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さとくーの取りあえず「ときめきブログ」

日常で感じた楽しいことからトホホなこと、果ては好きなモノまで節操無しに呟いてますv

「インシテミル」

2010-03-04 23:55:26 | 読み物
米澤穂信氏、「インシテミル」です。

時給11万2000円、誤植かと思われたバイト冊子を見てそのバイトに参加することになった主人公、結城。
その内容は「暗鬼館」の中で7日間監視されるというものだった。
そこに集まった12人、外部から閉ざされた館の中、しかも一人ひとりには武器や毒が与えられ、
殺人を犯したもの、謎を解いたものにはそれぞれボーナスが付与されるという。

ということで「クローズドサークル」モノのミステリーだけれど、キャラが立っているせいか
謎解き終始に終わらないところは上手いかなぁと。
<12人が「それ誰だったっけ?」という印象を比較的与えにくいほど書き分けられていたと思う。
閉ざされた中、鍵も掛からぬ部屋、一つの殺人が起こった事でそれを引き鉄に次々と連鎖する殺人。
設定上どうしても非現実的にしなければならないところもあるし、
(現代において「クローズドサークル」を築くことのシチュエーション設定が難しくなっているため)
謎解きの粗さが見えるところもある。 
またきちんと書き分けられていつつもそれでも最後まで謎が残る人もいるので、
そういった細かい点に読んでいて引っ掛かりを覚えることもあったりしますけど。
綾辻氏の館シリーズよりは気楽に読める(その分突っ込んじゃいけない?)ミステリには
仕上がっていると思います。


にしても、一日おきに寒暖の差が激しすぎて付いてけません。<待て;
何より明日の「花粉予報」の真っ赤(=非常に多い)を見て憂鬱になっとります。
<ヒッキーが何を言うか!との声が飛んできそうですけれど;

「汝の名」

2010-03-02 23:59:53 | 読み物
明野照葉氏、「汝の名」です。

内容(「BOOK」データベースより)
若き会社社長の麻生陶子は、誰もが憧れる存在。
だが、その美貌とは裏腹に、「完璧な人生」を手に入れるためには、恋も仕事も計算し尽くす女だ。
そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える妹の久恵がいた。
しかし、ある日から、二人の関係が狂い始め、驚愕の真実が明らかになっていく…。


相変わらず手元に来るまでに予約しようとしたきっかけをすっかり忘れています。
<そもそもそれ以前に著者を忘れている時点でどうかと思いますが;

このお話、う~ん昼ドラなんかにありそうだなぁ。
で、昼ドラのイメージ=ドロドロ恨みつらみ、修羅場的争い、なんですよね、自分は。
そこそこページ数がある割にはあっさりと(時間的な意味で)読めるのは、
展開がある程度読めるからでしょうか。
というよりも女性の誰もが持っているだろう醜い部分とか計算高さがこれでもかと書かれていて
読んでいて楽しい本でもないし、そもそも設定にも若干の無理があるような気も。

むしろ「勝ち組」の女と「負け組」の女(←という言い方も時代を感じますが;)の逆転劇ならば
まだスカッとする!?かもしれませんが、最後の最後までこれでもかと畳み掛けられる
女らしい復讐方法は後味の悪さしか残りませんでした。

「WILL」

2010-03-01 23:53:31 | 読み物
本田孝好氏、「WILL」です。

内容紹介
18歳のときに両親を事故で亡くし、家業の葬儀屋を継いだ森野。
29歳になった現在も、古株の竹井と新人の桑田、2人の従業員とともに、
寂れた商店街の片隅で店を経営する。日々淡々と、社長としての務めを果たす森野のもとに、
仕事で関わった「死者」を媒介にした、数々の不思議な話が持ち込まれてくる――。
森野葬儀店に依頼された、高校の同級生・杏奈の父親の葬儀。その直後に安奈のもとに届いた“死者からのメッセージ”。
一度家族のもとで執り行われた老人の葬儀を「自分を喪主にしてやり直して欲しい」と要求する女。
十数年前に森野の両親が葬儀を行った男性の妻の元に通いつめる“夫の生まれ変わり”の少年
――「死者」たちが語ろうとするものは何なのか? それぞれに潜む「真実」を、森野は探っていく…。


