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東芝ワープロ特許訴訟事件 13: 技術者の名誉にかけて:携帯でメールできるわけ

2007年12月30日 | Weblog


沖電気のワープロ一号機: JW-10を発表したのが1978年9月でした。沖電気は1979年5月には既にこの一号機を出して最も早くJW-10を追いかけてきました。

 --情報処理学会コンピュータミュージアム http://museum.ipsj.or.jp/ より引用

 

 携帯は便利です。いつでもどこでもメールができます。電話がはばかられる車内でも,シルバーシートの近くでなければ問題ありません。第一,電話は通信料が非常に高いし,相手がすぐに出てくれないことも多いしで意外に不便です。

 もし,かな漢字変換が実用化されなかったら携帯電話でメールをするということはできないことでした。写真は沖電気の第一号ワープロです。ケータイでメールをしようとすると,このような大きなキーボードを持って歩くことになるのです。不可能ではありませんが,事実上,できませんね。

 仮名漢字変換はソフトですから,大きさがありません。仮名かローマ字*を入力できるキーボードと小指の爪ほどのコンピュータさえあれば実現できます。ケータイのような小さな機械で日本語メールができるのはこの理由によるのです。

*:ローマ字かな変換は極めて簡単で中学生でも作れます。a-あ,ba-ば,のような表を作るだけです。

 しかし,2000字ほどもある漢字をそのまま入力する機械では,このように漢字キーボードが巨大になってしまうのです。東芝でも,私が入社する前は,そのような発想しかできず,「アタッシェケース型のポータブル漢字入力タブレット(左のサイトのページで一番下までスクロールしてください)」を試作していました。新聞記者が持ち運んで,記事を現場で入力するために作ったそうですが,さすがに採用されませんでした。

 更に,ワープロ機能により,いくらでも書き換えとメールの保存ができることは,空気のように自然なことなので,その有難さに気がついていない人が多いでしょう。それに気がついている人が,我々以外にも居ました。下の記事を書いた方です。


ワープロ今昔物語

文章を書く人にとって、ワープロの一番ありがたい点は、右寄せとかセンタリングなどの「芸」ではない。最も単純な「訂正」「削除」「挿入」こそが驚きなのだ。

原稿用紙に向かって、ペンを握ったまま、ああでもない、こうでもないと悩み、「ある日……」と書いては紙を丸め、「私の……」と書いては引きちぎり、くずかごや周辺はごみだらけとなる。それというのも、傑作意識だけでなく、紙に向かって書くという作業は、訂正も削除も、ある種の覚悟が必要だからである。書き出しがスムーズにいかないと、文の流れは極めて悪い。ところが、ワープロで文章を考える場合、気に入らなかったらすぐ消せるし、それで紙が無駄になるということもない。気を入れて清書したのに、1つの間違いから気分台無しになるということもないのだ。また、文の流れを気にせず、思いついたまま、メモ的に文を書いておき、あとで「移動」や「挿入」で立派な文章を組み立てられる。その結果、きわめて楽な気持ちで文章を考えることができ、構える必要もなく、アイデアが湧いてくる。もちろん、つぶやきにすぎないものや、単なる思いつきも記憶しておけるから、あとで「しまった!取っておけばよかった!」と悔やむこともない。
考えてほしい。文字発明以来、こういう作業は何千年間も不可能だったのだ。
 --http://homepage2.nifty.com/maeno-sc/page008.html


 JW-10で,「訂正」「削除」「挿入」の3機能大きなキーとしているのは,まさにこのためなのです。



このブログの第一回
東芝ワープロ特許訴訟プレスリリース
東芝ワープロ発明物語:車上のワープロ技術史
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