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さとくーの取りあえず「ときめきブログ」

日常で感じた楽しいことからトホホなこと、果ては好きなモノまで節操無しに呟いてますv

「Another」

2009-12-10 23:59:02 | 読み物
綾辻行人氏、「Another」です。

内容(「BOOK」データベースより)
その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。
夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。
不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。
そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!
この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、
さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。


最初にこの本を見た時に一番に感じたのは…分厚さでした。<待て;
どうしようかと一週間ほど放置しておりましたが、当然(予約で)延長の出来ない本なので
読み始めましたが、読み出すと一気でした。<さすがに一日では無理でしたが;

一言で言うなら、面白かったに尽きるでしょうか。
<これで消化不良とか、もやっとしたものが残ったら時間を返せ~となるでしょうが。
ページ数にビビッていた割には読みやすく、また先を繰らせる力(結末への期待感)が
感じられ、多分この長さにしては読了が早かった…と思われる。(計ってませんが)

「囁きシリーズ」のホラー感(あるいは短編集で出たモノ←タイトル失念;)と
「館シリーズ」の本格ミステリ(「暗黒館~」ではホラー色も強かったですが)と、
丁度良くブレンドされているなぁと思う。
ホラー(超常現象)に偏ればミステリ(謎)がすべてそういうものだと片付けられてしまい、
不満が残ることがあるが、そうではなく、あっと言わせられる(それが綾辻氏によく
見られる手法だったとしても)結末があり、そして論理的にも納得する。
そういった点では「暗黒~」の時に感じた中だるみ感は感じられませんでした。
目次にも示されている3W1H(何が起こったのか、何故そうなったのか、
どうやって、そして…)がラストでぴたりと帰結する上手さはさすがだと。

また、登場するキャラクターも一人ひとり個性がきちんと描かれており、
それがあってこそ、物語が一層謎めいて、そして惹きつけられるのかと。

というか、ページ弱のハードカバーはある意味筋トレです。(違)
運動不足の自分には丁度良いのかもしれませんが。<置いて読めよ;

「ショコラティエの勲章」

2009-12-08 23:45:33 | 読み物
上田早夕里氏、「ショコラティエの勲章」です。

内容(「BOOK」データベースより)
絢部あかりが勤めている老舗の和菓子店“福桜堂”。
その二軒先に店をかまえる人気ショコラトリー“ショコラ・ド・ルイ”で、不可解な万引き事件が起きた。
その事件がきっかけで、あかりはルイのシェフ・長峰と出会う。
ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、新作和菓子、アイスクリーム、低カロリーチョコレート、クリスマスケーキ―さまざまなお菓子をめぐる人間模様と、菓子職人の矜持を描く


表紙からして美味しそうですが(←ちょっと待て;)、本の中にも美味しそうなスイーツ
が沢山登場しますので、読んでいてある意味危険になる(=お菓子を食べたくなる)本かも。
食べ物にまつわる謎を解くという形は近藤氏の本を思い浮かべました。

とても美味しそうな描写だし、お菓子にまつわる謎を菓子職人の心理も含めて
書かれていて成る程な~と想うところはあるのですが、
主人公の立ち位置が若干興をそがれてしまうような所があり、自分としては少し残念。
勤めていた会社が倒産し、臨時で和菓子店に勤めているが、
職人のように熱いものを抱えているではなく、お菓子を食べる側として愛する目から
語られてはいるものの、時として、何故にそこまで謎(にまつわる個人の事情)に
まで突っ込む必要がとか思ってしまうのは…読み方が悪いのでしょうか。(苦笑)

「ここに死体を捨てないでください!」

2009-12-01 23:53:50 | 読み物
東川篤哉氏、「ここに死体を捨てないでください!」です。

内容(「BOOK」データベースより)
「死んじゃった…あたしが殺したの」有坂香織は、妹の部屋で見知らぬ女性の死体に遭遇する。
動揺のあまり逃亡してしまった妹から連絡があったのだ。
彼女のかわりに、事件を隠蔽しようとする香織だが、死体があってはどうにもならない。
どこかに捨てなきゃ。誰にも知られないようにこっそりと。
そのためには協力してくれる人と、死体を隠す入れ物がいる。考えあぐねて、窓から外を眺めた香織は、うってつけの人物をみつけたのであった…。
会ったばかりの男女が、奇妙なドライブに出かけた。…クルマに死体を積み込んで。
烏賊川市周辺で、ふたたび起こる珍奇な事件!探偵は事件を解決できるのか?それとも、邪魔をするのか?


