世界の詩最新事情

毎月1回原則として第3土曜日に世界の最新の詩を紹介いたします。アジア、ラテンアメリカ、中国語圏、欧米の4つに分け紹介。

第24回 閻志(イエンジー/Yan Zhi) ―中国― 竹内 新編訳

2019-03-13 01:50:00 | 日記
閻志(イエンジー/Yan Zhi)1972年、湖北省黄河市羅田県生まれ。武漢大学卒。実業家。中国作家協会会員。詩集に『明日の詩篇』、『挽歌と記念』、『少年の詩』等がある。『中国詩歌』主編。卓爾書店を営む。
 次に紹介する3篇は、『少年の詩(うた)』(2019、思潮社)から採っている。

閻志詩3篇

未来

誰がこの地の伝説となって
言い伝えられ讃えられるというのだろう
誰が物語の主役となって
有為転変を味わい
捉えどころのない空しさを感じ
或いはまた 天地を感動させるというのだろう

誰の詩句が広場の石に刻まれて
子供たちにしっかりと記憶され
一篇一篇が童謡となり
眠りに入る前の幼い心を動かすというのだろう

何事もあらかじめ知ることはできない
未来はまるで闇夜と同じで捉え難い
だが私は子供たちといっしょになって
昔から歌われた清新な歌を歌おう そればかりを思う

人に記憶されないならば
いよいよ 忘れ去られるとも言えなくなるだろう

覚める

私はただゆっくりと目を覚まそうと思う
必死に持ち堪えている人たちを慰めてあげようと思う
暗い夜に誰が彼らに呼びかけるだろう
都会のバス停で
タクシーのトランクで
夜はいつまでも絡まりもつれている

オレンジ色の街灯 湿った路面
さっき降った雨の残した湿気が まだ抜けていない
都市のなかにとり残された村の曲がり角に声がして
まだ深夜に留まっている
相変わらずあくせくと忙しい人 乱雑な暮らし
たまたまむせび泣きがしても それに対する応答はない

言葉の尽き果てるところには
いよいよ真っ暗な語句が待ち
寂寥としたビルは 自身で一人心を痛め
いっせいに開け放たれる夜は
そのたびに 手がスイッチを探り当てられず
夜に対して夜を
継続させるだけ 私はただゆっくりと目を覚まそうと思う
必死に持ち堪えている人たちを慰めてあげようと思う

詩作

私が詩を書こうというのは 冬は如何にして
春に変わるのか 幸福な人たちは如何にして
微笑み始めるのか まさにそれを書くということなのだ

私が詩を書こうというのは まさに
何人かの誕生日 そうして温かみあふれる名前を
しっかり覚えようということなのだ

私が詩を書こうと言うのは まさに
燕の帰りを待つことを習得しようということなのだ
携えてきた歳月については相変わらず何も分からないけれども

私が詩を書こうというのは まさに
一枚の紙に付けた引っ掻き傷が
いつの間にか おお跡形もない というようにすることだ

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