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自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

二日目の朝

2006-08-10 15:55:50 | グロースキャンプ
夜半に吹き始めた南風は、寒さこそしのげたのですが、子どもたちのテントが吹き飛ばされそうで心配です。
もともと、風の強い士幌高原には、あまり高い木は育ちません。
おまけに、風のお陰で雪もあまり積もらないのです。

天候も比較的雨や霧が多く、なかなかテント実習ができないのです。

何年か前、夜中に雨が降り始めました。
その雨は、次第に強くなります。
子ども達に、自分の靴はテントの中に入れておくように伝えたものの、懐中電灯をもってパトロールに行くと、靴がぷかぷか流れているようなこともありました。
なぜか、ソウタロウ君は首から上をテントの外に出して、水に頭をつけたまま寝ていたこともありました。

しかし、今回は「風」です。
もともと、岩盤で、木の根つきも悪いほどですから、テントのペグ(テントを地面にとめる金具)がうまくささりません。
子どもたちが張るテントですから、多少ペグのささり具合が甘いまま寝ているわけです。

さすがに子どもたちが寝ているので、テントは飛ばされずに済みましたが、眠りは妨げられてしまったようです。

ほとんどの子どもが、起床時間の5時を待たずに起き出して来ました。

何人かの子どもたちと高原の夜明けを迎え、

おはよっ!

と、声をかけると、

しばしば、おはよっ!と返ってきます。

テントの撤収を終え、朝のミーティングがはじまります。

今日は、天気もいいし、山に登ろうと思うんだけど、どうかな?

のぼるぅ
いきたーい
やったー!

この白雲山という山は、地元の小学生は3年生にならないと登れない山なんだよ。それほど、急な岩場があったり、険しい山道が続くんだ。
おまけにね、この山の途中にある「岩石山」という山にはクマのすみかがあるんだ。最近は、ずいぶんふもとまでおりてきているみたいなんだ。
何日か前には、ふもと近くでクマを見たという人がいたらしい。
昨日の、森の管理人さんが、登山道に大きなクマのフンがあった、といっていたので、しばしばはみんなが来る前に確認しに行ってきた。

管理人さんが言っていたとおり、大きなフンが5メートルくらいにわたって、ボテッボテッと落ちていたよ。

登るといっても、道も危険だし、クマが出てくるかもしれない。
でもね、クマは実はとても臆病な生き物なんだよ。
音が聞こえたり、人間の話し声には敏感で、聞こえたら出てきはしない。
だから、登るんだったら、みんなで協力して、大声を出したり声を掛け合わなくちゃいけない。

さぁ、グループごとに、本当にこの山を登るのかどうかを決めてごらん。低学年もいるから、よく話し合って決めてみよう。

子どもたちは、即座にグループで話し合います。
毎年、この話し合いで、一人や二人、登りたくない、という子どもがいます。
やはり、クマは怖いし、険しい道にも怖れをなしてしまいますからね。

ところが、今年はあっという間に、全員が登ることを決めてしまいました。

今年の子どもたちは、覚悟ができているのか、無謀なのか・・・

いずれにしろ、決まったからには、ボクたちが全力で、彼らの登山をサポートします。

まずは、頂上で食べる「あさめし」作り
おにぎりを、自分の食べる分を作ります。
手のひらにご飯粒をいっぱいつけながら、おにぎりのかたちにならない「おにぎり」を一生懸命つくって、出発です。

グループごとに約10分の間隔をあけて、彼らが協力して登山をします。

途中の林の中で、ネイチャーゲームをします。
目を閉じて、大自然の音に耳を傾けます。
話を止めて、静寂が訪れます。
山の静寂に、子どもたちが溶けていくようです。
子どもたちは手のひらをパーにして、音が聞こえるたびに、指折り数えていきます。

子どもたちは、あっという間に、10本の指が折れてしまうほど。

後で何が聞こえたのかを聞いてみると、

小鳥の鳴き声、
うぐいす・・・
風がはっぱをそよがせる音
木の枝が風ですれる音
虫の音
遠くの人の声
誰かが歩く足音

次々と出てきます。

中には、隣の子の「息」
そんな音を耳にする子どももいました。



約2時間かけて、岩ばかりの頂上にたどり着きます。
頂上の小さな岩の上に立ち上がるのも、大きな冒険です。

頂上からは見事な景観が広がります。

白雲山は年間を通して、雲がかかっていることが多く、頂上から見下ろせるはずの神秘の湖「然別湖(しかりべつこ)」が見える確率は多くはありません。

しかし、ボクたちのグロースセミナーでは、過去一度だけ、雨で見えなかったことがありますが、それ以外はすべて感動的な景色を目の当たりにしています。

そして、今回も!

然別湖は、アイヌの民が、「竜の住む湖」として大切にしていた湖です。
おしょろこま という、イワナのような魚がいて、湖が竜のようにくねくねとした姿をしています。

くちびるの形をした山に浮かぶ満月には、日本中から歌人が集まり歌を詠むそうです。
もちろん、湖面に映るその山は、見事なくちびるに見えるのです。



全員が、頂上にたどり着き、自分で作ったおにぎりをほおばります。

そしてまた、クマに遭遇することもなく、無事に下山しました。


そういえば、グロースがはじまって、まだ間もないころのことでした。

4班に分かれて出発した白雲山の登山。
休憩ポイントを二つ用意して、各班が実習をします。

ボクが、しんがりの第4班を担当して、第1休憩ポイントで実習をしているときでした。
上のほうから、西さん(士幌の愛すべきオヤジの一人です)が、血相を変えて下りてくるのです。

第2班が来ていない!

