市民大学院ブログ

京都大学名誉教授池上惇が代表となって、地域の固有価値を発見し、交流する場である市民大学院の活動を発信していきます。

今日の話題「森嶋学の現代性-森嶋瑤子先生と京都の森嶋文庫-」2014年11月4日

2014-11-05 13:31:42 | 市民大学院全般
日本の顔が観えない

 この11月3日、森嶋瑤子先生をお迎えして森嶋学のセミナーが開催された。今回のプロモーターは、中西康信先生(理論経済学・経済学博士)である。
テーマは「森嶋先生のソフトウエア防衛論をめぐって」。東大の安富歩先生にお願いした。超ご多忙の中でのご高配に対して一同、深く感謝しております。
 例年のことであるが、森嶋瑤子夫人は10月中旬ごろから11月上旬ごろまで日本に滞在され東京と京都を往復されながらご講演や、ロンドンでのNPO活動に向けてのネットワーク構築を実践される。
 お時間が許すときは、市民大学院の講義にもご出席いただいて、若手の連中と議論することを楽しみにされている。80歳前半とは、到底思えない、迫力のある、お元気なご様子であった。筑波大・滋賀大の名誉教授、酒井先生によれば七夕の星のように年一度のセミナーであった。
 誰かが冗談半分に、「お元気な秘訣は?」と、お尋ねすると、「どのかの国を代表するはずの方がイギリスでは全く相手にされない。その不甲斐なさへの怒りでしょうか。森嶋もそうでしたが、祖国の現状や頼りなさが露見するたびに怒っていましたね。」
 確かに、ジャーナリストからの情報でも、外国のメディア関係者が、最近、日本のリーダーたちの発言や行動などにあきれてしまって、そのまま伝えると、市民の怒りを買い、外国に滞在する日本人にも不愉快な思いをさせるだけだからと、度外視してしまうらしい。
 おなじ、度外視や無視でも、言論統制めいた圧力によって、権力側に都合の悪い情報を無視させるのとはわけが違うようだ。
 イギリスでは、報道の世界にも、それなりに、市民が納得できる常識、あるいは、良識というものがあるのだろうか。そして、良識に、はずれた内容は、度外視されるということなのだろう。本当に恥ずかしいことである。
 日本軍が第二次世界大戦中に民族排外主義とみえる国策を採用し、他民族を差別して人道に反する罪を犯したこと。
 その反省の上に、第二世界大戦後は、各民族の個性や文化を尊重して、平和的に共存しながら、互いに学びあい、育ちあって、新たな世界文化を創造しようと努力してきたこと。
 その誠意を、どうか、ご理解いただきたい。日本のリーダーも、欧米日アジアなどのジャーナリストも、日本国民の真意を伝えたい。
 わたくしたちは、このような努力の一環として、故森嶋先生が提起された、異民族間の深い文化交流による相互理解と、学術交流の中での、深い友情を育みたい。
 森嶋先生は、経済学や関連科学の学術交流において、多くの国々の研究者たちとの信頼関係による、‘つながり’‘ひろがり’を実践された。そして、もし、友人の国が他国の侵略をうけ、友人の生命が脅かされるときには、国際世論に訴えて友人の自由が守られるよう活動する覚悟を持っておられた。そして、平素から、このような覚悟を持って、事前に戦争という愚行を抑止することこそ、知識人の責務だと考えておられたようである。
 先生は、そのような積極的な行動のシンボルとして、日本の経済界からの寄付金を基礎に、ロンドン大学で、「経済学および関連諸科学の原理」を研究する国際交流組織を立ち上げられた。
 先生没後、わたくしどもは瑤子夫人のご厚意によって森嶋先生の御蔵書から「森嶋文庫約1700冊強」を文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会に御寄附いただいた。
 この文庫を生かして、ロンドンの交流拠点とまではゆかずとも、国境を越えた友人を生み出す研究交流拠点をつくりたい。このように、考えていた。
本当は、とうのむかしに、学校法人・文化政策大学院大学が発足していて、そこに、森嶋学研究所が立ち上がっているはずであった。しかし、今は、私学新設抑制時代、とくに、大学院新設は容易には認めてくれない。
 でも、その間に、ボランティア活動として、文化政策学修士相当、博士相当の人材を育てる活動が定着し、論文博士を準備するまでに、多数の人材が成長した。素晴らしいことであった。募金も個人寄付を中心に1億円を超えた。
 この基盤の上で、森嶋文庫を新たな国際学術交流センターに発展させ、国際共同研究を組織すること。これが森嶋学を現代化する第一歩ではないかと思う。発足のためのファンド構築を従来の寄付活動と並行して進め、故森嶋先生の伝記と、「森嶋学の現代性」と題する共同研究を組織して出版したい。多くの読者を得られたならば、印税によってもファンドを充実することができる。
 この冬には、来年4月発足の公的法人格(公法人、財団法人、社団法人など多様な可能性をもつ)を持った文化政策大学院大学の構想、国際学術交流センターの構想、募金計画(長期的な視野で学校法人設立を目指し、現在の1億円から2億円へと積み増しを図る)を公表したい。今までは、寄付金をいただいて蓄積することが最優先であった。これからは、蓄積しながら、並行して、学校(大学院)を経営し、さらには、国際学術交流センター(研究所)を立ち上げる。
 なにとぞ、各位のご理解、ご協力、ご支援をお願い申し上げたい。Jun ikegami©2014

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