NHKの大河ドラマ『真田丸』が、いよいよ明日最終回をむかえます。では、第49回「前夜」を振り返っておきましょう。
信之> これより大坂へ行ってまいる。
稲> そのようなお体で、殿が行かれてどうなさりまする。
信之> 源二郎を説き伏せてくる。あれは死ぬ気だ。すぐに支度を整えてくれ。
こう> かしこまりました。
稲> (幸村からの書状を読んで)死ぬなどとは、どこにも書いておられませぬ。
信之> わしには分かるのだ。あれは死ぬ気で敵の本陣に突っ込み、大御所様の首をとるつもりだ。
こう> 行かせてあげてください。旦那様に悔いなき生き方をしていただくのが、私たちの務め。
稲> 分かっておる!
こう> ご無礼致しました。
稲> されど、敵の大将と会うとなると、内通を疑われても仕方がありませぬ。下手をすれば打ち首。真田のお家をつぶすことにもなりかねませぬ。
信之> 十分気を付ける。
稲> 道中は、真田のものであることをお隠しくださいますよう。家紋が付いているものは、一切、身に着けぬこと。
信之> 承知した。
稲> そして、必ず生きて帰ってくださいませ。
信之> 分かった。
松> 真田のものと分かるものは持たせてはならぬと、きつ~く言われましたが、このくらいなら大丈夫ですよね。
信之> いささか多すぎるかと。
松> 源二郎に食べさせてやりたいの。
信之> 必ず届けます。
松> いずれまた、兄弟3人でお茶でも飲みながら、昔話に花を咲かせましょう。大丈夫。きっと、そんな日がきます。
信之> そうなることを願っておりまする。
松> へっ、松が言うのだから、間違いありません。
信之> たまに姉上が、ばば様と重なる時があります。
松> (聞こえないふりをして)はい?
信之> ふふふ、何でもありませぬ。
信之> あとは頼んだ。
こう> 大願成就のお守りでございます。
信之> (お守りの中に入っているものを取り出して)これは!
こう> 銭、六文。道中、ご無事で。
→ 弟の幸村を思う信之の姿が、丁寧に描写されていましたわ。最後の「銭、六文。」にも、感動しました。真田家の家紋「六文銭」に、ひっかけているんです。
(徳川義直の陣)
信尹> 案ずるな。ただの人改めだ。
室賀久太夫> かんどうを歩いていた怪しい者たちとはお前たちか?
信尹> 我ら、大御所様からの密命を帯びて、大坂へ向かうところでございます。
室賀久太夫> ご無礼致した。尾張徳川家家臣、室賀久太夫。
信尹> 将軍家旗本、真田隠岐守信尹。
室賀久太夫> 真田?
信尹> 先を急ぎますゆえ。
室賀久太夫> 待たれよ! 真田といえば、真田安房守・・・。
信尹> 安房守は、我が兄でございます。
室賀久太夫> 通すわけにはいかぬ! 我が父、室賀正武は、真田安房守の罠にはまり、
信之> 黙れ、小童(こわっぱ)!
室賀久太夫> すみません。
信之> 参りましょう。
→ 「黙れ、小童!」。この演出は、凄い! 信之が室賀正武に、さんざんくらっていた言葉。それを室賀の息子に見事に返しました。これぞ、脚本家・三谷幸喜ワールド! 今作品『真田丸』にも、随所に散りばめられているユーモアに感心しました。
(大坂城内)
幸村> お待たせいたした。 (間) 兄上?
信尹> 大御所様はどうしてもお前が欲しいようだ。
幸村> 有難迷惑でございます。
信尹> しかし、前とは事情が違う。かような城で、どうすれば勝てる。今のうちに、こちらに下るのも決して悪い手ではない。信濃一国ではどうかと、大御所様は仰せだ。
作兵衛> 何と。
幸村> 気前のよいことで。
信尹> 兄上が終生望んでいた信濃の国主になれるのだぞ。
作兵衛> 源二郎様。
幸村> (首を横に振る。)
信之> 源二郎は死ぬつもりなのです。しかも、大御所様を道ずれに。
幸村> 兄上、買い被りです。いくら私でも、それは。
信之> 徳川に、はむかいたいなら、はむかえばよい。ひれ伏したくないなら、ひれ伏すな。しかし、死んではならぬ!
幸村> 捕まれと申されますか?
信之> そうじゃ。今度もまた、俺は必ずお前を助けてみせる。死に物狂いで江戸と駿府と京を駆け回り、赦免を勝ち取ってみせる!