「烏賊川市シリーズ」(←普通、シリーズって登場人物の名前とかになるんじゃないだろうか)の第五弾。
本格推理は面白いと思うけれど読むにはちょっと堅そうな…と思う人にはこの作者の本はおススメかと。
探偵と助手役(っぽいのは何故か二人もおりますが)が抜けてそうで鋭かったり、
警察関係者(警部&部下)もらしくない程毎回色々とやってくれます。
そういう意味ではきっちりリアリティが無くてはイヤという方は苦手かもしれませんが。
自分はこういったユーモアに溢れていて、且つミステリも楽しめるというタイプは大好きです。

今回は事件の発端となった有坂と男の視点で語られる部分も多いので、
いつにも増して!?探偵&助手(←特にこちら)が空気ではありますが、
その分事件の全体を双方向から眺められるので読みやすいです。
それでもミスリードするような工夫をされていて最後まで楽しめます。

まぁ、今回のトリックについては本格か?と問われると現実問題無理が
あるような気がしますが、映像的に見たら良く出来たモノになりそうな気がします。

「恋愛王国オデパン 」

2009-11-13 23:54:48 | 読み物
藤本ひとみ氏、「恋愛王国オデパン 」です。

内容(「MARC」データベースより)
真織を口説いてきたのは個人ファンドの経営者。単なる色事師かそれとも乗っ取り屋?
相手の誘いに乗った真織の運命やいかに。ゴージャスな恋、禁断の恋、すべての恋は蜜の味!
スーパー・ラブストーリーが、いま、開幕する。


文庫もありましたが、あえてこっちの画像で。(この方の絵が好きなので)
というか、この方の名前を見てまずコバ/ルト文庫を思い出す自分の年齢が…。(苦笑)

これ、シリーズモノだった…らしい。<書架にあったので借りてきたため知らなかった。
(というか、この方、コバ/ルトに始まるシリーズモノ一連できちんと完結したモノ
ってあるんだろうかとふと思ったんだが;)

そして内容はというと、もの凄~~くセレブな人妻の暇つぶしのための大掛かりな…遊び?
何かもう異世界のこととしか思えなくて、しかも出てくるブランド名(服、宝飾等)が
どれもこれもカタカナばかりで、自分には「それ、どこ?」的なモノばかり。
<自分が詳しくないということを差し引いてもね。(笑) 
仲の良い友人の不倫疑惑、自分の夫の浮気疑惑、そして自らも男性に言い寄られて
そのやり取りを楽しむような主人公。
セレブな気持を味わいたい人、(←自分を重ねて考えられることが出来るのなら)
あるいは読んでそういった世界を楽しめる人にとってはよろしいかもしれないのですが、
正直話の中身は余り無いような。

「廃墟建築士」

2009-11-11 23:35:17 | 読み物
三崎亜紀氏、「廃墟建築士」です。

内容(「BOOK」データベースより)
ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。
七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。
ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち


う~ん、やっぱり最初に思うのは不思議さでしょうかね。
SFというわけでもない、それぞれ例えばタイトルの「廃墟建築士」でいうならば、
「廃墟」も「建築士」もそれぞれは既に存在するものである。
けれど、「廃墟を建築する(仕事)」という発想は普通では浮かばない、
何故なら「普通に」考えれば廃墟とはそれ以前に用途があって使われていた物が
朽ち果ててなお存在するものだから。
と、他の話も一つ一つ取ってみれば個々には存在しているものが普通と違う組み合わせに
なるとこうも全く違った話が生まれるのかというのを今回も見せつけられた作品。

