goo blog サービス終了のお知らせ 

半蔀(はじとみ)の徒然なる日々

趣味や興味のある事柄について、また、身の回りのとるに足らないことなどを思うままに記してみたり…

「ボタンをかぞえて」を読んで☆

2004-12-10 | 漫画
「ボタンをかぞえて」は、久々に泣けた萩岩 睦美作品だ☆

◇物語◇

結婚を間近に控えた一人の女性(美幸)が、母親の幼女誘拐容疑での逮捕を知るという衝撃の出だしから、物語は一気に過去に遡り、美幸の生い立ちを回想という形で追い始める。
母親の深すぎるくらいの愛情と、他の家庭との違いに違和感を覚えながら育った様を、成長の過程に沿って回想していく。
日に日に膨らむ違和感をいくらか調和してくれていた、同じ社宅の知的発達障害を持つ男の子(雅樹)の存在。
その子と姉弟同然に暮らしていた子供時代。
引っ越しによる雅樹との別れで、激しい喪失感を覚え、その結果、益々両親との間に溝を深めていく。
そうして、結婚間近になって、かつて別れ別れになった雅樹の消息を知ることとなる。
昔の純粋な心を持ったままで、障害を乗り越え、博物館で働く雅樹に、心よりも条件を重視して結婚を決めた自分を恥じ、会わないで去る美幸。
回想が現在に至った時点で、美幸は実家に戻り、父親から、実は、不妊に悩む母親が、捨て子をさらって我が子として育てたのが、おまえだと告げられる。
幼女誘拐の件は、虐待されて一人公園でいる少女を保護している内に、痴呆症の始まりで、幼い頃の美幸と混同し、つれ回していた結果であった。
衝撃の事実に怒りを抑えられない美幸。
婚約者からも婚約解消を申し渡され、空っぽになった美幸が辿り着いたのが、雅樹が働く博物館だった。
子供に返ったかのように、雅樹の昔の愛称(まあくん)を口走りながらうずくまる美幸に、昔のままのような純粋で真っ直ぐな愛情を言葉にしながら、抱きしめる雅樹によって、ようやく美幸は全ての想いを解放することが出来る。
そして、やっとの思いで母親と対峙する決心をし、かつて住んでいた、取り壊された社宅跡を訪れた際に、そこへ封印されていた、母親の自分への想いを見出し、全ての疑念を晴らすこととなる。
その後、美幸は、徐々に子供返りしていく母親を看取り、雅樹との間に生まれてくる子供への思いを馳せる… (以上)

話の全容を記すのは気が引けるのだが、中途半端な概要説明では、どうにも感想が書ききれないため、ご容赦願いたい。

萩岩さんは、昔から、ハートフルで、何処か心にチクンとくるお話を送り出してきていたが、近年母親になられていることもあってか、最近の作品は現実味が増しているような気がする。
それだけに、余計に胸にダイレクトに響いてきた。
私自身、子を持つ親として、また、自分自身の成長過程を振り返り、二重に感慨深い作品であった。
子の立場としての親に対する想いや、親の立場としての子に対する想い、どちらも想いは真摯なのに、悲しいことに、それが上手く伝わり合わないこともある。
身近な存在だけに、すれ違う痛みは、より一層深刻だ。
もし、全てが氷解した場合は、そこに溢れる両方の想いは、いかばかりであろう…

私自身、そんなこんなで読みながら、様々な想いが交錯し、溢れる涙をこらえるのに苦労した(家族が家にいる時間帯だったので””)

萩岩さんの作品を読んだことのある方はもちろんのこと、読んだことのない人も是非とも、機会があれば、手にとって読んでみて頂きたい作品である。

「ヒストリエ」を読んで☆

2004-11-21 | 漫画
散々迷った挙げ句、最初に書店で目にしてから1週間以上経ってから、ようやく買うことにした「ヒストリエ」(岩明 均 作)。
迷ったのには、理由がある、この作品の前に読んだ「ヘウレーカ」(古代シチリアを舞台にした歴史ロマン、岩明 均 作)が、少々期待外れだったからだ
「寄生獣」(宇宙から飛来した生物が、人間達に寄生して乗っ取り、そのまま人間社会に浸透していく。それに対し、その生物に寄生されながらも共生しつつ、それらの寄生されたモノ達に対抗していく、一人の人間を軸に様々な問題を提起していく作品、岩明 均 作)の時に得たのと同様の読後感を求めすぎたのが原因だが、やはり、どうしても今一度違う作品で、あの衝撃に出会いたいと思ってしまうのだ””

