前と同じく、やーさんパロ。←ヲイ
前の『黒い部屋―』の小説のside storyとしています、一応。
矢野さん達が、セッキーを助けに行くまでの話です。
ここは、『虎組』の事務所。
今日もいつもと変わらない一日が始まろうとしていた・・・。
―“あの”瞬間までは。
黒い部屋と、危険な相手。―side story―
「あっふぁぁぁ・・・。
暇ですねぇ・・・今日も。」
間の抜けた声で、藤本は言った。
「暇ちゃうわ! お前はただ、サボってるだけやろ!?
そんなアホみたいなあくびしている暇があったら、仕事せえ、仕事!」
「へぇい・・・。」
気分が乗らないというような返事を、藤本は返す。
「まったく・・・、それやから、金もっちゃんに“猿”って言われるんやでぇ。」
「・・・って、それとこれとは関係ないでしょ、矢野さん!」
ギャアギャア騒ぐ藤本に対し、かなり楽しんでいる矢野。
見るからに、和やかな風景。
それが、毎回繰り広げられるコントの様なもの。
――が、今回はすぐに終わった。
ある一本の電話によって。
~♪
突然、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
誰のや、と言う声が聞こえた。
「・・・俺のみたいやなあ。」
矢野は、自分の携帯電話のディスプレイの名前を確認し、電話を繋げた。
「今取り込み中やから、後にしてくれるk『大変っすよ!』
それは、電話の相手――関本からの誰がどう聞いても、切羽詰まった声だった。
矢野は予想もしていなかった展開に、少し驚いた。
が、すぐに自分のペースに戻った。
「はいはい、そんな声せんと、落ち着いて喋れや。」
「・・・っ、実は、今、“燕組”にいるんすけど・・・、まあ、ものの見事に見つかりまして。」
「・・・アホちゃうか。 見つかるって、どうゆうことやねん。」
はぁ、とひとつ溜め息をついた。
――今岡を付いて行かすんだった、と矢野は後悔した。
「いや、どうもこうもないですよ。 隠れてたら、見つかったんすから。」
後悔する矢野に対し、やけに冷静に、関本は説明した。
「――とりあえず、状況は、分かったから・・・、今どこにおんねん。 そっち(燕組)行くから。」
「・・・なんかあきれてませんか?」
いや、と矢野は返した。
「はぁ・・・。 ならいいんすが・・・。
――場所ですよね? そう、場所なんですが・・・。」
関本が場所を言いかけたとたん、誰かの声が聞こえ、プツリ、と電話が切れてしまった。
「どうしました、矢野さん?」
「・・・切れた。」
その一言だけ矢野は返すと、携帯電話を閉じ、ふう、と息をつくと、ソファーに座った。
と、同時に、血相を変えてつっかかる人物がいた。
彼は、誰よりも仲間思いだ。
「・・・っ! 『切れた』って、どういうことですか!? アイツ、どうなってしまうんですか?
ヘタしたら―――――」
言いかけて、藤本は近くにいた鳥谷に止められた。
「今、ここで騒いでどうこうなる問題ではないでしょう? 落ち着いて下さい。」
「落ち着いて・・・、いられっかよ!! 仲間の命が賭かってるんだよ! なんで、お前はそういうことが言えんだ!」
体勢を変え、ガッ、と今にも殴りかかる勢いで、相手の襟首を藤本は掴んだ。
「それは、何事も冷静でないといけないと、俺が考えているからです。
仲間を助けに行かなければならない、今のような状況では尚更です。
落ち着かないと、助けに行く作戦が練れませんよ?」
鳥谷はこう返し、射抜くような目で藤本を見た。
藤本は、怪訝な顔をしながらも、チッ、と掴んでいた襟首から手を離した。
「・・・終わったんかぁ?」
矢野は、あくびをしながら言った。
「終わったどうこうではありません。
作戦、練りましょう。」
「いつになくヤル気やなぁ、モンキーくん。」
「藤本です!
