2013年5月31日公開、46分、新海誠監督の6作目のアニメ映画。
センチメンタルなものがOKなら、お勧めです。
センチメンタルなものが好きなら、必見です。
3週にわたって、先着で毎週異なるポストカードがもらえるそうです。私はもらえませんでしたが。
予告編を見て、少しでも気になったら、映画館へどうぞ。
→公式HPへ
(本質的なネタバレはしないようにしたつもりですが、ネタバレありです。少なくとも、劇場のみで発売のBlu-rayが一般発売されたら買うので、その際にネタバレの感想を書くかもしれませんが、今回の感想はごく簡単に。)
◎ 「”愛”よりも昔、”孤悲”(こい)のものがたり。」
万葉集は当て字の世界で、「恋」には「孤悲」と当てていたことからのキャッチコピー。
(短歌2首が、ちょっとしたキーになっているアニメなので。)
6月の梅雨に入る頃からの3ヶ月ちょっとの、靴職人を目指す15歳の高校1年の秋月孝雄と、27歳の仕事に疲れて上手く歩けなくなった雪野百香里との、新宿御苑の日本庭園の東屋(休憩所)での雨の日だけの偶然の出会いと逢瀬、恋(?)。
そして、靴職人の夢をかなえられるか分からないながらも真っ直ぐに努力するタカオと、再生に向けて歩き出そうとするユキノの、叙情的で軽いセンチメンタル(感傷的)な物語。
○ これは大人の方が楽しめると思います。
コメディではないし、泣けるとか、感動するとか、そんなのでもないわけで(勿論、泣けるし感動するという人もいるでしょうけれど。)、こんな出会いは非日常的ですが、日常的な話であり、結局は、直前にBSジャパンで放送していた新海監督の「秒速5センチメートル」(2007年3月、63分)や「ほしのこえ」(2002年2月、25分)のような軽いセンチメンタルな、しかし、2つよりは後からジワリと来る、そして、2つよりも少しだけ前向きな物語です。
一度見て、いろいろと解説してくれているパンフを読んで、もう一度見たくなる映画ですし、もう一度見ると新たな発見がありそうな映画です(時間的に、私は二度目を見られそうにありませんが。)
適度に分かり、適度に曖昧で、適度に分からないところが、私にはやみつきになるバランスです。
半分は分かり(分かったつもりになっているだけのものも含む。)、4分の1が概ねこうだろうと分かり、4分の1がいくつかの選択肢のどれとも取れる感じが、私には丁度よいです。
映画を見ていたときよりも、後で思い出したときの方がイロイロと感傷的になってしまい、熱いものが込み上げてきたり。。。
○ 大人の女性も好みそうな感じはしますが、映画の視点としては、40歳の新海監督の年齢程度の、思春期の少年の気持ちを良くも悪くも忘れていない中年男性の視点ですから、もしかしたら私の思い違いかも。
○ BS放送での監督のインタビュー(Blu-rayの特典に収録されているのかも知れませんが。)によると、ほとんどが雨のシーンで、雨の描き方も細かく変えていて、それがキャラの心情も表しているのだとか。
これは、一度見ただけでは分からないでしょうね。
○ センチメンタルも好きなので、私は楽しみましたが、センチメンタル自体は好みが別れるところでしょうね。
私は、ジワジワと良さがにじみ出てくる、良い映画だと思います。
映画館で2度見たいと思う映画やBlu-rayを買おうと思う映画は、滅多にないので。
◎ 映画は新宿で見ましたが、映画館から新宿御苑の入り口まで200m位なので、ついでに聖地巡礼。
そんな人、結構いました。
6月最初の土日は、入場料が大人200円のところが無料。
晴れていたのが、逆に残念。
上の絵とほぼ同じ方向からの東屋(あずまや。休憩所。)の写真。
1時間以上経ってから再度寄ったのですが、ずっと居て動く様子がなかったので、人が入ってしまいました。
真ん中にある白っぽいやつは灰皿と思われます。映画では描かれていません。