まず最初に装丁に触れるのもおかしいかもしれませんが、この本の装丁(森と星空の写真)
こういう雰囲気、大好きですね~、「装丁買い」してもいいかなぁと思うくらい。

この本、「MOMENT」の続編にあたるそうですが、すっかり←の内容を忘れています。
どういう形で出ていたか気にはなりましたが取りあえずそのまま読み進めました。
両親の死で何となく引き受けたまま10年が過ぎた死を送る仕事。
人々を送った後に現れる奇妙な事件の数々、が、それらは一貫して、「死者」の想いと向き合うことで
少しずつ真実が明らかになっていく。
一見気味が悪かったり不思議に思える行動も、その真実の根本に誰かを「想う」気持が
篭められているので読後の印象は死を送る悲しさはあるものの、それ以上に温かい気持に慣れる本です。
そして、死者の想いと向き合うことで、突然に絆を断たれ宙ぶらりんになっていた森野の気持は
そうした経験と彼女を包む人々の優しさとで新たな進むべき道を見出していく。
何故彼女が名字のまま書き続けられていたのか、その意味が最後の最後のページで明らかにされ、
それが引き起こす余韻と共にああ、やられたなという感じがしました。

読後に確か「MOMENT」は文庫で買ってたはずとごそごそ探し出してみました。
もう一度読んでみようかと思います。(急ぎの積読本が終わったら)

「警視庁幽霊係と人形の呪い」

2010-02-24 23:53:35 | 読み物
天野頌子氏、「警視庁幽霊係と人形の呪い」です。

内容(「BOOK」データベースより)
幽霊係二代目登場―?柏木雅彦、大喜びで御役ゴメン!?
「幽霊が見えるんです!」柏木雅彦警部補を訪ねてきた青田刑事はそう切り出した。
マンモス団地のボヤで亡くなった人の霊が見えるらしい。
警視庁特殊捜査室で幽霊の事情聴取を担当する柏木は、この若い刑事を鍛えて
自分の任務を押しつけようと考えた。気弱な柏木にとって霊のお相手はとかく苦労が絶えないのだ。
早速、現場を訪れるが亡くなった老婦人の話から火事に不審な点が。
物の記憶が読める高島佳帆警部に協力を仰ごうと、現場に残された市松人形を持ち帰るが、
それは恐るべき力を持っていた…。


(スケートを)読みながら見てたのか、見ながら読んでたのか微妙な所ですが。(苦笑)
このシリーズは図書館で借りていたのですが、最新刊は予約していなくて、
某家の本の山を漁ったらシリーズ全作大人買いされてたっていう;
<そこでいそいそと借りてきた自分がとやかく言う筋合いは無いですが。

幽霊が見える刑事という設定自体が現実には有り得ないのでかなり気楽に読める一冊。
死んだ人(含む事故に巻き込まれ&殺人)と話が出来るなら犯人探しなんて簡単じゃない!?
となりますが、やはり死んでも人の感情というものは残っているので、
意図的に削除された記憶、語られない真実は物証で明らかにしていくしかないと。
全体的にユーモラスに書かれていますし、シリーズを追うごとにキャラも確立してるので
そういった意味では安心して!?読める本です。
その分ページを(人物描写等に)割かれているし、謎解きも複雑ではないので
がっつりミステリーが読みたい!という時にはやや物足りなさも感じますが、
気分転換をしたいときとかに手軽に読める一冊かと。

しかし、一松人形(やビスクドール)ってこの手の話には良く出てきますが、
う~ん、確かに暗闇で見たらぎょっとするよね。
この間は雛人形のならびに置いてあった人形についてた「値段」にびっくりしたけどさ。
<そして、それより大ぶりなものが二体(というか一対?)、実家にあったり;
(一応わたしの雛人形代わりということらしいんですけど)


氷上の戦い、熱いですよね~。 ← やはり昼間に見ていたヤツ。
とにかく終わった後に自分で満足した~という演技が見られれば一番いいかなぁ。
そして、明日はお出掛け@ライブというのに何のお勉強もしていない自分、ま、いいか。

「床屋さんへちょっと」

2010-02-15 23:49:52 | 読み物
山本幸久氏、「床屋さんへちょっと」です。

内容(「BOOK」データベースより)
宍倉勲は二十代半ばで父が興した会社を引き継いだが、十五年後に敢えなく倒産させてしまった。
罪悪感をぬぐえないまま再就職し定年まで働き、もうすぐ「人生の定年」も迎えようとしている。
だが、そんな勲の働く姿こそが、娘の香を「会社」の面白さに目覚めさせて―
「仕事」によって繋がった父と娘を、時間をさかのぼって描く連作長編。


