セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

踊りってなんだろう

2013年04月05日 23時16分44秒 | クエスト184以降
今週は金曜更新できましたありがとうございますの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回はコミカルかつ如何にも追加クエストっぽい話となりました。ので、これまた書いていてたいへん楽しかったです。文中のラストテンツクに関する記述も、スーパーテンツクに関する記述も、本当に9モンスター図鑑2ページ目に載ってます。ドラクエワールドのこういうゆる~い脱力感が大好きです。

 ミミとイザヤールは、今日は自然タイプの宝の地図の洞窟に居た。新しい地図を手に入れたので、それがどんな場所か下調べに来たのである。
 地図の名前からある程度覚悟はしていたが、ここは早くも手強いモンスターが出てくるレベルの高い洞窟だった。そんなに潜っていないのに、既にスターキメラやダークトロルなど、強敵が出現している。ミミは職業スーパースター、イザヤールはパラディンと、そこそこバランスの取れているコンビ構成だったので、こまめな回復をしつつ順調に進めたが、今回は下調べだから、無理に深入りするのはやめようと相談していた。
 しばらくして二人は、ラストテンツクを含めた敵の一団に出くわした。ラストテンツクに敵全体のテンションを上げられてしまうととても厄介だ。ミミはバックダンサー呼びの構えを、イザヤールはジゴスパークの構えをした。できれば短期戦で勝負を着けたい。だが、ラストテンツクにハッスルダンスをされてダメージ回復をされてしまったら、こちらは回復と防衛に回らざるを得なくなり、一気に不利になる。
 やはりバックダンサー呼び一回とジゴスパーク一回では一ターンで敵を一掃できなかった。ミミはベホイミをイザヤールにかけることにし、盾の秘伝書を持つイザヤールは仁王立ちをしてこのターンをしのぐことにした。緊張感が走る。
 二ターン目、ラストテンツクは予想通りハッスルダンスを踊った!・・・筈だった。しかし足をもつれさせて転ぶという、前代未聞の失敗をして、ハッスルダンスは不発だった。
「おまえ何やってんだよー!」と、スターキメラの呆れ怒る声が響く。ギリメカラも、ミミたちにではなく、ラストテンツクにいかりくるっている!
 スターキメラの攻撃はイザヤールにさほどダメージを与えず、ギリメカラも怒りをぶつけ痛恨の一撃をイザヤールに放ってきたが、盾の秘伝書を持つイザヤールに弾き返された。
「ハッスルダンスを失敗するなんて・・・。でも助かったかも・・・」
 ミミは呟き、またバックダンサー呼びをして、決着したのだった。
 ミミとイザヤールが立ち去ろうとすると、倒れていたラストテンツクがよろよろと起き上がった。まだ戦う気かと二人が身構えると、ラストテンツクは立ち上がったものの、うつむいたまま力無く呟いた。
「ねえ・・・。踊りって・・・なんだろう・・・」
「え?」
「ボクはいつも全身全霊込めて踊っていたのに、魂が込もってないって、言われたんだ・・・。本当の踊りって、何だ、何だよっ・・・!」
 見るとラストテンツクは泣いていた。ここでミミとイザヤールは、ラストテンツクがイエローサタンに「おまえの踊りには魂が込もっていない」と言われてスランプになったという、モンスター図鑑の記述を思い出した。
「もしかして、まだスランプなの・・・?」
 ミミがおずおずと尋ねると、ラストテンツクは号泣した。
「わかんない・・・わかんないよっ・・・!言われたあの日から、踊りって何だ、って考えてたら、体も思うように動かなくて、失敗続きで・・・!」
 一つの芸事を極めんとする者がぶつかる壁に、このラストテンツクも遮られたのだと、ミミはかなり、イザヤールですらいささか同情して、彼?を見つめた。すると、ラストテンツクは急にミミににじり寄ってきて、円らだが真剣そのものな眼差しで見つめた。
「ねえ、キミも踊る人なんだよね?さっきバックダンサーまで連れてカッコよく踊っていたよね?ねえ、キミにとって、踊りって何なの?」
 いきなりなこの疑問を突き付けられて、ミミはかなり動揺した。踊る時は、考えると言うより、何かに身を委ねるように踊ってきた。それを言葉にすることは、難しかった。傷を癒す踊りなら、仲間を癒すことへの祈りを込めて踊るし、応援するなら、元気になってもらいたいという願いをひたむきに込めて踊るし、風のように舞うなら、風そのものになりきって自然と一体化し、心を無にする。それをどう伝えたらいいのだろう。
「え・・・と、ひとことでは言い表せない、の・・・」
 ミミが申し訳なさそうに答えると、ラストテンツクはがっくりと頭を垂れて呟いた。
「だよね・・・。言葉では、伝えられないよね・・・。でも、それなら!」急にラストテンツクの目が、キラキラと輝きだした。「ボクもスーパーテンツクと同じことをする!グビアナのダンスホールに潜り込んで、たくさんのダンサーの踊りを見て、踊りって何か、自分の目で確かめるよ!ねえキミたち、お願い、ボクをグビアナのダンスホールに連れてって!」
「え・・・えええ?!」
 確かに、スーパーテンツクが「全ての踊りを極める為にカツラをかぶり変装してグビアナでダンサー修行していたらしい」こともモンスター図鑑に載っている。でも、だからと言って連れてっていいのかなあ・・・とミミは少し悩んだが、イザヤールと相談の結果、勝手にダンスホールに潜り込まれるより、自分たちが見張っている方がまだマシだろうという結論に達した。ミミはクエスト「踊りってなんだろう」を引き受けた!

