今日も日付ギリギリ更新であわわ。寒気が流れ込んできたとかで今夜から明日にかけて寒いそうですね。て言うか、寒いです。それでぬくぬく話となりました。冒険者の宿屋ってリッカの宿屋みたいな方が特殊で、男女雑魚寝の山小屋みたいな方がポピュラーなんではないかというイメージがあります。それにしても、今回もコンマ一ミリエロスシリーズ話っぽくなったような気もしますが気のせいです、たぶん。
今夜も寒かった。殊にここは、旅先の簡素な宿屋だったから。リッカの宿屋が如何に快適であるかを、今更ながら改めて実感する。ミミは冷たい指先をこすりながら、暖炉に薪を放り込んだ。
ここの宿屋の主は、あまりやる気のなさそうな若者だった。
「ちょっと前のニードみたいですね」
ミミが思わず言うと、イザヤールは笑った。
この集落の共同浴場は、宿屋からかなり離れていて、湯で温まった筈の体は、入る前くらい冷えきっていた。外を歩いた埃が落ちただけましだと、二人は暖炉の前で身を寄せ合う。
二人は、届け物をしに、このとある集落を訪れたのだった。箱舟で直接着陸できない山岳地帯のここに、一日がかりでたどり着いたら、訪問先はあいにく留守だった。一度訪れた場所になるから、明日ルーラで出直そうかとも思ったが、せっかくなので泊まっていくことにしたのだった。
「夕飯はおいしかったですね」
ミミが微笑んで呟くと、イザヤールは微笑みを返して頷いた。
「ああ、意外と悪くなかったな」
彼が「意外と」と言ったのには訳があった。食事はまあまあで、室内も一応清潔だったが、窓はがたついてしっかり閉まらず隙間風が忍び込んでいたし、寝具は寒さの割には薄く枚数が少ない。暖炉に向いてる側は暖かかったが、火の当たらない背中はぞくぞくしそうなほど寒かった。
二人は同時に立ち上がった。立ち上がってから、顔を見合わせた。そして、同時にベッドの毛布に手を伸ばしたのを見て、また顔を見合わせてから笑いだした。互いに相手が寒いだろうと、肩に毛布をかけてやろうとしたのだと気付いたのだ。
二人は一枚の毛布に仲良くくるまり、互いに微笑みを交わした。
「こうしていれば、あたたかいの・・・」
「そうだな」
暖かくなると、今度は心地よい睡魔が訪れてくる。薄い壁の向こうは、宿屋の食堂兼集落の酒場だ。壁越しに聞こえてくる、地元の者が集まって一杯やっているらしい喧騒も、まるで子守歌のようだ。
すると、眠気を忘れさせるかのように、薔薇色の頬に優しく唇が触れた。あたたかい大きな手は艶やかな髪をくぐり、桜貝のような耳たぶに指先が滑る。
イザヤール様が居てくれれば、どんな寒い場所も暖かくなる。ミミは内心呟いた。愛しい唇や指が体のどこかに触れる度、触れられた場所が熱を持っていく。それが甘美で、だがほんの僅かに怖くて、彼女はかすかな吐息をついた。
だが残念ながら、いつまでもこうしている訳にはいかない。入れ替わりに共同浴場に行って、帰りに壁の向こうの酒場に寄ったらしいルイーダとロクサーヌが、もうすぐ帰ってくる。
ルイーダは、地元のおかみさんたちと意気投合したらしい。ロクサーヌは、しっかり商売を始めていた。見知らぬ他人の中に混じって馴染みの声が聞こえるのも、何だか不思議な気分だ。おやすみをルイーダが告げている気配がするので、間もなく戻ってくるだろう。
「残念だ」
囁いて、イザヤールは唇をミミのそれに重ねる。
「部屋が一つしかない宿屋ですから、仕方ないですよね・・・」
旅の合間に休息することだけが目的の、冒険者の宿屋にはよくあることで、仕方ないとはわかっているが。それでもミミも寂しそうに呟いた。すると、イザヤールはいたずらっぽい顔で笑い、また囁いた。
「ん?もうひと部屋あったら、女の子たちの部屋ではなく、私と一晩中一緒に居てくれたのか?」
「え・・・それは」
何も考えず言った言葉の意味に気が付いて、ミミはうろたえ、赤くなった。からかうような、だが熱っぽく見つめてくる瞳が愛しく、そのからかう色がちょっぴり憎らしい。
「・・・いつも毎日、同じ部屋だもの」
彼女が少し恨めしそうに唇を尖らせて言葉の反撃をすると、「一本取られたな」と、彼は笑い、彼女を抱きしめて耳元で囁いた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
温かい体がミミにぬくもりを分けてくれている。ぎりぎりまでこうしていよう。互いに胸のうちでそう思い、一番端のベッドに並んで腰かけて、また身を寄せ合った。
本当のおやすみなさいは、誰かが部屋に戻るまで、先延ばし。〈了〉
今夜も寒かった。殊にここは、旅先の簡素な宿屋だったから。リッカの宿屋が如何に快適であるかを、今更ながら改めて実感する。ミミは冷たい指先をこすりながら、暖炉に薪を放り込んだ。
ここの宿屋の主は、あまりやる気のなさそうな若者だった。
「ちょっと前のニードみたいですね」