そこから見た、日本庭園の池や木々。
◎ 気に入ったアニメだけに、敢えて最初に文句を2つ。
○ 24歳の花澤さん演じるユキノは27歳の落ち着いていて外見上も大人ですが、声が少し若く、合っていない感じ。
可愛いらしい顔立ちなら問題ないと思いますが、可愛いことは可愛いですが、凛々しさのある美人系の顔なので、もう少し大人っぽい声でないと合わない感じ。
花澤さんの声は基本的に大好きですが、合っているかと言われると、ちょっと違和感の方が多いかと。。。
高校生のタカオと話すシーンが多かったので、子供相手だから優しい話し方にしたということなら(そういうシーンはいくつかあり。)、意図は理解しますが、そうだとしても、その部分が多すぎる感じ。
また、精神的に不安定な状態にあるユキノの不安定さや子供っぽさが出ていることを表したということなら(そういうシーンはいくつかあり。)、意図は理解しますが、そうだとしても、その部分が多すぎる感じ。
下は、東屋で2人が最初に出会ったシーン。
仕事に行けずに、朝から板チョコをツマミに缶ビールを飲むユキノが、東屋に歩いてくるタカオの方を見たところ。
(因みに、新宿御苑はアルコール類は持ち込み禁止です。)
少しだけ会話をし、その後、短歌を残して立ち去るユキノ。
(終盤で、タカオはそれへの返歌に気付きます。)
別の日。基本的に、タカオと会うたびに表情が柔らかくなっているユキノ。
○ もう一つ。
パンフがA5サイズ(40頁、1000円。)なのは構わないですが、厚めの紙のため、ページをめくりにくいです。折るのもイヤですし。
綺麗な映像の写真が何枚も載っているので、それを綺麗なまま載せるために必要だったのだろうとは思うので、仕方ないですし、私の我侭でしかありませんが。
◎ 綺麗な映像について。
○ 風景や背景の絵がキラキラと綺麗です。
このくらいの綺麗さは、お天気雨のように太陽がある程度ないと生じないと思いますので、梅雨の風景も緑の木々も現実よりもキラキラと綺麗ですが、それでも不思議と現実感のある綺麗さです。
ただ、主舞台である新宿御苑に行くと、葉っぱは虫食いですし、東屋は薄汚れていますし、ガッカリしますけれど。
○ パンフを読むと美しく見せるためにしたようですが、上の3つの絵で分かるように、ベンチに座るタカオやユキノの顔に、雨などに反射する青葉の緑が写り込むところは、写り込みが強すぎる気がしました。
お天気雨のようにもっと太陽が出ていれば、その位の写り込みがあっても不自然ではないと思いますが。
(絵はお天気雨のように明るく描かれていて、梅雨の雨の日としては、そもそも不自然なのですが。)
しかし、それにより、
風景と2人が馴染んで見えるようになり、ユキノを癒すためにはタカオだけではなく、新宿というせわしい大都会の中のオアシスとも言える広い新宿御苑の緑も必要だったということを表現したものなのかなとか、
2人の青さ、若さ(タカオのような年齢的なもののほか、ユキノのように、いい意味でも悪い意味でも、うまく立ち回るズルさに欠けているという意味で大人になりきれていないところも含む。)を表現したものなのかなとか、
私は思いましたけれども。
◎ 物語について。
ネタバレを最小限にしたので、あまり書けませんが。
○ カラスについて。
新海監督のアニメはあまり見ていないので全体的には分かりませんが、私が見た「秒速5センチメートル」と「ほしのこえ」では、鳥が飛ぶ絵が印象的というか、思わせぶりにというか、数カ所で使われていました。
東京のカラスも自治体の努力のお陰でだいぶ減り、人間にとってあまり迷惑ではないレベルになってきたのではと思います。映画を見た後に1時間半位歩いた新宿御苑でも、爽やかな風と晴れた日差しの中、1羽でいるカラスを2~3ヵ所で見かけましたが、そのくらいであれば、風情の一つとも言えます。
