ここのところ更新ギリギリですみません~。本日成人の日だったということで、いつが天使の一人前なのかな話。普通に考えれば、守護天使になったときなのでしょうが、実際のところは果たして・・・?やはり年齢かというと、それも何となく違うような気が個人的に致します。そして、天使の一人前と大人は必ずしもイコールではない気もします。
今日も天の箱舟内は平和だ。箱舟三両目にて、ミミはお茶を淹れており、自称「美少女妖精」サンディは、今日も「テンチョー」こと箱舟運転士アギロに叱られて、頬を思いきりふくらませていた。
「ナニよー、テンチョーってば!」
怒りながらガツガツクッキーを頬張るサンディに、ミミは心配そうにそっと紅茶を差し出した。
「どうしたの?」
ミミは尋ねたが、答えを期待して聞いたわけではなかった。
「ただ叱るだけならまだいーけどさ、呆れたようにアタシを見て、『まったくおまえはガキだよなあ』って!チョー失礼しちゃう!」
そうなの、とミミは呟き、それから微笑んで言った。
「アギロさんから見たら、誰だって子供みたいなものだと思わない?」
「そーゆー問題じゃないの!一人前のレディに失礼だと思わない?」
サンディがまたぷーとふくれると、そこへ運転をひと休みしたイザヤールが入ってきた。
「誰がレディだと?」
彼のからかうような声に、サンディの怒りが更に倍増した。
「ナニよイザヤールさんまでー!!イザヤールさんだって昔はどーせ、ミミのこともそーやって子供扱いしてたんデショー!」
ぐ、と言葉に詰まるイザヤール。
だが、それは。彼は内心呟く。無理にそう思わなければ、思い込まなければ、ミミと一緒に居られなかったからだ・・・。
「はい、イザヤール様もどうぞ」
二人の気を紛らわそうと、ミミは急いでカップを彼の前にも置いた。
「ミミ~、アンタってそーゆートコはみょーにオトナくさいよね~」
「そーゆートコってどんなとこ?」
「そーゆートコはそーゆートコよ!とにかくアンタって、子供っぽいのかオトナっぽいのかよくわかんない!」
気は紛れたが、矛先はミミに向いてきた。
「でも」だがここでサンディ、にやりと笑って言った。「そこもミミの魅力なんデショ?ね~、イザヤールさん?」
不意討ちの言葉の攻撃に、イザヤールは飲みかけていた紅茶を危うく吹き出しそうになった。
「まあな」
彼は素っ気なく答えて紅茶を飲み下したが、表情は図星だと語っている。
「ところでさ、ミミ、イザヤールさん、天使はいつ一人前のオトナって認められるわけ?」
サンディの興味は他に移ったらしい。二人は苦笑してから、顔を見合わせた。
「まあ・・・それはもちろん、守護天使になったとき・・・じゃないかな?」
ミミは答え、首を傾げた。イザヤールも頷く。
「でもさ~」サンディ、話すのに夢中になって、紅茶に砂糖を入れすぎている。「守護天使にならない内勤の天使もいるワケでしょ。それだけじゃ基準にならなくね?・・・甘っ!」
最後の言葉はもちろん、紅茶を飲んで叫んだのだ。
「う~ん・・・」
そう言われて、ミミは考え込んだ。じゃあ上級天使になったとき・・・かな?だが、それも何だか違う気がする。
「見習い天使ではなくなったときだろうな」
イザヤールはあっさりと答えた。
「とんちかよー!」
サンディは叫び、呆れたようにまた一つクッキーを口に入れた。
イザヤールはそんな彼女を見て笑ったが、その笑いは少し曇った。はっきり自覚することなく、いつの間にかそうなっていた。それが正直なところだ。
ウォルロ村の守護天使になったとき、とても誇らしく、ようやく一人前になれたと思った。
だが一方で、偉大な師エルギオスを超えるにはまだまだだとも自覚していた。対等になるためのスタートラインにようやく立てた。まだその段階だと知っていた。
