Lunatics in the air

with maniac love of SHINJI TAKEDA
since 6 Jan 2006

意味と嘘

2006-01-18 | 独り言
去年の秋、演劇的な演劇が見たくなって
特に唐十郎に思い入れはないけれど、日にちの関係で
「KARA COMPLEX 調教師」を見た。

繰り返される同じフレーズ。
話の意味を追っていくと迷子になってしまう構成。
なのに、嘘も本当もぐちゃぐちゃのその舞台の上に
ある一瞬、すっ、と鮮やかな印象が立ち上がる。

こういう何らかの”印象”が生まれた瞬間に
「映画」「演劇」を見た、という気持ちになれる。

この世界のエッセンス。一番、真ん中にあるもの。
現実よりも”真実”の匂いのするもの。

それが私にとっての「映画」「演劇」「小説」。
日々に追われて生きている中で、感じることを忘れたり
感じることを禁じられたりしている感覚が呼び覚まされる。

その、「素に帰る」時間があることで息が出来る。
ただ生きているだけでは人は生きていけない。

こういうふうに感じられたのは久しぶりだ、と思った時に
もうずいぶん、彼はそういうのが感じられるものに
出ていないんだな、と思って少し悔しかった。
「こう感じて」というラインが用意されていない作品。
意味やストーリーがいく通りにも読める作品。
(小劇場の演劇やミニシアター系の映画になるのだろうか)

私は役者「武田真治」を、魂を演じる俳優だと思っている。
形を演じるのではなく、その奥にある魂を。
(そんな彼を『憑依型俳優』と呼ぶ人もいる・・・。
 その言い方が正しいかどうかはさて置き。)

鋭敏な”感覚器”としての類まれな才能。
その全身で、その場の空気や、相手のテンションを
自然に読み取って、その場で望まれた自分になれる。
相手役やその現場がイマイチの時は彼も”それなり”。
その逆であれば、とてつもない結果を生む。

役を演じていない時にもそういうところがあって、
だからこそ、その場にいる人や場所の雰囲気、
一緒にいる人などによって、相当イメージが変わる。

だけどどうやら、本人の発言を雑誌とかで追っていると
自分自身では、あまり受身(受信機的)なモードが強い時の
自分の演技を「良し」とはしていないようで、
出来れば自分で全てをコントロールしたい、とさえ
思っているような感じがある。
負けず嫌いでストイックな、完璧主義者の一面。

例えば、いつのまにか監督の意のまま動かされていたり、
演出意図に納得のいかない指示を出されたり、
そういう風に自分の意識の及ばなかった時の演技が
ものすごく気に入らないみたいだし。

でも、もったいないと思う。演技はスポーツじゃないし。
訳わかんない監督の的外れな演出に従うのは論外だけど、
信じられると思った監督になら、泳がされてもいいじゃない。
全てを任せて動かされまくってナンボじゃないのかな。
私は真治はそういう時もあっていいと思うんだけどなあ。
重ね重ね言うけど、全ての監督に動かされろとは言わないけど。

優れた監督は、人とは違う世界を見ることが出来る人。
大勢の人間で右往左往する現場の中で、
ただ1人、神のごとく完成予想図をクリアに見通しながら、
場の空気を動かし、思い描いた映像を撮ることの出来る人。
その神の手の中でチェスの駒のごとく、
真っ白になって操られるまま動いていくのもいいんじゃない。
そういう監督に翻弄される真治が見たいなあ。

テレビ番組は、すごくわかりやすい。
誰が見てもわかるように作られるものだから。
はっきりとした意味があって、わかりやすい流れがある。
だけどつまりそれはもっともらしい「嘘」。

薄っぺらく記号化された世界は空虚でつまらない。
”正しく””わかりやすく””意味付けられた”世界は
余りにも健康的で退屈で息が詰まってしまう。

だから時々、本当の嘘が欲しくなる。
嘘と嘘とが絡み合って「真実」が見える世界が。

彼は、その世界にふさわしい”代理人”。
虚虚実実の中に痛いほどの真実を匂わせて、
架空の生命に息を吹き込むことが出来る、稀有な人。

戻ってきて、”真実”の”嘘”の世界へ。
そこがどんな場所でも、あなたは生きられる。


2 コメント

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代理人 (メロンメロン)
2006-03-22 14:57:29
真実の嘘の世界 

雰囲気がとてもよく分かる。

上手く表現できないけど 私もそう思う。



昔に見た映画を思い出しながら真治も天使の役をしたら良いのにと思っていた矢先のプラピの映画でした。

ガッカリしたのを 覚えている。



だから 違った発想をしたのですよ。

今度は 小悪魔で 降り立ったアパートの住人の恋を全部邪魔をして分かれさせるというもので、それが出来れば 魔力が強くなるというものです。

だが そこには 拒むものがあり 一人の女性を好きになってしまい。その人が 悲しむ事をすることが

出来なくなる。

すると 魔力が弱まり 体力までも そして 死んでしまうかも分からない・・・・・。

女性が心配してくれている。この恋はみのるのかぁーー。他に恋人がいる彼女なのに・・・・。



残念ながら ココまでしか考えられていないのだぁーーー。
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うーむ (sasapppi(ささぴょん))
2006-03-23 23:18:38
うーん・・・ちょっと意味合い違うかなぁ・・・



でも真治君が人間じゃない役似合いそうだな、とは私も思います。
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