幸村> そしてまた14年。
信之> 決してお前を死なせはせん。それが、わしの使命だからだ! あのとき、わしは、お前と父上と3人で誓った。またいつか、晴れて酒を酌み交わそうと。父上はもうおられぬが、わしはまだその約束を果たすつもりでおる。それを言いに来た。
幸村> では、今、ここで酒を。
信之> 作兵衛、帰る。
作兵衛> は。
信之> 叔父上。
幸村> 兄上と酒を酌み交わしとうございます! (間) 兄上。
信之> これは今生の別れではない。
(間)
信尹> 生きたいように生きればよい。
→ 幸村の覚悟がひしひしと伝わってくるシーンでした。幸村を助けたい、信之の必死感も凄かったです。
(大坂城内)
春> 城を出よとは、どういうことでございますか?
幸村> 何も言わず、従ってくれ。
春> 出て、どこへ参るんですか?
幸村> 伊達陸奥守の陣じゃ。
内記> 伊達?
幸村> あのお方なら、必ずお前たちを庇護してくださる。
(伊達政宗の陣)
政宗> 真田左衛門佐、よう、わしを頼ってきた。ごさいじょの世話、一切、喜んでみようではないか。
佐助> ありがたき幸せ。
政宗の家来> このこと、大御所様には・・・。
政宗> 申し上げるわけなかろう。わしと真田との密約よ。
(大坂城内)
幸村> 大助は私とともに城に残る。
大助> はい。
幸村> 内記。
内記> もちろん残ります。
幸村> 足手まといになるだけだ。
内記> 失敬な。力を蓄えておったのでござる。
幸村> 作兵衛は、春たちを伊達に送り届けたら、戻ってくれ。
作兵衛> かしこまりました。
きり> 私は?
幸村> お前には大事な仕事がある。残ってくれるか?
きり> (うなずく。)
幸村> 決して永遠の別れではない。しばしの辛抱じゃ。
春> 大助、父上をしっかりとお守りしなさい。
大助> はい。
春> 旦那様のこと、何卒よしなに頼みます。
きり> かしこまりました。
幸村> よう耐えてくれた。
春> 泣いても良いのなら、泣きますよ。
幸村> いや、いい。
春> 私は大谷刑部吉継の娘でございます。
幸村> そうであった。
春> ご武運を。
幸村> (うなずく。)
(伊達政宗の陣)
政宗の家来> 御館様、真田左衛門佐奥方とお子達でございます。
政宗> お。伊達陸奥守政宗である。心配はいらん。そなた達の身の上は、わしが一命にかけて預かった。ときに、ずんだ餅はお好きかな?
→ 幸村と政宗が一戦交えた後に芽生えた「友情」みたいなのが描写されました。凄くいいシーンでした。そして、こののち、幸村の娘・梅が、伊達家家臣の嫁になることがナレーションで紹介されました。また、このシーンでも三谷ワールド炸裂! 完全にNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』を意識しています。「ずんだ餅」がそれです。THE BLUE HEARTSの『リンダリンダ』を替え歌にして「ズンダズンダ」と歌うGMTアイドルを思い出しませんか?
(大坂城内)
幸村> 私は明日、城を出て、家康に決戦を挑むことにした。
きり> いよいよですね。
幸村> お前は、いざとなったら、千姫様をお連れしてここを抜け出し、秀忠の陣へ行け。
きり> 大仕事ではないですか!
幸村> だから、お前に頼むのだ。おかみ様には、お伝えしておく。
きり> 姫様をお送りしたら、そのあとは?
幸村> 沼田にでも帰るがよかろう。
きり> いいえ。ここに戻って来ます。こうなったら、おかみ様とご一緒しますよ。最期まで。源二郎様がいない世にいても、つまらないから・・・。
幸村> (きりを抱きしめる。)
きり> ちょっと何するんですか・・・。 (間) 遅い。
幸村> すまぬ。
きり> せめて10年前に・・・
幸村> (きりにキスをする。)
きり> (キスをされたまま)あの頃が、私、一番奇麗だったんですから。
→ 泣いた、泣いた。きりの思いがやっと幸村に伝わったシーン。「源二郎様がいない世にいても、つまらない」って・・・。大きな愛を感じますわ。で、このシーンですが、実は、堺雅人さんと長澤まさみさんのアドリブなんです。三谷さんは、「キス」のことは台本には書いていないのです。長い間、撮影の苦楽を共にした二人ならではのアドリブだったと思います。
みなさん、どうでしたか?
