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酒造コンサルタント白上公久の酒応援談 

日本文化の一翼を担い世界に誇るべき日本酒(清酒)および焼酎の発展を希求し、造り方と美味さの関係を探究する専門家のブログ。

ジアセチル

2018-12-18 12:44:05 | 総合
ジアセチルはツンとした香りの物質である。発酵食品にはよくある香りでバターのフレーバーの主成分として有名である。バターからジアセチルを除けばバターとして認識されないかもしれない重要な成分である。酒類にもジアセチルは含まれるがオフフレーバーとして嫌われる。赤ワインにはかなり大量のジアセチルが含まれるが問題にならない。ジアセチルを含まない赤ワインはほぼないのであって当たり前の香りである。一方白ワインでは敬遠される。ワインでも違うのだ。ビールや日本酒ではおおいに敬遠され赤ワインを除いては望まれない物質なのだ。

ジアセチルは微妙繊細な酒の味を引き裂くような強い臭いで日本酒やビールの風味を台無しにする。強烈な悪役が舞台を独り占めしているようなものだ。こいつは本当に悪役なのだろうか。面白い酒(純米大吟醸)に出会った。わずかにジアセチルを感じるが邪魔するほどではない。専門家がよくよく探し出さないと見逃す程度だ。吟醸香とあいまって未経験の匂いだ。最初は未知の香りだ。個性を感じる。味も個性的なのだ。個性的な味はジアセチルの味なのかは不明だがやや焦げたような引き締まりと余韻がある。この辺は麹やもろみ経過(溶け具合、発酵温度、日数、粕)など造りとの関係もあるのだろう。


農大の花酵母はセルレニン耐性株

2018-06-17 09:23:58 | 総合
日本酒フェアーでは各地の市販酒がきき酒でき購入できる。これも各地の市販酒を知るいい機会だ。鑑評会の酒に劣らずバラエティーのある良い酒が並びこちらもお薦めだ。
その会場の一角に東京農大の花酵母のブースがあった。これはセルレニン耐性酵母ですねと尋ねたらあっさりとはいそうですと返ってきた。花酵母を知った最初から持っていた疑念が解消された。農大はセルレニン耐性株だと明示すべきだろう。そして花から分離したという神話も。
追記
セルレニン耐性株は実用酵母から選別した酵母であり、遺伝子操作を行っていないので食品衛生について問題なく気にすることもありません。花酵母以外にセルレニン耐性酵母は広く使用されています。

日本酒フェアー

2018-06-17 09:13:30 | 総合
16日池袋サンシャインで日本酒フェアーが開催された。4年ぶりに出かけた。平成29酒造年度新酒鑑評会の入賞酒金賞酒のきき酒ができる。入場料4000円で沢山の名酒をきき酒出来るのは素晴らしい。1万円払ってもお得だ。お酒の品質感想は今までとは格段に甘くなって吟醸香が一段と強くなっている。甘さと吟醸香がテーマみたいだ。地域的には特長があり新潟県は甘さが控えめであったが昔の新潟吟醸に比べれば甘い。灘伏見大手の酒は特に素晴らしい。甘さや吟醸香に頼ることなくすっきりと、味にふくらみがあり香味のバランスがいい。さすがと賛辞を送りたい。全体では以前は?と思う酒が混じっていたが今回は見当たらなかった。
残念というか課題もある。金太郎飴現象だ。多様な品質が評価されることが日本酒の発展を約束するものと思う。今後そのような方向に行くことを望むしだい。
とても楽しいひと時だった。が、一つ気になったのは外国人のグループが同じ場所で何回もきき酒(飲んでいる?)し会話に夢中で動かなかったことだ。多くの後続が順番待ちなので迷惑千万だ。きき酒にはルールがある注意書きは日本語と英語で書かれている。楽迷惑グループは最初からその雰囲気があったがアルコールが入っていなかったのでまだ他人に配慮する自制が効いていた。が、きき酒の時間が過ぎるに従って楽しくなり配慮が失われたのだろう。酒盛りになってはいけない。会話も最小限に慎むべきだ。単なるイベントではない真剣な情報収集の場である。

