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氏だ岡のちょっとイイ話

あなたの健康を損なう恐れがありますので、読み過ぎに注意しましょう。

ネズミ達の襲来 4

2006-04-14 15:45:31 | 続き物



更新がスラスラ進むように、記事の内容に合わせて
懐かしのアーティスト「PRINCESS PRINCESS」
『DIAMONDS』を聴きながら書いてます。馬鹿)







氏だ岡です。






こんにちは。






前回までのあらすじ~

半年以上前にバイトを辞めていた大学生S籐からの久しぶりの電話で呼び出され、
コーヒーでも飲みに行く事になった。

待ち合わせ場所で待っていたのは懐かしき顔のS籐
そして謎の存在インチキホストK田

2人が作り出す魔空間に危険を感じつつ車に乗り込むと、
なぜか始まるにわか「ネズミ講講座

突っ込みどころ満載の話を聞きながら、なぜか敵のアジトへと乗り込む事になってしまった俺。
法的知識も全くなく、押しに弱い男の代表でもある氏だ岡の、

明日はどっちだ!

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

バタン!バタン!

S籐と俺が車を降りると、K田は車を発進させた。
近くの駐車場に車を停めてくるようだ。

車が発進するのを見ながら、俺は目の前の小汚いビルの前で立ち止まった。
「氏だ岡さん、こっちっすよ~!」
S籐が笑顔で手招きをしているので、恐らくこのビルが敵のアジトなのだろう。

ビルの隙間から入って行くと、清掃という言葉とは関係の無さそうな階段に辿り着いた。
その階段を率先して上がっていくS籐の後に続いて、二階の小さなドアから中に入った。

会社名も何もないドアを抜けると、中には会社様なモノがあった。
閑散とした部屋には、二つくらいの組み立て式の長テーブル。そしてパイプ椅子。
割と低い天井には、あちらこちらに折り紙で作ったような飾りがつけてある。
いくらなんでもこりゃヒドイ。

小学校のクラス会でもこれよりは豪華だ。

「ここ座って待っててください」
S籐は俺をパイプ椅子に座らせ、コーヒーを出した。

ちょっと待て。まさか「美味いコーヒー」ってこれの事か?違うよな?
だってお前、俺の目の前でそこのポットからお湯入れて作ったやん。
ネスカフェって書いてあるやん。

目の前に出されたネスカフェを見て、怒りが沸々と湧いてきました。
出来る事ならこのままコーヒーを一気に飲み干し、
「あまり美味いコーヒーじゃなかったぜ!」とか捨て台詞を残しつつ、
スタスタと帰って行くってのがカッコイイのでしょうが、
いかんせん俺はネコよりもネコ舌なもので、熱々のコーヒーを飲んだら
舌をヤケドしてフガフガ言いながら帰る事になってしまいそうです。
仕方なくフーフーしながらコーヒーが冷めるのを待って、
機会を見て一気に・・・と思いながら部屋を見渡していました。

部屋の中にはいくつかドアがあり、俺の後ろにはたった今入ってきたドア。
右手の方には「講習室」と書かれたドアがありました。
何の講習か知りませんが、どうせろくでもない講習なんでしょう。
「こういう風に人を騙すんだよ」的な講習がされているに違いありません。

現に俺騙されて連れてこられてるし。

左手の方には入り口が二つあり、こちらは二つともドアが閉じていません。
手前の入り口の奧には、ショーケースの様な棚があります。
恐らくこの会社とやらが扱う商品が並べてあるのでしょう。
遠目にはハッキリと分かりませんが、どうみても「宝石関係」の様です。

もう一つの入り口の向こうには、机などが見えますから多分事務所的な場所だと思う。
しかし良くこんなチンケなセッティングで「真っ当な会社です」などと胸を張れるモンです。
「学芸会の準備です」とか言われた方がまだ納得出来ます。

そんな事考えてたら、急に後ろから声をかけられました。
「あ、氏だ岡さん。紹介します」
振り返るとインチキホストK田が来ていた。
他にも出入り口があるのか「講習室」のドアから出て来た様だ。
K田の後ろには、これまた「昭和から来ました」ってくらいのインチキホストが、
世紀末覇王の様な姿で立っていた。

