須貝英の『イングリッシュ商店』

箱庭円舞曲の俳優・須貝英が、徒然なるままに綴ります。

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振り返れ、ここ最近!!(1)

2010年08月05日 | 今日の一人
どうも、須貝です。


身辺的にはワークショップやリーディング公演を控えて全然落ち着いていませんが、無理矢理ここ一ヵ月半のことをまとめたいと思います。今やっておかないといつまで経ってもやらなそうなので。まずはこちら。


○国際交流について。


いきなりどどんとデカい話です。が、まぁそんな大したことは話しません。


東京で7月19日まで、鳥取で24、25日と上演された柿喰う客の『Wannabe』という作品。自分史上最長の上演期間でした。その間考えることもたくさんあり、本当に、自分の役者としての裾野を広げてくれた公演だと思います。

この公演、目的は多々あれど、アジア三国の若者たちが共に芝居を作るという挑戦的なテーマを持っていました。一つのものを創作する上で、文化や言葉の壁は越えられるのか、ってことですね。


僕が最終的に至った結論、それは「ノー」です。


意思を伝え合うことは出来る。仲良くなることも出来る。「演劇」という共通言語によって大まかな考えを理解し合うことも出来る。だから、一つの作品を作ることにそれほど難しさは感じませんでした。しかし、仲良くなればなるほど、理解しようと思えば思うほど、言葉が、生活が、文化が、壁となって押し寄せてくるのです。

本当に深く理解し合うためには、やはりどうしても言葉が必要です。パッションや共に過ごした時間の濃さでカバーできる部分もありますが、ある一定のレベルを超えることはどうしても出来ません。なぜなら僕らは演劇において言葉を駆使しているからです。これがもしダンスや音楽であれば事情も違ったかもしれませんが。

さらに、例え言葉を覚え完璧に操れたとしても、結局僕らは中国人でもないし韓国人でもないという現実にぶつかる。僕は両国語を共に全く操れませんが、もし操れたとしても彼らが吸った空気の匂いを知ることは出来ないと、当たり前のことを強く感じさせられたのです。どんなに理想を語ってもこれは絶対にぶつかる壁です。


思うに、こういう異国間の創作活動(特に演劇、なのかもしれないけど)にはいくつか段階があって、まず一つ目の段階はパッションで乗り切ることが出来る。なんだ、俺たち違うと思ってたけど案外一緒じゃん、やってけんじゃん。

しかしその次、第二段階に、近付いたが故に顕在化する言葉や文化や生活習慣の違いがやってくる。これは死生観とか恋愛観とかも含めてです。もちろん日本人同士でもこれらのことが全然違うことも多々あるわけで、日本人同士でも越えられないことが多い。だからこれは異国間だからじゃなくて人間同士だから乗り越えられないものなのかもしれないけど、それが異国間だとよりはっきり感じられて、ほとんど絶望に近い気持ちになる。

大事なのはこの第二段階だと思うんです。そうか、やっぱり俺たち違うんだ。まずはそこを自覚し合わないと、第三段階に進めない。第三段階は、まぁ違うけど、やってみようよ、お互い変われないかもしれないけど、それでも一緒にやることに意味はあるよ、という段階だと思うんです。変われない、変えられない、理解し合えないなら、その違いをどう生かせるか。またはいかに殺すか。違う国の僕らがどんな作品で誰に向けて何を伝えればより効果的か、面白いか。そこまで突き詰めてやっと、国際交流だと思うんです。

今になって思うと、僕らは第一段階をクリアすることで満足し、そのせいで停滞してしまったのかもしれません。


僕がここまで話していること、すげー当たり前のことです。読んでいる方の中にも、「お前に言われんでもそんなん当たり前や、知っとるわ」という方がたくさんいらっしゃるでしょう。しかしこれ、「多分そうなんだろうな」と思っているのと、「あぁやっぱり実際にそうなんだ」と実感するのとでは全然違いますよ。つまりは、そういう経験をさせていただけたこと、機会を与えてもらったことが、一番価値があることなんです。だから僕は、それをちゃんと生かさなきゃいけない。日本の演劇界を背負っていくために。本気で言ってますよ。だって僕らが背負わなきゃ今活躍してる人たちはどんどん死んでっちゃうじゃん。だから、自信なくてもバカにされるのが分かっていても、「大丈夫っす、ちゃんと背負っていきますんで」って言えなきゃダメだと思うんですよ。


この公演を通じて、やっぱり自分は意外と日本人で、日本人であることに支配され、かつ形成されているのだと強く思いました。そしてそれは彼らも同じなんです。お互い誇りを持っているんだから、素敵なことじゃんと思います。そんな彼らと親友になれたことが、凄く尊いことで、だからこそ僕は、もう一回挑戦したい。次にやる時はもっと先に行ける。先に行かなきゃいけないんでしょうね。


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