すじにくシチューの意見

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日本工業大学の例のアート作品の火災事故についての、私の考え

2016-11-23 21:43:30 | 日記
まず、私の意見は、ネット上の各所(2ちゃんねるやまとめブログ、ツイッターなど)の意見から影響を受けた、寄せ集めの意見になってしまうが、しかし、一箇所でまとまった意見を発表してる人がほとんどいないので、このブログで私なりの意見をいう。

あのカンナ屑を用いたジャングルジムの火災事故についての評論で、「安全への配慮が足りない」とか「知識が足りない」とかの意見があるが、私は、違うと思う。

「配慮」ではなく、事前の「検証実験」が何度も必要なのであろう。

たとえば製造業などでは、新製品をつくるとき、じっさいに試作品をつくり、それを様々な条件下において、安全性などの実験をする。図面だけでは分からないので、試作品をつくるのだ。

医薬品でも、動物実験や治験をして、それで安全性を確かめるだろう。

では、なぜ、あのジャングルジムで、そのような実験をしなかったのか、あるいは、実験が不足したのか。

おそらく、そもそも、どんな検証をすればいいのかすら、なかなか、事前には設計者には分からないのだろう。

事故が起きた後だったら、「耐火性について、もっと検証すべき」と簡単に外野は言える。でも、そもそも他にも検証すべき項目は幾つもあり、たとえば耐久性、加工性、重量、手触り、接合方法、地面設置方法、・・・など幾つも検証項目があり、決して耐火性だけを検証するわけではない。


これがもし自動車の検証実験だったら、既に世の中に自動車は存在してるので、どんな検証実験をすればいいのかは、今までの自動車開発のノウハウを参考にできる。

でも、アートは違う。そもそも既存の大量生産された製品には囚われない作品こそが「アート」とされてるのだから、これから作ろうとする「アート作品」は当然、まだ大量生産されてない物になり、その結果、そもそもどんな検証実験をすればいいのかすらも未知である。

アート作品は、製造業などとは違って、検証実験の手法が統一されてない。そもそも、アートは、決して製造業のようには開発手法がパターン化できないからこそ、アートなのだと世間的に考えられてる。

安全性への「配慮」不足などと批判があるが、そもそも設計の際に何に配慮すれば安全になるかすら、アートでは、それが未知になりやすいのだろう。


だから安全性のためには、とにかく、試作品をつくり検証実験を念入りにするしかない。しかし、結果的に、検証実験が不足して、学生らは耐火性が損なわれたジムの設計をして、火災による死亡事故を起こしたわけだ。

そして、むしろ、その検証実験不足をまねいた原因こそが、おそらく、余計な「配慮」であろう。投光器による加熱が発火の原因と考えられてるが、投光器をジャングルジムに近づけた学生だって、もしかしたら「夜なので、暗くて、中の子供が危ない。手元をあやまって、落下するかもしれない。だったら明るくしたほうが、事故が起きないだろう。」という配慮(まちがった配慮だか)をしてしまったのかもしれない。

あるいは、「アートには製造業的な手法はあまり持ち込むべきではない」などの間違った配慮が、あったのかもしれず、その結果、検証実験を減らしてしまったのかもしれない。そうだとしても、この大学だけを責められないだろう。じっさい、日本各地の学校での美術の授業の木工作品や、文化祭などで作成される木造構造物で、どんだけ安全性の検証実験がされてるのか。まったく、文化祭の木材作品の検証実験なんて、されてないだろう。

つまり、決して「配慮不足」が事故を起こすのではなく、「まちがった配慮」が事故を起こすのだろう。

このように、いくつも考えられる配慮のなかで、どんな配慮が事故を起こさないために必要な配慮で、どんな配慮がまちがってて危険な配慮かなんて、じっさいに試作品をつくって何度も実験をしてみないと分からない。


さて、学生への他の批判として、「カンナ屑が燃えやすいなんて常識で分かるだろ。知識があまりにも足りない。」という意見もあるが、私は、それも後知恵の意見だと思う。

たしかに木製の物質が燃えやすいのは常識で分かるよ。でも、カンナ屑やオガ屑にすると燃えやすくなる事なんて、土木作業員でもない普通の人は、いちいち意識しない。

建築のプロとしてなら(あの事故をおこした作品は建築学科の学生達の作品)、安全性の知識が足りないのは分かるよ。でも、そもそも学生はプロではない。あくまでアマチュアだ。六大学野球がプロ野球でないのと同様に、大学生の作品もプロ作品ではない。もっとも、教員の監督責任を問うのは分かるよ。


なお、他の理系の大学がああいった事故を起こしてないのは、私が思うに、他大が単にアートイベント等に参加してないだけであろう。決して、他大の理系学部の安全教育のレベルが高いわけではないだろう。私は、法政大学の電気電子工学科に通ってて中退し、その後、東京電気大学の理工学部の知能機械工学科に通ったが、そもそもアートイベントに参加する機会なんて、それらの学校の授業になかったし、木材の取扱いに関する安全教育なんて受けた記憶もない。