それからいつの間にか、上級天使として認められる存在になっても、まだあの方を超えられてはいないと痛感する日々。そんな日々のときに、師との今生の別れは、そうとは知らずに訪れ・・・。
対等だと認められる日こそが、真に一人前となる日だと漠然と思っていたのに。その日は永遠に来ることはない。
「私は」イザヤールは、そんな思いを口に出した。「エルギオス様に対等な存在になったと認められたときこそ、本当に一人前になれると漠然と思っていた。だが・・・結局、その日は来なかった」
かすかに寂しげな笑みを浮かべるイザヤールに、サンディはいささかしんみりした気持ちになり、慌ててからかうように呟いた。
「じゃあさ~、イザヤールさんは、未だに半人前ってワケ?」
「かもな」
「冗談デショー!なら弟子取るなっつーの!」
そう、ミミを弟子にしてようやく、誰かを庇護する存在となってようやく、少しずつ大人としての自覚が芽生えてきたのかもしれない。
「・・・イザヤール様は、もうエルギオス様に一人前と認められていたのだと思います」
今まで黙って聞いていたミミが、瞳の陰影を濃くして、静かに、だがきっぱりと言った。
「どうして、そうだとわかる」
僅かにかすれた声で問うイザヤールに、ミミは煌めきを増した瞳で答えた。
「エルギオス様の思い出の中を訪れたとき、エルギオス様は、イザヤール様の意見に耳を傾けていて、そのうえでご自分の気持ちを伝えていました。・・・イザヤール様を、弟子というだけでなく、一人の上級天使として、対等な存在として、もう認められていたのだと思います」
「ミミ・・・。ありがとう」
イザヤールは静かに呟き、微笑んだ。それから、続けて笑いながら囁いた。
「おまえの方が、よほど私より大人かもな」
「え・・・そんな、そんなことないです」
思いがけないことを言われて、慌てふためくミミ。そんな彼女を見つめ、彼は内心呟く。
ミミ、おまえは。私の手をつかめなかったときか。ここ天の箱舟で、私に女神の果実を渡すのを拒絶したときか。私の代わりに、ガナサダイを討ったときか。・・・いずれにしても、私の手を離れて、おまえは、とっくに私を超える存在になっていたな・・・。
そんな彼の思いを悟ったように、ミミは囁いた。
「私なんてまだまだ・・・イザヤール様に教えてもらいたいこと、たくさんあります」
まだまだこの人には敵わない、ミミも思う。たとえ負け戦でも、最後まで信念を貫き通す強さを持つ、この人には。
「教えてほしーこと?保健体育カンケー?」
サンディが混ぜっかえした。
「さささサンディ!」
「まったく、サンディ、君という子は」
真っ赤になるミミ、呆れるイザヤール。
「だからアギロにガキだと言われるのではないのか?」
「ナニよー!イザヤールさんまでー!」
またもや膨れっ面になるサンディ。これで状況は最初に戻ってしまった。苦笑から、徐々に本当に楽しげな笑いに変わっていくミミとイザヤール。
天の箱舟は、どこへ向かうともなく、好天の空を翔けている。〈了〉
今日も天の箱舟内は平和だ。箱舟三両目にて、ミミはお茶を淹れており、自称「美少女妖精」サンディは、今日も「テンチョー」こと箱舟運転士アギロに叱られて、頬を思いきりふくらませていた。
「ナニよー、テンチョーってば!」
怒りながらガツガツクッキーを頬張るサンディに、ミミは心配そうにそっと紅茶を差し出した。
「どうしたの?」
ミミは尋ねたが、答えを期待して聞いたわけではなかった。
「ただ叱るだけならまだいーけどさ、呆れたようにアタシを見て、『まったくおまえはガキだよなあ』って!チョー失礼しちゃう!」
そうなの、とミミは呟き、それから微笑んで言った。
「アギロさんから見たら、誰だって子供みたいなものだと思わない?」
「そーゆー問題じゃないの!一人前のレディに失礼だと思わない?」
サンディがまたぷーとふくれると、そこへ運転をひと休みしたイザヤールが入ってきた。