酒蔵今昔

2018-05-18 13:29:01 | 総合
自然の環境で日本酒を仕込むのは11~12月から酒母仕込み、12月にもろみ1号の仕込み、1月末の大寒ころに大吟醸酒の仕込み、2月末か遅くても3月初旬に甑倒し(仕込み終了)、もろみを絞り終えるのは3月下旬だった。小さな蔵はもろみ仕込み本数数本って処もあった。多くは20~30本くらいの仕込みだった。零細な酒蔵は多数あった。多いときは5000蔵と聞いたが、この世界に入った50年ほど前は3300蔵、現在は800くらいではなかろうか。この頃の蔵の年間製造量が千石(180kl、アル添を除く純米酒換算ベースだと600石)だと大蔵だと言われた。小さな蔵の目標だった。現在は千石では小さな蔵とある大きな酒小売り屋さんの蔵紹介にあった。その千石の内容は大吟純米酒が半分以上占めている。アル添酒(本醸造酒)はわずかだ。同じ千石でも玄米の使用量は2倍以上だろう。小さな蔵(製造設備)で高級酒を大量に作るには昔の方法では不可能である。現在は小さいと言われる千石の蔵でも製造期間は9月~翌5月だ。季節労務の杜氏から年間雇用従業員に製造現場は変わっている。

季節労務の杜氏が酒造りの主体であった時代は杜氏講習、公的機関の技術指導や仲間内(親分子分親戚)の酒造り情報交換で蔵間の技術格差は小さかった。酒造りの担い手が杜氏から年間雇用従業員になった今日、他の蔵との交流が希薄になり蔵間の技術に独自性が出来つつある。技術が秘匿される時代になった。基本的な技術は専門書によればいいが嗜好性の高い酒造りのノウハウは自分たちで確立しなければならない。

カプエチ(カプロン酸エチル、リンゴの香り成分)のない酒 無濾過超高級酒を

2018-04-28 08:12:37 | 総合
濃度が適正であればカプエチは多くの人にとっては好ましい香りである。猫も杓子もカプエチでは有難みも薄れ何とかならないかと思う人も出てくる。そこでカプエチ後の日本酒はどういうものがあるのだろうか。これは難問である。カプエチ含めて吟醸香は良い造り(味)をすれば出てしまうからである。良い味を出し吟醸香を抑えるのは至難の業である。その昔吟醸香を出そうと苦闘した先人の努力と逆の努力が求められる。
1 精米の良くない(精米歩合70%以上)で造る。精米歩合70%でも吟醸香は出る。現在の酵母ならかなり出るであろう。味はいろいろ多いから無濾過は不適当だろう。
2 麹歩合を落とす。香り成分は少なくなりさっぱりすっきりした酒質になるが痩せた味という不満はある。高級というには違う。
3 吟醸酵母に分類されていない協会6、7、11号酵母を使う。7号はデビュー当初は吟醸酵母として売り出されたので豊かな吟醸香が出る。11号は7号のアルコール耐性株で吟醸香は7号より少ないが酸が多い。6号は吟醸香が出ない株という評価だが、吟醸造りをしたら何とカプエチが2ppmも出た(30年前は9号酵母でも出ないか出ても僅かだった。)。が、吟醸香が出にくいという点で有望。
4 麹の酵素力価の弱い麹菌を使用する。酵素力価を高めない麹造りをする。
5 活性炭素ろ過で吟醸香を取る。これはもはや高級酒ではないだろう。

以上は現在の技術の中での対応だがしっくりこない。吟醸酒を越える超高級酒として吟醸香を出さない酒造りは難しい。しかし要望がある。市場の突き付ける課題は日本酒を進化させる。

