれないくらいたくさん」
 ミミは呟いて弦を張り直した。
「全部言う義務も必要も無いだろう。気にするな」
 イザヤールは囁いて、弾いたことで小さな傷が付いたミミの指先を優しく取り、ホイミをかけた。ありがとう、と告げてから、ミミは長い睫毛を憂いで伏せて続けた。
「・・・でも、思い出しても言わなかったと思うの。私だけが知っているイザヤール様も、たくさん持っておきたいから。・・・私、欲張りなの」
「私だってそうだ」
「それに・・・イザヤール様、楽器まで使えるってもっとたくさんの人に知られたら、もっとモテちゃいそうで、心配」
 それを聞いてイザヤールは思わず軽く吹き出し、声を殺して笑った。
「こんな強面の男が竪琴を弾けたところで、それが人気に繋がるとは到底思えないが」
「だって・・・竪琴弾いているイザヤール様も、とってもすてきだし・・・。それに戦士の中の戦士、みたいな人がそんなこともできたら、そのギャップでクラッとする女の子、きっとたくさん居るもの・・・」
「そんなことを言うなら」イザヤールは笑いながら、ミミの踊り子のドレスの飾りに触れた。「おまえが踊る度に心配しなくてはならない私は、どうなる?」
「え、そんなこと・・・」
「ある」
 飾りを玩んでいた手は、そのまま美しい曲線を描く腰に回され、捕らえるように引き寄せた。ぴったりと着いた体のぬくもりを感じながらミミは目を閉じて、愛しい男の耳元で囁いた。
「イザヤール様・・・今度私がステージを頼まれちゃった時は・・・イザヤール様に伴奏お願いしても、いい?」
「ああ。だが、いいのか?」
「たとえ世界中の女の子が、鮮やかに演奏するイザヤール様に夢中になっちゃっても、決して渡したりしないから。・・・イザヤール様の追っかけができちゃっても負けないように、私、頑張ります!」
「だから、それはないと言っている」堪えきれずに声を立てて笑うイザヤール。本気でそう思っているらしく懸命に言うミミがおかしくも可愛い。「それに私の演奏は、エルギオス様のほんの真似事だからな。音楽の神に愛された者の腕には程遠い。人を魅了する演奏ができるというのは、それなりの才能と情熱が必要だ」
「でも私、イザヤール様の弾く竪琴の音、大好き」
「ありがとう。物好きでも、嬉しいぞ」
「物好きなんてひどい。・・・じゃあ、そんな物好きの子を好きになってくれたイザヤール様だって、物好きです」
「・・・一本取られたな。ああ、物好きだろうとなんだろうと、おまえが愛しい」
 苦笑し、それからそのまま愛情溢れる微笑みに変わって、膝に載せたミミをぎゅっと抱きしめる。それから、ミミが抱えていた竪琴を手に取って、囁いた。
「私が伴奏をするから、おまえが何か、好きな曲を歌うか笛で吹いてくれ」
「え・・・どうしようかな・・・じゃあ『精霊の冠』を」
 ミミはイザヤールの隣に腰を下ろし、笛代わりの「まてきの杖」を取り出した。そして、イザヤールの前奏を待って吹き始めた。笛と竪琴の調べは寄り添うようにぴたりと合い、丘から海に向かって、星がこぼれるかのような旋律が流れていく。曲が終わると、笛を離した艶やかな唇に、ゆっくりとキスが落ちた。

 共通の「何か」は、もちろん共に生きるのに大切なことなのだろう。けれどそれ以前に、互いに強く惹かれ合うから、共に居たくなる。それでいいと、二人の本能は告げている。強烈な熱情も、日だまりの穏やかさも併せ持つ幸運に浸りながら、二人は互いの手を探り、握りしめた。〈了〉

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