「誰がレディだと?」
彼のからかうような声に、サンディの怒りが更に倍増した。
「ナニよイザヤールさんまでー!!イザヤールさんだって昔はどーせ、ミミのこともそーやって子供扱いしてたんデショー!」
ぐ、と言葉に詰まるイザヤール。
だが、それは。彼は内心呟く。無理にそう思わなければ、思い込まなければ、ミミと一緒に居られなかったからだ・・・。
「はい、イザヤール様もどうぞ」
二人の気を紛らわそうと、ミミは急いでカップを彼の前にも置いた。
「ミミ~、アンタってそーゆートコはみょーにオトナくさいよね~」
「そーゆートコってどんなとこ?」
「そーゆートコはそーゆートコよ!とにかくアンタって、子供っぽいのかオトナっぽいのかよくわかんない!」
気は紛れたが、矛先はミミに向いてきた。
「でも」だがここでサンディ、にやりと笑って言った。「そこもミミの魅力なんデショ?ね~、イザヤールさん?」
不意討ちの言葉の攻撃に、イザヤールは飲みかけていた紅茶を危うく吹き出しそうになった。
「まあな」
彼は素っ気なく答えて紅茶を飲み下したが、表情は図星だと語っている。
「ところでさ、ミミ、イザヤールさん、天使はいつ一人前のオトナって認められるわけ?」
サンディの興味は他に移ったらしい。二人は苦笑してから、顔を見合わせた。
「まあ・・・それはもちろん、守護天使になったとき・・・じゃないかな?」
ミミは答え、首を傾げた。イザヤールも頷く。
「でもさ~」サンディ、話すのに夢中になって、紅茶に砂糖を入れすぎている。「守護天使にならない内勤の天使もいるワケでしょ。それだけじゃ基準にならなくね?・・・甘っ!」
最後の言葉はもちろん、紅茶を飲んで叫んだのだ。
「う~ん・・・」
そう言われて、ミミは考え込んだ。じゃあ上級天使になったとき・・・かな?だが、それも何だか違う気がする。
「見習い天使ではなくなったときだろうな」
イザヤールはあっさりと答えた。
「とんちかよー!」
サンディは叫び、呆れたようにまた一つクッキーを口に入れた。
イザヤールはそんな彼女を見て笑ったが、その笑いは少し曇った。はっきり自覚することなく、いつの間にかそうなっていた。それが正直なところだ。
ウォルロ村の守護天使になったとき、とても誇らしく、ようやく一人前になれたと思った。
だが一方で、偉大な師エルギオスを超えるにはまだまだだとも自覚していた。対等になるためのスタートラインにようやく立てた。まだその段階だと知っていた。
それからいつの間にか、上級天使として認められる存在になっても、まだあの方を超えられてはいないと痛感する日々。そんな日々のときに、師との今生の別れは、そうとは知らずに訪れ・・・。
対等だと認められる日こそが、真に一人前となる日だと漠然と思っていたのに。その日は永遠に来ることはない。
「私は」イザヤールは、そんな思いを口に出した。「エルギオス様に対等な存在になったと認められたときこそ、本当に一人前になれると漠然と思っていた。だが・・・結局、その日は来なかった」
かすかに寂しげな笑みを浮かべるイザヤールに、サンディはいささかしんみりした気持ちになり、慌ててからかうように呟いた。
「じゃあさ~、イザヤールさんは、未だに半人前ってワケ?」
「かもな」
「冗談デショー!なら弟子取るなっつーの!」
そう、ミミを弟子にしてようやく、誰かを庇護する存在となってようやく、少しずつ大人としての自覚が芽生えてきたのかもしれない。
「・・・イザヤール様は、もうエルギオス様に一人前と認められていたのだと思います」
今まで黙って聞いていたミミが、瞳の陰影を濃くして、静かに、だがきっぱりと言った。
「どうして、そうだとわかる」
僅かにかすれた声で問うイザヤールに、ミミは煌めきを増した瞳で答えた。
