
長年、透明のビニール傘というものがきらいだった。安っぽいしすぐ壊れる。きちんとした大人は値がはっても長く使えるよい傘を持つべきだと思った。ふいに雨に遭ってもビニール傘を買うくらいなら百貨店で新しい傘を買うか、タクシーに乗るかを選んだ。
ゆえに家にあるビニール傘は自分以外の者が持ちこみそのままおいていったものである。気にいらないが使えないものでもないので処遇に困っていた。
しかし先日、湿った雪の降る朝になんとなくそれを持って出た。するとどうだろう。なんと眺めのよいことか。日常的にビニール傘をつかっている人はなにをいまさらとお思いだろうが、私には非常に新鮮でありました。視界は明るいし、空からふわふわと舞い落ちる雪が傘に積もっていくのがよくみえる。
仕事帰りにイルミネーションの輝く大通公園を歩いてみると、微妙に歪んだビニール越しのあかりが幻想的でまた楽しいのだ。
ビニール傘もおもしろいものですな。願わくば、高くてもいいので丈夫で持ち手のしっかりした透明傘をメーカーに開発していただきたい。