独言

　

山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。
　（夏目漱石「草枕」）

荒らすつもりではないので公開無用、というコメント。
しかし、私の心をささくれ立たせるには十分な劇薬。
そうか。そんな風に思われてしまうのか・・・。
性悪説の世の中で、私はいったい何を言えばいい？

住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

人と人が理解しあうことは難しい。
誤解と曲解が絡み合い、他人も、自分も傷つける。
でも、人は所詮一人では生きていけない。
そうであれば、あちらとも、こちらとも、うまく折り合いをつけながら付き合っていくほかない。

越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容（くつろげ）て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。
あらゆる件pの士は人の世を長閑（のどか）にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。

私は何のために釣りをしているのか。
日々の生活を、そして気持ちを豊かにするためだ。
些細なことに悩んだり、落ち込んだり、心を煩わせるためじゃない。

住みにくき世から、住みにくき煩いを引き抜いて、ありがたい世界をまのあたりに写すのが詩である、画である。あるいは音楽と彫刻である。
こまかに云えば写さないでもよい。ただまのあたりに見れば、そこに詩も生き、歌も湧く。

さあ、海に行こう。
潮風を浴びて、余計なことは忘れよう。
そして、楽しく竿を振ろう。

今週末も、きっといい天気♪