将棋ソフト生活

将棋ソフト・コンピュータ将棋の話題

第一回将棋電王戦が決着。記者会見は必見。

2012-01-14 23:30:16 | 電王戦
米長会長とボンクラーズの電王戦がありました。

今回はタイムシフト視聴も無料のようです。
将棋電王戦 ニコニコ動画

結果はすでにニュースでご存知かと思いますが、ボンクラーズの快勝でした。
しかし、いろいろな意味で刺激的なイベントでした。

<対局の感想>

■戦形がなんとプレマッチと同じ。
ボンクラーズは四間飛車、米長会長が62玉戦法。

最後の記者会見で米長会長が語るには、62玉戦法は対コンピューターとして有効であるという結論だったから採用したとのこと。
普通の戦法を採用してもボンクラーズが強すぎる、ということの裏返しだと思います。

■中盤までは、米長会長が金銀の厚みで圧迫して、こう着状態を作ることに成功。
ボンクラーズが手に困って飛車を反復させるような状態。
ただし、ボンクラーズは膠着した状態でも悪手を打ったりしないので、むしろコンピュータ将棋の進化を感じさせました。

■62玉戦法はとにかく悪形。駒が上ずってしまっているので、大ゴマ交換すれば不利。玉飛が近いので、金銀交換でも不利。戦線をひらくことができない厳しい状態でした。

■後手が有効活用したはずの金が足を引っ張る形になって勝負あり。中盤を過ぎたあたりから、後手に勝ち目がない形となってしまいました。


ということで、序盤は米長会長が頑張ったようにも思えますが、中盤からはちょっと勝ち目がない残念な形となってしまいました。終盤まで混戦が続くような面白い将棋とは言えませんが、健闘を称えたいと思います。


<その後の記者会見>

勝負の後に記者会見がありました。これは非常に重要な会見だったと思います。
コンピュータ将棋に興味のある人はここだけでも見た方がいいですよ。

■来年の電王戦で5局一斉対局が予定されています。
本当は1年に1局で5年続ける予定だったようですが、急きょ1年で一気にやるようにしたそうです。この決断に拍手を送りたいです。

今のコンピュータ将棋の強さから考えると、1年1局のもったいぶった対局スケジュールでは間延びするだけで興ざめでした。しかし、一気にプロ棋士5人とやるなら盛り上がります。こういった決断をとっさに行える柔軟性は、さすが米長会長というべきでしょう。顧客(将棋ファン)の心理を直感的に把握しています。

■ドワンゴ(ニコニコ動画)が積極的に支援するそうです。
記者会見にはドワンゴ社長も登壇。電王戦への継続支援を表明しました。
上州将棋祭りでもそうですが、ニコニコ動画は何時間でもぶっ通しで生中継できます。今回の電王戦でも9時間ぶっ通しですよ。これはテレビでは真似できないことで、ネットメディアの強さが際立っています。今後、ニコニコ動画が将棋中継のインフラとして活躍することでしょう。

■米長会長とボンクラーズとの練習対戦での結果。
米長会長は練習でボンクラーズと150戦ほど対局したそうです。
そのときの勝率は、1割ほどだったそうです(1分将棋で)。将棋倶楽部24でボンクラーズの勝率は95%近いですから、プロ棋士でもそのあたりが限界のような気がします。(ちなみに、将棋倶楽部24のR2800以上にはプロ棋士が多いはずです)
いずれにせよコンピュータ将棋の強さは本物だということが実感できました。

■将棋連盟がもっているコンピュータ将棋についての見解が明らかに。
米長会長の発言として、次の見解が示されました。

・将棋指しの使命は最善手という真理の追究であって、それが人間によるものかコンピュータによるものかは関係がない。
・将棋連盟は今までもコンピュータ将棋協会を資金的にも人材的にも支援してきた。これからも支援する。(コンピュータが脅威であるとか、そういうスタンスではないようです)
・自動車の方が速く走れても、箱根駅伝のように人間が走る感動が薄れるわけではない。どんなにコンピュータ将棋が強くなってもプロ棋士同士の対局はファンに感動を与えられる。

将棋の歴史に残る記者会見だったのではないでしょうか。

ここ数年は、コンピュータ将棋が人間より強くなるという歴史的な瞬間に来ています。
プロ棋士は存在意義をどのように主張するか難しい時期にいます。

その中で、将棋連盟の会長が明確なスタンスを表明したことは意味のあることです。
上記の見解は、きわめて妥当なものだと思いますし、逃げも隠れもしない堂々としたものでした。
ということで、やはり主役は会長でした(笑



2012年は将棋ソフト元年?

2011-12-31 22:20:19 | 将棋ソフトについて考える
2011年は将棋ソフトの華々しい活躍が印象的でした。

ponanzaとボンクラーズが将棋倶楽部24で強さを印象付けました。
レーティング3000という水準の中で勝率9割以上なので、「人間よりも強い」という認識が浸透しつつあります。

前年の2010年には「あから2010」が清水女流に勝ち、先日には電王戦プレマッチでボンクラーズが米長会長に勝ちました。ただ、そういった1回勝負の公開対局でコンピュータが勝ったことよりも、将棋倶楽部24というプラットフォームの中で将棋ソフトが圧倒的な勝率を誇っている事実の方が重要です。強さの証明として、説得力をもっています。

トッププロと比べてどちらが強いかについては、まだわかりません。トッププロが本気でやれば、プロが勝つかも知れません。ただ、将棋ソフトはアルゴリズム的にもハード的にも進化の伸びシロが残っているので、「遅かれ早かれ」という気がします。

