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老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

ロシア民話 ”不死身カシチェイ”のこと

2006-04-16 22:24:39 | Weblog

ロシア民話の悪役である不死身のカシチェイに興味を持ってロシアのWEBサイトを検索したところ”不死身カシチェイを探索しよう。4月1日テーゼ”というサイトが見つかった。リムスキー=コルサコフも歌劇「不死身のカシチェイ」を創っている。ロシア民話に絶えず登場してくる個性で面白そうなので、この4月1日テーゼを要約してみる。ロシア語が分からないところと興味のないところは飛ばした。

 「ロシア人にとって”不死身のカシチェイは誰なのか?”というなぞは子供の頃からそれぞれの世代の人々を悩ましている。現実にあった個性を民衆の創作で模したのか、それともまったくの架空のファンタジーなのか?
 
最初のバージョン: 架空ファンタジーの果実ならば、そのイメージはぼんやりしたもので、具体性に欠けていなければならない。しかし、カシチェイはそうではない。彼には戸籍があり、邪悪な義務を負い、哲学を好むなどとはっきりとした性格的特徴を有する。したがってこのバージョンは消去しなければならない。
 次のバージョン: 不死身のカシチェイのイメージには現実に存在したある個性が隠されている。ではいったい誰であろうか?

 カシチェイはときに”ツァーリ(王さま)”であり、ときにそうではない。ともかく権力を持ち下僕を抱え、属する強国と対等に会話する。それにもかかわらず政治的な意味の自分の王国は無い。カシチェイを描写するときにいわれる成句、”遠く遠く離れた(原義は27の)王国で太陽の下の国家”はどのような意味があるか?スラブの地の南はずれにひとつの国家があった。東ローマ帝国である。”遠く遠く離れた(27の)海の向こう”の王国とはビザンチンの南部地方といえる。三つの海の向こうで、黒海・マルモラ海・地中海がここでいう海であろう。

 次に”不死身”というあだ名である。カシチェイと一緒に登場する俳優たちには”マリヤ・マレーヴナ”、”バーバ・ヤガー”、”蛇のガルイヌイチ”、”イワン王子”、”ワシリーサ・プレムードラヤ”がいる。このうち蛇のガルイヌイチはカシチェイと仲がよい。マリヤ・マレーヴナはなんらかの付き合いがあったが結局カシチェイを騙して柱(または壁)に鎖で縛りつけてしまう。イワン王子がそこから解放するのである。いくつかの物語はこの開放から始まる。一般的にこの開放の物語はかなり詳しく描かれる。『イワン王子が鎖に繋がれたカシチェイに近づく。カシチェイは水をくれという。イワンは水を与える。すると雲がわき雷がとどろく。”恐ろしい竜巻が巻き起こりカシチェイは飛び去る。”マリヤ・マレーヴナと下僕たち、民衆の頭上に雪が降りかかる。』 この避けがたい破滅から開放され、復活し、周囲の国々に脅威を与えたカシチェイにたいして”不死身の”というあだ名がつけられた。

 カシチェイの意味であるが民俗学者で辞典編纂者として著名なダーリの『ロシア語詳解辞典』によるとカシチェイ(コシチェイ)の動詞は”けちけちする”または”ユダヤ人・殺す”(ユダヤ人を殺すあるいはユダヤ人が殺される)とある。いろいろな物語の中に”カシチェイ王は黄金の上でやつれていく”という成句がある。この成句からカシチェイはひからび、痩せ、衰弱した身体であることが分かる。

 カシチェイに仕える下僕たちはひどく暗い場所に住んでいる。山の深い洞窟で高い壁に囲まれた石造りの建物であり、人の通うことのできない高い山の城である。これは断崖に建つギリシャの僧院を思わせる。下僕たちは人嫌いで黒ずくめの服を着る。カシチェイの王国では骸骨など死体崇拝があるようだ。

 カシチェイの宮殿では僧房の修道尼のように、定期的に美人たちが幽閉を嘆き悲しんでいる。この美人たちの一人がカシチェイがカエルに変えたワシリーサ・プレムードラヤ(あるいは、ワシリーサ・プレクラースナヤ)だ。なおワシリーサ・プレムードラヤはカシチェイの肉親(娘また妹)というバージョンもある。一般的に見てカシチェイは自然が嫌いである。かれは村を乾上がらせ、まいた種を枯らす。ポーランド民話にあるように息を吹きかけて王国全土を眠らせる。この眠りは国家体制の崩壊を意味するメタファーであろう。カシチェイの物語が生まれた全スラブ時代には”眠りこんだ王国”があった。それはキリスト教を受け入れた後に衰退したローマ帝国である。

 もう一つ、カシチェイについて知っておきたいことは、かれに打ち勝つことは可能であるがそれは非常に困難だ、ということである。イワン王子は多大な辛苦をなめてようやくかれを殺すことができた。『イワンの馬はひづめの一蹴りをカシチェイにくれ、頭を打ち砕いた、王子は棍棒で叩きのめした。そして胸に薪を乗せると火をつけた。燃え尽きるとカシチェイは灰になって風に乗って飛んでいった。』 

カシチェイの手配書 - 名: カシチェイ 姓: 不死身(ベススメールヌイ) 性: 男 誕生年: 紀元前1世紀ー紀元4世紀 誕生地: ローマ帝国南東地方 国籍: ローマ帝国市民 職業: 定職なし 外貌: 中年痩身・病身;手足に鎖の痕あり。犯罪歴: 殺人;美人誘拐;無法自由剥奪;性的強要;」(以下省略) 

カシチェイの容貌



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