カプエチ(カプロン酸エチル、リンゴの香り成分)のない酒

2018-04-27 07:25:21 | 総合
現代日本酒はカプロン酸エチルの香りの強い酒全盛である。この成分の多い酒は10ppmを越えている。この濃度になるとむせぶほどである。ふた口めは喉を通らないと思う人もいる。でも人気があるのもたしかだ。外国人も好む。一方で高級な和食店では吟醸香の少ない料理の邪魔をしない日本酒を望む声が三ツ星レストランで強いと聞く。カプロン酸エチル吟醸酒は曲がり角に来ているのだろうか。
30年前、カプロン酸エチルは吟醸酒を作る杜氏にとっては望んでも手に入らない吟醸香だった。当時の新酒鑑評会出品酒の香気成分の分析結果ではカプロン酸エチルほぼゼロだった。平成5年頃から急増した理由については過去の記事で書いた。

現在はどうか冒頭に書いた通りでカプロン酸エチル暴走、カプロン酸エチル唯価とでもいう状況だ。カプロン酸エチルの強い酒は唯我独尊で料理も何もない。さすがにこれはマズイという意見が出てきた。カプロン酸エチルの少ない酒をどのように作るのか、これは結構難しい。現在手に入る酵母はほとんどがカプロん酸エチルを沢山作る酵母だからだ。普通に作っても多くはないがカプロン酸エチルの香りが出る。造り手もカプロン酸エチルのない酒を造って商品を出した場合市場の反応が冷淡にならないかという恐れを抱いている。

カプロン酸エチルの目立たない料理を引き立てなお日本酒の旨さを楽しめる酒が次代の酒だろう。製造技術の変革が求められている。

米の味と酒の味

2018-03-01 18:11:19 | 総合
清酒の原料は米である。米の味と清酒の味との関係はどうなっているのであろうか。明確に示した記述は寡聞である。ワインと原料ブドウの品種ほどの原料品種差が分からない。きき酒して原料を言い当てられるほど米の味と香りの品種間の違いはわずかなのだ。きき酒して原料品種を聞いてなるほどと納得すことがしばしばだ。でも品種の差は明確にきき分けているのだ。具体的に差を表現できないだけなのだ。酒造用米の代表は山田錦である。山田錦と他の米を原料にした酒との品質格差は比べてみれば多くの人がきき分ける。良い例が鑑評会である。経験のある審査員は山田錦の酒をピックアップし金賞受賞酒は圧倒的に山田錦の酒である。統計学的に検証すれば有意の差があるのは明らかだろう。
山田錦のご飯の味は一般米に比べれば淡白ではあるが酒造用米としては淡白でもなく濃いわけでもない。酒造用米のもう一つの代表である五百石と比べて見れば五百万石は淡白な味であることが分かる。酒にしてみても味の差ははっきりする。山田錦の酒はすっきりした味に上品なうまさが広がる。五百万石はただきれいなすっきりした味しかない。もう一つの酒の味の要素である滑らかさうまさが山田錦に比べ足りない。この差を埋める技術はたぶんないだろう。原料米の品種は酒造りにとって重要な選択である。