このアニメでは、新宿の空をカラスが1羽(もしかしたら2羽飛ぶシーンもあったかもしれませんが、記憶が定かではありません。)飛んだり超高層ビルに留まっていたり。
特に超高層ビル(多分、NTTドコモ代々木ビル。約240m。)に留まって新宿御苑と街を見下ろすシーン。
最初は、
精神的にまいっているユキノが、そこまで高いところには上れないのではとも思いますし、全体を俯瞰する力も戻っていないのではとも思ったり、
更に、新宿御苑の地面から超高層ビルを見上げて立ちすくむカラスにした方が、孤独感とともに圧迫感も表せるので良かったのではと思ったり、
しかも、カラスは、とても狡猾で、雑食で、繁殖力の強い鳥ですから、弱っているユキノをカラスに例えることは、少し無理がある感じがしました。
しかし、良く考えると、それは違うな、と。
大事なところのネタバレになるので詳しくは書きませんが、1羽で立ち止まって、超高層ビルから緑の新宿御苑と超高層ビルの街を見ているカラスは、やはりユキノ。高さが孤独感と疎外感を一層強く表現しています。
つまり、ユキノは家に引きこもるほどではなく、途中までは出勤できる状態なので、超高層ビルの頂上付近まで上る力は残っていると解することも出来ます。
よって、(自治体の努力があって減ったのだとは言え、)カラスですら生きにくい、超高層ビルが林立する大都会の新宿。
その中で歩き方(このアニメでは、生き方のこと。)が分からなくなったユキノ、一方、靴職人という目標に向かって、でも、達成できるか分からない目標だから不安も抱えつつ、それでも真っ直ぐに前を見て努力し、ユキノの靴を作るタカオ。
そんなタカオを見て、自分が真っ直ぐな気持ちを持っていた頃を思い出すユキノ。
孤独なカラス(=ユキノ)がかなり高いところから新宿御苑の緑と街を見下ろすことにより、地上(=本来ならユキノがいる場所。)からの疎外感も表しつつ、ユキノが再び歩けるようになるために必要だったタカオと新宿御苑に、ユキノを追い詰めた街とを対比し、強いカラスのようにユキノが再び歩き出すことを暗示するシーンであると。
○ マンションの階段のシーンについて。
タカオが好きだという思いを泣きながらユキノにぶつけるところ、経験不足もあって乱暴な言い方でしか表せない思春期の思い。
それを聞いて、ようやく心から泣くことができ、タカオを抱きしめるユキノ。
いつの間にか雨が上がり、陽が差すシーン。
テーマ曲の「Rain」(詞曲の大江千里さんの歌を秦基博さんがカバー。)が流れるシーンです。
見る側に解放感と安堵感をもたらしつつも、これはこれで悪くない終わり方だなと思いつつも、あまりセンチメンタルな終わり方ではなかったので、ハテ?と思っていたら続きがあって。
特にここからのハショリ具合は、見る側が補う必要があります。
程良い不親切さ、こういうの、好きです。
見る側のセンチメンタル(人によっては「叙情的」。)な部分に語りかけてくるところです。
◎ あとは余談。
○ 東屋から20~30mの場所にある、2人が話をした藤棚。2枚目の左奥は旧御涼亭で、これもアニメに出てきました。
○ さて、この映画で唯一、笑いが出たところは、エンドロール後の一文。
それは劇場かBlu-ray、DVDで確認を。
私もクスッと笑いましたが、その一文を載せざるを得なかったのも確かですが、若干、アニメの内容も余韻も頭と心から飛んでしまった気も・・・・・
【shin】
◎ 追加の感想を書きました。
よろしかったらこちらもどうぞ。
「言の葉の庭」感想再び。やっぱり良い映画。程良く省略していて好きに想像できるところも良い感じ(2013年8月17日)
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shin{流れ星}
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