-中途失聴者のSilent Life-


聾者とも違う、難聴者とも違う。
ある日突然、音のない世界に生きることになった中途失聴者のたわいない日常です。

職場の情報保障と聴覚障害者の権利

2010-06-21 21:37:56 | 聴覚障害と仕事
またしても長~いご無沙汰になりました。
コメントいただいていた皆様、本当に申し訳ありません。
携帯から読ませてはもらっているのですが、お返事がなかなかできず・・・
こんな私ですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


さて。
会社の話です。

先日、初めて、参加必須の会議や研修に手話通訳をつけてもらうことができました。

これは、私にとってはものすごく大きな意味があります。


数ヶ月前のこと。
会社で、全員参加の研修会がありました。

事前に何も連絡がなかったので、前もって資料を読むことも、誰かにノートテイクをお願いすることもできず。
隣に座った人に「書いてください」とお願いしたけれど、
要約筆記やノートテイクなんて、何の訓練も受けていない人が突然言われてできるものじゃない。
結局その日、1時間の会議で書いてもらえたのは、資料のページ数を表す「3」というたった一文字だけでした。

こんな状態を「仕方ない」で終わらせられるはずがありません。

障害者採用には、企業に対して補助金が出ます。
本来は障害者が働きやすくするために使われるべきそのお金が、
働く障害者のためではなく、会社の利益として当然のように消費されてしまう実態。

それを「仕方ない」の一言で片付けられたくない。

「同じように会議に参加しろというのなら、同じように内容も理解できるようにしてください」

ずっと、上司に訴え続けてきました。
それでも、返ってくる答えは、
「たいした内容じゃないから」
「資料に全部書いてある」
「いつかはそうできるようにします」
いつかっていつですか?
たいした内容じゃないのなら、資料に書いてあることだけなら、どうしてみんなは会議するのですか?
どうして私は何も分からないまま座っていなければならないのですか?

そんな思いを強くして、会社に対して
「会議や研修に手話通訳をつけてほしい」
と訴えてきました。

実際に手話通訳を会社で雇っている企業の実例や、
会社が手話通訳を手配した場合の助成金についてなど。
公費の助成を受ければ、実質的な会社負担は1/4ですむこと。
手話通訳者には守秘義務があり、聴覚障害者が病院や裁判などのプライベートな部分でも利用している、信頼できる存在であること。
手話通訳者を会社として手配する企業はまだ少ないものの、だからこそ先例となれば企業イメージのUPにもつながる…などなど。
資料を集め、情報を集め、
「聴覚障害者を雇用する以上、会社が情報保障を手配するのは当然の義務」
であることを訴え続けました。

そしてようやく、先週の社内研修に、手話通訳者を社費で手配してもらう約束をいただきました。

私にとっても初めてのことで、どこに依頼すればいいのか…などわからないことも多く。

とりあえず、会社があるT市の社協に問い合わせてもらいましたが、
社協からは、「本人が住んでいるA市の派遣制度を利用してください」とのこと。

しかしこれでは、私が個人で依頼する形になってしまいます。
会社が手話通訳を受け入れてくれるというだけでもありがたい話なので、
「それでいいです」と喉まで出かかったけど、飲み込みました。

それじゃダメなんです。
私が個人で依頼して、その費用を会社に請求するのが確かに一番簡単かもしれないけど。
そうじゃなくて、
通訳が必要な時に、会社の負担で、会社が手配する。
その制度をきっちり作ってほしい。
だからあえて、会社から依頼してもらうようお願いしました。

実際、会社として依頼しないと助成金が受けられないし、その申請も至急必要です。
総務部の人事主任は、私を最初に面接してくれた方で、非常に協力的に動いてくださいました。

そして、入社から半年たってようやく、

 ・会議や社内研修の時に、社費で手話通訳を手配すること。
 ・年間予算として、年間の会議・研修に必要な通訳依頼費用を総務部で計上すること。

を承認していただきました。

これは、当たり前のことなんです。
足の悪い人が車椅子を使うのと同じように、
耳の聞こえない人が、手話通訳やノートテイクを利用するのは当たり前のこと。
なのに、その当たり前のことを、当たり前に受け入れてくれる企業というのは非常に少ないのが現状です。