えっ?どういうこと?

1班の次に、3班が頂上に来たんだけど、2班がいない!!

ボクは、すぐに1班の富さん(やはり士幌のオヤジ)に連絡を取りました。当時は携帯電話はなくトランシーバーでした。

かろうじて聞こえる富さんの声に、
2班は第1休憩ポイントに来ていたの?
と、聞いてみると、「いたぞー!」

結局、これが大きな勘違いの始まりでした。

すると、このポイントから上で、いなくなってしまったということ。

この上は、というと、そう「岩石山」
つまりクマのすみか。

西さんとボクは、あわてて、捜索に出ました。

第4班はそのまま頂上を目指し、ボクと西さんで道をそれて岩石山へ。
名前のとおり大変な岩石ばかり。
なれていないボクにとっては、大きな壁を何度も乗り越えるようなもの。
西さんはどんどん進み、やがて見えなくなってしまいました。

気づくと、岩の上で、ぽつんと一人取り残されている気分。

各班に渡されているトランシーバーに呼びかけても2班はまったく応答がありません。

西さんとも、連絡が取れなくなってしまいました。

頂上にいる、イントラ(インストラクター)の優子とだけ、トランシーバーが通じます。

身動きが取れなくなってしまったボクは、時折聞こえる優子の声を聞きながら、遭難してしまった第2班の居場所に頭をめぐらせます。

2班には1年生のユミもいます。
今頃どうしているんだろう・・・・・
クマに襲われていないか・・・
がけから落ちてしまったんじゃないか・・・・
このまま、見つけられなかったら・・・・

頭の中は最悪なイメージでいっぱいになっていきます。

登山を始めたのが朝の7時
そして、気づけば12時を過ぎようとしています。

もう5時間も、彼らはどこに行ってしまったんだろう。
他の班は予定通り登頂し、もうすでに然別湖畔に下山しています。

そのとき、突然頂上にいる優子の叫び声が聞こえました。

2班と、連絡が取れたぁ!

今どこにいるか聞いて!

・・・・・・・・・

わからないってー

そりゃそうだ、周りの景色も代わりばえしないし・・・

じゃ、第1休憩ポイントを過ぎて、岩場をまっすぐに登ったのか聞いてくれー

・・・・・・・・・

休憩ポイントには行ってないって・・・

???どういうことだ?

休憩ポイントに行っていない?
じゃあ、彼らは一体どこにいるんだ。

登山口の看板を右に折れて、どこまで行ったのか聞いてくれー

・・・・・・・

看板を右に曲がってないってー

???ということは、彼らはそもそも山に入る前に道を間違えたってこと?

わかったー。すぐにその道をもとの方向にもどれと指示してくれー!

ボクは、大急ぎで、といっても、ぐらつく岩の上をへっぴり腰でおり始めました。
走れるところは走って、飛び折れるところは足をよろつかせながら飛び降りて、とにかく、見つかった安心と喜びで、とにかく早く彼らを見つけなければ・・・

前日の雨で、登山道はぬかるみ、ところどころで道はまるで川のようになっています。何度も転んで、買ったばかりの登山靴が中までぐしょぐしょになったことをその感触まで覚えています。

登山口まで戻って、走りに走って、ついに彼らを発見!

おーっ、がんばったなぁ
みんな大丈夫か?

イントラの桂太は、責任と不安でいっぱいだったんでしょう。
肩をたたきながら、よくがんばったな!と声をかけると、うっすら涙を浮かべています。

思ったよりも班の子どもたちは元気でした。
特に1年生のユミは、

腹減っただろ。
おにぎり食べるか?

と聞くと、首を横に振り、

頂上で食べる!とはっきりといったのです。

あのときの強い意志や、目の輝きは今でも忘れません。

もちろん、班全員の意思を確認して、頂上を目指し、無事に山頂で朝食?をとることができました。

今でも、背筋がぞっとするような思い出です。

グロースはいつも、こんな危険があふれています。
でも、グループ一人ひとりが、自分の意思で「やると決め」たからこそ、困難を乗り越えていけるのです。

今年のグロースも、守られていました。
もしかすると、あの生臭いにおいは、クマだったのかもしれない。
そんな思いにいつもゾッとします。
でも、ボクたちにはそれを知る由もないのです。

17回目のグロースの2日目も、一つ目の実習を無事に終えることができたのでした。






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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (yoko)
2006-08-10 17:01:35
色々と想像しながら読んでいて、その時の緊張した空気が伝わってきました。



娘が駅のホームから線路に落ちた時のこと…つい思い出しちゃった。
返信する
やっと見つけた・・・・ (じゅん)
2006-10-10 12:07:12
やっほ~

しばしばのブログだけじゃ出なくて

探した探した・・・・(笑)

つか今年のメンツは覚悟ができてるほうで

お願いします(苦笑)

つか俺が誰だか分かるよね!?

分からなかったら泣くよ!?(笑)
返信する

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