若干ダレ気味な時には文字を補給しましょうってこで。<何か違う;

孫と自分の入る墓地の売り出しを見学に行く話から遡っていきます。
墓地のある地はかつて自分が倒産させた会社の工場があった場所、
その帰りに入った床屋は自分が「社長」だった頃に通っていた店だった。
そのほかにも海外出張で入った床屋(というのかな、まぁお国柄ということで)、
仕事中に取引先相手に土下座した床屋、彼の仕事の中の節目節目の中に
登場する床屋のシーンが書かれている。
もしかしたら、髪を切るという外見的な変化でなく、床屋は心もすっきりとする役目も
果たしているのかもしれない。
<そしてそのためには通い慣れた場所が一番落ち着くとか?
(男の人がある程度固定の場所に通い続けるのを見ての自分の勝手な推論ですが)

娘の心配もし、でも社会人としての心得やルールもさりげなく伝える、
心温まるお話ではあると思うのです。
が、個人的に一つ引っ掛かったのがそれに対する娘さんの態度かなぁ。
自分が社会に出て昔は分らなかった親の言っていたことを理解していくようにはなってるのですが、
それでも行動や考え方が何となく甘ちゃん?と思ってしまって。
(あんまり人のことは言えないかもしれませんが;)

読了

2010-02-11 23:40:40 | 読み物
ちまちまと読んでいたのでまとめて。

「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信氏

高校では「小市民」になろうと決めた小山内さんと主人公、僕こと小鳩常悟郎こと。
二人の関係は恋人でも友人でもなく互恵関係にある。 
それなのに、僕は謎にぶつかると解き明かしたくなるし、
そして彼女が小市民にあろうと心がけている理由とは… 

「夏期限定トロピカルパフェ事件」 米澤穂信氏

互恵関係なはずの小山内さんに夏休みを通してスイーツのお店に付き合ってくれないかと誘われた僕。
そんなことは今までなかったのに、彼女の真の思惑とは?
そして、未だ「小市民」になりきれない僕はやっぱり謎に惹かれてしまう…。

というわけで積読になっていた文庫本、というかラノベ。
<が、いまだにラノベの定義が良く分からないのですが;
友人でも恋人でもない、対等な関係の僕と小山内さん、その二人が目指すは「小市民」。
小市民とかくと「?」という感じですが、要は自分の欲望を抑え、目立たず大人しく、
過ごすこと…らしいのですが。
正直、二人の過去(徐々に明らかになりつつはあるのですが)がどうだからといって、
小市民を目指すという感覚が微妙に理解しづらいです。(それが理解出来ないのは
分別臭くなった証拠なんでしょうか?)
そして敢えてあっさりと書かれている(ように思える)文体は、今の人には受けるのかなぁ。

「謎」といっても誰かの物が無くなったとか部室に置かれたままの卒業生の絵の真意は等
日常にありそうなものばかりで殺伐としてません、が、トリックはしっかりしていると思う。
あとは自分に合うか合わないかという感性のような気もしますけどね。

「花と流れ星」

2010-02-02 23:58:21 | 読み物
道尾秀介氏、「花と流れ星」です。

内容(「BOOK」データベースより)
死んだ妻に会いたくて、霊現象探求所を構えている真備。その助手の凛。
凛にほのかな思いをよせる、売れないホラー作家の道尾。
三人のもとに、今日も、傷ついた心を持った人たちがふらりと訪れる。
友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年。拾った仔猫を殺してしまった少女。
自分のせいで孫を亡くした老人…。彼らには、誰にも打ち明けられない秘密があった。


二週間の風邪引きの間にちょっとだけ読んでいたので、続けて読書メモ。
シリーズモノ(長編)の合間の短編集といったところになるらしいのですが、
その長編がまだ回ってきません。(涙)
が、このうちの一つは他のアンソロジーでも読みましたし、単発として読んでも充分に
話は通じる…と思われ。