ミミが思わず言うと、イザヤールは笑った。
この集落の共同浴場は、宿屋からかなり離れていて、湯で温まった筈の体は、入る前くらい冷えきっていた。外を歩いた埃が落ちただけましだと、二人は暖炉の前で身を寄せ合う。
二人は、届け物をしに、このとある集落を訪れたのだった。箱舟で直接着陸できない山岳地帯のここに、一日がかりでたどり着いたら、訪問先はあいにく留守だった。一度訪れた場所になるから、明日ルーラで出直そうかとも思ったが、せっかくなので泊まっていくことにしたのだった。
「夕飯はおいしかったですね」
ミミが微笑んで呟くと、イザヤールは微笑みを返して頷いた。
「ああ、意外と悪くなかったな」
彼が「意外と」と言ったのには訳があった。食事はまあまあで、室内も一応清潔だったが、窓はがたついてしっかり閉まらず隙間風が忍び込んでいたし、寝具は寒さの割には薄く枚数が少ない。暖炉に向いてる側は暖かかったが、火の当たらない背中はぞくぞくしそうなほど寒かった。
二人は同時に立ち上がった。立ち上がってから、顔を見合わせた。そして、同時にベッドの毛布に手を伸ばしたのを見て、また顔を見合わせてから笑いだした。互いに相手が寒いだろうと、肩に毛布をかけてやろうとしたのだと気付いたのだ。
二人は一枚の毛布に仲良くくるまり、互いに微笑みを交わした。
「こうしていれば、あたたかいの・・・」
「そうだな」
暖かくなると、今度は心地よい睡魔が訪れてくる。薄い壁の向こうは、宿屋の食堂兼集落の酒場だ。壁越しに聞こえてくる、地元の者が集まって一杯やっているらしい喧騒も、まるで子守歌のようだ。
すると、眠気を忘れさせるかのように、薔薇色の頬に優しく唇が触れた。あたたかい大きな手は艶やかな髪をくぐり、桜貝のような耳たぶに指先が滑る。
イザヤール様が居てくれれば、どんな寒い場所も暖かくなる。ミミは内心呟いた。愛しい唇や指が体のどこかに触れる度、触れられた場所が熱を持っていく。それが甘美で、だがほんの僅かに怖くて、彼女はかすかな吐息をついた。
だが残念ながら、いつまでもこうしている訳にはいかない。入れ替わりに共同浴場に行って、帰りに壁の向こうの酒場に寄ったらしいルイーダとロクサーヌが、もうすぐ帰ってくる。
ルイーダは、地元のおかみさんたちと意気投合したらしい。ロクサーヌは、しっかり商売を始めていた。見知らぬ他人の中に混じって馴染みの声が聞こえるのも、何だか不思議な気分だ。おやすみをルイーダが告げている気配がするので、間もなく戻ってくるだろう。
「残念だ」
囁いて、イザヤールは唇をミミのそれに重ねる。
「部屋が一つしかない宿屋ですから、仕方ないですよね・・・」
旅の合間に休息することだけが目的の、冒険者の宿屋にはよくあることで、仕方ないとはわかっているが。それでもミミも寂しそうに呟いた。すると、イザヤールはいたずらっぽい顔で笑い、また囁いた。
「ん?もうひと部屋あったら、女の子たちの部屋ではなく、私と一晩中一緒に居てくれたのか?」
「え・・・それは」
何も考えず言った言葉の意味に気が付いて、ミミはうろたえ、赤くなった。からかうような、だが熱っぽく見つめてくる瞳が愛しく、そのからかう色がちょっぴり憎らしい。
「・・・いつも毎日、同じ部屋だもの」
彼女が少し恨めしそうに唇を尖らせて言葉の反撃をすると、「一本取られたな」と、彼は笑い、彼女を抱きしめて耳元で囁いた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
温かい体がミミにぬくもりを分けてくれている。ぎりぎりまでこうしていよう。互いに胸のうちでそう思い、一番端のベッドに並んで腰かけて、また身を寄せ合った。
本当のおやすみなさいは、誰かが部屋に戻るまで、先延ばし。〈了〉
たしかに宿屋は質素なイメージあります…
かえってあまり豪華すぎると冒険者はいりにくそう…
(勝手なイメージなのですが。)
さすがルイーダさん!おば…奥様方と意気投合ですか(^w^)
どういう話をしていたのでしょうか…?
まさか青春まっただなかのバカップルを紹介していたり…?
ロクサーヌさん…
商売魂すごいっ
出張商売ですねっ(*^_^*)
たまにでる意地悪なイザヤール様好きです~w
いっ色気ってやつですかね!?
いや~イザヤール様の色香強そう…ww
はっ!なんてことをっ(汗)
こんにちは☆そういえばリッカの宿屋、だんだん豪華になるに従って、スペシャルゲストのヤンガスが居心地悪そげになっていたことを思い出しましたw
ルイーダさんはおそらく、おかみさんたちと「あらあら、困ったご亭主ねえ。でもいいとこもあるじゃない。男っていくつになっても子供よね~」みたいな会話をしていると思います(笑)
イザヤール様、元来堅物キャラの筈なのに、どうしちゃったんですかねえ・・・(他人事みたく言う)。本当に男の色気を表現できてたら嬉しいです☆