当たり前の権利を当たり前に行使できる。
そんな状態にしたい。

だから、
「ありがとうございます」「よろしくお願いします」は言うけど、
「すみません」「ご迷惑おかけします」は絶対言わない。


入社して最初の会議では、「書いてください」とお願いしただけで、上司から「特別扱いはしません」と言われました。
チームの会議には「どうせ来ても分からないから」と、会議があることすら教えてもらえないこともありました。

でも、これは特別扱いなんかじゃない。
当然のことなんだと分かってほしい。


企業が、働く社員のためにちゃんとした環境を整えることが早く当たり前になるように。

まず、最初の大きな一歩です。



最新の画像もっと見る

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (海香)
2010-06-21 23:59:06
おめでとう。
入社して間もないのに、こんなに就業環境を整えられるのはAyamiさんだからこそかな。

返信する
あえて厳しい書き方を・・・(ペコリ) (西)
2010-06-22 12:39:21
海香さんがAyamiさんへのエールであることは充分分かっているつもりですが、
ここは敢えて厳しい言い方で指摘しておきます。
ただ決して海香さんを責めているのではなく、世間一般的な障がい者を見る目と言いますか差別の本質とでも言いますか、とにかくそんな部分から指摘します。

Ayamiさんだから職場環境が整えられたのは事実かもしれませんが、むしろAyamiさんだったからこそと言う部分こそが、今障がい者が置かれている立場を如実に指し示しているように感じてます。

つまり、社会参加をする際に、障がい者であれ健常者であれ「当たり前に」社会参加できることこそが「当たり前」なのであって、何か特別な「運動」や「取り組み」をしなければならなかったり、特別な個人であるから出来たなんて事がクローズアップされる所にこそ、実は差別そのものの本質が潜んでいると思っています。

この観点から、Ayamiさんが手話通訳者の依頼を個人ではなく会社という組織にさせたこと、手話通訳者への報酬を会社に負担させたこと。
コミュニケーション手段として最適に方法を選択することは特別なことではなく当然なこととして、これから続く多くの障がい者にとって大きな道しるべにもなり、大いなる勇気の元にもなる
最善の方法だったのではないかと、感謝すると同時に、感動しました。
返信する
お久しぶり ()
2010-06-22 13:09:33
TV拝見。時々見る景色の中にあるM企業内での情報保障が「無い」ことにびっくりしました。

「当たり前」のことが『当たり前』になるまでは、毎回、会議や大会前に、担当に通訳が付いてることを確認されるのがよいと思います。


K市は美貌も逃してたんだね。
返信する
なるほど。 (ナチュラル♪)
2010-06-22 23:50:42
待ってました…!
何だかTVに出ていたAyamiさんからコメントを頂くなんて…不思議な感じがしちゃいます。
もうこのまま放置状態なのかな~?と思っていました(^^;
すごい!!お見事です。
私も会社に勤めていた頃、ここまではできなかったなぁ~。不景気の中、雇ってもらえただけでありがたい…と思ってしまって、あまり要求はできませんでしたね。今思うとそんなこと思わなくてよかったのになぁーと。
娘さんの通っていた私立幼稚園で、行事がある時、幼稚園のある市と私が住む市が違うだけで、手話通訳を断われてしまいました。
「私立なので費用○万円かかります。」と言われてしまい、えっ?!と思いました。
さすがにそこまで払う気はしないのでやめました。
何もわからず行事を見ているのは寂しかったな。
今は公立小学校に通っているので、学校からすぐ、手配してくれるんですけどね…。
後でわかったのですが、幼稚園のある市に聞いたら、「そんなことはないのに。すぐ駆けつけて手話通訳をしたのに。」とびっくりされました。
市によって違いがあるみたいですね。
別に私立とか市立に関わらず、本人が困るのだから、手話通訳が必要な時にすぐ手配して下さ~いって思います。
何だかややこしくてすみません…(><)
わかったかしら?
返信する
ようやく端緒に付いた所か? (西)
2010-06-23 08:51:48
実は各市町村長の窓口でも、障害者福祉サービスの対応がまちまちなのを報告受けています。
ですが、サービスという言い方がそもそも間違いなのですが、本来行政サービスとは、誰もが、どこであったとしても、等しく享受できる「基本的人権」の行使なのです。
基本的人権の保護、又は行使は、これは国が責任を持って行わなければならない国民への義務なのです。
その国が国民に行使すべき義務を代行しているのが地方行政なのです。
決して障害があるからと言ってサービスを受けるとか、お世話になりますと言った事ではないのです。

