吹く風ネット

知人との会話

 数日前、通りを歩いている時に、「こんにちは」と声をかけてきた年配夫婦がいた。数年前にお世話になった方だった。ぼくが「こんにちは」と挨拶を返すと、奥さんが、
「先日ね、大変なことがあったんよ」と言った。
「どうしたんですか?」
「主人がね、倒れたんよ。脳梗塞で」
「えっ、ご主人ピンピンしてるじゃないですか。それいつの話ですか?」
「二ヶ月ほど前。部屋に行くといないので、おかしいなと思って探してみたら、ベッドの下に落ちてたんよ。それで救急車を呼んでね」
「それは大変だったですね」
「病院行って、検査して、すぐに手術したんよ」
「手術したんですか?」
「うん。手術は6時間かかったんよ」
 と、奥さんは、横にいたご主人の帽子をとって、手術の跡を見せてくれた。側頭部に20センチほどの縫合痕があった。

「どこの病院に入院してたんですか?」
「S病院」
 ぼくと同じ病院だ。担当医を聞いてみた。
「K先生とN先生」
 そこでぼくは、
「実は自分も昨年、脳梗塞でS病院に入院したんですよ。自分の担当医もN先生です」
 と、自分のことを話した。
「手術はしなかったの?」
「自分は点滴だけでした」
「じゃあ発見が早かったんだ。で、今なんともないの?」
「いや、しびれは残ってますよ。ご主人は?」
「倒れた時は、脚が麻痺してたんだけど、今はなんともないみたい」
 なるほど、ご主人は杖もつかずに歩いている。

「主人の入院中に聞いた話だけど、脳梗塞って再発するらしいね」
「しますよ。自分もそれが怖くて、ずっと摂生してるんですから」
「摂生って、どんな?」
「摂生と言ったって、別に大したことではないんですけどね。水を毎日2リットル飲む。適度な運動をする。薬は欠かさず飲む。入院した時にもらったパンフレットに、そう書いてたんで、それを実行しているんです」
「そうなの?この人、そんなのまったく読まないんだから。あまり水も飲まないし、運動もやらないし。よし、今日からちゃんとやらせよう」

 ご主人はこの会話にほとんど参加してなかったが、手術の話をしている時に一度だけ口を挟んできた。それは怖い話だった。
「手術中だったか、手術後だったか、気がつくと川の前に立っていた。その川の向こうに、亡くなった知り合いが何人かおってね、こっち来いって手招きするんよ。懐かしくなって、そこに行こうかなと思ったんだけど・・・」

 最後に「お互い気をつけましょうね。お大事に」と言い合って別れた。なぜか頭の中で、あまちゃんの挿入歌『潮騒のメモリー』が鳴っていた。
 ”来てよその川乗り越えて 三途の川のマーメイド・・・”
 日々怠ることなく、摂生に努めんといかん。

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