 洞窟を出る前に、とりあえず(焼け石に水でも)変装した方がいいだろうということになった。ミミは装備品袋から、ウィッグの数々を取り出した。
「どれがいい?あなたは男の子、だよね?なら男性ゲストからもらったウィッグがいいかな・・・」
 とミミが言いかけたのを遮り、ラストテンツクは「マーニャヘア」をしっかりと握りしめた!
「やっぱりダンスホール潜入ならこれだよ!これっきゃない!『おどりこの服』もばっちり持ってるし!」
「持ってるの?!」
 マーニャヘアと踊り子の服を装備したラストテンツクを想像して、ミミとイザヤールは笑っていいのか泣いていいのか複雑な気分になった。だが止める間もなくラストテンツクはさっさと装備してしまい、案の定二人は、笑いを堪えるのに必死に唇を噛み、ミミはうつむき、イザヤールは額に手を当てて思わず天井を仰いだのだった。
「イザヤール様、この変装で大丈夫でしょうか・・・」
「どうかな。・・・しかし、女装は案外悪くない手段かもしれないぞ。人を、特に女性を魔物と間違えるなんて失礼だ、ダンスホールの客はそんな心理が働くだろうから、多少おかしいと思っても声をかけづらいかもしれない。・・・たぶん」
「う~ん・・・。お願い、あまり目立たないように静かにしててね。あなたが魔物だってばれちゃうと、グビアナ中が大パニックになっちゃうわ」
「わかってるよ!さあ、行こう!」
 こうして、グビアナのダンスホールに向かうことになったのだった。