「霊現象探求所」と看板を掲げるがゆえに、時折交霊術と間違ってしまう人もやってくる事務所。
が、心霊要素は殆ど無く普通の!?ミステリとして読んでいました。
その殆どが観察力(或いは集中力)を持って読んでいれば探偵役となる
真備の推理を聞かずともトリックが分かる方がいるかもしれません。
そのうちの一つ、ポーの話を題材にしたものだけはミステリ+αがあり余韻を残してましたが、
それ以外はどこにでも(というと語弊がありますが)ありそうな謎とそれに関係する人の
内側を丁寧に書かれた文章だなぁと思いました。


魔の火曜日(二週にわたり、この日に具合が絶不調になったので;)を何とか乗り越え、
そろそろ日常の食事を戻さねば~と思いますが、胃が小さくなったのかどうか、
一度に沢山食べられない(が、腹は減るw)今日この頃。
それも、「体重と共に」直ぐに元に戻るんでしょうがね;

「儚い羊たちの祝宴」

2010-02-01 23:54:25 | 読み物
米澤穂信氏、「儚い羊たちの祝宴です。

5つの短編からなるミステリー。 が、ホラー色も強めか?
米澤氏というと、シリーズモノの途中を借りてきてしまい、読まずに返した一冊の、
『ラノベ』作者というイメージがあったので、この本はそういう意味では裏切られた一冊。
発刊された際に帯に『ラスト一行の衝撃』とあったらしいのですが(当然見ていない)、
ああ、なるほどと思います。(が、そこまでは言い過ぎ?とも思いますけど、帯なんてそんなもん)

各話に“バベルの会”というサークルの存在が共通して出てきますが、話自体はそれぞれが
完結しており、またバベルの会そのものについては余り触れられてはいません。
が、このサークル名が各話を繋ぐキーワードになっているのかも。

緻密な検証と理論があって帰結があるミステリを期待して読むと不満のあるラストに
なるかもしれませんが、ほんのりと味付けされたホラーによって最後の一行は
読み手の想像に(ある範囲はありますが)委ねられ、どう解釈するかによっても評価は違ってきそう。
が、個人的にはそれなりに楽しめたし、納得した作品でした。


外は雪らしい!?雪となっておりまする。
まぁ、そんなには積もらないとのことですが。(明日の午後は晴れるようだし)

「悪党」

2010-01-18 23:40:09 | 読み物
薬丸岳氏、「悪党」です。

内容(「BOOK」データベースより)
自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。
決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。
自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、
その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。
この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。
実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。


氏は犯罪被害者の視点からの作品が多いが、これもまたその一冊。
が、これまでは長編で「一つの罪、一つの犯罪」を描いていたが、この本では主人公を
探偵に設定し、当人以外の犯罪の罪についても描かれている。
故に一つ一つの掘り下げ方が浅くも感じられるかもしれないが、
逆に読んでいて(暗すぎるあまり)落ち込むということも、いい意味では無い。

他の犯罪被害(者)を目にすることで自分の身内を殺した犯罪者を赦せるかどうか、
という主人公の内面が徐々に変化するのも次のページを期待させて面白い。
また、取り巻く登場人物も魅力的だなぁと思う。
が、その分、最終章の主人公の内面の書かれ方が不十分な気がして、
どうしてそう思うに至ったか、(またはそれで納得したのか)という点が弱い気がする。
最後に肩透かし感をくらう部分はあったものの、エンディングの着地点は悪くないと思う。
(まぁ、本の中なのでそうあって欲しいという願望もありますが)

「龍神の雨」

2010-01-13 23:34:49 | 読み物
道尾秀介氏、「龍神の雨」です。

内容(「BOOK」データベースより)
人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。
そして今、未曾有の台風が二組の家族を襲う。


義父と暮らす兄と妹、義母と暮らす兄と弟、その二組の家族に事件がふりかかったのは、
龍が泳ぐのが見えるような激しい雨の降った夜のことだった。
相容れない親子関係に対して幼い抵抗をすることで心の均衡を保とうとする者、
親を殺そうと決意する者、罪を犯すことは「間違い」には違いないのだが、
誰かを守ろうとするための罪はどこまで許されるか。

まぁ、面白いと思います。(偉そうな) が、登場人物が限られているので、
ミステリとしての面白さ(ホァイダニットのどれか)が途中(2/3ほどで)から
バレてしまうのと非常に素直な謎であるのでその後の部分が若干ダレてしまう印象が。
それと、小学生の弟が出て来ますが、今時の小学生ってあれくらいにおりこうさんな
もの(が普通)なんだろうか。(少なくとも昔の自分はそうじゃなかった気が)
兄ちゃんのレベルがいかにもな中学生なだっただけに、そこだけ違和感があったかも。
ラストの展開は好みの分かれるところかもしれないけれど、自分としてはそれもアリだと思いました。

