潮待小屋

それでいいのか?

 

先日、こんな新聞記事を目にした。
 ↓
<毎日新聞ニュースサイトより引用>

消費者担当大臣が、「サーモントラウト」を使用した弁当を「サケ弁当」と表示しても問題ないという見解を示したのだという。

食材偽装問題を受けて消費者庁が公表したガイドライン案が、「サーモントラウト」を「サケ」と表示するのは不可、本来は「ニジマス」が正しいと示したことについて、各方面から疑問の声が上がっていたことはニュース等でも報道されている通りであり、消費者庁の対応もこれを受けてのことと思われる。
しかし、私としては、この変節には少々違和感を覚える。

「サーモントラウト」とは、ご存知の通り海面養殖されたニジマス(大型に育つよう品種改良された所謂ドナルドソン・トラウト)であり、どうひっくり返してみたところで「サケ」ではない。実物を確認したい方は、管理釣り場に行けば自分で釣ることができる。
業界の一部には、サケ目サケ科に属する魚だから許容範囲とする見解もあるようだが、その理屈を許してしまうと、ワタリガニ科のイシガニを「ワタリガニ」と称して料理に使うのもOKということになる。さすがにそんな乱暴な話はあり得ない。

なにより、「ニジマス」を「サケ」と表示することを無条件に許容すると、「バナメイエビ」を「芝エビ」と表示したことを食材偽装として厳しく糾弾したこととの平仄が取れなくなってしまう。
以前にもこのブログで書いたことがあるが、当時、「シバエビ」という名称が、クルマエビ科ヨシエビ属の特定の一種のみを指す限定的なものだと正しく認識している消費者が、いったいどれだけ居ただろう。
消費者の多くは、「芝エビ」を、クルマエビ科の小さなエビの一般名称として抽象的に認識していたに過ぎないのではなかろうか。

誤解のないよう申し上げるが、私は決して「ニジマス弁当」を世に送り出すべきだと考えているわけではない。
さすがにそれは違和感があるし、行き過ぎだと思う。
そして、同様に、先般の「芝エビ騒動」も行き過ぎだったのではないかと思うのである。

降海型のサケ・マス類を総称して「サーモン」「サケ」と表示することと、クルマエビ科の小型エビを総称して「芝エビ」と表示したこととの間に、おそらく本質的な違いはない。
どちらも、一般消費者には馴染みの薄い正式名称を持つ近縁種が多数市場で流通していて、それらを消費者になじみの深い名称、誰でも知っている名称で包括的に示そうとしたら、おのずとそうなってしまったということなのだろう。
正式名称を表示したのでは、かえって消費者に食材のイメージが適切に伝わらないから、代わりに最も近くて分かりやすい名称を使うという対応には相応の合理性があり、許容されてもよいように思われる。

特定の種の名称を、一定の範囲の近縁種を包括する「一般名称」として使用することを認めたうえで、そのガイドラインを消費者庁が示し、かつその場合には別途詳細表示を義務付ける(※)などして誤認を防ぐというやり方もあるのではないかと思う。

※例えば、メニューに「サケ弁当」と表示することも可とするが、その場合には「チリ産サーモントラウト使用」と表示させるなど。

 

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コメント一覧

管理人
>rickeyさん
そうですね。
物事には、丁度よい落としどころがあるはず。
センセーショナルに煽り立てるマスコミの論調に乗っかってしまっては、それを見失います。
rickey
かめやまこさん、こんにちは。

座布団10枚差し上げたいくらい。
食品偽装なる問題如何なものかと・・・
仰るような表示が一番良いのではと思います。
緩すぎてはブカブカ、締めすぎては窮屈・・・
世の中には昔から、いい塩梅(いいかげん)と云う言葉があるんですがね~
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