ただ、「鼓笛隊の~」よりも今回は「物」が「意志や存在意識(らしきもの)を持つ」話で
構成されているために一つの短編集として纏まった印象を受ける。

あとは、この世界観を受け容れられるか(あるいは楽しめるか)にもよりますけど、
若干固定観念にとらわれ過ぎな自分は、こういった話ばかりだけだと大好物…とは
難しいかなぁ。

「ステップ」

2009-11-08 23:52:36 | 読み物
重松清氏、「ステップ」です。

内容(「BOOK」データベースより)
結婚三年目、妻が逝った。のこされた僕らの、新しい生活―泣いて笑って、少しずつ前へ。
一緒に成長する「パパと娘」を、季節のうつろいとともに描きます。美紀は、どんどん大きくなる。


重松節(節?)またも全開という感じでしょうか。
以前に読んだ「とんび」が妻を失った父と息子の生活を描いたのに対し、
こちらは父と娘の生活を描いている。
が、同じ様な境遇でありながらも受ける印象がこちらの方が柔らかい。
(平坦であるとか、苦労をしていないとかいう意味ではなく)
それは、周りのもの、主人公(父)を含めての義父母、叔父、叔母と娘を取り囲む目が
とても優しく描かれているからだろう。
どちらの作も親や近しい者から注がれる愛情は同等のものであるが、
父親が「何より君(娘)が一番好き」と言うのと「何があっても息子の味方だ」と
いうのとで受ける印象(おかれた境遇の違いはあれど)が違ってくるから不思議です。

成長をダラダラと書くのではなく、節目節目(保育園、七五三、小学校入学)や
日常の中で言っている側は意識していないのに、ふと父あるいは娘に棘が刺さってしまう、
そんな時に悩みながらも「一緒に成長してゆく親子の姿」にじわりとさせられます。
また、今回も義父(妻の父)、…の存在の大きさが上手く描かれているなぁと思います。

「鼓笛隊の襲来」

2009-11-04 23:45:12 | 読み物
「鼓笛隊の襲来」三崎亜紀氏です。

内容(「BOOK」データベースより)
戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母とすごすことになった園子の一家。
避難もせず、防音スタジオも持たないが、果たして無事にのりきることができるのか―(「鼓笛隊の襲来」)。
眩いほどに不安定で鮮やかな世界をみせつける、三崎マジック全9編。


この方の本を読むのは初めてですが、何というか、とても独特な世界ですね。
鼓笛隊という本来日常的なものが、台風のように人に忌み嫌われ、警戒されるという
非日常な設定に置き換えられることでこうも話(世界観)が変わるのかと。
他にも突然に学校の校庭の真ん中に存在する家、本当の像のすべり台、事故でもなく
浮遊する土地、突然に消えてしまった列車など、ほんのちょっと本来あるべき姿から
外れた舞台で繰り広げられる普通の日常、そこに登場人物達は何を感じるか、
あるいは読んだ読者は何を感じるのか。

最初は正直戸惑いましたし、深く読む性質ではないので、は?と思ってしまう点も
あったのですが、ハマる人はこの世界観に病み付きになるのかなぁと。

「パラドックス13」

2009-10-31 23:55:25 | 読み物
東野圭吾氏、「パラドックス13」です。

内容(「BOOK」データベースより)
運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?
13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。
崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。
なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13 現象”とは何か。
生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!


う~~~~ん。<唸るな;
これはどういう括りで読むものなのだろうか、SF?とも違うような。
かと言ってガリレオのように科学的でもないしなぁ。
確かに、続きがどうなるのか?とぐいぐいと引っ張っていく力は相変わらず感じますが、
(現に若干長めのページ数でしたが、一気に近い状態で読みましたし)
この結末はえええぇ~!となってしまったのが本音です。
<それしか結末の書きようが無いのかもしれませんけど。