明日の用意はできましたか?
では、各々、抜かりなく。
信之> これより大坂へ行ってまいる。
稲> そのようなお体で、殿が行かれてどうなさりまする。
信之> 源二郎を説き伏せてくる。あれは死ぬ気だ。すぐに支度を整えてくれ。
こう> かしこまりました。
稲> (幸村からの書状を読んで)死ぬなどとは、どこにも書いておられませぬ。
信之> わしには分かるのだ。あれは死ぬ気で敵の本陣に突っ込み、大御所様の首をとるつもりだ。
こう> 行かせてあげてください。旦那様に悔いなき生き方をしていただくのが、私たちの務め。
稲> 分かっておる!
こう> ご無礼致しました。
稲> されど、敵の大将と会うとなると、内通を疑われても仕方がありませぬ。下手をすれば打ち首。真田のお家をつぶすことにもなりかねませぬ。
信之> 十分気を付ける。
稲> 道中は、真田のものであることをお隠しくださいますよう。家紋が付いているものは、一切、身に着けぬこと。
信之> 承知した。
稲> そして、必ず生きて帰ってくださいませ。
信之> 分かった。
松> 真田のものと分かるものは持たせてはならぬと、きつ~く言われましたが、このくらいなら大丈夫ですよね。
信之> いささか多すぎるかと。
松> 源二郎に食べさせてやりたいの。
信之> 必ず届けます。
松> いずれまた、兄弟3人でお茶でも飲みながら、昔話に花を咲かせましょう。大丈夫。きっと、そんな日がきます。
信之> そうなることを願っておりまする。
松> へっ、松が言うのだから、間違いありません。
信之> たまに姉上が、ばば様と重なる時があります。
松> (聞こえないふりをして)はい?
信之> ふふふ、何でもありませぬ。
信之> あとは頼んだ。
こう> 大願成就のお守りでございます。
信之> (お守りの中に入っているものを取り出して)これは!
こう> 銭、六文。道中、ご無事で。
→ 弟の幸村を思う信之の姿が、丁寧に描写されていましたわ。最後の「銭、六文。」にも、感動しました。真田家の家紋「六文銭」に、ひっかけているんです。
(徳川義直の陣)
信尹> 案ずるな。ただの人改めだ。
室賀久太夫> かんどうを歩いていた怪しい者たちとはお前たちか?
信尹> 我ら、大御所様からの密命を帯びて、大坂へ向かうところでございます。
室賀久太夫> ご無礼致した。尾張徳川家家臣、室賀久太夫。
信尹> 将軍家旗本、真田隠岐守信尹。
室賀久太夫> 真田?
信尹> 先を急ぎますゆえ。
室賀久太夫> 待たれよ! 真田といえば、真田安房守・・・。
信尹> 安房守は、我が兄でございます。
室賀久太夫> 通すわけにはいかぬ! 我が父、室賀正武は、真田安房守の罠にはまり、
信之> 黙れ、小童(こわっぱ)!
室賀久太夫> すみません。
信之> 参りましょう。
→ 「黙れ、小童!」。この演出は、凄い! 信之が室賀正武に、さんざんくらっていた言葉。それを室賀の息子に見事に返しました。これぞ、脚本家・三谷幸喜ワールド! 今作品『真田丸』にも、随所に散りばめられているユーモアに感心しました。
(大坂城内)
幸村> お待たせいたした。 (間) 兄上?
信尹> 大御所様はどうしてもお前が欲しいようだ。
幸村> 有難迷惑でございます。
信尹> しかし、前とは事情が違う。かような城で、どうすれば勝てる。今のうちに、こちらに下るのも決して悪い手ではない。信濃一国ではどうかと、大御所様は仰せだ。
作兵衛> 何と。
幸村> 気前のよいことで。
信尹> 兄上が終生望んでいた信濃の国主になれるのだぞ。
作兵衛> 源二郎様。
幸村> (首を横に振る。)
信之> 源二郎は死ぬつもりなのです。しかも、大御所様を道ずれに。
幸村> 兄上、買い被りです。いくら私でも、それは。
信之> 徳川に、はむかいたいなら、はむかえばよい。ひれ伏したくないなら、ひれ伏すな。しかし、死んではならぬ!
幸村> 捕まれと申されますか?
信之> そうじゃ。今度もまた、俺は必ずお前を助けてみせる。死に物狂いで江戸と駿府と京を駆け回り、赦免を勝ち取ってみせる!