級別がなくなって数えで30年

2018-02-24 10:00:03 | 総合
日本酒(酒税法では清酒)の級別がなくなって数えで30年(満29年)になる。今となって級別がなぜ無くなったのか分からない人が多いだろう。級別制度に関しては国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/ntc/sozei/tokubetsu/h22shiryoukan/05.htmを参照ねがいたい。級別廃止の経緯については何処にも書いてない。ウキペディアでも経緯は分からないと書いてあり、廃止前の級別制度に反対する一部業者の動きが書かれている。当時の雰囲気は以下のように記憶している。
清酒の級別はまず平成元年3月末で特級が廃止された。3年後に1級が廃止され完全に消滅した。ウィキペディアに書かれている無鑑査酒のような級別を無視する一部業界の動きの程度では級別廃止に至る大きなエネルギーではなかったと思う。級別を廃止させた一撃はサッチャー元英国首相の日本の酒税制度のいびつさに対する不満でウイスキーの級別制度と税率にあった。スコッチウイスキーに対する不利不公正な扱いを問題にした。いわく公正公平に扱ってもらいたい。正論である。この一言でウイスキーの級別制度は木っ端みじんに打ち砕かれ廃止が決まったとされている。首相レベルで決まったことに政治家などが出る幕はなかった。余波は清酒にも及び連れて清酒の級別制度廃止が決まった。現在の酒税の課税はかなり公平になったがビールの高い税負担は取り残された。近々ビールの税負担が軽減されるようだが一挙にアルコール分課税とはいかないようだ。
級別制度がなくなり2001年の中央省庁等改革基本法で自己責任制度が導入され製造や販売に対する国の制約が弱まり品質と価格が製造者の手元に戻った。特級、一級、二級しかなかった品質が多様化し吟醸酒など高級品が台頭しメーカーの個性も際立つようになって消費者ニーズを的確に捉えるようになった。品質の向上と多様化で海外でも日本酒の評価が高まり輸出が増えつつある。級別制度が残っていたら清酒は悲惨な状態になっていたかもしれない。メーカー数及び販売数量は盛事の3分の1に落ちたがタフなメーカーが生き残り日本酒の捲土重来が期待される。護送船団方式による波が無い海では丈夫な船は要らない。級別廃止行革の大波に耐えた船は立派に見える。

カルピスソーダ味

2018-02-22 07:53:02 | 総合
日本酒メーカーの社長さんからカルピスソーダ味のする日本酒が飲みたいと言う消費者の要望があると聞いた。要望というより願望なのかもしれない。一見トンデモナイ願望はいつの日か実現され定番になっているかもしれない。日本酒の味は古来から同じではない。常に進化し変化している。吟醸酒は明治時代すっぱい、苦い、渋い、たくわんのような嫌な風味のない軽やかで水のように差しさわりのない酒を実現したいという業界人の願望に始まっている。明治時代に取り入れられた西洋科学手法による醸造科学の解析で醸造技術は格段に進化し現在のフルーティな吟醸酒が一般化した。願わないことは実現しない。とんでもない無理だという消費者の滅茶ぶりが日本酒を変えるのかもしれない。
カルピスソーダ味とは言えないが桃色濁り酒は甘酸っぱくて低アルコールでイチゴの香りがする。2月末に販売するメーカーがある。ひな祭りや桜の時期なのでピンクは季節感にぴったりだ。毎年一瞬で売り切れ生産量を毎年増やしているが需要には応えられないという。濁りでなくろ過した酒は甘いロゼワインに見紛う。色もきれいだ。しかし桃色日本酒をうまくできるメーカーはまだ少数と聞いている。酵母は日本醸造協会が製造販売し醸造法を公開しており今後普及のスピードは上がるのかもしれない。

税込み386円のワイン

2017-12-18 14:18:35 | 総合
近所のスーパーで税込み386円のチリ産ワインが特売されていた。飲んでみて驚いた。高級感はないが欠点もない。強いていえば茎臭が少しするが問題になるレベルではない。カベルネソーヴィニヨンと表示されているがカベルネソーヴィニヨンの濃厚さはさほどでもない。酸が少なくフレッシュである。冷凍で酸を落とし仕上げのろ過がしてあるのだろうか。ろ過したクセはあるが普通の人には分からないだろう。フルボデイとミディアムの間に印が付いていたがミディアムボディと思う。未熟なヌーボーよりおいしい。こんなのが大量に入ってくれば清酒はあぶない。清酒は清酒らしさで勝負すべきだろう。ワインにすり寄ったもどき清酒なら本物のほうがいい。対応を誤れば居酒屋の棚から清酒が消えかねない。

マロラチック発酵清酒

2017-12-18 09:16:26 | 総合
マロラチック発酵(MLF)は赤ワインの酸味を減らす目的でワイン中のリンゴ酸を乳酸にする乳酸菌による発酵である。これにより強烈なリンゴ酸の酸味が減じられまろやかさが出る。欠点はジアセチルが生成し長期間このツンとしたドクダミのような刺激臭が残ることであるが高級赤ワインにはあるものなので誰も気にしていない。なお、清酒にはジアセチルは存在してはならない、ジアセチル臭を感じれば腐っていると大騒ぎされる。