・・・ところで、アイツ、どこにおるんすか?」
ずるっ、と矢野がソファーから落ちた。
「知らんのかい!」
「だって・・・。」
「・・・まあええわ、教えたる。 アイツが今いるところは、“燕組”や。」
場所を言ったとたん、鳥谷の顔色が変わった。
「“燕組”・・・、ですか。」
「いや、そうやけど・・・、どうかしたんか、トリ。」
「・・・早く助けに行かないと、ヤバイですね。
――あそこには『最強最悪のブローカー』がいるんですよ。
青木はともかくとして、その人に見つかったとしたら・・・。」
「“最悪の状況も考えておけ”、と。」
コクリと鳥谷は頷いた。
「しっかし、あれやな、まさか、うちの桧山さんより凄いブローカーがいたなんて・・・。」
藤本は、比較的軽い口調でそう言ったが、矢野はそうともいかないようだった。
「矢野さん・・・、まさか思い当たる節があるんですか?」
「ああ、一人だけな・・・。」
そう矢野が言っただけだったので、鳥谷は、疑問に思ったが、聞こうとしてやめた。
「とにかく、作戦を立てないと、救出どうこうじゃなくなる。
――今岡、“燕組”の見取り図、持ってこい。」
一瞬、えっ?、という顔を今岡はしたが、すぐに見取り図を持ってきた。
「いいか、よーく聞いとけよ・・・。」
矢野は、自分の立てた作戦を鳥谷と藤本に話し始めた。
―――――――――
「・・・成程、そういう作戦でいきますか。」
「・・・ああ。」
それしかないという風に、矢野は言った。
「とりあえず、今はこういうのでいくが、万が一、ピンチになった時は・・・、分かってるな? 二人とも。」
コクリと、二人とも頷いた。
その覚悟は、出来ていたから。
何があるか分からない状況。
だが、仲間は命を棄ててでも、助けなければならない。
二人は、その運命を受け入れているから。
「―――というわけで、行ってくるわ。」
「はぁい、いってらっしゃい、みなさん。」
「やっぱり、気が抜けるなぁ、お前の言い方。」
「・・・そうですかぁ?」
「それがや、球児!!」
はぁ、と誰とは知らず溜め息がもれた。
「今から、仲間を助けに行くんやでぇ。 そんな言い方でええんか?」
「いいんです!
だって、関本さん助けて、矢野さんも、藤本さんも、鳥谷も、
――みんな無事に帰って来るんでしょう?!」
「・・・っ!」
ハッ、と矢野は胸を突かれた。
仲間を助けに行くことしか頭になかった、自分達のことは、まったく考えていなかった、と。
「・・・矢野さん?」
「・・・きゅーじ! みんな無事に帰って来るから、心配せんでええよ!
帰ったら、今日はパーティやで!」
やけに明るい声で、藤本は答えた。
「パーティ・・・、それはないでしょう。」
鳥谷は、冷静にツッコンだ。
ほっとけや!とだけ言い、ぷい、と藤本はそっぽを向いてしまった。
すいません、あまり感情が入っていない声で、鳥谷は謝った。
「『無事』、か。」
ポツリ、矢野は呟いた。
確かに、無事には帰ってきたい。
しかし、これは危険な仕事。
『無事』には、帰ってこれないかもしれない。
だが、最低でも、『生きて』は帰りたい。
だから―――
「―そんなコントせんと、早よう行くで!
『無事』に帰るんやろ!?」
「分かりましたよ!」
「早く行って帰りましょう。」
二人は、駆け足で近寄ってきた。
「じゃあ、本当に行って来るわ。
今岡、球児、事務所の番、頼んだで。」
「分かりましたぁ。」
「・・・はい。」
球児と今岡は、それぞれ答えた。
「行くぜ、“虎組”!
目指すは、“燕組”!!」
「恥ずかしいので、あまり大声でそんなこと、言わないで下さい。」
「何ー?!」
「・・・まあまあ、ケンカせんと。」
―――だから、生きて帰って、またいつもの日常に戻りたい。
この二人となら、それが出来そうな気がする。
根拠はないが、見ていると、その様な気がする。
――仲間を助けて、平和な日常を。
切なる想いを胸に誓い、矢野は、鳥谷と藤本と共に、捕われた仲間を助けに、敵の陣地へ足を進めるのであった。
END
――――――――――――
やけに長くなった・・・。
本編より、sideであるコッチの方が長いという罠。←ぇ
長々のお付きあい、ありがとうございました!(^-^)/
剣虎綺羅でした(^-^ゞ