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花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第二十七章 ニオイバンマツリ

2010年05月27日 | 花エッセイ
 小高い丘の頂上にあったアパートから、都会の谷間のような新居に越してきてから、

すっかり植物との縁が薄くなってしまった。

この花にまつわるエッセイを書こうと思い立ったきっかけも、

かつての花の記憶を少しでも留めておきたい、そんな想いにかられたからだ。

そんな中で、この新居に越して初めて出遭った印象深い花が、ニオイバンマツリである。

最初にこの花の存在に気づいたのは、ジャスミンみたいな華やかな香りに誘われたせいだった。

その匂いはどこか懐かしさをよびさまし、後日、調べてみたところ、

なんとあの夜香木と同じナス科の植物。

偶然とはいえ、心魅かれてしまうのも道理だったわけだ。

そして香り以上に、ニオイバンマツリにはちょっとした不思議がある。

時間が経つにつれて花の色が変化する植物がこの世にあるということを、

酔芙蓉という植物で初めて知ったのだが、

酔芙蓉は朝には真っ白い花が咲き、午後になるとその花がピンク色に染まり、

やがて真っ赤になってしぼむらしいが、

それがまるで花が酒に酔ったように見えるので酔芙蓉と名づけられたという。

実はこのニオイバンマツリも同様に、最初は藤色の綺麗な花をつけるのだが、

数日経つと、薄紫色へと変化して、最後は真っ白い花で終わる。

いわば酔芙蓉とは真逆の花ということだ。

ちなみに余談だが、前述の酔芙蓉、実はミステリー小説のアリバイ崩しに利用されたことがある。

なるほど時間の経過と共に花の色が変化する酔芙蓉は、

まさにトリックを見破る絶好の小道具となりえるのだろう。
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