科博SCA会員のエッセイ,第3弾です。
何やら関係なさそうな2つの名前が並んだタイトルですが,いったいどんなお話でしょうか……?
星と根っこ
柿やドングリ、モミジにイチョウ。秋になり、世界が色づき始めると、毎年思い出す話があります。
昔々の夜空には、月しかなくて寂しかった。物足りなく思った少女は灰をまいて天の川を作った。フインの根を投げ星を作った。根っこは老いると赤くなる。少女は気にせず投げたから、今でも星は赤や白に輝いている。〔草下英明, 星の神話伝説集, 「星を作った少女」より筆者要約〕
きっと、いろんな星があるのが不思議だったんですね。いつも凄いと思うのは、遠く遠くのお星さまの色の違いの説明に、身近な植物を使うこと。手も届かない遠くのことを、届く範囲で説明してる。よくある星の神話のように、神様に委ねない。
科学の視点では、私たちが普段見る星の色をどうやって説明してるんでしょう?調べてみると、いろんな要素があるみたい。二つ簡単に紹介します。
一つ目の要素は星の表面温度。炎が熱くなっていくときと同じように、星も表面の温度が低いと赤く、熱くなるほど青白く輝く。星の温度はその星の年齢や質量で決まるそうです。若くて質量が小さい星、年取り終わりが近い星。そんな星ほど、表面の温度が低く赤い。
二つ目は星の地球からの距離。光には波の性質があり、波長が長い光ほど目に見える範囲では赤い。宇宙は膨張していて、星の光の旅路も伸びる。旅の途中で道が伸びるから、光の波長は引き伸ばされる。可視光ならば赤くなる。
お年を召した星は赤い。長旅した光は赤い。根っこの話とちょっと似てて、ちょっとほっこり。
思い出してください。お話の中では、手も届かない遠くの星の色の説明に、身近な根っこを使う。神様に委ねない。それでも、少女はどうして星が作れたか、その不思議は昔々に委ねられます。
科学者だって遥か遠くや昔には、決して手が届かない。やっぱり凄いと思うのは、それでも不思議の説明を何かに委ねていないこと。
遥か遠くや昔から手元に届く僅かな情報。手元でやってみた実験から分かった法則。それらをコツコツ積み上げていろんなことが見えてくる。科学のそんな側面を私はコツコツ階段と呼んでます。
博物館ではたくさんのワクワクする世界に出会うことができます。その裏にはコツコツ階段がきっとある。探してみても面白いかも。
(SC11期 本間 知広)