特に聴覚障害に関わる福祉関連法は、それなりに充実しているのですが、いかんせん、未だに知らしめず、知らしむなかれに近い状態で、各地方行政窓口であっても福祉担当部署においてですら不勉強(意図的サボタージュ?)なのが実態。

病院窓口で、公共交通機関窓口で、地方行政窓口で、学校など教育機関窓口で、僕自身が自分の問題として、問題が発生したその時点で何が問題なのかと言うことをしっかりと自分で掌握して行かねばならないのだと感じています。

できるならば、継ぎの方のために、次の世代の方のために、
ナチュラルさんが体験なさったことを、行政ではこんなサービスをして下さいますよと、当該幼稚園へ文章でお知らせすることも重要なのではないかと思いました。

きっと今置かれている個々の聴覚障害に関わるトラブルや改善策は、個人の資質とか努力で克服されているのが現状なのですが、
では、社会的立場(例えば雇用関係・近隣住民関係等)が弱かったり、性格がおとなしかったりすることで声を上げられない方はいつまで経っても人として当然に受ける権利として認められている「人権」を、踏みにじられ続けても良いのか?
個々人の性格云々とか社会的立場が云々とかと、年齢が云々とか全く関係なく、そんなことが起きないように、誰もが等しく享受できる権利を、当たり前の言葉で当たり前に発言し、聴覚障害者当事者の立場からこれからも問題点を発信し続けて行かねばならないと、

他の誰でもない、
僕自身思っています。

またまた堅苦しいカキコで申し訳ありません。
返信する
Unknown (ナオ)
2010-06-23 12:20:29
Ayamiちゃん、お久しぶりです。

頑張っていますね。
エールを送っちゃいますよ!

私がまだ会社勤めをしていた頃も、同じような扱いでした。
会議なんかは呼んでもらえなかったし。
上司からはしっかり「障害者手帳のコピーをちょうだい」と言われたものの、
障害者に対するフォローは何もなく、その時にAyamiちゃんと
同じように戦えば良かったと悔やんでいます。

今言ってみても詮ないことだけど、思い出すだけで悔しいです。
私と同じ悔しさをAmamiちゃんのような人が戦うことによって
払拭してくれることを願っています。
返信する
追記 (海香)
2010-06-23 20:22:07
自分自身で環境を整えていくのは、
どんなに大変なことかは、身に染みて知っています。

理解のある上司や所属先に恵まれた場合は、
臆せずどんどん希望を伝えていったら、願いはかなうかもしれませんね。

理解のないところで言うと、雇用や職場環境が危うくなります。だからおかしいと思うことがあったとしても、そう何度もいえなくなったことはあります。
生活もかかってますし。

職安を通じて入社されたのなら(私もそうですけど)、職安の方からも、定期的な訪問がもしかしたらこれからあるかもしれません。
(各々の職安で独自に実施していることなのかもしれませんけど。)
もう、ありましたでしょうか?

私も訪問がありました。
(ただちょっと不定期な訪問(2年に1回位?)で、本人に対して訪問しますというより、会社を通じてほとんど訪問直前に連絡されるので心の準備が…です。上司は訪問の時は席を外しています。)
その際、担当者の方から「いい会社ですよ~、いい会社なんですよ~」とお話されましたが、(福利厚生のこと言ってるわけじゃなくって、障害者をしかも聴覚障害者を雇ってくれた会社、理解のある会社なんですよ!!という意味で言っていると思います)
そんなことより、「情報保障はできていますか
」と私と会社側に聞いて欲しかったですね。
Ayamiさんの文を読んでいて、そう感じました。
今頃なんですけど…

職安の方やその他第三者の方の訪問があって、そちらの方からも助言されると、
会社も意識し、特別扱いではなく、聴覚にハンディがあるとこういうことが絶対に必要になってくるんだと、思いを新たにしてくれるようになることを期待してみたりもします。
他力本願的なこと言ってしまってるね、私は。(苦笑)
Ayamiさんの事例が全国に波及してくれるとうれしいですね。

西さんのお話もわかりますよ~。
返信する
パート労働者として (西)
2010-06-24 11:02:42
私、今パート労働者として勤務して7週間です。
今まで自営の職人として仕事をしてきていて、実は50才も半ばにして初めて「勤務」を経験し、初めて「タイムカード」を使いました。