幸村> そしてまた14年。
信之> 決してお前を死なせはせん。それが、わしの使命だからだ! あのとき、わしは、お前と父上と3人で誓った。またいつか、晴れて酒を酌み交わそうと。父上はもうおられぬが、わしはまだその約束を果たすつもりでおる。それを言いに来た。
幸村> では、今、ここで酒を。
信之> 作兵衛、帰る。
作兵衛> は。
信之> 叔父上。
幸村> 兄上と酒を酌み交わしとうございます! (間) 兄上。
信之> これは今生の別れではない。
(間)
信尹> 生きたいように生きればよい。
→ 幸村の覚悟がひしひしと伝わってくるシーンでした。幸村を助けたい、信之の必死感も凄かったです。
(大坂城内)
春> 城を出よとは、どういうことでございますか?
幸村> 何も言わず、従ってくれ。
春> 出て、どこへ参るんですか?
幸村> 伊達陸奥守の陣じゃ。
内記> 伊達?
幸村> あのお方なら、必ずお前たちを庇護してくださる。
(伊達政宗の陣)
政宗> 真田左衛門佐、よう、わしを頼ってきた。ごさいじょの世話、一切、喜んでみようではないか。
佐助> ありがたき幸せ。
政宗の家来> このこと、大御所様には・・・。
政宗> 申し上げるわけなかろう。わしと真田との密約よ。
(大坂城内)
幸村> 大助は私とともに城に残る。
大助> はい。
幸村> 内記。
内記> もちろん残ります。
幸村> 足手まといになるだけだ。
内記> 失敬な。力を蓄えておったのでござる。
幸村> 作兵衛は、春たちを伊達に送り届けたら、戻ってくれ。
作兵衛> かしこまりました。
きり> 私は?
幸村> お前には大事な仕事がある。残ってくれるか?
きり> (うなずく。)
幸村> 決して永遠の別れではない。しばしの辛抱じゃ。
春> 大助、父上をしっかりとお守りしなさい。
大助> はい。
春> 旦那様のこと、何卒よしなに頼みます。
きり> かしこまりました。
幸村> よう耐えてくれた。
春> 泣いても良いのなら、泣きますよ。
幸村> いや、いい。
春> 私は大谷刑部吉継の娘でございます。
幸村> そうであった。
春> ご武運を。
幸村> (うなずく。)
(伊達政宗の陣)
政宗の家来> 御館様、真田左衛門佐奥方とお子達でございます。
政宗> お。伊達陸奥守政宗である。心配はいらん。そなた達の身の上は、わしが一命にかけて預かった。ときに、ずんだ餅はお好きかな?
→ 幸村と政宗が一戦交えた後に芽生えた「友情」みたいなのが描写されました。凄くいいシーンでした。そして、こののち、幸村の娘・梅が、伊達家家臣の嫁になることがナレーションで紹介されました。また、このシーンでも三谷ワールド炸裂! 完全にNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』を意識しています。「ずんだ餅」がそれです。THE BLUE HEARTSの『リンダリンダ』を替え歌にして「ズンダズンダ」と歌うGMTアイドルを思い出しませんか?
(大坂城内)
幸村> 私は明日、城を出て、家康に決戦を挑むことにした。
きり> いよいよですね。
幸村> お前は、いざとなったら、千姫様をお連れしてここを抜け出し、秀忠の陣へ行け。
きり> 大仕事ではないですか!
幸村> だから、お前に頼むのだ。おかみ様には、お伝えしておく。
きり> 姫様をお送りしたら、そのあとは?
幸村> 沼田にでも帰るがよかろう。
きり> いいえ。ここに戻って来ます。こうなったら、おかみ様とご一緒しますよ。最期まで。源二郎様がいない世にいても、つまらないから・・・。
幸村> (きりを抱きしめる。)
きり> ちょっと何するんですか・・・。 (間) 遅い。
幸村> すまぬ。
きり> せめて10年前に・・・
幸村> (きりにキスをする。)
きり> (キスをされたまま)あの頃が、私、一番奇麗だったんですから。
→ 泣いた、泣いた。きりの思いがやっと幸村に伝わったシーン。「源二郎様がいない世にいても、つまらない」って・・・。大きな愛を感じますわ。で、このシーンですが、実は、堺雅人さんと長澤まさみさんのアドリブなんです。三谷さんは、「キス」のことは台本には書いていないのです。長い間、撮影の苦楽を共にした二人ならではのアドリブだったと思います。
みなさん、どうでしたか?
明日の用意はできましたか?
では、各々、抜かりなく。