ということで、2011年は将棋ソフトの強さが人々に認知されはじめた年でした。
2012年は「将棋ソフトの時代がはじまった年」になると考えています。
将棋ソフトの存在が人々に浸透することによって、将棋の認識そのものに大きな変化が訪れる。そんな「はじまったな・・」という年です。

「人間とコンピュータのどちらが強いか」という問題設定は、近いうちに消えていく気がします。
コンピュータの方が強いことを前提にして、将棋の楽しみ方が広がっていく。そんな時代が来そうです。


将棋電王戦が盛り上がってきました

2011-12-24 18:31:43 | 電王戦
将棋電王戦プレマッチを見逃した人のために、youtube動画を紹介しておきます。

youtube 将棋電王戦プレマッチ

番組の全部(1時間半)が公開されています。

ニコニコ動画は、今からだとタイムシフト視聴となるので有料会員の人しか見ることができません。

なお、棋譜を見るだけなら将棋倶楽部24の棋譜検索で見ることができます。
bonkrasで棋譜検索してください。


上記の番組では、気まずい雰囲気を堪能できます。
司会者が「来月の対局では、自信のほどは?」と空気を読まない(台本通りの)質問をしていて、思わず涙が流れそうになりました。

負けて落胆している棋士をつれてきて、対局後すぐにカメラの前で語らせるのは、やはり酷だと思いました。

ただ、米長会長の健在ぶりと言えるかも。
負けて悔しく感じなくなったら、そのときは勝負師として完全に終わったことを意味します。
あれほど落胆し、怒りや悔しさを内に秘めた米長会長を見て、惚れなおしました。

だからこそ、人間を応援したくなるわけですね。
来月の対局は心から米長会長を応援しています。

将棋電王戦プレマッチは、本番の電王戦を盛り上げる役割をしっかり果たしたと思います。


将棋電王戦プレマッチはボンクラーズの圧勝

2011-12-22 02:34:59 | 電王戦
ボンクラーズVS米長会長の将棋電王戦プレマッチは、微妙な空気が流れたまま終わりました。

米長会長の見せ場がないままあっけなく終了。
大差がついたとか、そういう問題ではなく、米長会長の悪手連発が目立ったようです。
ここだけの話、まるで素人将棋のようなちぐはぐ感がありました。

<対局の印象>

・序盤からずっと飛車角を使わず。15手目あたりで、「こりゃダメだ」といった空気がただよっている状態に。(入玉狙いの作戦だったのか、金銀を押し上げてました)

・王手飛車の桂打ちの筋を見落とし。歩が取れずに押し込まれる。

・戦線は崩壊寸前なのに端歩など緩手が目立つ。

・終盤は「攻めてくるから守る」という手拍子で、現状打破の糸口がまったくなし。切れ味のある手が出せませんでした。


ボンクラーズの強さから考えて、少し荷が重かったような気がします。
トッププロでも早指しならヤバイかも知れないのに、引退して8年の会長が対戦するのはきつすぎです。

来月の公開対局はどうなるでしょうか。
準備といっても、何を準備すればいいのか。
普通に全力でぶつかってもらって、少しでも良い棋譜を残してもらいたいです。

少し気になったのは、米長会長は現在のコンピュータ将棋の強さをどこまで知っていたのかということです。日頃の強気の発言は、いつものようにサービス精神の表れだと思っていましたが、本当に見くびっていた可能性がないでしょうか。

今日の作戦を見ると、あれで通用すると思っているというのは、将棋ソフトを完全になめていたとしか思えません。

現在のコンピュータ将棋は、早指しなら羽生二冠より強い可能性があるわけです。
「羽生より強い相手と戦う」というつもりで、コンピュータ将棋と向き合ってほしいものです。
もうそういう時代が来ているのです。


将棋電王戦プレマッチの理由を推測

2011-12-18 14:04:54 | 電王戦
来年1月に米長会長とボンクラーズの公開対局がありますが、その前哨戦をやるそうです。
時期は12月21日の19時から。

ニコニコ中継あり
将棋電王戦プレマッチ

ネット対局なので、将棋倶楽部24でも観戦できるようです。

解説が谷川浩司九段という豪華さ。
谷川九段は次期会長だと思いますので、まさに将棋連盟の経営陣が総出でコンピュータ将棋と向き合う状態です。時代の変化を感じますね。

しかし、なんでまた前哨戦なんてものをやるのか疑問がわいてきます。
どうせ来月に対局するんだから、わざわざ2度対局しなくてもいいのに、と思う人が多いことでしょう。
経済的なメリットはないでしょうから、イベントで稼ぐという理由はありえないことです。

そこで推測になりますが、「負けたときの保険」をかけたのではないかと。
プレマッチで勝てれば、仮に公開対局で負けてもメンツが立ちます。
「先月は勝てましたが、今回は残念ながら・・・」というように。
逆に、プレマッチで負けても、公開対局で勝てばメンツが立つ。本番で勝ったと。

つまり、2回対局するうちのどちらかで勝てればメンツが立つという計算です。
一発勝負よりも有利な状態を作るためにプレマッチを企画したように思えます。
(邪推かな?)

個人的には、まさに「そうすべき」だと思っています。
先月の記事でも書きましたが、コンピュータ将棋との対局をシリーズ化するしかないですよ。

コンピュータ将棋が強いことはもう自明で、これからもっと強くなる。
将棋ファンの関心も高まっているのでプロ将棋界としては無視できない。
しかし、「どちらが強いか」という観点で対局をすると、いつか負けたときにメンツを失うだけです。

だからシリーズ化して勝ったの負けたのをやっていけばいいと思います。繰り返し対局して、ときどき勝てればいいんです。

プレマッチを立案したのが誰か存じ上げないですが、もし米長会長サイドだとしたら、さすがの策士ぶりです(笑。