「部長のO川です。ヨロシク」
濃い紫のスーツを着て、オールバックのその男は、何をトチ狂っているのか
部屋の中だと言うのにサングラスをかけていて、
ヨロシクどころか「夜露死苦」と漢字表記の方がしっくり来るくらいのヤンキースタイル。
ビーバップ世代にも限度がありますが、彼はすでに限度を振り切ってしまっているようでした。

O川が自己紹介を済ますと、K田S籐を連れて「講習室」の奧へ入っていきました。
つまり俺とO川タイマン勝負になったという事です。
O川は是非とも俺から金を出させたいのでしょうが、
俺としても騙される訳には行きません。
何とかしてこのピンチを切り抜けなければ。




以下次回。




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ネズミ達の襲来 3

2006-04-12 12:54:26 | 続き物


詳しく書いてたら予想以上に長くなりすぎて終わらなくなってきました。







氏だ岡です。






こんにちは。






前回までのあらすじ~

それは一本の電話から始まった。
半年以上前にバイトを辞めていた大学生S籐からの久しぶりの電話。

コーヒーでも飲みに行こうと誘われ、家の近所で待ち合わせ。
待ち合わせ場所で待っていたのは懐かしき顔のS籐
そして謎の存在インチキホストK田

危険を感じつつ車に乗り込むと、なぜか始まるにわか「ネズミ講講座

誰か助けて・・・。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

どこかしらに向かう車の中で展開される、K田「黄金のネズミ講講座
その内容は果てしなくヒドイもので、知識の薄いこの俺ですら納得のいかないものばかりでした。
必死に話し続けるK田に、もうすっかり飽きてきた俺が
「ふーん、へー、なるほど!」といった感じの返事しか返さなくなっていた時、
それまで黙って話を聞いていたS籐が声をかけました。

「あ、K田さん、そこです」
運転手のインチキホストに車を停めさせ、二人して車を降りていく。
ちょっと待っててくださいと俺に言い残して二人は歩いていきます。

目的地なのかな?
そう思ったんですが、辺りは閑静な住宅街。喫茶店などドコにも見当たらない。
じゃああいつら何しに降りていったんだろう。
そんな事はともかく、この隙に逃げ出せる!チャンスだ!
しかし周りには目印になるようなものも無く、ここがドコなのかも分からない。

そんな状態で逃げ出してしまったら、かなりの確率で迷子になってしまいます。
小さい子ならまだしも、外見的に毛とかワシャワシャ生えてそうな大人の俺が、
「えーん、迷子になっちゃったよー」なんて言ってたら、確実に変質者扱いです。
なんとか大通りに出れたとして、そこが俺の知っている場所である保証はありません。
道行く人に「僕のおウチってドコですか?」なんて泣きながら聞いた日にゃ、
間違いなく通報されてしまうでしょう。
とりあえず今はまだ様子を伺うしか出来ない。
喫茶店に着いたら店の人に場所を聞いて、帰り方を聞けばいいのだ。

そんな脳内会議を展開していると、S籐K田がどっかの家の呼び鈴を押しているのが見えた。
関係者が増えるのかしら?そんな不安な気持ちで一杯の俺。
家の中から出てきたのは、パッと見若い男。おそらくS籐と同じ年くらいじゃないでしょうか。
声は聞こえませんが、S籐が笑顔で挨拶しています。彼の友達らしい。
どうも見た感じ、高校か中学の同級生なんでしょう。そんな風に見える。

しかし友人らしき男は、どうも笑顔がイマイチです。
まぁ普通に考えたら当たり前ですが、久しぶりの友人が家を訪ねて来た。
それが見知らぬ男を連れて来てるとなれば、警戒心がモリモリ沸いてきてもおかしくない。

案の定、友人は首を横に振っている。行かない」って事なのでしょう。
当たり前の話です。振り返れば自分の家と言う安全地帯にいて、
そこから飛び出して危険な方に行く奴なんか、ドコの世界にいるのでしょう。
そんな冒険野郎はインディジョーンズくらいのモンです。誰がインディジョーンズやねん。

諦めて車に戻ってきたS籐に、「何だったの?」と聞いてみました。
「いやー、昔の同級生も誘ったんですけどね、断られました」
いやいやいや、俺はお前とコーヒーを飲むだけの為にココにいるのだ。
他の同級生を呼ぶなんて話は初耳だし、そもそもK田がここにいる事すら認めてねぇ。
俺だってお前とインチキホストが家の前に来ていたら、間違いなく断っただろう。