「世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」と
氏が述べているような部分もあるのですが、それだけを伝えたいのなら
あんなに長々と続ける必要は、正直無いと思う。(むしろテーマが霞むような気が)
それに、リーダーシップを取る登場人物がもうひとりの主人公(多分)との対比を
濃くするためなのかもしれないが、あまりにも崇高な精神の持ち主過ぎて、
この状況でそのセリフはね~よとやはり(女の目からしたら)思ってしまう。

とにかく、展開が気になる割に伝えたいことやエンディングが自分と離れすぎていて、
残念かなぁと思いました。

「雪冤」

2009-10-23 23:40:02 | 読み物
大門剛明氏、「雪冤」です。

内容(「BOOK」データベースより)
平成5年初夏―京都で残虐な事件が発生した。
被害者はあおぞら合唱団に所属する長尾靖之と沢井恵美。二人は刃物で刺され、
恵美には百箇所以上もの傷が…。容疑者として逮捕されたのは合唱団の指揮者・八木沼慎一だった。
慎一は一貫して容疑を否認するも死刑が確定してしまう。
だが事件発生から15年後、慎一の手記が公開された直後に事態が急展開する。
息子の無実を訴える父、八木沼悦史のもとに、「メロス」と名乗る人物から自首したいと連絡が入り、
自分は共犯で真犯人は「ディオニス」だと告白される。果たして「メロス」の目的は?
そして「ディオニス」とは?被害者遺族と加害者家族の視点をちりばめ、
死刑制度と冤罪という問題に深く踏み込んだ衝撃の社会派ミステリ


横溝正史賞ミステリ大賞作とのこと、優秀賞の「ぼくと「彼女」の~」とは随分と
趣の違った作品だなぁというのが第一印象。(評価もそれで分かれたようですが)
死刑制度という太く重たい柱が話の中心となり、その是否を問いかける作。
ただ、一方的に肯定、否定するのではなく、(被害者、加害者の)遺族の立場から
焦点を当てていこうとしている姿勢は作者の非常に真面目な部分が現れているように思う。
<真面目な部分というか、それを伝えたいのだという姿勢が。

しかし、ただ論議を闘わせるだけの社会派作でなく、「一体(本当の)犯人は誰か?」
というミステリ要素も強く含んでいるために、それが話に引きこむ呼び水となっていると
同時に「謎解き」(或いは、それに付随するどんでん返しの結末)を複雑にし過ぎて、
読みづらいという印象を受けてしまった。(理解力が無いだけかもしれませんが;)
しかも、理論的ではないにせよ、真犯人の姿が透けて分かってしまうというか。(←自分は)
効果を狙ったかのような最後の二転三転する展開は、正直そこまで無くてもいいかもなぁ。

「アマルフィ」

2009-10-20 23:51:38 | 読み物
真保裕一氏、「アマルフィ」です。

先に映画を観ていたということもあり、自分にしては珍しくブツ切り読み。
クリスマスを目前に控えたイタリア、観光に来ていた旅行者の娘がいなくなった。
外務大臣の来航を前に保守主義に更に走る外務領事館は、その件に関しての関与を拒む。
が、外交官の黒田は誘拐事件に係ってゆく。
一人の少女の誘拐事件は、やがて大きな事件へと繋がってゆく。

元々、映画のプロットに係った作者がそれを元にこの小説を書いた。
ので、また映画とは少し違った「アマルフィ」なのはそうなのだろうなと思うが。
映像化するのに、確かにこちらの結末の方が色々と支障があるなぁと思う。
(予算的、政治的な意味で←こっちのラストはきっと撮れないような)
また、映画は「魅せる」ことを前提にしたモノなのだという(当たり前のことだが)ことを
再確認できる一冊でもあると思う。
<いや、この映画の織/田さん個人的には超ツボでしたから満足なんですけど。(待て;

が、先に映像を見ているからどうしても頭の中で固定キャラは当て嵌めて読んでしまうが、
この本だけだとしたら全員の顔(性格、行動)があまり見えてこないところが残念。
事件の実態だけを追うために登場人物を動かしているという風に見えてしまう。
もうちょっと掘り下げられていたらまた違った印象を受ける一冊かと。


