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いま歴史から考える(第29回講演学習会)

2017-09-20 16:04:45 | 報告

 

 9月9日(土)に、早良市民センターにおいてPネット第29回講演学習会を開催しました。
 今回の講演学習会は、安倍政権が「教育勅語」を教材として使用することを可とする閣議決定をおこない、また来年度から「道徳」が教科化されたり、中学校の体育に戦前の軍事教練科目である「銃剣道」が採用されるなど、戦前回帰とも思える動きが進んでいるなかで、もう一度過去の歴史から学ぼうという趣旨で企画されました。
 講師にお迎えした佐喜本愛先生(九州産業大学准教授)は教育史を専攻されています。先生には、「総力戦体制の中の教育」と題して、パワーポイントを使いながら、参加者の方々にもたいへんわかりやすい講演をしていただきました。
 講演は2部構成です。「第1部」は「戦前の教育制度の特質-天皇制教育の確立-」として、いわゆる「御真影」と「教育勅語」がいかなるものとしてつくられ、教育の場に浸透させられていったのかを明らかにされました。「第2部」は、「戦争と教育 1930年代以降の日本社会と教育」として、歴史的背景からとらえかえすとともに俯瞰的に「国民学校」における天皇制教育の特質が「錬成」-考えるのではなく「訓練」として身体にたたきこむものにあることを提示されました。
 なじみ深いものとして受けとられた当時の明治天皇の「写真」は、実は政府のお抱えの画家・キヨッソーネによって描かれた「絵」であり、明治の新体制国家の権威を打ち立てるために「見える存在」として、若い世代に周知させるために学校という場に「下賜」させられてきたものであること。そして、欧化尊重に対して儒教主義を基調とする明治天皇の侍講・元田永孚(もとだながざね)が皇国思想をもとに起草した「教育勅語」とワンセットにして、下からの「申請」というかたちをとって、学校現場に「御真影」と「教育勅語」を収める「奉安殿」が設置されてきたことを、佐喜本先生は明らかにされました。
 天皇の肖像がいかに演出され神格化されてきたかの経緯や、火災などでは、生徒の安全ではなく校長・教師が写真を守るために殉死するなどしたこと。火事や盗難を避けるために木造校舎外に頑丈な「奉安殿」が設置されるようになったことなど、はじめて知る興味深い事実に参加者は聴き入りました。
 また、思想統制や治安維持法に見られる戦時下における国家的統制を、社会教育とともに教育の場においてはいかにおこなってきたのか、「皇国の道」に則った戦前の国民学校における教育の方法が「錬成」であったということについて、佐喜本先生は国民学校の各教科の構成を具体的に紹介しながら明らかにされました。これはあとで、参加していた元「国民学校生徒」の方からも当時の体験談が語られましたが、「一旦緩急アレハ」天皇のために命を差し出す教育の恐ろしさを実感させられました。
 休憩時間には、佐喜本先生が持ってこられた当時の教科書や、皇国臣民の心構えを説いた『臣民の道』を見ながら参加者は質問し、先生はこれに答えられ話が弾みました。
 質疑応答では、元「国民学校生徒」の参加者のかたの体験、はじめて聞いたことへの驚きと質問、教科化される「道徳」の問題点など、活発な意見交換となりました。
 今回の講演学習会は、わたしたちにとって大変実りの多いものとなりました。佐喜本先生には感謝いたします。
 この講演学習会の内容は後日パンフレットにいたしますのでお楽しみに。