なんだそのお前中心の同窓会。

危うくぶち切れそうになりながらも、喫茶店に到着しさえすれば自由の身だという安心感と、
「せめてコーヒーおごってもらうまでは帰れねえ!」というケチさから、
気持ちを落ち着かせて聞いてみました。

「なぁ、一体どこに行くんだ?」
すでに自分がどこにいるのか分からない不安もあったし、
建前は「用事があるから早めに帰る」と言ってあるのです。
「コーヒーが美味い」とやらの目的地を確認しておいても損は無いでしょう。

「あ、さっき話してた連鎖販売取引の会社に行くんすよ」

初耳です。

どうやら目的地は敵のアジト本拠地本丸らしい。
喫茶店なら最悪の場合、店の人間に通報してもらうという計画もガラガラと崩れました。
こりゃ急いで脳内の小人さん達と緊急会議だ。
A作戦が崩壊した今、急遽作戦を変更しなければならない。

慌てる俺の脳内の事など気にもせず、S籐K田は、
「いかに自分達の組織がいかがわしくないか」といった事を話し始めました。
うるせぇ!俺(の脳内)は今忙しい!
ただでさえ何の覚悟もなく連れて来られているのだ、作戦くらいゆっくり考えさせろ!

そうこうしている間に車は目的地に到着したようです。
俺とS籐は先に降ろされ、K田は車を駐車しに行く様でした。
少し歩き、いよいよ敵のアジトに潜入する事になったのです。



そして以下次回。


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ネズミ達の襲来 2

2006-04-11 03:34:36 | 続き物


まさか思い出話を二回にわたってお送りする羽目になるとは思いませんでした。







氏だ岡です。






こんにちは。






前回のあらすじ~

「氏だ岡さん。久しぶりっすね」

それは一本の電話から始まった。
半年以上前にバイトを辞めていた大学生S籐からの久しぶりの電話。
「コーヒーでも飲みに行きませんか?おごりますよ」との誘いを受け、
ホイホイとついていく俺イコール夏の虫

待ち合わせ場所で待っていたのは懐かしき顔のS籐
そして謎の存在インチキホストK田
「あ、こりゃヤバイな」と感じた俺は何かしら理由を探して拒否しようとするが、
S籐の説得に負け、彼の言う「コーヒーの美味いとこ」に向かうべく車に乗り込みます。

しかしS籐は、一言も「店」とは言っていなかったのです。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

考えに考えて車に乗り込んだものの、今ひとつ安心できていない俺は、
ソワソワしながら外の景色を眺めていました。
万が一刑事ドラマの様に車から飛び降りる事になったとしても、
歩きで帰れるように道順を覚えておく必要があったからだ。

出来ることなら車の窓全開にして、パンか何かをちぎりながら落として行きたいんですが、
そんな小細工をしたところで、どんな妨害されるか分かりませんし
そもそもパンを持ってきていないので無理な話です。

「Y山さんとかA川さんってどうしてます?」
俺が脳内の小人さん達と逃げる手段の会議をしている時に、
それを察知したのかエスパーS籐が話しかけてきました。
恐らくこれは妨害工作です。
「あぁ、みんな変わりないよ」と、素っ気無くも笑顔で答え
目線だけは人殺しの様な必死の形相で外を見続ける俺。

車の中は一種異様な雰囲気になっています。
その雰囲気は、突然の再会による戸惑いからなどではなく、
確実に謎のインチキホストK田の存在からくるものでした。
これが俺とS籐の2人きりなら会話も弾むのでしょう。
いや、もしもう1人がいたとしても、その人物が俺も知っている人物ならば
ここまで変な空気にはならなかったハズです。
しかし現実には俺とは全く初対面の男が、この魔空間を作り出しているのです。

車はその間にもズンズンと進んでいきます。
道順を覚えるという行為と、S籐の話に答える事を数分間続けていた結果、
とうとう俺の脳内メモリーの許容(1MB)を超え、来た道順があやふやになってきた頃、
S籐が話の核心を切り出しました。