「泥(こひ)ぞつもりて」

2009-10-19 23:59:15 | 読み物
宮木あや子氏、「泥(こひ)ぞつもりて」です。

内容(「BOOK」データベースより)
女は待ち、男は孤独を知る。清和、陽成、宇多天皇、いつの時代も女に生まれれば同じこと。
平安王朝にまつわる男女の尽きせぬ狂おしい想い。


久々に時代(歴史)小説を読んだ気が。
昔は永井路子氏とか結構読んでいたんですけどね。
女の側から見た歴史というのは(フィクションが多分に混じるとはいえ)、
中々興味深いものがあったので。
<が、高じてそっち方面(どっち方面だw)に転んだりもした訳ですが。

この本は平安時代前期に生きた藤原高子(清和天皇の妻、陽成天皇の母)を主人公に、
彼女自身と彼女にまつわる天皇や藤原氏の男たち、そして他の女御について書かれた物語です。
系図が載っていなかったので、最初のうち関係や誰が誰なのか(天皇になると名が変わるし)を
把握するまでに時間が掛かったのですが、次第に氏の世界に惹きこまれていきます。
天皇の親政から外戚に執政の力が移っていった時代、天皇も、そして女も子を生すことが
一番であり唯一に近い仕事だった。
そのために多くの女を迎えながらも満たされぬ天皇の苦悩、ひたすら天皇の妃となることを望む女、
愛を受けながらも子を生せぬ女、家柄ゆえに想い人と引き裂かれる女、
登場するそれぞれが華やかな立場にありながらも抱く哀しさが
美しく艶やかな文体で描かれている一冊だと思います。
あ、何か歴史小説熱再燃しそう。(笑)

超私信:そうそうキャンデ/ロロのことですv(下の記事@ダルタニ/アン)
技術的に秀でた人って沢山いると思いますが、記憶に残るという点でこの方はかなり秀逸な方かと。
てか、年がばれるじゃないか! そこが黄金期(自分も)とか言われたら。(笑)

「鬼の跫音」

2009-10-13 23:48:30 | 読み物
道尾秀介氏、「鬼の跫音」です。

2日本の感想が続くけど気にしな~い。<という名の現実逃避;
氏、初の短編集ということですがそうなの?<聞くな;

鈴虫の声に呼び起こされる過去、偶然見つけた椅子の脚裏に彫られた誰かのメッセージ、
20数年前に起こした自分の忌まわしい過去、陰湿なイジメ…
全てにSという人物が出てくるものの連作ではなくそれぞれ独立した短編集です。

ホラー小説ということですが、同じホラー小説でも綾辻氏や有栖川氏の書くホラーとは
またちょっと違うような。
恐怖の正体が一体何であるか分からないおどろおどろしさよりも、
人間の心の闇が作り出す偏執的な恐さを書いたような感じかなぁ。
自分としてはそういった方が分かりやすいという点では読んで充分に楽しめました。
後味はあまり良くありませんけれどね。(苦笑)

自分が読んでいて感心したのはラストにつながる伏線が素晴らしいということ。
ここはそういう意味か、と勝手に思って読み進めていくとラストであっと覆され

ページを捲り戻す場面の多かったこと。
ただ悔しいと思うよりもしてやられた、上手いなぁと思う気持の方が強く、
こんな風に文章を組み立てられるといいなぁと(出来ないんですけど(笑))
勉強させられながら読んだ一冊でもありました。

「玻璃の天」

2009-10-12 23:55:25 | 読み物
北村薫氏、「玻璃の天」です。

「街の灯り」に続く、花村家のお嬢様とその女性運転手ベッキーさんの物語。
今回もお嬢様が遭遇した、あるいはもちかけられた謎を解いてゆくという話の進み方は
変わらないのですが、「ミステリ」よりもそこに書かれた時代を味わう読み方をする一冊かなと。
と思ってしまうくらいに時代考証の掘り下げが素晴らしいです。
(巻末の参考資料の多さにも、即ちそれだけ念入りに調べられ、
練り上げられた氏の姿勢が充分に表れています)

