日本が参加する通商交渉が12月に相次いで行われる。(井岡秀行、上地洋実)
5日に始まる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本政府は参加に向けた情報収集を急ぐ。豪州との経済連携協定(EPA)では農業の自由化を巡る日本の交渉力も問われることになり、TPP参加に向けた国内での議論にも影響を与えそうだ。
TPP
TPP交渉参加9か国は12月5日から5日間の日程でマレーシアで交渉会合を開く。来年の交渉日程のほか、知的財産保護や原産地規則などの分野で協議を行うとみられる。交渉参加が承認されていない日本は参加できないが、政府は現地に職員を派遣して、「会議内容の情報収集を急ぐ」(経済産業省幹部)構えだ。
ただ、11日の野田首相のTPP交渉参加表明から約3週間近くたっても、参加の前提となる米国との事前協議入りのめどは立っていない。国内では、TPP参加を巡る賛否がなお割れており、野田首相が設置を表明した省庁横断の交渉チームの体制作りも遅れている。米国でも「日本との交渉方針を巡る調整が続いている」(同)とみられる。
日本は当初「年内には米議会承認の前提となる事前協議を終えたい」としていたが、決着が年明けにずれ込む可能性も出ている。
2国間
TPP交渉参加国の豪州との2か国間のEPAの交渉も12月中に再開される見通しだ。日本政府は、多国間交渉と並行して2か国間のEPAを推進する方針だ。日豪交渉は今年2月を最後に東日本大震災で中断していたが、農業分野の市場開放を求める豪州との厳しい攻防が予想される。「関税の原則撤廃」を目指すTPPへの参加に向けた交渉力を問う試金石になる。
さらに日中首脳会談、日韓首脳会談も予定されており、日中韓FTAの来年中の交渉入りや日中韓投資協定が議題となる見通しだ。
日中韓FTAの協議加速は、「日本のTPP参加方針表明に刺激を受けた効果」とみられており、3か国の首脳会談での駆け引きが注目されそうだ。
WTO
15~17日にはスイス・ジュネーブでWTOの閣僚理事会が予定され、新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)を巡る議論が行われる見通しだ。153か国・地域が関税引き下げなど貿易自由化を目指す交渉は、今年5月の非公式閣僚会合で年内の「部分合意」を目指していたが、その後も「各国の利害が対立して議論収束の見通しが立たない」(通商筋)状況だ。WTO交渉の難航で「日本にとってTPPや2か国間交渉の重要性が増している」(同)のが実態だ。
(2011年11月30日
読売新聞)
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