「エルギオス様の思い出の中を訪れたとき、エルギオス様は、イザヤール様の意見に耳を傾けていて、そのうえでご自分の気持ちを伝えていました。・・・イザヤール様を、弟子というだけでなく、一人の上級天使として、対等な存在として、もう認められていたのだと思います」
「ミミ・・・。ありがとう」
イザヤールは静かに呟き、微笑んだ。それから、続けて笑いながら囁いた。
「おまえの方が、よほど私より大人かもな」
「え・・・そんな、そんなことないです」
思いがけないことを言われて、慌てふためくミミ。そんな彼女を見つめ、彼は内心呟く。
ミミ、おまえは。私の手をつかめなかったときか。ここ天の箱舟で、私に女神の果実を渡すのを拒絶したときか。私の代わりに、ガナサダイを討ったときか。・・・いずれにしても、私の手を離れて、おまえは、とっくに私を超える存在になっていたな・・・。
そんな彼の思いを悟ったように、ミミは囁いた。
「私なんてまだまだ・・・イザヤール様に教えてもらいたいこと、たくさんあります」
まだまだこの人には敵わない、ミミも思う。たとえ負け戦でも、最後まで信念を貫き通す強さを持つ、この人には。
「教えてほしーこと?保健体育カンケー?」
サンディが混ぜっかえした。
「さささサンディ!」
「まったく、サンディ、君という子は」
真っ赤になるミミ、呆れるイザヤール。
「だからアギロにガキだと言われるのではないのか?」
「ナニよー!イザヤールさんまでー!」
またもや膨れっ面になるサンディ。これで状況は最初に戻ってしまった。苦笑から、徐々に本当に楽しげな笑いに変わっていくミミとイザヤール。
天の箱舟は、どこへ向かうともなく、好天の空を翔けている。〈了〉
確かに天使が大人の域に、はいるときっていつなんだろ…?
翼の長さが80cmこえたら…とか?(個人差があるか…)
特技や技を合わせて20個以上マスターできたら。とか?
なんか天使は人間みたいに○○歳になったら成人~♪みたいに気楽(人間も気楽ではありませんが…)ですませてはいけない気がします(^_^)
ミミちゃんの言ってることあってると思います!
エルギオス様はイザヤール様の考えを否定せず認めて自分の考えも伝えていたので同じ立場の天使と認めていたのだと思います。(ミミちゃんの言っていたこととほとんど重なってしまいました…ごめんなさい(;_;))
サンディ…感動(?)の場面でそんなこと言わないの。あーあ。もうイザヤール様も呆れてるじゃんヽ(´ー`)ノ
サンディって空気がよめるのか、よめないのか…(ついでに私はまったくよめません)
おはようございます☆そうなんですよね~、天使は見た目の成長具合で決められなさそうというか。
イザヤール様は師匠に対等に扱われていたことにご賛同ありがとうございます☆
そのエルギオス様が、ずっと後に天使の上下関係の最たるものである「天使の理」を使って主人公の行動を縛ったことを考えると、皮肉というか無常を感じます。
サンディ、今回もやらかしちゃってくれてますがw彼女は、空気は読めると思いますが、照れとかいろいろあって、その場に相応しい言葉が出てこないイメージがありますw
師匠の跡を継いだり、自分に適任した仕事に就いた時や、師匠が身に付けている物を師匠から弟子に受け継がれたときが一人前と認められた証なのかなと思うのですが難しいところですね
こんばんは☆サンディ、もう間違いなくイザヤール様の中では子供扱い決定ですw普段が普段ですからね~。
天使の一人前基準、師匠が身に付けているものを受け継いだら、っていうのもステキですね~♪
適職というか、適所任務に就いたとき、というのもカッコいい☆
師匠の後を継いだら、だったら、主人公はウォルロ村の守護天使になった時点で、一人前ということになりますが、少なくともうちの主人公だと全然一人前感なくて・・・(笑)
いかに任務を遂行できるか、で判断されるのかもしれないですね。