今働いている場所は深夜から早朝の時間に冷蔵庫内でのスーパーなどへ卸す荷物の仕分け作業です。
冷蔵庫内はエアコンの吹き出し音、他の方の話し声、荷物を引きずる音、台車のガラガラ音と騒音に包まれています。
さらにはそれらの騒音がビンビンと反響しています。

こんな作業環境の中で僕の耳では聞き分けは絶望で、職安を通じての障がい者雇用制度を受けてのパート勤務なのですが、聞こえないことからのトラブルの渦中に今います。
トラブルと言っても業務的なトラブルというわけではなく、人間関係(コミュニケーション不全)のトラブルで、社員との冗談話や四方山話に参加できない、横で聴いていても意味不明故に私が無視していると受け止められている状態。
そつ度聞こえない、聞き分けが出来ないと言うのですが・・・。

先週には現場での改善状況がおもわしくないので、本人事部へ直接メールにて善処するように訴えました。
当然のように冷蔵庫内という限られた空間の中で、私の立場はますます孤立化してきています。

そんな中、数名の派遣さんやパートさんからメールを頂いています。
主な内容は、あの社員は誰にでも意地悪をしているとか、特に新人イジメでは定評がある。なんてことから、雇用契約違反があるのだがどうすればいいのかなんて事もメールで言ってこられています。

さてさて、僕は初めての「勤務」で、しかも僅か7週間ばかりで、パート風情で何が分かるのかなんて誹りを受けるかもしれませんが、おそらくどんな雇用形態であれ日本中で同じようなことが起きているのだろうと、この一連の書き込みを読みながら感じさせられています。

こんな理由で、何となく過敏に反応してしまったカキコの連続でした(ペコリ)
返信する
Unknown (Ayami)
2010-06-24 12:47:09
携帯からなので、あまり細かくは書けませんが…

私の場合が特別だったというわけではないと思っています。

最初から聴覚障害者への待遇がいい会社なんてほとんど存在しないでしょうし、
何も伝えないのに「理解がある」なんて会社はまずないでしょう。
あるとしたら、それは恐らく理解ではなく誤解です。

私の場合も、最初から理解があったわけではありません。
社内に聴覚障害者は私だけです。職安の訪問も一度もありません。
「理解がない会社なら解雇される」
それは、誰でも同じ不安や恐怖を持っていますよ。

でも、私が言わなければ、他に言ってくれる人は誰もいません。
声を上げなければ、状況は絶対に変わりません。

解雇されない代わりに不自由に甘んじるか。
職を失い、または社内で冷遇される危険を冒してでも改善を求めるか。

どちらがいい、悪いではなく。
私は、理不尽なことを「仕方ない」と諦めるのが大嫌いなので、
徹底的に交渉を続けてきました。

本文中にも書きましたが、決して最初から理解があったわけではありませんし、
理解のある会社だったから成功したわけでもありません。

入社の時には「中途障害者なんか採用して、もし途中で聞こえるようになったらどうするんだ」とまで言われ、
「書いてください」とお願いしただけで「特別扱いは必要ない」と言われ、
朝礼では「内容を知る必要はない」、
会議は「どうせ来てもわからないし、いろいろ面倒だから」と連絡すら回ってこない。

私も、ほとんどの聴覚障害者とおなじような環境で働いています。
特別なわけではないんです。


ツバメの親は、巣の中で一番大きな声で泣いているヒナに餌を与えます。
卵は一日おきに帰りますから、最後に孵化したヒナは、最初のヒナより体も小さく、栄養もたりません。

身体の大きさで負けていても、餌を食べるには、一番大きな声で鳴くしかないのです。
鳴くことをやめれば、死んでしまう。

弱者とされる私達が自分の権利を要求するには、
辛くても声を上げて鳴き続けるしかないと思うのです。

鳴こうともせずに、ウチの親鳥は餌をくれないと愚痴っても仕方ないと思うのです。
返信する
Unknown (吉さん)
2010-06-24 13:11:36
Ayamiさん、お久しぶりです。聴覚障害者の職場での情報保証は、不便だと手をあげていかないとなにもかわりませんよね、Ayamiさんだけでなく、次に入ってくる同障の方のためにも道を作られましたね。


返信する