すじにくシチューの意見

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社会人が理系の大学に社会人入学するなら

2017-05-07 20:21:46 | 日記
もし文系大学などを卒業した社会人が、理系の大学に入学するなら、物理学科に進学するのが良いだろう。

たとえ電気工学や機械工学に興味があっても、それら工学系の学科には、行かないほうが良いだろう。

何故なら、それら工学系の学科では、現代ではろくに物理学教育をしないのである。

勘違いしてほしくないが、べつに、「工学部では相対性理論とか解析力学の教育をしない」とか言おうとしてるわけではない。

そうではなくて、物理学者が工学部生に向けて書く「力学」の教科書や「電磁気学」の教科書などを読んで計算練習すれば分かる程度のことすら、工学部ではロクに教育されないのである。

まず電気工学科では、教養課程で大学初歩の「力学」を習う以外には、力学については、ろくに力学を勉強しない、という有様である。

工学部の力学の授業は、後期の終わりごろまでに、慣性モーメントや角運動量の典型的な公式と問題の解き方をいくつか暗記させて(いちおう授業では教員が公式の導出を紹介するが、あまり学生は分かってない。そもそも、学生は他の専門科目で忙しい。)、ハイ終わり、という感じである。

また、機械工学科で習う「工業力学」などの「力学」は、物理学で習う(ベクトルや微分などを用いる)力学とは異なり、高校レベルの力学知識で特定の近似モデルの問題を解くというだけの暗記問題であり、大学物理の「力学」とは、まったく無関係である。いくつもある近似モデルのパターンを覚える・・・というのは、その業界の専門知識であり、物理ではない。そのくせ、大学の定期試験では、やたらと難しい問題を出してくるので、タチが悪い。

例えるなら、中学入試の難関中学の難問を、高校に入ってから解かされるようなもんだ。確かに難しいけど、レベルは低い学問、・・・という事だ。


しかも、その工業力学が解けないと「力学すらも出来ないバカ」のレッテルを貼られるのである。

しかも、仕方なく、いくつもある問題パターンを覚えて(実質的な暗記科目なので覚えざるを得ない)解こうとしても、「短時間で大量の(そこそこ難しい)問題を解く」という、物理とは無関係のテクニックを要求される。


機械工学科には、このような「力学」が多い。


電気工学科の場合も、似たようなもんだ。なんというか、電気工学科の「電磁気学」と、物理学科の「電磁気学」とは違うのである。電気工学科の「電磁気学」の内容とは、国家試験の電気主任技術者試験1種(かなり難しい。合格率3%)の過去問練習であり、物理法則の理解は目的とは、していない。

そして、工学部の電磁気学のまた「短時間で大量の(そこそこ難しい)問題を解く」テクニックを要求される。

まさに、中学入試の難関中学の難問を、高校に入ってから解かされるようなもんだ。確かに難しいけど、レベルは低い学問である。

いっぽう、物理学科の場合、中学高校までの物理教育や数学教育があるので、あまり「中学入試の難関中学の難問を、高校に入ってから解かされるような」問題は出しづらい。


つまり工学部では、理学部や物理学科の人からは想像を絶する低レベルな教育が行われており、(定期試験などにおいて、)単に難問なだけの(物理学的には)低レベルな問題を出題するという、物理学理解においては低レベルな力学や電磁気学の教育をしている学校がある、・・・少なくとも、そういう学校が野放しにされている。

工学部を卒業して優秀な技術者や研究者になっている人たちがいるが、それは大学入試までの教育のタマモノであろう。要するに、高校教育や予備校などが立派なのである。

あるいは、団塊世代以上の年配の技術者なら、その人の受けた教育成果は、日本各地の大学に、教養部がまだ存在していた時代の成果だったりする。

さて、困ったことに日本では、物理学者が、こういう工学教育の形骸的な事態を把握していない。もしくは無視している。

そのため、理科教育や大学教育の評論を語る物理学者などが、トンチンカンな評論をしている。


だから、もし文系大卒の社会人が、理系への転身を考えて理系の大学に進学するなら、物理学科に進学するほうが良い。

大学の物理学科の物理学の力学や電機磁気学は、本当の意味で「高度」であり難解である。もしかしたら、せっかく社会人入学をしても単位が取れず卒業できず、物理学科を中退するハメになるかもしれない。また、かろうじて物理学の力学や電磁気学を単位を取れる程度には習得しても、相対性理論やら解析力学を理解できずに中退するハメになるかもしれない。

また、もしかしたら物理学科も、工学部とは別の面において、形骸化している箇所もあるかもしれない。もしかしたら、物理学科でも科目によっては、過去の物理学者の学説を鵜呑みにして丸暗記してる箇所もあるかもしれない。

しかし、少なくとも物理学科における力学と電磁気学については、計算と実験によって大量の検証が行われている。

また、たとえ大学を中退をする事になっても、物理学科に進学すれば、少なくとも力学と電磁気学の学習においては、ごまかしのない力学と電磁気学を相手に格闘した経験は残る。そっちのほうがマシであろう。

物理学卒でも、電気技術者や機械技術者は居る。

結局、工学技術を本気で習得したいなら、工学の教科書に書いてあるような物理学的に半端な計算練習ではなく、大学の物理学で習う正統な力学・電機磁気学などを計算練習するのが良い。学校で習うレベルの工学計算なんて、企業は信用していない。

数学も同様である。制御工学などの微分方程式みたいな計算を覚えるよりも、まずは自分で、微分積分やら線形代数をもっと学んで計算練習をして、さらに微分方程式も複素関数論もフーリエ解析も、もっともっと学んで計算練習をするのが良い。

零細企業にとっては、大学で習うような工学計算は煩雑すぎるし、一方、大企業や最先端の研究開発現場では、大学で習うような工学計算は、物理学的・数学的には稚拙で更にゴマカシも多く、子供だましである。

帯に短し、たすきに長し、である。

大学物理の計算練習は、最初は大変だが、長期的には、そちらのほうが良い。だが困ったことに、日本の製造業は、大学で習うレベルの工学計算を信用してないにもかかわらず、肩書で採用をするため、工学部の卒業生を採用したがる。