吹く風ネット

秋の夜

 高校三年秋に始めた押韻ばかりの意味のない詩に興味がなくなり、何かそれに代わるものはないかと探していた時に見つけたのが、中原中也だった。それまでそういう詩人がいたのも知らなかった。ある日、本屋で彼の詩集を読んでショックを受けた。
 最初は中也の詩に曲をつけたりして遊んでいたのだが、そのうちこういう詩を書いてみたいと思うようになり、その思いが『秋の夜』という歌を作った。


『秋の夜』

夜の竿は 星を刺し
さてここいらで泣きましょか
暗い街に 影を刺し
つゆなかけるな 深い雨

濡れた灯り 闇に揺れ
過ぎし光を 追いまする
しだれ柳 風に揺れ
落ち葉ひらひら 終列車

 うっすら三日月 闇に浮かびます
 弱った体が 街に陰ります

 犬の遠吠え 闇に響きます
 疲れた声が 街に狂います

夜の竿は 星を抜け
さてここいらで やみましょう
暗い街に 影を抜け
つゆなかけるな 通り雨

 → ♫秋の夜

 かつて親戚が北九州の折尾駅近くに住んでいた。折尾駅は鹿児島本線と筑豊本線の交差する駅で、その当時はSLが走っていた。それが風情のある街並と相まって詩情を醸し出していた。
 中学の頃、日曜のたびにその親戚の家に行っていたのだが、帰りはいつも遅くなり、最終バスを利用するのが常だった。
 親戚の家からバス停のある駅前までは、川沿いの細い道を歩いて行く。ある雨の降る夜、川沿いにあるしだれ柳が、街灯のはだか電球に照らされ舞っていた。それが雨粒をかけてきた。そんな小さな思い出を詩にした。

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