しかし、寒いっす。 てか、明日の朝が今年一番の冷え込みなのか;

「鷺と雪」

2010-01-06 23:32:12 | 読み物
北村薫氏、「鷺と雪」です。

内容(「BOOK」データベースより)
帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー…。
良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。
昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ―。


やっと回って来た直木賞受賞作。(もう次の候補作品が発表されてますけど;)
順を追って読んでこないと、多分「は?」で終わってたかもしれない。<待て;

シリーズを重ねるごとに「ミステリー」でもあり、且つ時代小説でもあるような。
それは巻末の参考文献の多さからも分かるように、氏が歴史や時代をなるべく忠実に
書き出そうとする姿勢が窺えるからです。
主人公の女学生、そして女性運転手であるベッキーさん、その二人が身近に起こった謎を
解いていくという形は終わり近くまで続いてはいるものの、その後ろに流れる時代背景は
彼女(あるいは親、親戚、友人、軍人も含め)最後の章に進むに従い濃く、重く、深く絡んできます。

昭和の初期、軍国化してゆく時に普通の(ではないかもしれませんが)少女は
何を考えていたのか、自分の意思とは別のところで婚姻を定められた華族の女性は?
「人民を守るために」と同じ目標のはずだった者同士(=軍)の中で起こった事件に
係ったものの心中は?
そして全ての人々の「その先」は?と非常に余韻を残す作品だと思います。

「705号室 ホテル奇談」

2009-12-27 23:41:43 | 読み物
塔山郁氏、「705号室 ホテル奇談」です。

内容(「BOOK」データベースより)
宿泊料1泊7000円、都内にあるリバーサイドホテル。何の変哲もないそのビジネスホテルには、
使用禁止の部屋―廊下一番奥の「705号室」が存在していた。
その部屋はなぜ使用禁止になっているのか?
その部屋でいったい何があったのか?ホテルの従業員でも、知る者は誰もいない。
新しく支配人に就任した本城はホテルの売り上げを上げるため、
「705号室」を改装し十数年ぶりに予約を取ることを決めた。
やがて、大きな代償を払うことになることを知らずに。
「705号室」にかかわったがために、宿泊者、デリヘル嬢、支配人、客室係、
フロント係たちの人生が、災いに蝕まれていく…。


このミス大賞受賞者の作ではありますが、この本は全くのホラー小説。
ホテルで使われない一室と聞くと前に事件のあった部屋だとか、いわくつき(建築中、
或いは立地に関しての)とかを思い浮かべますが。(そして実際にありそうですけれどね。
自分は霊感は無いので何も感じずに済んでいますけど。←済んでるとかの問題?)

隣室から気配を感じて怯える宿泊者、その部屋に入ると「何か」を感じる客室係。
降りかかる災難に対し真相を突き止めようととする支配人、
正体の見えない「何か」は一体何なのか?
と恐怖を掻き立てるのですが、若干中だるみ気味かも。
意外とありがちな話であるとか、一つの文章が長めで読みづらいとかが要因かも。

そして「ホラーだから」と言われてしまえばそれまでですけど、
(確かに恐怖は感じますし、ラストのその後を予見させるような終わり方とかは
このジャンルだからこそ効いていると思う)根本の原因である「何か」が
抽象的過ぎるのとじゃあ、それがどうしてこのホテルじゃないといけないのか?と
思ってしまったりも。 …素直に読んでおけということか?(笑)

読了

2009-12-23 23:39:22 | 読み物
まとめて、という数でもないけれどメモ。

「借金取りの王子」、垣根涼介氏

実はシリーズ物の2作目だったらしい。 主人公の職業はリストラ会社勤務。
美人のアシスタントと面接をする相手はデパート、生保、金融、ホテルと様々な職業にわたる。
それぞれの立場、事情で岐路に立つ人々の視点からも書かれているし、
業界の中身も窺えることができて面白かったです。
一番面白かったのはやはり、タイトルの「借金取りの王子」かな。 
今っぽくもあり、それでいてホロリとさせられるいい話でした。
(べ、別に「王子」につられて借りたわけじゃないんだから!<説得力薄っ)