「氏だ岡さん、ネズミ講って知ってます?」

来たよ来たよ。
S籐よ、お前は阿呆か?
今から引っかけようとする相手に
「実はネズミ講なんですけど・・・」とか言って契約が取れると思ってるのか?
もしそれで引っ掛かるとしたら、わしゃどんだけキチガイじゃ。

「あぁ、知ってるよ」
またも素っ気なく答えると、S籐「待ってました!」とばかりに俺の方を向き、
「どんなのですか?詳しく教えて下さいよ」と言って来た。
正直知っているとはいっても、どっかのテレビの特番か何かで
聞きかじった程度の知識があるだけだった俺は、
それでもなんとなくのイメージで必死に「ネズミ講」について知っている事を話してみました。

「あぁ~良くそういう誤解をしている人がいるんですよねぇ」
今の今まで全く言葉を発していなかった運転手が、満を持しての登場です。
信号待ちで車を停止させ、ふふん♪」とにやついた顔をこちらに向けた
昭和からのタイムスリッパー、インチキホストK田です。
信号が青に変わり、前をむき直したK田は、
ルームミラー越しに俺をチラチラ見ながら話を進める。

「良いですかぁ?元々ネズミ講って取引は、商品が介在しない組織なんですよぉ」
K田の話によると、商品を扱わず、お金のやり取りだけで
会員を増やして利益を出しますってのがネズミ講のやり方らしい。
しかし語尾をやたらと伸ばす男だ。口調と服装がマッチしている。アホ丸出しである。

「アナタも知ってる様にぃ、ネズミ講ってのは違法なんですよぉ」
興奮してきたのか、ルームミラー越しではなく、顔をこちらに向けて会話を始めた。運転中である。

「我々がぁ、やってる事はぁ、似て非なる全く違法性が無い商売なんですよぉ」
どこの世界に「違法な商売やってます」なんて言いながら商売やる奴がいるんだろうか。前を向け。

「私達の会社はぁ、キチンとした商品をぉ、納得された上で買っていただいてますぅ」
いや、普通はドコの会社だってそうだろう。そんなに自慢する事じゃない。いいから前を向け。

そもそも「商品が介在するんならネズミ講じゃない」なんて、
どこの阿呆が言った言葉か知らんが、商品が介在するんなら
マルチ商法という立派な悪徳商法です。
まぁストレートに聞いて相手の怒りを買い、このままどっかの草原に車を停められ、
俺の貞操を汚される事件になってもたまりません。
やんわりと遠まわしに話を聞いて行きます。

「商品が介在してれば違法じゃないの?」
もちろんですぅ!と昭和のホストK田
「私達の会社がやっている商売は『連鎖販売取引』と言いましてぇ、全く違法じゃないんですよぉ」
連鎖販売取引
、たしかに初めて聞く言葉だ。しかし俺が聞きたいのはそんな事ではない。
このままではラチがあかないので、思い切って聞いてみることにした。
あくまでやんわりとである。

「マルチ商法ってあるじゃん?あれはどんな奴なの?」
やんわりもクソもない。
ずばりストレートに「あんたらマルチじゃないの?」と取られてもおかしくない聞き方だった。
言ってから「しまった!」と思ったが、言ってしまったモンは仕方ないので、
いたって平然とした顔を装い、「聞きましたが何か?」的な顔で相手の答えを待ってみた。

「マルチって言うのはぁ、例えばぁ、このボールペンですがぁ・・・」
K田
の話し方で書いていると話が終わるのに一日使いそうなので省略して書きます。
つまりマルチと言うのは、一本20円ほどのボールペンがあったとしましょう。
その元々は20円ほどのボールペンに何かしらの、例えば「有名人御用達」とか
「NASAが開発した特殊なボールペンだ」などのプレミア性を吹き込み、
暴利とも言えそうな値段で、例えば一本20万円などで売ろうとする事を言うのだそうな。

勘違いしないで欲しいのだが、これはすべてインチキホストK田が言った事である。
結論から言うと、こんな商売はマルチではない。

単なるボッタクリだ。

そもそも商売をやる以上、原価に対して仕入れの手間賃や人件費、
儲けを加算するのはどんな商売でも当たり前の事である。
そのボールペンが、例えばとある遠い外国から取り寄せた至極の一品なら
20万円でもおかしくはないだろう。売れるかどうかは知らんが)
K田の話を真に受けたら、世界の商売のほとんどが違法になってしまう。んなアホな。
こんな事はテレビで聞きかじった程度の知識しか無い俺でも分かる。

