新しい。。
発展途上のBLレーベルはとりあえず買ってみる(存続のためにも)のですが、
同レーベルの
『恋を胸に』(桃山なおこ著)は絵柄にいちかばちか、
このアユヤマネさんは、冒険だ…とさんざん迷いながら「えいやっ」と買いました。
この絵柄(でBLって)駄目な人多いと思います。でも、いいです。
初めての絵柄には収録1作目の半分あたりでもう慣れました。
三丁目の夕日を初めて読んだ時もこんな感じだったかな?
ハズレに当たりはしないか(変な日本語)という不安もすぐ氷解。
タイトルも好きだからいっこいっこ感想書いちゃうかー。
つか漫画家本人が描く題字って今まで一条ゆかり様の一回しか見たことないよ。
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サヨナラゆりかご ▒
「規則で特別な理由でも無い限り、担任でもない僕が家庭訪問なんてできないよ」
「とくべつな理由って? 俺傘持ってない」
中学の国語教師橘は授業中居眠りばかりの柚木に言いくるめられ、
毎週土日、家事と幼い弟の世話に追われる柚木の勉強を見ることになる。
アート系BL誌MARBLE vol.4掲載のデビュー作。
こういう題材ってBLでも非BLでもよくあるけど、タッチが違うとほんと違う。
玄関で裸足とか冷たい布団の中の人肌の恋しさとかがなんか懐かしい。。
すごい冷たくて寒いのに、頭の中ぐるんぐるんしてるからいつまでも動けない感覚。
柚木くんの部屋の家具の配置もいいな。赤ちゃん見ながら宿題する日常となるとこう、で。
切ない話にしようと思えばできるようなキーワードたくさん入ってるけど、
短くてかわいくてあったかい話になってます。最後のポケットがかわいいよ!
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タイニー颱風(たいふう) ▒
「さみしいのは、台風みたいにとにかく通過しちまうまでやりすごすんだ」
中2のミチタカは憧れの幼馴染みと同じ高校に行くため、
父親の転勤にはついて行かずに叔父あっちゃんの家で暮らし始める。
でもあっちゃんが結婚しない理由を知っているミチタカは少し戸惑って…。
若い兄貴的なあっちゃんの職業が保育士っていうのが最後効きますね。
サヨナラゆりかごも少年を保護する立場の先生、だったし。
一見ショタっぽいですが、大前提は「愛しいものは守る」だと思います。
その安心感がチラリズムに作用するの。…何を書いているのかしら。
あっちゃんが自分の核にあることを簡潔にミチタカに話すのがすごくいいな。
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泣くのはお止しよ仔リスちゃん ▒
「君は楓君にそっけないから子どもは嫌いかと思ってたぜ」
「あいつは『子ども』に入りません」
「僕の話題? 僕の話題? 人気者ー♪」
佐々は新しいバイト先でいきなり自分を「先輩!」と猛烈に慕う楓と出会う。
小学校のサマーキャンプで一緒だったと言うが、佐々はさっぱり覚えていなかった。
あのーダイナーって何ですか。田舎者なのでわかりません。
ハンバーガーもビールもあるんですか?おいしそう。なんか腹減ってきましたよ。
お話はまたしてもかわいいです。バイトが楽しそうで楓が素直で。
なので、楓の回想シーンのセリフがちょっと意外な感じでいい。
若い文学少年のような精神的な強さ、PTMの知世ちゃんを思い出しました。
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りんご畑に続く道で ▒
「――んで。なんで俺ばっかり嫌われるんだ」
国内一の名門校の寮生芳野は祖父が学園の出資者であるために、
いつも他の寮生から過剰になじられ、素行の悪さを責められていた。
そんなある日、芳野は学園の食堂で働く槙と出会い、親しくなっていく。
このお話はなんだか映画のようです。
「さよなら子供たち」(まだ見てないけど)や
「寄宿舎」(まだ見てないけど)のような。
主人公が優等生グループにいいようにあしらわれてるのにはどきっとしました。
でも重い痛い激しい心の動きをこんなにやさしく、受け取りやすく描けるんですね。
最近「さよなら子供たち」と「寄宿舎」のビデオをそろそろ見ようかという気になってて、
このお話はそのためのタイミングのいいステップになりそうです。
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ごめんね柳ちゃん ▒
「ごめん柳ちゃん」
恋人に追い出されては自分のところに転がり込んでくる友人。
居候なのにあつかましくて、でも結局聞き入れてしまう。いつもその繰り返し…。
これはこの短編集の中で一番読み返せないお話。
でも実際読み返さなくなはく、読むたびにつらくなってます。
押しかけてくる時も出て行く時も「ごめんね」。
ずるくてあつかましくて、いい加減で態度でかくて軟弱で、やさしい奴。
ユギさまの落語オヤジの話にもこういうのあったなあ。
「続きはまたいつか」ということなので、早く読みたい。どうなるんだろう…?
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待つ宵草 ▒
「君は若いからそういうことを云う。今に…」
「先生にとって、僕はそんなに子供ですか。僕は、自分の心の内くらいすっかり解っている」
時は大正。小説家・田島晃遥は親友の忘れ形見である正輔と二人で暮らしていた。
ある日、晃遥は正輔が自分に嘘をついて街に出かけたことを知って…。
ラスト2ページが特に素晴らしい。これが描き下ろし!
約束を持ち掛ける側の切なさ、何もかも包んであげたいほど真剣な気持ち。
願わくば…という気持ちになる。この約束が果たされますように。
大正(か昭和初期)の雰囲気も堅苦しい自己陶酔的な扱い方じゃなくてすごく自然で、
この短編集の中で一番読み返すお話。大好きです。
先に読んだ『恋を胸に』は、bassoさんとやまがたさとみさんあたりをさ迷ってる感じで、
描線が太くてなんとなく不安定な線が目に止まるのと、
モノローグは光るのに会話とキャラの反応にピンとこなかった。
もっと描いて描いて描きまくったあとの作品が読みたいかな。
そしてアユヤマネさんにはもっと発表の場を。掲載1作でコミックスて。
でもジャンル本にはあんまり載せてほしくないなあ。他のBL誌にも合わないし。
ずっと描き下ろしでコミックスだけ出してほしい気がする。
もっとカラー増量で、いっそ絵本的なBLレーベルをこの人のためだけに作ってほしい。
こんぺい荘のフランソワさんのようにこれからも描きたいものを描き続けてほしいです。
>> アユヤマネさんHP
うら <<
(Webまんががあります)
>> 多田歩実さん名義HP
あゆ缶 <<
なんかファンレター書きたいよ。