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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 33

2022年06月25日 | 霊感少女 さとみ 2 第七章 屋上のさゆりの怪 
 昼休みになった。
 午前の授業中は、目を開けたまま眠ると言う特技を充分に発揮し、さとみはすっかり回復していた。
「綾部さぁん!」
 お弁当を頬張っているさとみにきいきい声が掛けられた。教室の出入り口に谷山先生が立っていた。
「すぐに校長室に来なさぁい。お客様ですぅ!」
 言うだけ言うと、谷山先生は戻って行った。
「はあい!」
 さとみは居なくなった谷山先生に返事をすると、大慌てでお弁当の残りを頬張った。
「さとみ、お客って……?」麗子が訊く。「百合恵さん?」
「百合恵さんも居るけど、片岡さんって人ね」
「片岡さん……?」
「あ、麗子は会っていなかったわね」さとみはにやりと笑う。「……まだ『弱虫麗子』だったから」
「ふん!」麗子は鼻を鳴らす。「じゃあ、わたしも行って、その片岡さんって人に会うわ!」
「会長!」アイが言いながら教室に入って来た。周りの生徒たちは慌てて教室から出て行く。「ここに来る途中で谷山のおばちゃんを見たんですけど、また何か言ってきやがったんですか?」
「いえ、そうじゃないわ」さとみが答える。おばちゃん呼ばわりまでして、アイは徹底的に谷山先生が嫌いなようだ。「片岡さんが見えたって言いに来てくれたのよ」
「片岡……」アイは記憶を手繰る。「ああ、あの霊媒師の爺さんですか!」
「アイ、その言い方は失礼よ」さとみが諭す。「片岡さんは素晴らしい霊能者よ。……さゆりの件で見えたのよ」
「失礼しましたぁぁぁ!」アイはその場に膝を突き頭を深々と下げた。「とんでもない暴言を吐いちまいましたぁ! どんな罰でも受けます! 申し訳ありません!」
「ちょっと、アイ……」さとみは慌てて椅子から立つと、頭を下げているアイをたちがらせようと腕を取って引き上げる。しかし、アイはびくともしない。「……ねえ、麗子からも言ってよう!」
「アイ、分かってくれればいいのよ」麗子が優しく言う。「さとみも怒っちゃいないわ」
 麗子の言葉にアイは頭を上げる。さとみを見るアイに頬は涙の筋が左右に出来ていた。そんなアイに、さとみは微笑を浮かべてうなずいて見せた。
「すみませんでしたぁぁ……」アイは力なく言うと立ち上がり、大きく頭を下げた。涙を拭っている。「これからは言葉遣いに気を付けます……」
「会長!」
 元気の良い声が聞こえた。朱音としのぶだった。アイが教室に居るのを見て、二人も入って来た。
「こんにちはぁぁぁ!」二人は同事に言ってさとみに頭を下げる。それから、しのぶがアイの様子に気がついて、不思議そうな顔をして言う。「……アイ先輩? 泣いていたんですかぁ?」
「うるせぇ!」アイがしのぶに言う。言葉遣いに気を付けると言った舌の根も乾かない内だった。「そんな事よりもな、これから会長は片岡さんとお会いになる」
「片岡さんって、あの霊能者の片岡さん!」朱音の目がきらきらと光る。「わああっ! 会いたいなあ!」
「わたしも、会いたいぃぃ!」しのぶも目をきらきらさせる。「片岡さんが見えたって言う事は、さゆりの件ですね?」
「……」相変わらず鋭い娘だわ。さとみは思う。「……そう言う事。でもね、今日はわたし一人で会おうと思うの」
「えええ~っ!」
 朱音としのぶは同時に残念そうな声を上げた。
「さゆりってね、とっても危険なのよ」さとみは真剣な顔で言う。「思い出してよ。アイが保健室に運ばれたのもさゆりのせいだったじゃない? だから、みんなを必要以上に巻き込みたくないの」
「でも……」しのぶは不満そうに口を尖らせる。「わたしたちにも出来る事があるんじゃないかって思うんですけど……」
「しのぶ……」アイが静かに言う。「お前の気持ち、分からなくはない。でもな、あいつは強い。わたしは何にも出来ずにやられちまったんだ。しかも幽霊なんだろう? 生きている人間がどうこうできそうな相手じゃないかもしれない。下手したら足手纏いになっちまう。お前、校長室のこと忘れちゃいねぇだろ?(しのぶはうなずく。ポルターガイストを近くで見ようとして危険な目に遭いかけた。助けてくれたのは他ならぬアイだった) だからな、ここは会長と片岡さんに任せるのが一番なんだ。ほら、『餅は越後屋』って言うだろ?」
「アイ先輩、それは『餅は餅屋』です」朱音が訂正する。「先輩も、しのぶ並みに国語が弱いんですね」
「うるせぇなぁ。餅屋なんて店、知らねぇぞ」
 アイの返答に皆は笑った。
「そう言うわけだから、わたし一人で行くわね」さとみは微笑みながら言う。「心配しないで。いざとなったら、強い味方もいるから」
 さとみには壁の所に並んで立つ祖母たちが見えていた。祖母たちは大きくうなずいた。


つづく

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