「九つの殺人メルヘン」、鯨統一郎氏

とあるバーに訪れる女子大生がグリム童話の解釈になぞらえて実際に起こった事件の
真相を解き明かす。
う~ん、安楽椅子モノ?(とも違うのかしらん)
「マジックミラー」(有栖川有栖氏)で述べられている9つのアリバイトリックを
グリム童話と絡めて解き明かしていく、らしいのだが、パターンが単調なのと、
グリム童話の解釈とあんまり関係なかったりとで可も不可もなく。
最後の章でどんでん返しが待っているけれども、それも唐突な感が否めません。


年賀状印刷「のみ」終了。(そして終わった気になっている)<待て;
プリントと同時にパソで動画を見ようと思ったら(終わるまでの暇つぶしに)、
処理能力がガクンと落ちた…というかプリントが止まったw

「おさがしの本は」

2009-12-17 23:51:49 | 読み物
門井慶喜氏「おさがしの本は」です。

内容(「BOOK」データベースより)
簡単には、みつかりません。この迷宮は、深いのです。
生まじめでカタブツの図書館員が、お手伝いいたします。極上の探書ミステリー。


図書館のカンファレンスが持ち込まれた本に関する謎を解く…のが大まかな流れ。(流れ?)
確かに図書館ならではの謎ではありますが(女子大生がタイトルを挙げたが、
その本は存在しないや赤い富士山の表紙の自分の本が紛れたという老人、
しかし貯蔵する本の中にそのようなものは存在しなかった)等、確かに
「図書館ならでは」という謎ではあるんですけれど、軽く読むというよりは
薀蓄を知らないと分からない(そこが図書館司書という力の見せ所なのでしょうが)謎が
多く、結果説明に割かれ過ぎていてその割にキャラが見えてこないというか…。

一司書が「図書館の存在意義」という点で次第に市政に巻き込まれていくという展開は
通常でありえるんだろうか?(勉強不足なので分かりません)

自分が勝手に大崎氏(本屋に関するミステリ)っぽいものかなぁと思い込んでいたせいもあり、
読んでいて若干堅苦しい気はしてしまったのですが、現在の図書館の抱える問題なんかも
垣間見られるので「図書館」そのものに興味のある方は読むと面白いかと。

「植物図鑑」

2009-12-15 23:32:45 | 読み物
有川浩氏、「植物図鑑」です。

内容紹介
男の子に美少女が落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!
ある日道端に落ちていた好みの男子。「樹木の樹って書いてイツキと読むんだ」。
野に育つ草花に託して語られる、最新にして最強の恋愛小説!


…いえ、悪くありません。(笑)
<因みに、男の子に~というのは後書きで触れられているようにラピ/ュタのこと。

この始まりからして、まぁ「あり得ねぇ」ということになりますが、
それをこの人の作品で言う方が野暮なのかもしれない…と思う。
たとえば、イケメンで良く出来た男性が道端に落ちている(行き倒れている)ことも、
幾ら自らが「躾のよい犬」だと言ってもいきなり居ついたりすることも、
その犬が良く出来た主夫(に近い)だったりすることも、現実の世界でなら
まずありえないとバッサリ切り捨てられる。
特にそれが恋愛に発展するストーリーならば。
そういう点では非常にノンフィクションめいてるのだが、その部分こそがどんなに
大きくなっても(年をとってもというべきか)王道な恋愛を夢見る(笑)読者に
支持されているんだろうなぁと。
言い方は悪いがこの方の話は「良く練られた同人」(←というのは、多かれ少なかれ、
かき手の願望が篭められていると思われるので)だなぁと思う。(あくまで個人の意見です)
そうと分かっていつつ、手に取るのだからまんまと術中に嵌まってるのですが;

今回はそこに所謂雑草と呼ばれる植物を休みごとに収集し(食す)という
スパイスを加え(そして出てくる料理が意外に!?美味しそう)、
話はまさに王道のパターンを突っ走っていきますが、王道万歳。
そこに垣間見えるリアリティとのギャップ(例えばイザという時にある物が無いとか)
を楽しむのが、いい年をした大人の楽しみ方なのかも。


昨夜は久々に死んでおりました。(目と肩のダブル攻撃で)
…家にいて0時前に寝たなんて一体いつ以来だろう