杉田劇場から

2005年2月5日にオープンした磯子区民文化センター杉田劇場のスタッフが綴るブログ。公演案内の他に美味しい情報も♪

杉田十境眺望図に描かれたもの

2021-07-21 | 地域の歴史

 熊野神社の杉原宮司からいただいた「杉田十境眺望図」。一恵斎芳幾の浮世絵だ。開港当時の根岸湾から眺めた風景が描かれている。主な名所にはそれを示す名称も入っているが、中にはよく分からないものも。

 そこで、『磯子の史話』を紐解いてみたら……

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 杉田十境として、こんなことが書いてあった。

1 刹干樹 東漸寺の仏殿前の大杉、樹齢千年という大樹で、里見兵乱の時に旗を立てたという。昭和18年惜しくも枯死した。

2 虎渓橋 (東漸寺)総門内にある橋をいう。今名残の弁天池の流れがあって、参道に橋があった。総門と山門(桜門)の間にあった。

3 琵琶池 (東漸寺)仏殿前の弁天池のこと。形が琵琶に似ていたか、中の島に弁天祠があったからか。

4 屛風ヶ浦 門前の杉田・中原と続く美しい砂浜、沖に房総の山を望み、白帆が点綴。

5 桐ヶ谷 中原の奥地、丘に囲まれ、北原田の水田を前景、大霊山を背景とする美しい景。

6 凌雲峰 桐ヶ谷の西側の山で、緑の木々に囲まれ、頂に滄海を一望する観瀾亭があった。

7 北湖峰 屏風の海を洞庭湖に見立て、湖を北から抱くように見える森の離れ山。または不動山のこと。

8 南湖峰 洞庭の湖水の南側にある山のことで、妙観寺山のことであろう。

9 伽沙羅山 北湖峰のうしろ、海に迫った断崖の山、浅間神社のある山をいう。

10 吐月峰 南湖峰のうしろ、南方富岡境の海に迫る断崖の崎山のこと。

 

 凌雲峰というのは、桐ヶ谷の西側の山とされている。現在は開発されていて昔の風景を見ることはできないが、埼玉大学の今昔マップで大体の様子を探ってみた。

 左の地図は明治36年測図、同38年製版の「杉田」地図。右は現代の地図。

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 桐谷の地名のところに鳥居の記号がある。これが熊野神社だ。その北西方向に標高が書かれている。50、60、65.2とあるが、どうやらこの65.2メートルがいちばん高い所のようだ。もしかしたらこれが凌雲峰なのかもしれない。

 『磯子の史話』では「緑の木々に囲まれ、頂に滄海を一望する観瀾亭があった」と書かれている。「瀾」というのは「らん」と読み、大波を意味する。ここは根岸湾の波を眺める絶好のポイントだったようだ。

 また、南湖峰というのは、洞庭湖の南側にある山のことで、妙観寺山のことを意味しているという。その南湖峰のうしろ、南方富岡境の海に迫る断崖の崎山が「吐月峯」だという。

 で、その「富岡境の海に迫る断崖の崎山」とは……どこを指すのか?

 調査はまだまだ続く…

by うめちゃん



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