昭和初期、日本が軍事化の道を辿る中、一人のお嬢さんである主人公に、
単なるお嬢さんとして描いているのではなく、争うことに対しての明確な意見を
述べさせている点などに氏のこの本に篭められたメッセージの強さを感じさせられます。

またミステリとしての要素も前回より楽しめますし、シリーズ物ゆえの、
登場人物の背景が明らかになってゆく過程も楽しめます。
<それでもまだミステリアスな部分の多いベッキーさんではありますが。

「街の灯」

2009-10-09 23:48:31 | 読み物
北村薫氏、「街の灯」です。

内容(「BOOK」データベースより)
士族出身の上流家庭・花村家にやってきた若い女性運転手。
令嬢の“わたし”は『虚栄の市』のヒロインにちなんで、彼女をひそかに“ベッキーさん”と呼ぶ。
そして不思議な事件が…。待望の新シリーズ。昭和七年“時代”という馬が駆け過ぎる。


典型的な「踊らされて読む人」ですね、自分は。(笑)
受賞作が続き物だったから、遡って読もうというやつです。

ということで本の感想はというと。
とにかく「昭和という時代がよく表れている」本。<あれ、感想じゃない?
古き良き(かどうかは分からぬが)時代、まだ士族や華族の名家が存在した昭和。
その家の女性であれば家にいるのが当たり前、時には家のために嫁ぎ先を定められていることもあった時代。
そんな中新しい運転手として現れたのは若い女性だった。
当然運転手だけではなく警護も兼ねた仕事でもあるが、彼女(ベッキーさん)はそちらにも
精通してる上に色々なことを知っていて、わたしが抱いた、ぶつかった疑問や謎を
解く手助けをさりげなくしてくれる。

という訳で出てくる謎も血生臭い事件よりはどこかでぶつかることもありそうな内容なので
高度に張り巡らされたトリックを解き明かすような派手さはありません。
けれど、その時ならではの謎、その立場(良家の子女)だからこそぶつかる疑問、
時代と謎が融合していること、そして文体の美しさがそれを更に引き立てられているなぁと思います。
ま、一番の謎はベッキーさんの正体ですけれど、それは読み進めていけば分かることなのだろうと、
楽しみにしながら読んでいきたいと思います。

「聖女の救済」

2009-10-05 23:53:34 | 読み物
東野圭吾氏、「聖女の救済」です。

内容(「BOOK」データベースより)
男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。
草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。
湯川が推理した真相は―虚数解。理論的には考えられても、現実的にはありえない。


そう短編の方と変わらない時期に予約したのに、さすが東野氏人気というべきか。
<ついでに先月出た加賀刑事の本はまた予約数が凄いことになってますが;

まぁ、それは置いておきまして。
メディアの影響はやっぱり強くて湯川(福/山)や内海(柴/崎)のイメージは
もう払拭できそうにないのですが、短編やドラマに比べると内海刑事の有能さが目立つかも。 
<草薙刑事は、今回容疑者の一人と疑われる美貌の妻に惹かれているという設定のためか、
いつもより弱い印象を受けますが、それでも刑事としての理念を忘れない姿は、
ドラマ、「容疑者~」そして今までの短編集のどのファンにも向けて書かれているかな~と言う気が。
<文中に内海刑事が福/山のアルバムを聴くという描写は氏のファンサービスか?(笑)

相変わらずぐいぐいと先へと引っ張る書き方は上手いと思う、中だるみもなく一気に最後まで
読み進める力は本書で感じられた。(ここ最近う~んと思う書もあったので)
ただ、まぁ、これはトリックと関係してくるけれども、「普通ならばあり得ない事が
正解であって、またそれが正しかったとしても犯人として確証するのが難しい」、
虚無解であることが、普通のトリックよりもふに落ちなさを読み手に感じさせてしまうのかなぁと。

むしろそのトリックを使う方が実際に罪(殺人(を犯すより何倍も難しいという気が
しますが、その分、そうせざるを得なかった真理やまたタイトルに篭められた意味を
読後に考えてみると化学的に解決する謎だけではない面でまた思うところが出てくるなぁと。