ひょっとしてバカにしてんのか?カモがネギ背負ってる様に見えてんのか?
いくら俺がカモネギ扱いされたところで、
俺というカモは鍋が危険だって事くらいは知っているカモなのだ。
男性誌の袋とじを切らずに中を覗き見て、納得できたら買う。
それくらい普段から用心深く、騙されまいとしている男なのだ。
まるでカルピスの原液の様に甘い事を言ったところで、
飲んだ後にノドが痛くなる事くらいは知っている男なのだ。

まぁしかしK田が運転するこの車は、もはや敵のテリトリーだ。
そんな反論をして怒りを買い、このままどっかの草原に車を停められ(以下略

ちなみに、この時初めて聞いた連鎖販売取引と言う言葉、後に調べて見たら

マルチ商法の別名でした。



話が長くなりすぎて、またもや次回に続きます。





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ネズミ達の襲来

2006-04-10 05:36:49 | 続き物



最近住んでるマンションのベランダにネズミが来るらしいと母親が言う。
育てている観葉植物の葉や、収集日までに置いてあるゴミ袋なんかが被害にあってるらしい。

ウチは割と上の階なんだけど、こんなとこにもネズミって来るんだーなんて思ってた。
母親はカゴ型のネズミ捕りを買ってきてベランダの一角に配置。
数ヶ月経った今も罠にかかったという話を聞かない。
「ネズミって頭が良いからねー」とは母の談。

俺の予想。

同じ階で飼ってるネコか、カラスの仕業。







氏だ岡です。






こんにちは。






「氏だ岡さん。久しぶりっすね」

それは一本の電話から始まった。
もうかれこれ10年前の話になるが、俺の周辺ではやたらと横行している事があった。

「ネズミ講」

こんな言葉を聞いたことは無いでしょうか。
今ではインターネットを駆使した新しい手法があるそうですが、
当時は友人知人に片っ端に連絡をすることからがスタートでした。

その頃の俺は某健康センターの会社で働いていて、その時に働いていたバイトからの電話でした。
「氏だ岡さん。久しぶりっすね」
彼は大学生。そろそろ就活を開始するって事で、半年以上前にバイトを辞めていました。
そんな彼からの久しぶりの電話。

ちなみに彼がバイトを辞めてからその日まで、電話があった事など一度としてありませんでした。
そもそも他のバイトの子達とは仲も良くて、飲みに行ったり、
バイト辞めた後なんかも遊びに行ったりはしてたんですが、
正直彼とは飲みに行った事が数回あるくらいで、ぶっちゃけて仲が良いと言う程でも無かったんです。
普通なら「これは何かある!」と思うのでしょうが、
久しぶりの連絡と言う事もあり、電話という安心感も加わってかそんな事を微塵も感じませんでした。

「おぉS籐、久しぶりだな。就職は決まったのか?」
そんな世間話が始まりました。
なんせ半年以上連絡が無かった知り合いからの電話です。
当時の思い出話や、近況、そんな話に花を咲かせたいと思いました。
しかし会話は急展開。
「今何してます?コーヒーでも飲みに行きません?」
電話が鳴って数分の会話でこの展開。
まるでファッションヘルスで金を払った客が、
「時間がもったいないから早く脱いで!」と急かす感じの急展開。
どうやらS籐君は電話じゃなく会いたい様です。

その日夜勤明けだった俺は、非常に面倒」との理由から最初は彼の誘いを断りました。
しかしS籐君は諦めません。
やたらしつこくコーヒーを飲みに行くことにこだわるのです。
コーヒーならそこらのコンビニで買って飲みゃいいじゃねえか。そんな風に思っていました。

「ははぁ~ん。さてはコイツ、俺にメシおごってもらおうとしてやがるな?」
その日は給料日前日。俺の財布の中には千円札が一枚入っているだけだったので、
メシをおごるにしたって牛丼屋で精一杯です。
当時の牛丼はまだ400円前後でしたから、
「食後にコーヒー飲みたいですね」なんて言われたら、普段は温厚な俺も
散弾銃ぶっ放すくらいキレかねません。

