サンタフェより

高地砂漠で体験したこと 考えたこと

星空のはじまり (アニシナベ族)

2006年01月04日 | 魔法としての言葉
先日ミグウェジという言葉を教えてくれた、アニシナベのマークさんがしてくれたお話。ナバホ族の星のはじまりとはまた違って、おもしろい。「スターウーマン」(星の女)として知られているのだそう。

湖の近くにとても仲のよい夫婦が住んでいた。ある時夫はカヌーで事故にあい、死んでしまった。妻は悲しくて悲しくてあきらめきれず、呪い師や年寄り衆のところへ助けを求めて行った。しかし皆口をそろえて「お前の夫は、精霊の世界に行ったのだ。会うことはできぬ。」と言う。「では私も、その精霊の世界へ行かせて下さい。」「ならんぞ、お前の時間はまだ来ていないのだ。」それでも彼女は諦められず、夫のいる世界を探して放浪して歩いた。そのうち、精霊の世界は空の上にあるに違いない、と考えるようになった。その頃空はまだ木々のすぐ上の、手の届く所にかかっていた。女は、木に登ってはナイフでシュッシュッと切れ目を入れ、その上に夫がいないかと見まわり始めた。誰が止めようがおかまいなしで、次から次へと何百、何千と空に切れ目を入れては、その上の明るい世界を覗き込む。しかし夫の姿はなかった。大精霊のマニドゥーも、長老たちも、何だかとても不憫に思えて来た。それ以上見ていられなくなった彼らは、話し合いをして空の幕をずっと上の、人間では手の届かない遠くまで引き上げることにした。グーッと暗い幕があがると、何千何万という女の入れた切り込みから、眩しい光がもれるようになった。女の心は、少しだけ穏やかになって、夫を捜し続けるのをやめたそうだ。そういうわけで、私たちの手の届かない遠くのはるか上空に、今でもまばゆい星たちがキラキラと輝いているのだそうだ。