 グビアナに着くと、イザヤールは鎧のマントで半ばラストテンツクを覆うようにして歩き、ミミは旅芸人に転職して着なれた、しかも長くて布が多いスカートの踊り子のドレスに着替えて、イザヤールのマントの隙間から見えるラストテンツクをなるべく隠そうとした。顔を上げるなと、イザヤールがいささか乱暴にラストテンツクの頭を押さえたが、それでもやけにアンバランスな体型で、長い髪を地面に引きずりそうなこの珍妙なダンサーは、道行く人々の不審げな視線をちらちらと集めていた。
 何とかダンスホールに着くと、ミミの顔見知りのダンサーが、声をかけてきた。
「あらミミ、いらっしゃい・・・あら?ねえ、あなたの彼氏の後ろに居る子も、ダンサー・・・なの・・・?なんかものすごくテンツクに似・・・」
「わっ、私の友達なのっ!」ミミは慌てて叫んだ。そして、声をひそめて必死に囁いた。「言わないであげて!この子、テンツクに似てるってこと、とっても気にしているのっ・・・!」
「そ・・・そうなの、ごめんね。ゆっくりしていってちょうだい」
 ダンサーが行ってしまうと、ミミとイザヤールは思わず安堵の息を吐いた。危なかったな、とイザヤールが呟く。
「ど、どーしてこんな完璧な変装が見破られかけたんだろうっ」
 動揺するラストテンツクを、ミミは困った顔で、イザヤールはいささか冷たい視線で見つめた。
 今日のグビアナのダンサーたちも素晴らしく、客たちもステージが始まってしまえばみんな舞台に注目してしまうので、ミミたちは安心して見学に専念できた。
「ほとばしる情熱っ、華麗な技術っ、人間たちもやるよね。でも、ボクだって負けていないのに。何が・・・何がボクのダンスには足りないんだろう・・・」
 ラストテンツクがまた悩み始めたところへ、ミミは急にホールのオーナーに肩を叩かれた。まさかモンスターを連れ込んだことがばれたかと一瞬ヒヤリとしたが、どうやら違うらしい。
「おお、一流の踊り子のおまえさんも今夜来ていたとは、ちょうどよかった。新人たちにダンスとはなんぞやと教えたいから、ステージに上がって、ひと踊りしてくれんか。言葉より一流の踊りを見るのが結局一番早く会得するもんじゃ」
 急に言われてミミは少し動揺しながらも、イザヤールの微笑みに促されてステージに上がった。
 前奏の間に曲のリズムを取り、体も心も弾ませる。体が動き始めれば、思考はシンプルな、かつひたむきなものとなる。楽しむこと、楽しんでもらうこと。舞うことで、水になり炎になり、風にも、大地にもなれる。そして何より、誰よりも一番熱い眼差しで見守ってくれる一番愛しい者の為に、踊る。あなたが愛しいと思って踊るダンスが、愛しいあなたに幸せな時間を与えてほしい。そんな思いを、言葉ではなく体と心と曲の一体感で示して脚は軽やかにステップを踏み、手は翼のようにたおやかに動く。
 ミミがダンスを終えて、少し恥ずかしそうにイザヤールたちのところに戻ってくると、燃えるような瞳のイザヤールを押し退けるようにラストテンツクが割り込んで、瞳を輝かせて言った。
「確かに受け取ったよダンサーの心、踊りとはなんぞやの答え!素晴らしかったよ!」
 ラストテンツクはささやかなお礼にと「エナメルのくつ」をくれた!そして続けて言った。
「・・・よ~し、このままイエローサタンのとこに乗り込んで、魂の踊りを炸裂させてギャフンと言わせてやる!」
 言うやいなやすぐに駆け出してホールを飛び出した為、ミミとイザヤールは慌てて後を追った。

 イエローサタンの居る洞窟にやって来ると、そのイエローサタンも、腰をくねらせてダンスの特訓をしていた。
「今度は魂が込もっていないなんて言わせない!見ろボクの渾身のダンス!」
 叫んでラストテンツクは踊り始めた。見ていたミミとイザヤールが思わず感動してしまうほど、素晴らしいダンスだった。
 イエローサタンはじっと眺め、ダンスが終わると、静かに言った。
「実に素晴らしい踊りだよ・・・」
「ホントに?!やったあ!」
 イエローサタンが認めた。そのことで感激して目を潤ませるラストテンツク。だが、その後イエローサタンが続けた言葉で、ミミとイザヤールは愕然とした。
「おまえに足りなかったのはその色気だ!ダンスの魂とはすなわち悩殺!見事だそのせくすぃーさ!これでおまえの踊りもパーフェクトだ!」
 そういえば。ラストテンツクは、まだマーニャヘアとおどりこの服を装備したままだった。
 そんな理由かーい!サンディが居たら、そうツッコミを入れていたところだろう。彼女が出張ネイルに行っていたのが不幸中の幸いだった。しかし、それはともかく、踊りの魂はそんなのではないと、なんとしても伝えなくてはならない。でないと、ラストテンツクの現れるダンジョンはこれから先、別の意味でたいへん恐ろしいことになってしまう。
 それからしばらく、ミミとイザヤールは、踊りの魂とはそんなものではないと、イエローサタンとラストテンツクを説得するのに全力を傾け続ける羽目になってしまったのであった。・・・踊りって、なんだろう・・・?〈了〉

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 翼のリング | トップ | バスボールの中身六つめ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