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花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第二十六章 咲くやこの花館~青い芥子~(旅行記)

2010年05月26日 | 花エッセイ
 数年前、友人を訪ね夏の盛りに大阪を訪れたことがある。

その年の夏はひどい猛暑で、どこへ遊びに行くのも一苦労。

私が彼女に頼んだ案内先は、かつての花博の跡地、鶴見緑地の「咲くやこの花館」だった。

 勿論、私の目当ては青い芥子。

大阪で花博が開かれた頃、まだ学生だった私は、

憧れの青い芥子や世界三大珍花の一つであるラフレシアなどに胸を踊らせたものだった。

けれどそこはしがない学生の身、

たかが花ごときにわざわざ高い旅費や宿泊費をかけて行くことはかなわず、

結局、足を運ぶことなく終わってしまった。

 さて、鶴見緑地は大阪市内でも少々不便な場所にあり、

大阪の友人もまだ行ったことがないという話だった。

 ガラスで覆われた巨大な温室、平日の昼間だったせいか人気も少なく、

フラワーホールと呼ばれる一階中央広場には、噴水が涼やかに水飛沫を吹き上げ、

外界とはまるで別世界だった。

 早速、友人を伴い念願の青い芥子が咲いている高山植物室へ。

ひんやりとした空気に包まれた小さな温室で、

明るい陽射しを一身に浴び、青い芥子はひそやかに咲いていた。

数にすると数十本程度だろうか。

昔、テレビで見たあのスカイブルーの鮮やかな青がそこには確かに存在していた。

 この青い芥子、学名をメコノプシス属という。

花の形によって多少学名が異なり、

メコノプシス・ベトニキフォリアやメコノプシス・グランディスが

特に青い芥子としては有名である。

他にもスカイブルーというよりやや群青がかったメコノプシス・ホリデュラなんかもある。

 私の周囲には三脚を立てたアマチュア写真家らしい人が数人、

その美しい花をカメラに納めようと熱心にレンズをのぞきこんでいた。

陽に透ける青く透明な花弁を写し撮るため、私も負けじとカメラのシャッターを押す。

 こうして私は長年の憧れだった花との対面を叶えたわけである。

 続いて訪れたのは熱帯花木室。

こちらには珍しい南国の植物が植えられていて、

ことに私の目を惹いたのは温室の屋根まで届きそうなほど巨大な

タビビトノキと呼ばれるバナナにも似た葉を持つ扇状の植物だった。

名前の由来は、鬱蒼としたジャングルで一際背が高いから旅行く人の目印になるからだとか、

あるいは葉鞘部に水が溜まり旅人がこれを利用したからだとか諸説言われている。

 ちなみにこのタビビトノキ、数年経てから、

現在住んでいる地元の花屋で鉢植えとなったものに遭遇した。

私は思わず手に入れたい衝動にかられたが、

散々大きくなりすぎて困っている我が家の植物事情に泣く泣く断念したのである。

それからほどなくして、同じ花屋をのぞいてみたら、

タビビトノキは既に誰かに買われた後だった。
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