以前ニュースでマロラチック発酵した清酒が取り上げられていたがリンゴ酸をほとんど含まない清酒でなぜマロラチック発酵?。清酒酵母の作る酸はコハク酸で特殊酵母を除いてリンゴ酸をほとんど作らない。リンゴ酸のない清酒でリンゴ酸を減らすって何の冗談、記者は中身も分からずに何報道してんだかと。
今朝届いた日本醸造協会雑誌に記事が載っていた。結論から言えばワイン様の日本酒の開発が目的だったと言える。リンゴ酸高生産性酵母(開発済み)とチロソール(苦み物質)高生産性酵母(リンゴ酸高生産)とMLF菌を仕込み、酵母が作るリンゴ酸を片っ端から乳酸に変え、乳酸の多い清酒を作ったということだ。通常の清酒ではコハク酸が多くこれが清酒の特長的なうま味であるがマロラチック発酵清酒は乳酸が最も多い。味わいは飲んだことは無いがコハク酸の味は抑えられて乳酸の味が出ているのだろう。アルコール分15.9、日本酒度ー23、酸度は2ということだから酸っぱくないと思われるアルコール分を13%に加水して製品とするればワインを意識した酒という目的がみえる。MLF特有のジアセチルとチロソールの苦みでワイン風味なんだろう。
清酒中の主な有機酸
コハク酸・・・・旨味と酸味、重厚さがある。
リンゴ酸・・・・まさに酸っぱい。味はクリアー。
乳酸・・・・・・味に幅があるクセのない酸味。清酒酵母はほとんど作らない。清酒中の乳酸は酒母由来。火落ちした清酒には多い。
クエン酸・・・・さわやかな酸味、柑橘類の酸味。清酒にはほとんど含まれない。焼酎麹はクエン酸を作る。

EUとのEPA協定で起きる日本酒の災難

2017-11-23 08:43:55 | 総合
本日の日経朝刊に2019年中にEUとのEPA協定が発効し輸入ワインの関税が最大93円安くなるという記事が出ていた。ワインは他の酒類に比べても酒税が安く酒類の種類間の税負担不平等が顕在化する。すでにチリとのEPA協定でチリ産ワインは非常に安く税込み500円以下で店頭に並んでいる。シェアーも拡大の一途だそうだ。この現象がEU産ワインでも起きるということになる。割を食うのは他の酒類であるのは火を見るよりも明らかだ。記事ではこれを機にワインのシェアーが日本酒を上回ると予想している。人口減少老齢化で酒類の消費は今後ますます減るだろう。日本酒は原料米の高騰とダブルパンチを喰らうことになる。危うし国酒日本酒。妙案は・・日本酒業界としてはない・・1リットル1000円以下の酒類(税負担の高いビールは除く)には懲罰的酒税を課すのはどうだろう。落ち込んでいる酒税の回復にもなる。