結論から言うと、「ヒストリエ」は期待に反せず、新しい衝撃を与えてくれた
「寄生獣」とはタイプの異なる作品ではあるが、受けた衝撃は、岩明氏ならではの独特のものだった。

大雑把に言って、どのような物語かというと、『アレキサンダー大王の書記官エウメネスの波乱に満ちた生涯!』(出版社/著者からの内容紹介による)ということだが、現在刊行中の1・2巻では、主に過去の少年時代が語られている。1巻の冒頭から半分ぐらいまでは、もう少し大人になっている主人公(青年)を軸に話を展開しているが、その時は、この青年が誰かということにはほとんど触れられておらず、読み手は謎を抱きつつ、ただ、その青年の突出した才能のみを見せつけられていく。益々、こいつは誰なんだと思わせる。
もちろん、作品の説明として、前述の『アレキサンダー大王の書記官』と記されているのだが、作品を読み進めていっても、この部分では、到底そのようには見えないのである。
一体この青年は…?これが主人公だとするなら、果たして、今は書記官になる前か後か?
悶々としつつ読み進めていくと、唐突に回想シーンに入り、そこから少年時代となるわけだ。
青年の時に出てきたいくつかのキーワードが、そこで一つ一つ明らかになっていき、ふんふんと思っていると、のどかな少年時代の描写が、突如一変する
その衝撃たるや、『これよ!これを待っていたのよ!!』と思わず握り拳モンで感じ入ってしまった。
具体的なことは、未読の方のために伏せておくが、こういう仕掛けが用意されていたとは…やられたと思った。

正直言って、歴史物に関する私自身の知識は、実に乏しいモノである。
その私が読んでいて、あまり違和感なく読み進められたのは、岩明氏独特の一種軽いテンションの人物設定によるところが大きかったのではないかと思う。
この作者の作品で、私が読んだ他のモノについても同様のことがいえるが、特別その時代や環境に合わせた人物設定を敢えてしていない向きがある。
おそらくは作者自身の個性が反映されているのではと思われる、少し軽めでそんなに上品ではない(w)、それでいて人の良さそうなキャラ。
どの作品でも、ほぼ同一のキャラが被っているのが面白い
普通なら、ちょっと考え物だが、なぜか、この作者の作品においては、それが功を奏している感じがする。
なぜなら、これらの作品群の特徴として、心理描写が、ややドライで、それに加え、状況の変化が実に過酷を極めるからである。
これで主役のキャラ設定が、どシリアスなものであれば、本当にいたたまれなく感じてしまうのだ””

なんだか、だらだらと書き連ねてしまい、返って良く分からなくなってしまったかもしれないw
でも、とにかく一読の価値がある作品であることだけは確かだ
早く続きが読みたいものである

MF動物病院日誌(お勧め漫画の御紹介☆)

2004-11-11 | 漫画
MF動物病院日誌は、動物好きはもちろんのこと、あんまり好きじゃない人でも、結構楽しめる作品だ 
ある動物病院を舞台に、そこに訪れる様々な患畜との関わり合いなどを、その病院で働く人達の目を通して綴っていく、ハートフルなシリーズものである。

作者のたらさわみちさんは、二昔前くらいの頃に少女漫画をよく読んでいた人なら、「バイエルンの天使」で認識されていることと思う。繊細なタッチで、少年合唱団(ウイーンでないあたりがまたいい)の少年達の心模様を穏やかに表現されていた作品だ。

今回取り上げた作品は、それとはだいぶ趣が変わっているようだが、その根底に流れる、人々の細やかな心の動きを繊細なタッチで穏やかに表現しているという点では、この作者らしい心温まる作品であることに変わりはない。

よく動物病院に行くと、保険が利かず、高い出費が痛いという印象があるが、この作品を読み続けていると、動物医療に関わる様々な問題などもクローズアップされており、あながち文句も言えない気分にもなってくるw
また、同時に不必要に高額料金を請求する良心的でない病院も、中にはあるという事実も示唆していて、なかなか公平な視点で語られている。
阪神大震災の折の、路頭に迷った大変多くのペットたちを救済するボランティアの話も取り上げられていたりして、実に幅広い視野で語られている点も興味深い。

読んだことがなく、興味を持たれた方は、是非ご一読することをお勧めする。沢山刊行されているが、主要人物の関わり合いをそんなに気にしないで話のみに重点を置くのであれば、基本的に一話完結形式なので、どこから読まれても大丈夫だと思う。

秋の夜長に、たまには読後感の良い漫画なども良いのでは?