世界の詩最新事情

毎月1回原則として第3土曜日に世界の最新の詩を紹介いたします。アジア、ラテンアメリカ、中国語圏、欧米の4つに分け紹介。

第19回 アンドレス・ウルスア・デ・ラ・ソタ―チリ共和国― 久保 恵訳

2018-10-10 18:30:49 | 日記
1982年、チリのビニャ・デル・マール生まれ。作家、編集者、文化啓蒙家。詩集として『画廊』(2012年)、『ザッピング』(2014年)、『テトリス』(2015年)、『プレイ』(2015年)、『石の言語』(2015年)、『飛ぶ方法』(2017年)。リブロス・デル・ペス・エスピラル社の総編集者およびバルバライソの国際詩フェスティバル「ア・シエロ・アビエルト(開かれた空へ)」の主催者を務める。

『石の言語』より

I

窓ガラスを
割る石は

それを投げる手を
密告しない。


II

我々が石の実権を、石が支社やショーウィンドーを壊す方法を信じているとしても。街の屋根の上に石の雨を降らせ、いつも破壊を通じて建造される様を見ることが戦いだと考えているとしても。我々が石を信じているとしても、石は単なる石に過ぎず、そうであって欲しいと望んでいるものではない。


III

石には
直角もなければ
完全な円形もない。

試してみろ。一つの石を
注意深く見て、少しずつ
描写するんだ。もっといいのは、石を投げて

空中に描く軌道を観察するんだ、
地面に着くまでの輪郭を描く
いつも不明確な線を。


IV

もしもきみの口から出るのが言葉ではなく、物だとしたら。もしも石という言葉を口にすると、きみの唇の間から石が生まれるとしたら。何かをするためには、それを言うだけで十分だろう。言論と行動は釣り合うだろう。言葉を口にして罰を受けずにはいられないし、石を投げて舌で言葉を隠すことなどできないだろう。


V

人間と違い、石は浮かばない。水面の偽りの約束に騙されはしない。石は海藻と行方不明者の死体とともに、水底に留まる方を好む。