日本酒造りの革新

2017-11-08 07:55:04 | 総合
日本酒造りの基本は江戸時代の寒造りである。寒造りは様々な微生物が生存する解放空間で有害微生物の汚染を最小限度に抑え芳香豊かな良酒造る優れた技術であり200年の伝統の技である。れんめんと技術改良がなされ穀物原料とする酒では考えられない果実香のする吟醸酒も現在では普通の酒になっている。何を革新する必要があるのか。
1 香味については麹由来のカビ臭の低減である。麹はカビであるからカビ臭がするのは当然であるがこれを気にならない程度まで低減するれば一層フルーティーさが増し初めて日本酒を口にする人の抵抗感は低くなると期待される。
 現在使用されている種麹は種々の香りがしメーカーにより独特の匂いがある。この匂いは麹の老若(生育時間)により変化していく。杜氏はにおいの変化で温度管理や水分調整し良質な麹をつくる。しかし消費者は麹の匂いを嫌う傾向がある。酒を活性炭でろ過すればカビの匂いは気にならないほど低下するが繊細微妙な味を大切にする無濾過の酒は麹の匂いは悩ましい。
2 酒造り期間の長期化。寒造りは11月から翌年3月の短期間である。これでは現代の企業としては効率が悪い。関与している酒造会社9月から翌年5月いっぱい仕込みがある。9月や5月は夏でといってもいいほど暑く湿気と温度で微生物活動が活発で酒造りに不向きである。大手企業は工場全体を5℃に冷房し冬の環境を作っているが作業員には外気との気温差は体に厳しい。また、現在の機械は夏場の製造に対応しているとは言えない。さらにもっと無菌的な製造機械は作れる。とりあえず高圧空気を使いたい。風力で高圧空気を製造しボンベで工場に運び利用するのはエコであり衛生面の改善が期待される。圧縮空気は製造過程で高温押圧に晒され無菌になる。これを蒸米の冷却(圧縮空気を減圧すれば温度は非常に下がる)やエアーシューターに使えば作業場をそれほど冷房せずに衛生的にもろみを仕込めるだろう。現在風力で4~500気圧の圧縮空気を造り貯蔵し随時発電しているプロジェクトがある。技術的な困難性は低いだろう。このような高圧であれば第一段階で発電し次いで仕込みに使えばいい。一石二鳥だ。

官能審査

2017-06-29 11:46:54 | 総合
官能審査とは人間の五感をセンサーとして使ったものの評価方法である。人間でしか分からぬ事項の評価方法である。人間がセンサーであるからセンサーとしての信頼性はどうなのか。極論する人は人間は嘘をつくから官能評価は信頼できないともいう。人間が嘘をつくという前提に立って行われるのが官能審査でやり方は色々だ。
直近相談を受けたのがこの評価正しいのですか?だ。出品酒と送られてきた評価を見るとどうしてこんな評価になるのかあまりにもセンサーとしての性能の悪さが気になった。このような製造技術及び品質審査の官能審査の基本は訓練された審査員が行う(好き嫌いなら誰でもいい)。審査員は正確な認知と的確な言葉で評価しなければならない。送られてきた評価にアセトアルデヒド臭、ジアセチル臭、焦げ臭・・・などその酒ではまったく認識できないものがネガティブ指摘が多数。筆者はこれらの臭いには若いものに負けない感度を自負している。悲しくなるレベルの審査である。
こういう??誤審査を防ぐため複数の審査員が合議で審査する方法がある。ワインやIWCの日本酒部門の審査では取り入れている。呉審査する審査員は次は呼ばれない。審査員も審査されているという緊張感がある。出品者は命がけ、審査員も自分の首をかける気構えが必要だ。

酸化臭、びんの材質

2017-04-20 21:55:55 | 総合
日本酒のビンは白びん(無色、青みがかったのは鉄が多い)、茶びん、グリーンびんが使われ品質上問題がないことは経験的に確認してる。ファッショナブルなびんとしてブルー(コバルト)や黒っぽい黒びんを最近見かける。これらのびんは日本酒を劣化させる恐れがある。コバルトびんは徐々にではあるが酸化臭が発生する。時間とともに強くなる。原因はコバルトが疑われている。黒びんは鉄とマンガンが着色物質で最近この瓶に入れたものが非常に強い酸化臭が発生するという事態に出くわした。著名な銘柄でもこの瓶で異臭問題が発生した噂される。鉄の関与が強く疑われる。びん業者は酒に鉄は溶けださないと否定してはいるが溶けだしたら酒が着色するから溶出はないだろうが官能的には✖である。
なお、ヒネ香と酸化臭を混同している人が多いが似て非なるものである。ヒネ香は熟成香であり酸化臭は商品価値を損なうあってはならない嫌味を伴う劣化臭である。