いや!今日はこの千円札で、コンビニ弁当とエロティックマガジンを買う予定なのだ。
せめて翌日の給料日以降なら何でも好きなモンをおごってあげられたが、
今日ばかりは譲れん!そう決意はしたものの、
さすがに「エロ本は譲れないから」といった理由で断ろうモンなら
これから社会に羽ばたこうとしている彼に、
「俺の存在価値なんてエロ本以下か・・・就職なんて夢のまた夢だなぁ」
なんて認識を持たれかねない。
単純に金を持ってないと告白するのもなんだか恥ずかしいし、
どうしようかと頭の中で自問自答していました。

「俺がおごりますよ!」

え?S籐君、今何て言ったんだね?
なんと彼は、金の無い俺の心を読み取ったのか、先手を打つかのような言葉を吐きました。
キミはエスパーかね。

まぁしかし、たかがコーヒーとは言えおごってくれるというのを断るのもなんですし、
久しぶりに会って話もしたい。そんな理由で面倒な気持ちを押さえ込み、会う事にしました。
待ち合わせ場所を聞くと、彼は近所のコンビニまで来ていると言う。
まるで俺が会う気になるのが分かっていた様だ。ホントにエスパーか。
当時原付バイクが移動手段だった俺は、コンビニまでスクーターを走らせ
彼に会いに行きました。

駐車場の無いコンビニの店先にスクーターを停め、S籐の姿を探して辺りを見渡しました。
すると彼は、バイトだった当時のイケメン風の笑顔で颯爽と現れました。
「久しぶりっす!」
挨拶する彼はすっかり髪も伸び、俗に言う「ロン毛」で、服装もチャラチャラした格好で
「ヤンキーがパチンコで成金になった」って言葉がピッタリ来る豹変ぶりでした。

「じゃあ車で行きましょう」
と、彼の後ろに停めてある車を指差して言います。
その車は日産の高級車「インフィニティ」
真っ白いボディーカラーに革張りの内装。どこに落ちてたんだこの車?
そして運転手・・・

  運 転 手 ?

そうです、S籐君は一人ではなかったんです。
見たことも無い男が一人、車の横に立っていました。どうやらこの男の車らしい。
明らかにまだ若い感じの男なんですが、その格好がS籐君に負けじとファンキーです。
真っ白なスーツの襟元に迷路の様な刺繍。
その中に紫のシャツ、はだけた胸元にゴールドのネックレス。
足元にブラウンの革靴、そしてサングラス。
これで白いボルサリーノなんてかぶってたら間違いなくどっかのマフィアです。

時代は平成だと言うのにどっから来たんでしょうかこの間違ったホストは。

S籐は「あ、この人K田さんって言って、僕の先輩です」と言うと、
さぁ行きましょう的な感じで助手席に乗り込む。
紹介されたK田も、よろしくと一言だけ挨拶して運転席に乗り込んだ。
呆然と立ち尽くす俺。は?なんでS籐の先輩がいるの?意味が分からん。
頭の中は軽いパニック状態です。
その時に直感で分かりました。

「あ、こりゃヤバイな」と。

そんな直感を察知したエスパーS籐、早く乗ってくださいよと声をかける。
わざわざ車から降りて、半ば強引に俺を車に押し込む。
「やっぱ俺いいわ~」
S籐にそう言って、帰ろうと思いました。
まぁ昔話したいだけならコンビニの前にたむろっても出来るからな。
しかしS籐は引きません。
「コーヒーの美味いとこがあるんですよ~」

ぶっちゃけ味にうるさくない俺です。コーヒーなんてイカ墨と替えられてても分からないくらいです。
どこで飲んでも変わらないし、コンビニにだって缶コーヒーくらいはあります。
しかし不安はわずかに薄れました。
どこぞの喫茶店で話をするのならば、
このインチキホストK田と良からぬ事を企んでいたとしても、逃げる手はある。
最悪店の人間に通報してもらえばいい。
そもそもK田は送ってくれただけで、目的地に着いたら帰るのかも知れません。
そんな可能性を加味して、用事があるから早めに帰るぞと言って車に乗り込みました。

しかし、この時に気づいておくべきだったのです。
S籐「店」とは一言も言っていなかったことに・・・



予想以上に長くなったので以下次回。




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